オイコノミア ぎゅっ!とオイコノミア「“0円”の経済学」 2015.04.27


なるほど。
果物なら冷凍に向いているという事ですね。
はい。
次回は女性必見「きれいに役立てたいスムージ」を御紹介します
これまでの放送でご好評を頂いたテーマをぎゅっ!と凝縮してお送りします。
今回のテーマは「0円の経済学」。
街には0円があふれています。
消費者にはとってもありがたいのですが何で0円でもうかるのか不思議じゃないですか?又吉さんうわさのアプリ会社に突撃取材しました。
なぜタダで使えるんですか?今夜の「オイコノミア」は…大竹先生街の中にこんな場所があるんですね。
そうですね。
静かでいいですよね。
都会の中のオアシスといった感じですよね。
まさにそんな感じですね。
大竹先生と又吉さん都会のあるお寺にやって参りました。
実はこちらのお寺本堂の前のテラスをオープンスペースとして広く一般に開放しているんです。
もちろん利用料はタダ。
知る人ぞ知る都会のフリースポットなんです。
(鐘の音)又吉さん。
これはね番組スタッフが渋谷駅周辺で集めてきたものなんですけど。
はいはい。
全てタダで配られてたんですよ。
えっ!?全てタダですか?はい。
なるほど。
やっぱり季節柄うちわが多いですかね。
うちわもありますよね。
水なんかもあるんですよ。
水も多いですね。
これはね環境省が熱中症対策ということで配布してるらしいんですよ。
へぇ〜!あとはティッシュもありますしちょっと試せるようなものが…。
こんなにいろいろあるんですね。
そうですね。
8月上旬の1週間に渋谷駅の1キロ圏内でもらってもらってもらいまくりました〜!全部買ったとしたらアハッ2,000円以上かかるんじゃないですか!
(鈴の音)ところで又吉さん。
はい。
このポケットティッシュどうやって生まれたかご存じですか?知らないですね。
このねおなじみのポケットティッシュなんですけど日本生まれなんですよ。
あっそうなんですか!しかもねタダで配ることだけを目的にして作られてるんですよ。
へぇ〜!そうなんです。
ポケットティッシュはタダで配るために生まれたんです。
今から50年ほど前はタダで手に入るものといえばマッチでした。
ところがマッチは暮らしの中で次第に役割を失っていき1968年ポケットティッシュが宣伝のための無料の広告媒体として生み出されたんです。
最盛期には年間30億個以上配られたといいます。
チラシと違って配ってすぐに捨てられることがないので新聞折込の100倍以上の宣伝効果が見込めるといいます。
アハッ!又吉さん私にも1つお願いしま〜す!へぇ〜!でもねこのポケットティッシュ原価はタダじゃないですよね。
そうですね。
これね1,000個で3,500円ですから1個当たり3.5円ですよね。
そんな安いんですか!配る人件費もありますから大体1つ配るのに7円〜8円ぐらいコストかかってるんですよ。
はい。
どうして私たちタダで手に入れることができると思います?これはやっぱり広告としての役目ですよね。
そうですよね。
ちょっと模型で説明してみましょうか。
はい。
もう一個ポケットティッシュあるんですよ。
実は。
大竹先生のもあったんですね!はい。
「オイコ塾」っていう。
ポケットティッシュは広告を出したいオイコ塾がお金を出して生産者に作ってもらいます。
生産者は広告入りのポケットティッシュを作り消費者にタダで配ります。
広告を見た一部の消費者はオイコ塾へ通い授業料などの形でお金を支払います。
三者が関わってますから「三者間市場」と言われるものでこれ代表的な0円のからくりなんですよね。
う〜ん。
この仕組み聞いて何か思い出しません?そうですね。
例えばテレビ番組とかですか?そうですよね。
又吉さんが出てらっしゃるテレビ番組多くのものは無料で放映されてますよね。
そうですね。
だからCMを見てそこの商品であったりとかサービスを買うという行為がスポンサーに払ってることになると。
そういうことですね。
なるほど。
インターネットの検索サービスの会社などもその一例。
私たちが当たり前のようにタダで利用しているものの多くはこの三者の取り引きで成立しています。
私たちが0円にひきつけられるのはなぜなんでしょうか?教えて!又吉さん。
甘いものはいかがですか?いいですね。
こちらどうぞ。
右側は有名なチョコレート会社の高級トリュフなんですよ。
今日は特別に15円で売ってあげます。
15円!?はい。
左側はどこの駄菓子屋でも買える普通のチョコなんですよ。
これは1つ1円です。
はい。
又吉さんどちらを買いたいですか?15円と1円。
はい。
どちらを買いたいかですか?はい。
皆さんも一緒に考えてみて下さい。
高級トリュフが1つ15円。
コンビニで普通に買えるチョコが1つ1円だったとします。
あなたならどちらを選びますか?えっ!?これいいチョコですよ。
じゃあこれですかね。
これですかやっぱり。
かなりお得ですからね。
15円。
はい。
はい。
次は両方から1円ずつちょっと値下げしたいと思うんですよ。
高級トリュフは1個14円になりました。
はい。
普通のチョコは0円。
タダですね。
はい。
又吉さん1つだけ買うとしたらどちらを選びますか?同じチョコレートが14円と0円になったとします。
どちらを選びますか?えっ?ウフフッ。
こっちですかね。
こっちですか?0円の魅力に負けなかったんですね。
1個ですもんね。
1個しか買えないんですよね。
1つが小さいんで。
アハハハッ。
14円分買えるならこっちかもしれないですけど。
あ〜!なるほど。
1つしか買えない。
今1つ食べられるならば15円でこっちを。
ちょっと大きさを合わせてですねこのくらい。
これどうですか?これでこんだけで。
この5つとこれ1個。
これが0円になるんですか?これ0円。
じゃあこっちです。
こっちですか。
これはダン・アリエリーというアメリカの経済学者が2007年に行った実験なんです。
初め高級チョコが1つ15円。
普通のチョコが1つ1円の時73%が15円の高級チョコを選びました。
次にどちらも1円値下げして普通のチョコが0円になりました。
今度は69%が普通のチョコを選んだのです。
0円になった途端人数が逆転しました。
私たちは「0円」と言われるとかなり心を動かされてしまうと。
それは分かりますね。
1円と0円の間には大きな壁があるわけですよ。
無料でないものを選ぶと1円でもお金を払わなきゃいけないというふうになると自分はまずい選択をしたんじゃないかというふうに心理的な負担を感じるわけです。
でも0円だったら払ってないんだからそれ選んだって何のコストも払ってないんでそんな心理的な負担はなくってとりあえず試してみたらいいじゃないかと思う人が多いんですよね。
0円だとどっちみち0ならもらえるならもらっとこかと。
そうですよね。
0円というのは感情のホットボタン。
引き金を引いてくれて決断を早める効果があるんですよ。
ああなるほど。
「人は0円に飛びつく」。
そんな傾向を利用したビジネスは実は100年以上前からありました。
アメリカの実業家ジレットは朝ヒゲをそる時にひらめきました。
当時のカミソリは刃と本体が一体型のもの。
「切れ味が悪くなったら刃だけを捨てて交換できるようにしたら便利じゃないか」。
こうして発明されたのが刃を交換できるT字型のカミソリ。
しかし新型のカミソリはなかなか売れません。
そこでジレットはカミソリの本体をコーヒーやガムのおまけとして無料で配ることを思いついたのです。
ヒヒヒッ!この無料作戦は大成功!その後ジレットは替え刃を高く売ることで利益を上げていったのです。
なるほど。
まず本体を配ったという事ですね。
そうなんですよ。
この商法なんか思い出しません?まず配る。
うん。
携帯電話とか。
そうですよね。
携帯電話そうですよ。
本体0円というのよくあるじゃないですか。
本体0円という形でタダで私たちは手にすると。
はい。
これを開けてみるとほら。
「使用料」。
使うと使用料が発生してその使用料が結局は本体の価格になっていってる。
これはね「直接的内部相互補助」と言われるビジネスモデルなんですよ。
無料で手に入れた消費者が結局最後には何らかの形でお金を支払うという形になってるんですね。
最初に払うお金がタダという事に私たち弱いというのは「現在バイアス」の一種かもしれないですよね。
あとでお金かかるということが分かっていても「今タダ」って言われるとつい飛びつくと。
やっぱり今安いっていう魅力に負けてしまうんですね。
でもタダだとついつい契約してしまうという事ありますもんね。
タダより怖いものはないということですね。
そうなんですよね。
2011年に登場し登録者数が5億人を超える無料のアプリケーションソフトがあります。
10代や20代の利用率は8割近く。
この人気の秘密はどこにあるんでしょうか?教えて!今や日本人の2人に1人が利用しているという携帯アプリ会社にやって来ました。
僕もよく使わせてもらってます。
あっこんにちは。
ようこそいらっしゃいました。
はじめまして又吉です。
金子智美と申します。
よろしくお願いします。
じゃあ早速こちらにご案内させていただきますね。
このアプリケーションの人気の理由は同じアプリを使用している人同士の通話やメールが全て無料だということ。
ハハハッ!すいません。
通話とかメールいろいろなサービスがあるじゃないですか。
はい。
なぜこれがタダで使えるんですか?はい。
普通の電話だと電話回線という電話の回線を通じてやってるんですけれど弊社のアプリではインターネットの回線を使ってやり取りをしてます。
私たちがこのアプリを通して無料で通話できるのは通常の電話回線ではなくインターネット回線を使っているからです。
インターネットの利用料は多くは定額なのでいくら使っても料金は変わりません。
通信会社はこれを「実質無料」としています。
更に人気の理由がもう一つあります。
「スタンプ」と呼ばれる気持ちを表すイラストをメールと一緒に送る事ができるのです。
イェーイ!でも会社の皆さんのお給料だとか会社の運営費とかお金はかかるじゃないですか。
そうですね。
はい。
それはどこから出てきてるんですか?アプリ自体はもうダウンロードするのも無料ですし基本的な機能は全部無料で使えるんですけれども一部スタンプという大きなイラストのようなものをメールでやり取りできる機能があってそれでちょっと特別にすごくかわいいキャラクターを使いたいとかっていう場合にそのキャラクターを数百円で買えるという仕組みがあったりとかあと弊社でゲームのアプリも出してるんですけれど無料で遊べるものが基本なんですけどちょっと友達よりも強くなりたいと思った時にアイテムを少し買ったりというところでそこで支払って頂いたお金が私たちの収益になってます。
基本は無料ですけどオプションで更に楽しもうと思うと有料になってくると。
そうですね。
はい。
そこでうまく…。
そこで私たちのお給料などが発生してますね。
へぇ〜!確かにスタンプとか欲しくなりますもんね。
そうですね。
なんか芸人のスタンプとかもありますもんね。
ありますね。
又吉さんもスタンプになってます。
スタンプといえば感情を表現するやつじゃないですか。
僕のなんか「!?」みたいなすごいとぼけたやつでこういう感じなんやて自分で自分の事がちょっと分かりました。
最近一般の方でもスタンプの絵を描いてスタンプが作れるっていうサービスを始めたんですね。
最近はキャラクターものだとこんな感じの…。
この辺りが人気みたいですね。
ああなるほど。
オリジナルスタンプが作れると聞いて又吉さんがぜんやる気になったようです。
真剣そのもの。
すいません!はい。
描けました。
あっ描けましたか。
はい。
ドキドキ。
え〜…これです。
おっ!これは…又吉さんらしいですね。
そうですね。
やっぱりペンで何かを書いてる時ってすごいさみしいじゃないですか。
お〜!だから1人で寂しい時とか誰か遊んでくれへんかなとかそういう時にこれを書くとただ普通の孤独よりも孤独感が際立つと。
増すということですね。
見た人はかなり遊んでやらなヤバいなっていう。
ハハハハッ。
いいですね。
すごくいいと思います。
いいですか?いいと思います。
なので…。
スタンプってあれ40個で1パックなんですね。
40個そろわないと出せないのであと39個こういう…。
このシリーズを出して描いていただければ。
「絶望」とか描き始めたら僕ちょっと40個描けるけどだいぶ精神的に負担かかりそうな。
そうですね。
明るい方が悲しいっすねでも。
ここ「パーティー」って書いてた方が…。
(笑い声)悲しい!先生僕オリジナルのスタンプを考えました。
はい。
こちらです。
これがスタンプなんですか?はい。
この「孤独」っていう文字を1人で書いてる。
…っていうスタンプ。
「これほど孤独なんですよ」という事ですよね。
それ孤独な時にみんなに送るんですか?はい。
ギョッとしますよね。
(笑い声)どうしたんだっていう感じになりますよね。
ほっとけないですよね。
はい。
それがねらいなんですか?「ほっとかないで下さいよ。
1人で『孤独』って書いちゃってますよ」…っていう気持ちを表してると。
大竹先生お願いです。
ほっとかないで下さい。
取材したアプリ会社はほとんどが無料のサービスだったんですけど一部有料のサービスもあったんですけどそれはどのような仕組みになってるんですかね?よくありますよね。
ずっとタダで使っていてもうちょっと使いたいとか言うと有料になっていくっていうのは。
そういうのを「フリーミアム」と言われてるんですよ。
フリーミアム。
分かりやすく言うと化粧品のサンプルみたいなもんですね。
これがフリー。
よくタダで化粧品のサンプルって配られてますよ。
これ使ってみて気に入ってみるとお金を出してプレミアム版を手に入れると。
はい。
化粧品の場合はフリーっていうのを作るのに結構これでもお金かかりますよね。
インターネットの世界だとこうやってコピーしていくっていうのはほとんど無料ですし配布するのも無料だと。
はい。
例えば本を1,000冊作って売ろうとすると印刷代や紙代の他に倉庫代や配送料などたくさんのコストがかかります。
一方デジタルの世界ではコピーすることにも配ることにもほとんどお金や手間がかかりません。
そのため無料で大量のユーザーのもとに届けることが簡単にできるのです。
これね「タンポポの種」「タンポポの考え」と言われてますがタンポポの種って花のあと種ができてそれがフワフワフワフワいっぱい飛んでいってたまたまいい所に着地した種は芽を出すことができる。
だから言ってみたらフリーの商品をどんどんどんどんアプリでダウンロードしてもらって使ってもらって気に入った人が僅かでもいたらですねすごく気に入ってくれた人がお金を出してくれて元は取れると。
そういう人がですね大体5%ぐらいいたら残り95%の無料会員を支える事ができると言われています。
5%。
ウェブ上のビジネスというのはタンポポの考え方ということでフリーミアムというのが主流になってきてるんですよ。
今はこのフリーミアムがインターネットビジネスの主流となっています。
フリーミアムで思い出したんですけど僕10年以上前に小樽に漫才修業に行ってましてその劇場5時以降空いてたんですよ。
そこを支配人に「5時からライブやらせてもらえないですか?」とお願いして毎日やらせてもらうことになったんですけどそれをタダで0円でお客さんに来てもらいたいと。
なぜならもう劇場に来てないんですよ。
若い人が。
小樽周辺の学生さんを「タダですから」と言ってチラシ作って来てもらって。
最初は「お笑い行かないよ」みたいな感じだったんですよ。
毎日5〜6人声かけて来てもらってそれ毎日続けたんですよ。
徐々にお客さん集まってきて。
一番最終日とその前の日の2日間だけ有料にしたんですけど有料でもお客さん立ち見が出るぐらい入ったんです。
すごいっすね!だからこれはまさにフリーミアムですよね。
そうですよね。
タダだからっていうのでやっぱりタダの魅力にみんなつられて最初は来ると。
はい。
中にはだんだんファンになる人もいて習慣化していくわけですね。
お笑いを見に行くということが習慣化されたと。
最後はお金を払ってでもお笑いを見たくなったということですよね。
そうなんですよ。
やっぱり若い頃から「経済学芸人」だったんですよ。
いや。
そうおっしゃってくれてるのは大竹先生だけなんですよ。
やっぱり続けていかないと。
そういうことですか。
今日お邪魔しているこちらのお寺本堂前のスペースを広く一般に開放しています。
冷たい麦茶でございます。
ありがとうございます。
あっわらび餅ですか?はい。
おいしそうですね。
僧侶の木原さんは和菓子を手作りして訪れる人に無料で振る舞っています。
いただきます。
おいしいですね。
すごいおいしい!こんなおいしいお茶菓子もタダでサービスされてるんですか?心のつながりを?はい。
なるほど。
ありがとうございます。
いただきます。
ありがとうございます。
おいしいですね。
皆さんタダでいろんなものが手に入るわけが分かりましたね。
今度はちょっと目線を変えてタダで働くということを経済学で考えてみましょう。
髪の毛…又吉さん。
なるほど〜家で家事などを。
家で家事などを。
子供とか主人のためには毎日…。
それもある意味タダ働きなのかもしれないですね。
ありがとうございます。
何も買えないんですけど記念に。
タダ働きなんて考えらんない!…というあなた!実はタダ働き報酬0円には意外な効果があるんです。
報酬ゼロの方がうまくいくことがあると聞いたらどう思います?ゼロの方がですか?そういうことあるんですかね?ふだんの仕事と切り離して考えられたという事なんですかね。
そうですね。
だからお金という報酬はすごく大きなインセンティブになりますよね。
でも私たち仕事する時にいつもお金を目的に働いてるわけじゃないですよね。
はい。
行動経済学では実は人が「社会規範」と「市場規範」の両方の世界に生きているというそれが理由だというふうに考えてるんですよね。
社会規範と市場規範。
はい。
社会規範とは家族や知り合いご近所など人と人とのつながりが密な関係のあるところで守らなければならない規則や道徳のこと。
それに対して市場規範は合理的でシビアなお金を介したやり取りのことです。
僕の父親は沖縄出身なんですけど沖縄では「結」っていうのがあってみんなで助け合うんですよね。
畑とかでも刈り入れの時期とかになるとそれぞれの畑にみんなが出向いていって助け合ったりとか。
一種社会規範が残ってるんですね。
はい。
又吉さんは若手の頃は結構「報酬なし」というので働いた事あるんじゃないですか?結構ありましたね。
芸人になって1年目ぐらいの時に社員の方から番組の何て言うんですかねちょい役みたいな感じで…。
エキストラ?エキストラでスキンヘッドにできる人を探してるっていう。
スキンヘッドですか!もちろんそれノーギャラなんですよ。
誰もいなくて「マッタンできる?」と言われたんですけど。
すごいお世話になってたんですよ。
お世話になってたんで嫌やったんですけどその人も困ってましたし「みんな断った」って言ってたんで「ああじゃやります」と言ってほんとにノーギャラでスキンヘッドにして朝から晩までそのロケに同行したことありますね。
それかなりのコストですよね。
出るだけじゃなくてそのあともずっとスキンヘッドじゃないですか。
たまたまですけどお坊さん役として。
「いくらでやってくれ」と言われたんじゃなくって「頼むからちょっと困ってるからボウズになってくれ」と言われた。
例えば全く同じ仕事内容の5,000円とか1万円のバイトがあったとしても恐らくやってないと思いますね。
社会規範だからこそタダでボウズになるっていうコストをかけてボランティアで出たと。
そうですね。
又吉さんだけに限ったことではありません。
アメリカの退職者協会が弁護士協会にこんなお願いをしました。
「退職して生活に困っている人のために1時間3,000円で相談に乗ってほしい」。
多くの弁護士がこの申し出を断りました。
しかしその後「退職して生活に困っている人のためにどうか無料で相談に乗ってほしい」と依頼を変えると圧倒的多数の弁護士が引き受けたのです。
お金の話が出た途端に弁護士たちは市場規範を適用する。
市場での収入に比べて1時間3,000円はこれは足りないなぁと思うからお断りするという形になるわけですね。
ところがお金の話抜きで「助けて下さい」と言われたら社会規範を適用して困っている人のために進んで時間を割こうというふうになるんですね。
私たちやっぱり社会規範と市場規範の境界線というのを知らず知らずのうちに引いて生活しててこの時は社会規範この時は市場規範っていうふうに行ったり来たりしてるんでしょうね。
そうですね。
だからそこが無報酬で働くということが結構私たちいろんな場面であるということも背景にあるんでしょうね。
はい。
夕飯時の商店街にやって参りました。
この辺りにですね報酬ゼロの現場があると聞いてやってきたのですが…。
どちらでしょうかね?こんばんは〜こんばんは。
こちらごく普通の民家のようですが…。
こんばんは。
ああみんな食事中ですね。
みんな食事中みたいですね。
家の中では30人ほどの子供たちがおいしそうに御飯を食べていました。
おいちいね!すごい子供が多いですけど何でこんなに子供が多いんですか?ここには。
ここは「子供食堂」。
子供食堂?子供食堂。
何ですか?それは。
「あさやけ子ども食堂」は子供だけで来ることのできる食堂です。
家で独りぼっちで御飯を食べている子供がいることに気が付いた地域の主婦が始めました。
全てのスタッフは報酬ゼロ。
好きな時に好きな時間だけ参加して夕食作りを手伝っています。
今はスタッフ全員報酬ゼロで働いていますが過去に一度報酬を支払ってうまくいかなかった例があったといいます。
ああ!ボランティアの人たちが。
だけどそうじゃないボランティアという形で募集すると来れる時にいつでも来てくれたりとか。
なるほど。
それつらいですよね。
なんかそうなっちゃうともう…そうですよね。
この日は大学生を含めた20人以上のスタッフが参加していました。
最近では近所の方などからご好意で食材が届くそうです。
店主の山田さんは元パン屋さん。
自宅と設備を無償で提供しています。
山田さんすごいですね!このおうちは。
お子さんが多くて。
今日はたくさん来てますね。
う〜ん最後は…自分が楽しいとかみんなが来てくれてうれしいとかそういううれしそうな人の顔を見られるとか。
はい。
最後はそういう話になっちゃうと思います。
まあねえ子供たちも楽しそうですし山田さんも一緒に楽しんでるという事ですよね?う〜んなるほど。
それが一番大事ですよね。
料理をすることはすごい好きなので…ちなみに食事の料金は1食300円。
でもお手伝いをした子供はタダになります。
又吉さんもお手伝いをしていただきました〜!ああおいしい!報酬がないことでうまく回る仕組みというのもあるんですね。
そうですね。
例えばねボランティアというのを考えてみましょうよ。
人の役に立ちたいという内発的なモチベーションでやっているボランティアに金銭的な報酬を与えてしまうとかえってモチベーションが下がってしまうということがあるんですね。
これは「アンダーマイニング効果」と言われてるんですよ。
例えばね又吉さん読書がお好きですよね。
もし1冊読むたびに1,000円支払われるとなった時にどんなふうに思います?「それ結構いいんじゃないですか」と思うんですけど読んでいくと何て言うんですかねちょっと読みやすいやつになる時があるんじゃないかなとも思いますね。
又吉さんはもともと本が好きだから読んでたのに1冊当たりいくらという金銭的な報酬が与えられたら報酬のために本を読んでしまう。
好きでやってたものが報酬というのを与えられるとモチベーションが変わってしまう。
はい。
そのモチベーションの変わり方がちょっと不適切だったらかえってやる気がなくなっちゃうことがあるんですよね。
モチベーションとお金の関係をイスラエルの経済学者が検証した例があります。
ある保育園で多くの保護者が子供のお迎えの時間に間に合わず遅刻していたので園はこんな張り紙をしたそうです。
その結果どうなったと思います?減ったんじゃないですか遅刻は。
…と思うでしょう。
実は逆に遅刻する人が増えてしまったんですよ。
増えたんですか?はい。
それはね今までは遅刻したら先生に申し訳ないと。
残業しなきゃいけないですからね。
保育園の先生が。
だからそれは申し訳ないと思って遅刻しないようにしてたんですよね。
だけど罰金があるとなってくると罰金を払えば遅刻してもいいというふうに思っちゃったんですね。
はい。
だから500円払ったら正々堂々と遅刻していいんだと。
なるほど。
これは先ほどの社会規範と市場規範の例でも説明することができますね。
遅刻しないようにしようというのは「保育士を待たせて悪い」という思いやりから来た社会規範で罰金というのは市場規範のルール。
だから社会規範である程度うまくいっているところに市場規範を不適切に持ってくるとかえって社会規範が壊れてしまう。
なるほど。
市場規範でいうと500円は安かったんですね。
そうなんですよね。
罰金の額の設定がやっぱり悪かったんですね。
だから5万円とかだったら効いたかもしれませんね。
30分ぐらい早く迎えに来そうですよね。
実はこの実験続きがあるんですよ。
園側はすぐにこの罰金制度を取りやめたのですが遅刻は減りませんでした。
一度壊れてしまった社会規範はなかなか元に戻らないのです。
僕この社会規範と市場規範のお話を聞いてて思うのがほんとそのとおりだなと思うんですけどたまにちょっと強制的な社会規範みたいなのあるじゃないですか。
例えば上下関係とか先輩は後輩に絶対おごらないといけないとか先輩に言われたら後輩は絶対にそれをしないといけないとか。
そういうのが僕あんまり好きじゃないんですよ。
だから後輩に何かものを頼む時にこれはもし例えばアルバイトでやったとしたらどれくらいの仕事なのかって考えてそれぐらいの金額を僕は渡したくなるんですよね。
誰しも人の役に立ちたいっていう気持ちはやっぱりありますよね。
でもやっぱりそれには限度っていうものがありますよね。
はい。
自分の時間をそこまで犠牲にして…。
そうなんですよね。
やっていいのかというところがありますよね。
「1〜2時間買い物してきてくれ」は大丈夫ですけど「ちょっと半日つきあってくれ」と荷物持たされるとかになるともうバイト代発生しないと。
やっぱりやってられないと。
何か変な事言ってますかね?僕。
いやいやいや。
市場規範を上下関係に持ち込んだりすると他の部分も崩れていきそうで。
そうですよね。
礼儀的な部分とか…難しいっすね。
難しいですよ。
ねえ。
うかつにはいれれないですけど。
多分社会規範がうまく成り立ってるのはそういう貸し借りをみんなある程度カウントしたりとかこれ以上はやっちゃいけないとかっていうお互い共通の認識があるところではうまくいんだと思うんですよね。
又吉さん。
以前ね脳の働きから人間の経済学的な行動を考えた「神経経済学」ってやったの覚えてます?覚えてます。
「神経経済学」の回では人は報酬を得ると伝達物質のドーパミンが放出され脳の側座核を刺激し満足感が得られるということを勉強しましたよね。
実はこの報酬っていうのは金銭的な報酬だけでなくても社会的に認められたり褒められたりすることでも同じメカニズムが働くということが分かってるんですよ。
「すごいね」とか「ありがとう」とかそういうのでもこう…。
だから同じようにうれしいんですよね。
脳の神経の伝達のメカニズムを見るとお金をもらってうれしいというのと褒められてうれしいというのは全く同じメカニズム。
認められてるというふうに思えるって事ですよね。
そうなんですね。
又吉さんもねいつも褒められて今日の仕事楽しかったということですから報酬ゼロということでいかがでしょうか?ハハハ…。
だいぶ極論みたいなのが急に出てきましたけど…。
側座核は報酬でも反応するんですよね?金銭的な報酬でもそういう社会的な報酬でも反応すると。
今日はじゃあいったん報酬もらっときます。
そうですか。
2015/04/27(月) 22:00〜22:45
NHKEテレ1大阪
オイコノミア ぎゅっ!とオイコノミア「“0円”の経済学」[字]

ティッシュに化粧品サンプル、通話・メール無料のあのスマホアプリ…巷には、0円でゲットできるものだらけ!どうしてタダで商売が成り立つの?そんなナゾを経済学で解明。

詳細情報
番組内容
街中で配られるティッシュ、化粧品や食品のサンプル、無料で通話やメールができるあのスマホアプリ…ちまたには無料でゲットできる商品やサービスがいっぱい!消費者にはうれしいことだけれど、どうしてタダで商売が成り立つのか、不思議に思ったことはありませんか?そんなナゾを経済学で解明。0円で利益を出す仕組みをひも解いちゃいます。そして世の中には“報酬ゼロだからうまくいく”仕事も。あなたの「タダ」観が変わります
出演者
【出演】又吉直樹,【解説】大阪大学教授…大竹文雄,【語り】朴ろ美

ジャンル :
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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