郷富佐子@シドニー
2015年4月28日17時00分
アボット首相が先日、「ノー・ジャブ、ノー・ペイ(no―jab no―pay)方針」なるものを発表した。簡単に言うと、「子供に予防接種をしない家庭に、政府は児童手当を払いません」という新しい計画だ。与野党が政策作りで常に対立するなか、今回は珍しく超党派の支持を得ているようだ。
新政策が実施されるのは来年1月からの予定で、健康上の理由を示さずに予防接種を受けない家庭は、税制優遇策や児童手当などが受けられなくなる。宗教上の理由もだめだという。手当などの総額は、子供1人当たりで最大年間1万5千豪ドル(約140万円)にのぼるそうだ。
資源ブームが去ったオーストラリアでは、緊縮財政が強いられている。これも財源捻出策のひとつなのだろうか。でも、モリソン保健相は「予算削減とは無関係。純粋な児童福祉政策であり、子供たちの健康のために決めたことだ」と強調している。それなら、なぜ、この時期に打ち出したのだろう。
日本で混合ワクチンの導入を取材したとき、医師や赤ちゃんの親などから「海外に比べて、日本の予防接種制度は遅れている」という声をよく聞いた。でも、オーストラリアでその手の不満は聞いたことがない。逆に、シドニーで出産した日本人が「生まれてすぐにB型肝炎のワクチンを打たれ、こんなに早くから接種させるのかと驚いた」と言っていたほどだ。
保健省などの統計によると、オーストラリアでは97%の子供が予防接種を受けている。一方で、7歳以下の子供に予防接種をさせない「良心的な拒否者」と呼ばれる親が、この10年間で1万5千人から4万人近くまで増えているそうだ。接種は任意なので、無理強いはできない。
拒否する主な理由は、副作用を心配したり、「人工的なワクチンは体に良くない」と考えたりする人が増えたからだという。地元メディアは、ニューサウスウェールズ(NSW)州には、1歳から5歳までの子供の接種率が「46~49%」と、かなり低い地域もあると報じている。また、首都特別地域の学校では4年前にはしかが大流行したとの報道もあった。
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