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<日米首脳会談>「日米関係は和解の力を示す模範」

毎日新聞 4月29日(水)0時30分配信

 ◇「共同ビジョン声明」 「同盟強化」、TPP進展歓迎

 【ワシントン高山祐、飼手勇介】米国を公式訪問している安倍晋三首相は28日午前(日本時間同日夜)、ホワイトハウスでオバマ米大統領と会談した。両首脳は会談に合わせて、第二次世界大戦で敵対しながらも戦後70年間、国際社会の平和と繁栄に貢献してきた日米関係を「和解の力を示す模範」とアピールする「共同ビジョン声明」を発表した。声明では、27日に合意した日米防衛協力の指針(ガイドライン)改定の意義を強調するとともに、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の日米交渉で「大きな進展があったことを歓迎する」と明記。安全保障と経済の両面で「歴史的な前進」を確認した。

 首脳会談に先立ち歓迎式典が開かれ、大統領は貿易や人権問題など幅広い分野を挙げて「私たちの同盟は未来にフォーカスしている」と強調。首相は「今、両国関係はかつてないほど強固になった。世界は多くの課題に直面している。課題の解決に先頭に立つ」と述べ、世界の平和や繁栄のため日米が主導的な役割を担う決意を表明した。

 安倍首相の公式訪米は第2、3次政権では初めて。オバマ大統領との首脳会談は昨年4月に東京で行われて以来。両首脳は共同ビジョン声明と「より繁栄し安定した世界のための日米協力に関するファクトシート」「核拡散防止条約(NPT)に関する日米共同声明」の3文書を発表した。

 共同ビジョン声明では、戦後70年の日米関係について「かつての敵対国が不動の同盟国」となった実績を強調し「アジア及び世界において共通の利益及び普遍的な価値を促進するために協働しているという意味において、和解の力を示す模範となっている」と評価。首相が掲げる「積極的平和主義」と、アジアを重視する大統領の「リバランス戦略」の緊密な連携により「両国の安全及び繁栄は相互に絡み合い、切り離すことができず、国境のみによって定義されない」とした。

 新指針については「同盟を変革し、抑止力を強化し、新旧の安全保障上の課題に長期にわたり対応していくことを確実にする」と評価。「日本が地域の及びグローバルな安全への貢献を拡大することを可能にする」として世界規模の同盟強化につながることを歓迎する一方、米国は日米安全保障条約に基づく日本と地域の安全へのコミットメント(関与)に「固い決意」を表明した。南シナ海などへの海洋進出を強める中国を念頭に「力や強制により一方的に現状変更を試みることにより、主権及び領土一体性の尊重を損なう国家の行動は、国際的な秩序に対する挑戦」と批判した。

 TPP交渉については「アジア太平洋地域の全体にわたって経済成長及び繁栄をけん引」と早期妥結の必要性を強調。「ダイナミックかつ急成長するアジア太平洋地域及び世界中で、貿易・投資のルールを定めるために主導している」と日米両国の役割を自賛した。

 ファクトシートは両政府が取り組む課題と現状認識をまとめたもので、高速鉄道開発▽宇宙・サイバー分野▽地球温暖化や原子力安全・規制分野▽アジア太平洋地域の海洋保安・海洋安全保障▽テロ対策−−などでの協力強化を確認。NPTの共同声明では「広島、長崎の被爆70年において核兵器使用の壊滅的で非人道的な結末を思い起こす。広島、長崎は永遠に世界の記憶に刻み込まれる」と核兵器の非人道性を訴えた。

 ◇日米共同ビジョン声明骨子

▽日米はかつての敵対国が不動の同盟国となり、アジア及び世界に和解の力を示す模範

▽今回の首脳会談は日米のパートナーシップの変革に歴史的な前進を画する

▽TPPは日米及びアジア太平洋地域の経済成長と繁栄をけん引。2国間交渉の大きな進展を歓迎

▽新たな日米防衛指針は同盟を変革し、抑止力を強化し、日本がグローバルな安全への貢献を拡大

▽(中国の海洋進出などを念頭に)力による一方的な現状変更は国際秩序に対する挑戦

最終更新:4月29日(水)1時14分

毎日新聞