この問題に朴大統領が今後どのような考えを表明するかにも注目が集まっている。取りあえずは検察に特別検事のような独立性を保証し、その上で捜査の行方を見極める以外に朴大統領としてもこれといった対応のしようはないだろう。また法務部(省に相当)長官や大統領府秘書室長、大統領府民政首席など、検察に影響力を行使できる立場の政府高官が捜査に介入できないようにすることも必要だ。
今や韓国において大統領が首相を選ぶことは、地雷が埋められた危険地帯を歩くごとく非常に危険な作業へと変質してしまった。これは野党などによる行き過ぎた個人攻撃ももちろん問題だが、それ以前に大統領による人選ミスが大きな原因だ。しかも今はこれまで以上に国民から新首相の道徳性に対する期待が高まらざるを得ない状況にある。そのため大統領としては「今回が最後」というくらいの覚悟が必要だ。それがなければいつまでも自分側、相手側といった次元にとどまってしまい、より大局的な変化をもたらすことはできない。またこのまま首相選びの影響で政策が再びストップするような事態も絶対に避けなければならない。
朴大統領は公務員年金改革や労働改革など、公共部門での改革については今年中に決着をつけるとすでに国民に約束している。この約束には韓国社会がこのまま沈み込むか、あるいは再び発展できるかという問題が懸かっている。この大きな課題が検察の捜査や政治の混乱により国民の目からそらされてしまうと、これは最終的に大統領の責任と言わざるを得ない。改革に向けたエネルギーは大統領が高めていく以外にないからだ。
ドイツのメルケル首相は2013年の選挙で勝利を手にしたが、安定した政権運営を行うため連立政権の樹立を目指し、自ら野党本部に乗り込み夜を徹して議論を交わした。朴大統領も必要であれば、公務員組織や労働団体を直接訪問し、徹夜してでも自らの政策を訴えて同意を引き出さねばならない。大統領の政治的パワーは、旧態依然のような腐敗根絶という言葉で政敵を攻撃することではなく、野党とも腹を割って話ができる政治力、交渉力から出てくるものだ。