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「クロ-ズアップ現代」調査報告書を公表
4月28日 19時35分

「クロ-ズアップ現代」調査報告書を公表
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NHKの報道番組「クローズアップ現代」に出演した男性が、いわゆる「やらせ」があったとして訂正を求めている問題で、NHKは事実のねつ造につながるいわゆる「やらせ」はなかったものの、裏付けがないままこの男性をブローカーと断定的に伝えたことは適切ではなかったとする調査報告書を公表しました。
この問題は、去年5月に放送されたNHKの報道番組「クローズアップ現代 追跡“出家詐欺”」を巡って、出演した男性が、記者の指示によるいわゆる「やらせ」があり、多重債務者に出家のあっせんをするブローカーとして放送されたとして訂正を求めているものです。
NHKは今月3日に堂元副会長を委員長に、弁護士と大学教授の3人が外部委員を務める調査委員会を設け、訂正を求めている男性や多重債務者の男性、それにNHKの職員など合わせて43人から一部は外部の弁護士も立ち会って聞き取りを行うなど、調査を進めてきました。
28日に公表した調査報告書は、男性が「ブローカーのような掛け合いをしてほしいと記者から依頼された」としていることについて、記者と男性は半年前に一度しか会ったことがなく、撮影当日の30分程度の時間でブローカーを演じるための打ち合わせが済むとは考えられないとしています。
そして、記者が故意に架空の相談の場面を作り上げ、演技をさせたとは言えず、事実のねつ造につながるいわゆる「やらせ」はなかったと判断しています。
また、男性をブローカーと伝えたことについて、報告書は男性がインタビューなどで語った内容には、出家の勧誘などについて何らかの関係がなければ知りえない知識や情報が多く含まれているとしています。
ただ、男性の仲介で出家して名前を変えた人物を実際に確認するなど取材の裏付けがなく、男性をブローカーだと断定的に伝えたことは適切ではなかったとしています。
一連の記者の取材は、終始、多重債務者の話に依拠した不十分なもので、その結果、ブローカーとして伝えた男性と多重債務者の相談の場所をブローカーの「活動拠点」と誤ってコメントしたなどとしています。
さらに、取材・制作上の問題点として、報告書は、記者が相談の場にいて「お金の工面のやり取りをもうちょっと聞きたい」などと声をかけていたことについて、記者がみずからに都合のよいシーンに仕立てようとしたのではないか、という疑念を持たれかねず、不適切だったとしています。
また、相談をはす向かいのビルから「隠し撮り」風に撮影したことや、相談のあとに多重債務者の男性を追いかけて問いただすインタビューをしたことについても、決定的なシーンを撮ったように印象づけることが優先された過剰な演出だと指摘しています。
一方で、報告書は、この記者による多重債務者の男性の匿名のインタビューが「NHKスペシャル」など2つの番組で放送されていたほか、別の複数の記者による匿名インタビューもニュース企画で2回放送されていたことを明らかにしました。
いずれも男性自身の経験や知見に基づく内容であったものの、特定の取材先に頼りすぎた面があったことは否定できないとしています。
そして、最後に報告書は再発防止策として、▽匿名のインタビューを行う際に事実関係の確認をより徹底すること、▽番組の内容によっては担当者とは別に専門的な知識や経験が豊富な職員が試写に加わること、▽取材・制作チームでの情報共有や視聴者に誤解を与えない演出の在り方などについて勉強会や研修を全国で実施することを挙げています。
調査報告書を受けてNHKは関係者の処分を決めました。
このうち、大阪放送局報道部の38歳の記者は「公共放送に対する信頼を著しく傷つけた」として停職3か月としています。
取材や制作を担当した大阪放送局の報道部専任部長ら職員4人を減給。報道局長や当時の大型企画開発センター長ら上司10人をけん責としました。
また、籾井会長は役員報酬の20%を2か月、板野放送総局長、当時の報道担当理事、当時の大阪放送局長の役員3人は役員報酬の10%を2か月自主返納します。
調査委員会の委員長を務めた堂元副会長は、記者会見で「NHKの報道番組で視聴者の期待に反する取材・制作が行われたことは誠に遺憾で、視聴者の皆様に心より深くおわびします」と陳謝したうえで、「今後、再発防止に向けて全局的な取り組みを進めていきます」と述べました。
また、調査委員会の3人の外部委員が記者会見を行い、このうち早稲田大学大学院の長谷部恭男教授は「行き過ぎた演出や構成、取材の詰めの甘さのためにNHKの信頼を傷つけることとなったことは残念である。現場の取材・報道がことさら萎縮することなく、反省を十分に踏まえて、自律的に真実を追求する報道番組を全国の視聴者に送り届けることを願っている」と述べました。
調査報告書の公表を受けて、ブローカーとして放送され訂正を求めている男性は、「NHKの判断がこのような結果になったことは、とても残念ですし、強い憤りを感じます。今後は、BPO=放送倫理・番組向上機構の手続きにおいて、私の名誉が回復されるよう努めていきます」というコメントを出しました。

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