李容洙さんがおぞましくつらい経験を淡々と語ると、懇談会場は静まり返った。「慰安所に連れて行かれる船の中で、日本軍兵士により強姦(ごうかん)されて処女を失った。ショックを受けて死にたいと思ったが、死ぬ勇気はとてもなかった。慰安所で拷問を受けた後は、殴られないようにされるがままにしなければならなかった」
「自分がなぜ慰安婦と呼ばれなければならないのか」と言った時、李容洙さんの声は震えていた。「私には両親がつけた李容洙という名前がある。しかし、日本軍のせいで『李容洙』ではなく『慰安婦』として結婚もできないまま一生、一人で生きなければならなかった」と語った。ハーバード大学4年生のクローディン・チョさん(22)は「女性として経験してはならない非人間的な苦痛を味わってきた李容洙さんの言葉に涙があふれ、質問しようという気持ちがわいてこなかった」と言った。
女子学生たちが涙ぐんでいると、李容洙さんは「韓国で毎週水曜集会(在韓人本大使館前でのデモ)をする時、韓国の学生たちにいつもこう話す。未来を担うリーダーになる皆さんは真の歴史を学び、必ずや私たちの恨(ハン=晴らせない無念の思い)を晴らしてほしい、と」と声を掛けた。
安倍首相のハーバード大学講演が行われた27日午前、李容洙さんは講演会場だったケネディスクール前で、日本による慰安婦犯罪への公式謝罪と被害者補償を求める沈黙デモを行った。前日に李容洙さんの講演を聞いた同大学生や韓国系団体関係者がデモに参加した。李容洙さんはAP通信をはじめ安倍首相の講演を取材に来た世界各国のメディアに向かって「安倍首相が歴史に対して本当にやましいところがないなら、被害者である私にまず会わなければならない。死ぬ前に日本政府の正式な謝罪を受けるのが望みだ」と言った。