NPT:NYの反核集会に被爆者らも参加 ノーモア…訴え

毎日新聞 2015年04月27日 21時56分

 27日開幕の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に合わせ、米ニューヨークで26日にあった反核集会には渡米した被爆者らも参加した。東京大空襲と広島原爆を体験した浄土真宗の僧侶、東條明子さん(80)=東京都練馬区=もその一人。東條さんは初めて訪れた米国で「70年前、何のためにあれだけの犠牲を出したのか。今こそ耳を傾けてほしい」と訴えた。

 「ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ」。えんじ色の法衣をまとった東條さんは、核廃絶を訴える横断幕を手にした行進参加者と声をそろえた。

 東條さんは東京・新宿生まれ。1945年3月の東京大空襲の後、父を残して母や妹ら5人で親戚のいる広島に疎開した。原爆投下時は爆心地約5キロの国民学校にいた。強烈な閃光(せんこう)に「死を覚悟した」。家に帰る途中、逃げてくる焼けただれた人々を見た。夜、広島の空は真っ赤に染まった。東京大空襲の夜もそうだった。

 僧侶だった曽祖父らの影響で60歳で得度した。所属する東京の被爆者団体「東友会」などを通じて体験を語ってきた。今回、代表団への参加を東友会から打診され、「この小さな地球上で核戦争が起きたら……。日本だけが平和でも意味がない」と考え、初めての渡米を決心した。被爆者は高齢化し、いなくなろうとしているが、「私たちの叫びは無視され続けてきた」との思いもあった。

 原爆の残酷さに加えて、どうしても伝えたいことがある。浄土真宗の中心的経典「大経」にある「兵戈無用(ひょうがむよう)」という言葉で「平和な世界には軍隊も武器も必要ない」という釈迦(しゃか)の教えだ。

 核軍縮に対する姿勢を巡って核保有国と非核国の間の溝が深まり、会議の成否に不安が募る。東條さんは「だからこそ、世界の為政者に知ってほしい」と力を込めた。【ニューヨーク吉村周平】

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