現場にアタック
担当:近堂かおり
世界卓球が始まっていますが、今日は、卓球のボール、ピンポン球のお話。
ピンポン球って何の素材で作られているか知ってますか?
答えは、セルロイド。
セルロイドというと、セルロイド人形や、映画のフィルムにも使われていましたが、今はあまり見かけなくなってきています。
そんな中、ピンポン球も、とうとうセルロイド製のものを作るのはやめよう、という事に決まったそうなんです。
どうしてなのか?
ピンポン球を製造している「ニッタク」こと日本卓球株式会社の村尾英敏さんに聞きました。
セルロイドというこの材質自体が、火薬の材料と非常に似通っているところがある。硝石とか綿花とか、発火点が低い。ですから危険品と10年ほど前に設定されて、現在航空貨物に乗っけられなくなりました。ただこの100年の歴史の中で、セルロイドを素材としたボールが事故を起こしたとか、そういうものは一切ないんですけど、これから先何が起こるか分からない。だから国際卓球連盟がプラスチックを材料としたものに切り替えていこうという話で、現在に至っているわけですね。
セルロイドじゃなくて、プラスチックにするのです。
熱に弱いセルロイドを、使い続けるわけにはいかないという判断なんですね。
ただ、実はこれまでも、ピンポン球はセルロイドじゃなきゃダメと決まっていた訳ではなく「セルロイドまたは非セルロイド」となっていて、この非セルロイドというのは、プラスチックのことなんです。
ですからプラスチック製のピンポン球というのは今までも作られてきたのですが、なかなか広まっていなかったんです。
というのも、プラスチックでピンポン球を作るのは、結構大変みたいなんです、ニッタクの村尾さんにその苦労を聞きました。
表面づら、丸く作るということは簡単です。ただし、世の中にいろんなプラスチック製品がありますけども、卓球の場合ですと、それはもう筋肉隆々のトップクラスの選手がひっぱたくわけですから、それに耐えられなきゃいけないわけですね。この成分の中に、いろんなもの割れない素材というものをからませて、現在にいたっては、おそらくセルロイドよりプラスチックの方が割れは少ないかという風に思われます。もう1つはパフォーマンス。今までセルロイドで、小さいうちから練習し努力してきてるわけですから、それがそのままプラスチックに変わっても、それが生かされるようなものでなければいけない。もう何回も何回もテストしまして、やっと作り上げましたけども、4年ぐらいかかりましたね。
今までのボールと同じように作るのは大変なのです!
今回ニッタクが作ったプラスチック製のピンポン球、試作品をお借りして、試しに、ボールがはねる音を聞きくらべてみました。
プラスチックの方が、ちょっと金属っぽい音がしますが、そこまで変わらないと思います。
また、大きさも重さも同じに作られていますし、質感もかなり似てます。
こちらが今までのセルロイド球。
こちらがプラスチック球です!
実は公式競技用のピンポン球を作っているのは、日本ではニッタクだけ、あとは全部中国のメーカーなんですが、実は日本と中国で、ボールに、とある違いがあるそうなんです。
卓球の専門雑誌「月刊卓球王国」の編集長、今野昇さんのお話です。
日本ではまだ売ってないので選手は使った事が無いが、中国ではすでに練習に使っています。また、卓球のボールは強い回転がかかってしまうと継ぎ目の部分が不規則にバウンドする性質を持っていたんです。シームレスはまずそういうことがなくて、非常に規則的に飛んでくると。中国のナショナルチームは既にそのプラスチックボールで練習してると。シームがあってもシームレスでもルール上はまったく問題ないので、大会によってとかチームによってどっちかを選ぶというような、そういうやり方になると思います。
中国の選手はもう使っているんですね!!!
さらに、ボールの継ぎ目の問題も。
ニッタクのプラスチックボールには今までのセルロイドと同様に真ん中に継ぎ目があるのですが、中国のボールはふくらませて作るので継ぎ目がありません。
一年後の世界卓球ではプラスチックボールが採用されるといいますが、試合で使うピンポン球は、一社のメーカーのものに統一されるので、その時に継ぎ目ありとなし、どちらが選ばれるのかはまだ分かりませんから、選手にとっては大きな問題。
どちらにしろ早くプラスチックボールに慣れたいと思うのですが、ニッタクの村尾さんは、ボールの量産について、このように語っています。
3月の25日に国際卓球連盟から公認されたので、その許可を得てから製造にとりかかっていく。市場に流していくにはまだまだ時間がかかる。目標は今年の秋。当然新しい機械を設置しなきゃいけませんし、型もプラスチック用というものを作っていかなきゃいけませんし、世の中にそれを流していくとなると、大量のものを作り上げて流していかなきゃいけませんから。月5万ダースぐらいですかね。それはもう5万ダース作るとなると大変な作業ですよ。でもそんなこと言ってられないですよね。泣き言は言ってられない。
例えば、ピンポン球の金型を1つ作るのにも何百万もかかると言われているそうです。
100年のセルロイドの歴史がプラスチックに置き換わっても、手間暇お金をかけて、質の変わらないものを、という老舗メーカーニッタクのこだわりが伺えます。
ただニッタクのプラスチックボールが市販されるのは秋ごろの予定で、選手が練習でプラスチックボールを使えるようになるにはもう少し時間がかかりそう。
それにしても、選手のみなさんは、半年くらいの間に、プラスチックボールに慣れて、さらにシームの有無にも対応しなければならないので、大変そうですね。