(2015年4月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
戦闘で荒廃したウクライナ東部。その経済的損失は極めて大きい(写真はウクライナ東部を流れるドネツ川で、破壊された橋に架けられたはしごを下りる女性)〔AFPBB News〕
筆者はここ数年、単一通貨ユーロについてかなりたくさん記事を書いてきた。不十分な政策対応がもたらす危険について警告を発してきた。
しかし今日、欧州連合(EU)の将来にとって最も危険な脅威は、ユーロに関連することではない。
EUの戦略地政学的な利益や長期の経済的利益を最も脅かしているのは、ギリシャではなくウクライナの破綻だ。
グレグジット(ギリシャのユーロ離脱)についてはいろいろなことが考えられるかもしれないが、ウクライナという国家が破綻したり、その領土の併合をロシアがさらに進めたりすれば、それはグレグジットとは別のカテゴリーに属する話になる。
EUはいつまでたっても共通の利益を守ることができないというシグナルを世界に発信してしまうことになるだろう。
ウクライナ経済の惨状
グレグジットはギリシャに大変な苦難をもたらすだろうし、EUには巨額の金銭的損失と大幅な評判の低下をもたらすだろう。EUはこれを阻止するよう努めるべきだ。しかし、仮にグレグジットが実行されても通貨同盟を破壊することにはならないだろうし、長期的にはこの同盟を改善することになる可能性さえある。
しかし、ロシアとウクライナに対するEUの政策の成否は、EUそのものの命運を左右しかねない。