(英エコノミスト誌 2015年4月25日号)
海を渡ってくる難民を巡るEUの政策は、悲惨なほど失敗してきた。
4月12日、イタリア沿岸警備隊がシチリア島沖で行った難民救助活動を捉えた映像の一こま〔AFPBB News〕
欧州連合(EU)は、自らが「善の力」であることを誇りたがる。だが、ここ10日の間に、地中海で1200人ものボート難民が溺死している。正確な人数は不明だが、ここにはシリアやエリトリア、ソマリアから戦禍や迫害を逃れて来た難民が含まれる。
彼らが命を落とした一因は、EUの難民保護政策が、倫理的にも政治的にも失敗していることにある。
この事態を受け、急遽、EU首脳会談の予定が組まれた。
本誌(英エコノミスト)が印刷に回された時点で会談はまだ進行中だったが、EUの首脳は難民の遭難を巡る問題の対応に乗り出した。
検討されているのは、救助活動の拡充、密航業者の取り締まり、難民受け入れ負担の分散など10項目を盛り込んだ対策案だ。
だが、欧州の首脳がこの案を全面的に受け入れたとしても、対策としてはまだ不十分だろう。
難民の波を止められず、全員を受け入れることもできない欧州
当局によれば、地中海の南岸では、100万人の移住者がキャンプで暮らし、後にしてきた生活とは比較にならないほど良い暮らしに向けて、船に乗り込むのを待っているという。
アラブ世界は戦乱に飲み込まれている。戦いは数十年にわたって続く可能性があり、多くのアラブ諸国は全体が漂流しているような状態だ。アフリカ諸国の多くは、宗派対立や部族対立、そして環境破壊の犠牲になっている。
暴力の海に浮かぶ安定と富の飛び地である欧州は、この先に待ち受ける選択への取り組みを、まだ始めていない。