挨拶

渡邉隆之(Vatanabe Takájuki)
漢字を使えない状況での日本語の同形異義語の数を最小限にすべく、日本語やラテン文字の歴史を活用したローマ字方式を提案します。
視覚障害者や広い意味での日本語学習者の役に立ち得ると考えています。

[自然言語性:良]
[伝達効率:良]
[入力/点字化:易~難]
[知識負担:アクセント/歴史的仮名遣い/上代特殊仮名遣い/韻尾]

記事はぜひ「構想」から読んで下さい。
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Segsyóxafu とは「正書法」のことですが、他の書法に対する「正」と言うよりは、このローマ字自体に於ける「正」程度に感じて頂きたく思います。響きや字面の恰好良さ や、このローマ字の特色を示すのにとても都合が良いことから、この単語を使っています。他の表記法を間違いとするものではありません。

質問歓迎(Situmon kwangeg) | http://ask.fm/segsyoxafu

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@Segsyoxafu
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構想

これは漢字を排除しようとするものではなく、漢字の使用が困難な状況にあっても日本語の伝達効率を下げないため、あるいはさらに上げるためのものである。
出来るだけ入力負担を少なくし、出来るだけ同綴異義語を減らすように努める。

字音仮名遣いを含む歴史的仮名遣いに上代特殊仮名遣いや韻尾というかつての音韻を加えたものからの翻字を元に、さらに綴りから現代標準語での読み方がわかるようにする。

語形変化に対しては、最小限の綴り変更で対応するように努める。ただし、語の変化経路を示すという目的の為だけに文字や文字の音価を増やしはしない。その為、ある綴りの読みが二通り以上になることはあるが、何らかの二通り以上の読みを統合するために綴りを新たに作りはしない。また、音価の変化経路が同じなら、その変化の発生時期に隔たりがあっても、同じ綴りになる。

標準語や方言のそれぞれに於いて音の変化が綴りに対して規則的に起きている限り、綴りを元のままに維持する。

歴史的仮名遣いが不明の語は、仮名遣いを推測して綴る。それができない場合は、このローマ字規則に可能な範囲で表音的に綴る。
よくわからない場合は、現代仮名遣いを元に綴ることも許容する。

できるだけ自然言語らしく書くために、ラテン文字の各文字の歴史から逸脱しない用法を目指す。また、日本語の範囲を超えないように、日本語史に存在しない区別はしない。
例: ある時期に於いて区別をされていた音素を仮にA、Bとする。その時期より後にAとBとの区別が失われた場合、「AとBとの統合体」とAまたはBとを区別するための綴りは作らない。
(これは日本語学などの研究では必要な区別たり得るが、音韻的にそのような区別がされることは無い)

活用の種類に従って活用させるのではなく、活用形に従って活用の種類を決める。

文字の数と拍数・音節数の関係は乱さず一定にする。例えばチをchiと書くのは日本語の音韻体系に不適である上、拍数と文字の数の関係を不必要に乱し、不要な文字を増やす。多くの言語が存在するなか、敢えて英語での発音に綴りを合わせる理由も無い。(chiはイタリア語でキ、フランス語でシ、ドイツ語でヒに近く発音される)

古文や方言からラテン文字化する場合は、現代標準語としての読みで書くか、当時やその方言での読みに合わせて書くかを選んでからにする。その際、仮名の音価が現代標準語と異なるということを示す必要がある場合には、このローマ字規則で使用されていない文字か、記号付きの文字を使う。

俗語や擬音語の綴りにはある程度の変更を認めるが、文字の音価や拍数を乱してはいけない。

五十音と拗音

母音字:
u/o/a/e/iはウ段/オ段/ア段/エ段/イ段にそれぞれ対応。

子音字:
カ行はk、ガ行はg、サ行はs、ザ行はz、タ行はt、ダ行はd、ナ行はn、パ行はp、バ行はb、マ行はm、ラ行はrにそれぞれ対応。
この様に基本的な翻字規則は日本式ローマ字に従うが、以下に注意の要る文字を挙げる。

注意:
体言としての用法が一般的な語の頭はとりあえず大文字で書いておくが、文中での大文字の用法は「分かち書きと大文字」に従う。

促音/撥音/上代特殊仮名遣い(uy/ay/aw)/記号付き文字などについては別の記事にて説明。

このローマ字規則に於ける「形態素」という表現は活用語尾を含まない。さらに独立性を失った形態素を除外しても良い。

h:
基本的にア行には子音字を使わないが、次の1か2ではア行に子音字としてhをつける。ハイフンの有無はhの有無に影響しない。また、役に立たないので、語頭にhが使われることは基本的に無い。
1: 語中や語末にある形態素頭であり、引き音になっていない場合(語構成明示のため)
2: 子音字が必要な場合
2の具体例:
・同一語内に於いて直前に子音字がある
・同一語内に於いて直前に同段(甲乙は無視)の母音字があり、その引き音になっていない

また、和歌の字余り句に於いて音節数を調節したい場合は、上記の規則に関わらず必要に応じて音節境界hを取り除く。

ロマンス諸語でのh(音価無し)から。
他意: Táhi
真意: Sínhi
極意: Gókuhi
里親: Satawhoja
左右(サユー): Sáhiu
胡瓜: Kihuri*>Kíuri
悪運: Akuhun
毛糸: Kayhito/Kayhitaw(Kayito/Kayitaw)
黄色: Kihiro(Kiiro)
羽織る: xahóru
幸せ: Sihafase
或いは: arúhifa/arúifa
秀でる: xiidéru
やるお: jaru-ho*
やらんお: jaran-ho*
だろうお: d’aráũ-ho
おいおい: ói-hoi
あんあん: an-han*/am-ham*
あっあ: ahha*
あんあ: anha*/amha*
あーあ: áaha
うーう: uuhu*
いーい: iihi*
ああー: ahaa*
あああ: ahaha*
あいうえお: Ahihúheho
cf.
体: Tái
砂糖屋: Satagja
左右(ソー): Sau*
西洋: Séijag
櫂: Kái
申す: máusu
稼いで: kaséide
美しい: utukusíji(utukusíi)
美しゅう: utukusíku>utukusíu
大分: Ófoita
はーい: xaai
わーい: váai
みたい: míta jág>mítai
だ: de áru>dea*>da
赤い: akái/akai
背: Sé>Séi
多う: ófoku>ófoü
えい(掛声): éï
あう: aü*
えう: eü*
危うい: ajafüi/ajafǘi
雄々しい: vovösíji(vovösíi)
唯々諾々: vívïdakudaku
鱝: Éfï
姪: Mefi/Mefï
買う: kafü
思う: omófü
憂う: urefu*/uréfü
全米オープン: Zenbei-open

x, f:
転呼していないハ行の子音字はx、転呼したハ行の子音字はf。
xはギリシャ文字χやキリル文字х、国際音声記号xから。
fはかつてのハ行の音価や多くの言語でのvとの関係から。
は(助詞): fa
へ(助詞): fe
縄: Nafá
那覇: Náxa
法律: Xafuritu
法力: Xofuriki
母: Xafa*/Xáxa
頰: Xófo/Xóxo
浅茅生: Asadifü/Asadifo
仮令: tatofi/tatófi
譬え: tatofáy/tatófay
譬い: tatofi*
大夫(タユー): Táifu
大夫(タイフ): Táixu
気配(ケハイ): Kéxai/Káyxai
気配(ケワイ): Kayfafi*

転呼したハ行から母音が脱落してできたウはfとする。フはウに成らない。ただし、ウが引き音に成っていない場合や、ウに記号付き文字を当てる必要がある場合は、fをuに変える。
妹: Imawfito*>Imawfto
素人: Sirafito*/Sirawfito*>Siráfto/Siráwfto
箒: Xaxaki*>Xafaki*>Xafki
請うて: kofite*>kófte
問うて: tofite*>tófte
言うて: ifite*>ifte*
蝙蝠: Kafaxori*>Káfmori
河本: Kafamoto*>Káfmoto
河骨: Kafaxone*>Kafxone
河内: Kafáhuti/Káfati/Káf’uti/Káuti
兄人: Sefito*>Sefto*
秋保: Akifo*>Akif*>Akiü*/Akihu*
向こう: Mukafi>Mukáf
(「向かふ」とみなせばMukáfu)
cf.
白粉: Xakuxun*>Xaxuni*>Xafüni*
蔵人: Kurabito*>Kuramdo*>Kuráũdo
東人: Adumaüdo*/Adumahudo*
甲: Káfu

v:
ワ行の子音字はv。ラテン語でのvとuとの区別の仕方から。vは子音的なu。
泡: Avá
尾: Vó
絵: Vé
胃: Vi

ワ行から母音が脱落してウになった場合、vではなくuとする。
申す: mavosu*>máusu
夫婦: Mevoto>Meuto

歴史的仮名遣いの確かな語でなくとも、歴史的仮名遣いでfoやfùだと確定している{オ}を除いて、形態素頭の{オ}はo/ho、引き音を除く非形態素頭の{オ}はvoとする。
前後の仮名に関係なく非形態素頭にはア行が立たなかったことから、非形態素頭ではoよりvoの方が無標であると考える。
ただし、hの使用条件2に当てはまれば、hoとする。
うおー: uvoo*
ガオー: gavoo*
cf.
おーお: ooho*

j:
ヤ行の子音字はj。
この字が元々は子音としてのiを表す為の文字であることや国際音声記号jから。
湯: Jú
世: Jó
矢: Já

ヤ行から母音が脱落してイになった場合、jではなくiとする。
生憎: ajaniku*>ainiku
来い: kojo*>kói
行く: juku>iku
可愛い: kafajúi>kafaíji(kafaíi)
みたい: míta jág>mítai
するみたい: suru mítai
夢みたい: Jumáy mitai
おまい: {omafe}={omave}>{omaie}>{omai}→omafe>omai
元い: {motofe*}={motove*}>{motoie*}>{motoi}→motófe>motoi
cf.
してみたい: site mitái
夢: Imay*>Jumáy

上代特殊仮名遣いにおけるエ乙類(ヤ行のエ)はjeとする。
江: Jé
柄: Je
兄: Je*
干支(兄弟): Jeto
枝: Je/Jeda
机: Tukuje
采/賽: Saje*
映える: xajéru
見える: miju*, mijete*>míjete, mijéru
cf.
声: Kóve
前: Máfe

上代特殊仮名遣いの確かな語でなくとも、歴史的仮名遣いでveやfeだと確定している{エ}を除いて、形態素頭の{エ}はe/he、引き音を除く非形態素頭の{エ}はjeとする。
前後の仮名に関係なく非形態素頭にはア行が立たなかったことから、非形態素頭ではeよりjeの方が無標であると考える。
また、「日葡辞書でのye」、「omafe>omai」、「voとの対称性」、これら3つを重要視して、ve/feよりもjeを優先した。
ただし、hの使用条件2に当てはまれば、heとする。
遮る: sakikiru*>saigiru*>sajegíru
才 : Zai*>Zaje*
いいえ: iije
cf.
得る: éru
戎: Ébisu
愛媛: Éxime
姉さん: Néesam
ねえ: née
ええ: ée
えーえ: eehe*
法衣: Xofuhe
帰依: Kwíhe
英語: Eggo

日本語に於いてワ行のウとア行のウとが、またはヤ行のイとア行のイとが音韻上区別されたという証拠は無いとされる。これらの区別の存在が確定するまで、vu/jiを存在しないものとして扱う。
ただし、語幹と活用語尾との境界を内部に持つ「ウ段+ウ」や「イ段+イ」は例外とする。これらのウ/イは完全には引き音に成り切っておらず、非引き音としても発音される。よって、この様なウ/イは、敢えて引き音である事を確定させたい場合を除き、vu/jiとする。
聶う: xuyü*, xuyüru*, xuyvete*
老いる: oju*, oite*>óite, oíru
悔いる: kuju*, kuite*>kúite, kuíru
射る : íru, íte
植える: uvu*, uvuru*, uvete*>uvete, uveru
良い: jeki*>jóki>jói>éi>íji(íi)
大きい: ofokíji(ofokíi)
可笑しい: vokasíji(vokasíi)
悲しい: kanasíji(kanasíi)
楽しい: tanawsíji(tanawsíi)
可愛い: kafajúi>kafaíji(kafaíi)
愛おしい: itofösíji(itofösíi)
美味しい: ohisíji(ohisíi)/oisíji(oisíi)
わゐうゑを: Vavivúvevo
やいゆえよ: Jajijújejo
cf.
食う: kúfu
報う: mukúfu
いい加減: iikagem
聞いて: kiite

w, y:
合拗音字はw。この字がuまたはvを二つ繋げた物であることから。
開拗音字はy。一般的なローマ字でのyに加えて、フランス語でのyやオランダ語のÿ(iとjの合字)から。
会議: Kwáigi
蹴る: kwéru
食事: Syokuzi
兄弟: Kwyágdai
泥鰌(土長): Dodyag
お嬢様: Odyágsama
醤油: Syagju
しょうが無い: Sijag ga nái>syagganái
cf.
しよう: semu*>sem’*>seũ*, {seũ*}>{seu*}={syou*}→seũ*>sijóu

uとvまたはiとjの融合により、二字が一つの拍となっている場合にも拗音字w/yを使う。u+v>w, i+j>y
-右衛門: -huvemon*>-hwemon*
五右衛門 : Gohwemon
cf.
仁左衛門: Nizavemon
里: Sataw
酒: Sakay
神: Kámuy

g:
基本的にはガ行の子音字だが、平水韻で以下の韻に分類される字音の韻尾のウやイは共にgとする。
平水韻:
東/冬/江/董/腫/講/送/宋/絳
陽/庚/青/蒸/養/梗/迵/漾/敬/径
直前の母音字によってウかイかが明確に定まるので混乱は起きない。
「相模・双六・愛宕」など、韻尾をガ行で表した例がある。詳しくは本居宣長の『地名字音転用例』を参照。
「うむの下濁る」と言われる様に、この種の字音の直後では連濁が起きやすかった。
gという字に母音的な音価を持たせている例として、トルコ語のğを参考にした。
青(ショー): syag*
青(セイ/セー): seg*
情景: Zyagkeg
映像: Egzag
重要: dyugheu
香草: Kagsau
cf.
法曹: Xafusau
北条: Xóudeu

「中・龍」などの字音仮名遣いが「チウ・リウ」のように「イ段+ウ」とされることもあるが、gの音価が後舌母音u/o/aの直後でウ、前舌母音e/(i)の直後でイと成る方が綺麗なので、「チュウ・リュウ」のように「ウ段+ウ」として扱いたい。しかし、実際にはiの直後でgをイと読む必要が無いので、どちらの字音を採用しても読み方に混乱は起きない。

何か問題があるとわかるまでの実験として、ガ行からの音便にもこのgを使ってみる。ただし子音脱落で説明できるものには使わない。
冠: Kagaxuri*>Kagburi* >Kamburi*>Kammuri
cf.
稼いで: kasegite*>kaséide
泳いで: ojogite*>ojóide
香ばしい: kagufasi*>kaubasíji(kaubasíi)
>kambasíji(kambasíi)
「香」の字音からkagbasíji(kagbasíi)とするのも認めてみる。

促音

促音には大きく分けて二種類あるとする。一つは入声韻尾に由来するもの、もう一つは清音子音の長音によるものである。前者は元々が促音的であり、かつては語末にも立てるほどに独立性があった。後者は元々は促音ではなく、音便や子音強調によって発生したものであり、語末に立つことは無い。ただし外来語/擬音語/俗語は例外とし、ア行直前の促音を利用して表記する。

平水韻で入声に属する緝/合/葉/洽の韻とされる字音が促音を発生させた場合、促音をpとする。ただし「十」を「ジュッ」と読む場合はこれに含まず、清音子音の長音とする。
立派: rippa
入声: Nipsyag
合戦: Kapsen
雑誌: Zapsi
摂取: Sépsyu
接触: Sepsyoku
颯爽: sapsag
執政: Sipseg
恰好: Kapkau
納豆: Naptóu
法度: Xapto
十手: Zipte
十個(ジッコ): Zípko
cf.
十個(ジュッコ): Zyúkko

平水韻で質/物/月/曷/黠/屑の韻とされる字音が促音を発生させた場合、促音をtとする。ただし、連声と区別する為、sの直前ではtをhに変える。sの直前にハイフンがある場合はtのままにする。
物体: Buttai
実験: Zitkem
月光: Gwetkwag
発表: Xatpeu
日本: Nitpón/Nixón
日誌: Nihsi(Nit-si)

促音tはh/v/j/f/s(形式子音/半母音/特殊音)の直前(スペースやハイフンは無視)で連声を起こす。ちなみに「つぁ」は嘗て「さ゚」と書かれた。
この現象によって長子音が発生するのだから、連声前は長子音では無く、連声後は長子音で無ければならない。sの直前にハイフンがある場合はṫとする。
雪隠: Sethin
仏縁: Butuhen/Buthen
今日は: komnitifa/komnitfa
念仏を: Nembutu vo/Nembut vo
とっさ゚ん: Tótosama>Tótsam(Tóṫ-sam)
はっさ゚ん: Xatsam*(Xaṫ-sam*)
ごっさ゚ん: gotsam*(goṫ-sam*)
cf.
はっちゃん: Xattyam*
出来: Syuturai>Syuttai
やっちゃる: jatte+jaru>jattyaru
しちゃる: site+jaru>sityaru
やっちまう: jatte+simafü>jattimafü
しちまふ: site+simafü>sitimafü
死んぢまう: sinde+simafü>sindimafü
やっとる: jatte+vóru>jattóru
しとる: site+vóru>sitóru
「西浄: Seitin*」から変化したと考えれば、「雪隠」は「Séttin」となる。

平水韻で屋/沃/覚/薬/陌/錫/職の韻とされる字音が促音を発生させた場合、促音をkとすると歴史的仮名遣いがわからなくなるため、促音に当たる拍が歴史的仮名遣いでクならq、キならcとする。
このような促音の直後では歴史的仮名遣いをハ行とするかパ行とするかに辞書ごとの揺れがあるが、パ行として書く。
慣用音を持つ漢字(e.g. 逼)では歴史的仮名遣いが問題にならなくなるが、元の字音(逼: xyoku*/xiki*)を基準にして促音を書く。
格好: Kaqkau
学校: Gaqkau
石鹸: Seckem
陸行: Riqkag
力行: Rickag
六法: Róqpafu
百方: Xyaqpág
北方: Xoqpag
逼迫: Xicpaku
洗濯機: Sentákuki/Sentáqki
適確: tekikaku/teckaku
cf.
核家族: Kakukázoku
沖言葉: Okikótoba
夏期講習: Kakikágsifu
かきくけこ: Kakikúkeko
百点: Xyakutém
国宝: Kokuxou
齷齪: ákuseku
育成: Ikuseg
匹敵: Xitteki
逼悩: Xitunau*

韻尾以外の促音の内、カ行/サ行/タ行/パ行の直前にあるものは清音子音の長音とする。これらは韻にも歴史的仮名遣いにも関わらない。
VVCはVCCになり易い。(Vは母音、Cは子音)
亀甲: Kikafu*>Kikkafu
天辺: Texen*>Teppén
呆気: Akkay
奴: Jatukaw>Jakkaw
全く: mataku*>mattaku
おっさん: Vodisama>Vossam
欲す: xorisu*>xossu
仰る: ofoseharu*>ossy’áru
いらっしゃる: iraseraru*>irassyáru
訴える: urutafu*>uttafáyru
坊ちゃん: Bóttyam
新田: Nitta
大っきい: ofokíji(ofokíi)>okkíji(okkíi)
尊い: tafutáwi>tattáwi
夫: Vofito*>Vofto*>Votto
行って: ikite*>(iite*?)>itte
言って: ifite*>ifte*>itte
煎って: irite*>ítte
勝って: katite*>kátte
って: tote*>tte
安っぽい: jasuppói
馬鹿っぽい: bakappói
それっぽい: soreppói
打っ飛ぶ: butitobu*>buttóbu
打っ放す: butixanasu*>buppanásu
打っ壊す: butikofásu>bukkofásu
突っ込む: tukikomu*>tukkómu
差っ引く: sasixíku>sappíku
掻っ攫う: kakisarafü*>kassaráfü
落っことす: okkotósu

上記以外の促音は全てhとする。この促音は外来語/擬音語/俗語にのみ現れる。
あっ: ah
あっと言う: atto-hifu(ah-to-hifu)/áh to ifu
あっあ: ahha*
あっが: ahga*
あっざ: ahza*
あっだ: ahda*
あっな: ahna*
あっは: ahxa*
あっば: ahba*
あっま: ahma*
あっや: ahja*
あっら: ahra*
あっわ: ahva*
あっわ(あっは): ahfa*
んっ: nh*/mh*

また、非韻尾の促音の直後に形態素境界を示す為のハイフンを挿入する場合は、促音をhに変える。
早: sau*/sah*
早急: saukifu>sakkifu(sah-kifu)
早速: sausoku>sassoku(sah-soku)
十: zifu*/zip*/zyuh*
十回: zipkwái>zyukkwái(zyuh-kwái)
cf.
真: ma*
真っ赤: makká
真っ青: mass’ávo(ma-ss’ávo)
真っ平: mattáfira(ma-ttáfira)
真っ裸: mappádaka(ma-ppádaka)
真っ正面: Massyágmen(Ma-ssyágmen)
真ん中: Mannaka(Ma-nnaka)
真ん前: Mammáfe(Ma-mmáfe)

促音符の直後の長音符は促音と見なす。
ただし、日本語は促音と促音の長音とを区別できない。
あっー=あっっ: ahh

非長子音の促音を韻尾以外にも使うことを考えたが、次の理由から止めた。
・日本語に促音が発生した原因たる韻尾に存在しない子音を独立させたくない
・韻尾以外の促音が非長子音として認識されたという証拠が無い
・ラ行などから母音が脱落しただけでは促音にならず、さらに清音化などが必要
・語の判別にほとんど関わらないと思われる

撥音

平水韻で侵/覃/塩/咸/寝/感/琰/豏/沁/勘/豔/陥の韻とされる字音の撥音はmで書き、真/文/元/寒/刪/先/軫/吻/阮/旱/潸/銑/震/問/願/翰/諫/霰の韻ならnで書く。
三千: Samzén
感想: Kamsag
謙虚: kémkyo
審査: Símsa
実験: Zitkem
阿吽: Ahum
完成: Kwanseg
選挙: Sénkyo
判官: Xángwan>Xáugwan

促音と違ってmm/nn以外では長子音としての表記ができないので、撥音はm/nのみ。どちらの撥音も語末に立てるので、後続音からの独立性が強い。

ここで、不転呼ハ行/パ行/バ行/マ行またはその子音を唇音、タ行/ダ行/ナ行/サ行/ザ行/ラ行またはその子音を舌音、母音性の強い残りの行またはその子音を喉音と呼ぶ。
これは「五音」を基にした分類である。

何らかの拍が撥音に変化した場合、その拍が元々唇音ならm、舌音ならnと書く。
甲: kap*>kam*
甲板: Kampan
甲高い/疳高い: kamdakái
飲んで: nomite*>nómde
飛んで: tobite*>tomde
死んで: sinite*>sinde
何で: Náni de>Nán de/nánde
如何: iká-ni>Ikán
盛ん: sakari>sakan
…様>…さん: …sama>…sam
爺さん: Díisam
婆ちゃん: Báatyam
考える: kamgafáyru/kamgáfayru
神: Kámuy/kamu*>kam*
簪: Kamisasi*>Kamzasi
あ(ん)なり: annari*
あ(ん)めり: anmeri*

喉音拍が撥音化した場合や、撥音が添加された場合には、その撥音の直後が唇音拍ならm、それ以外ならnと書く。ただし不転呼ハ行xの直前に撥音が発生するのは例外的なので、xの直前でもnとする。
語源不明の場合もこれに従う。
語末が撥音化した場合、その撥音が複合語の語中に来ても元の綴りを維持。逆に語中が撥音化した場合、その語の略語に於いてその撥音が語末に来ても元の綴りを維持。
商人: Akibito*>Akímdo
問屋: Tofija*>Tonja
皆: Muyna>Muynna
あまり>あんまり: amari>ammari
鳶: Tóbi>Tómbi
やわり>やんわり: jafari>janfari
鑑みる: kagamiru*>kangamiru
凄い>すんごい: sugói>sungói
んば: fa>mba
四: Jó>Jón
四万: Jonmán
丼: Domburi>Dóm
痩馬: Jasehuma>Jaseuma>Jasyomma
小便: Seubén>/Syoubén/>Syombén
連れション: Turesyom
秋刀魚: Samma
あんは: anxa*

日本国語大辞典によると「四」には「三」の影響から撥音が添加されたようだが、その時点では既にm撥音とn撥音は区別されていなかっただろうと考え、そのような撥音を基にした四をjónとした。

元から「うん/ん」と言う形の形態素(字音を除く)やその変化形では、日葡辞書でのVmという表記を基にmの撥音を使う。
うん: úm
うんと: umto
うん万円: Ummanven
うんこ: Úmko
ん?: m?
うーん: uum

マ行やバ行の前で一般的にウと書かれる拍を発音に応じてンやムで書いた場合にもm撥音とする。
馬: Umá/Mmá
子馬: Kawhuma/Kawmma
梅: Umay/Mmay
孫: Magáw/Umagaw*/Mmagaw*
姥: Úba/Ḿba
山姥: Jamáhuba/Jamámba
宜: ubay*/mbay*
埋まる: umaru/mmaru
生まれる: umareru/mmareru
旨さ: Úmasa/Ḿmasa
cf.
羽毛: Umou
高級羽毛: Kaukifu-húmou
得べし: ubaysi*
有無: Úmu
郁子: Múbe/Úbe/Umube*
海: Úmi
うん: úm
鰻: Munagi>Unagi

上記の規則から漏れる撥音はnとする。

撥音符の直後の長音符は撥音と見なす。
んー=んん: nn/mm

長音でない「んん」を表現したい場合は、コンマとスペースを使い、「m, m」のようにする。

「美」「煙」「寒い」「寂しい」「三郎」「侍」などでのマ行とバ行の交代や、五音(ごいん)でこれらの行が共に唇音とされたことから、mとbは日本語に於いて近い存在であることがわかる。また、バ行はパ行とも近い。よって、マ/バ/パ行の直前の撥音に限り、nよりmの方が自然であると考える。ただしハ行は直前に撥音が発生するとパ行化する。また、「感応」や「三悪」などの連声から、m撥音よりn撥音の方が基本的な撥音になったものと考える。

バ行由来の撥音にbを当てるというのも考えたが、次の理由から止めた。
・撥音発生の原因たる韻尾にbが存在しない
・撥音を鼻子音拍と考えるなら、バ行から母音が脱落しただけでは撥音にならず、さらに鼻音化が必要
・撥音がbかmかを表記や発音に於いて区別したという証拠が無い
・語の判別にほとんど関わらないと思われる

「八ッ場ダム」のように促音符を撥音で読ませる場合、長子音性と撥音性を合わせてJabba-damとしてみるのも良いかもしれないが、特殊すぎるので保留。

上代特殊仮名遣い

和語に於いてウ段/オ段乙/ア段/イ段甲が大半を占め、オ段甲/エ段甲乙/イ段乙は極少数であるとされる。従ってウ段/オ段乙/ア段/イ段甲の母音を先ず基本的な母音とし、入力に負担の掛からないu/o/a/iで書く。
これは「オ段甲をo、オ段乙をö」とする一般的な書き分け方と逆になるが、大事なのはかつて存在した区別を示すことである。八母音説など、当時の音価に関する主張ではなく、飽く迄書き分けの話である。
ちなみに、オ段の平仮名や片仮名の元になった漢字は、他の行に先駆けて甲乙の区別が失われたとされるマ行の「も」や「モ」を除き、全て乙類のものである。

残り四つは以下の様にする。

オ段甲はawとする。uとaの連音かどうかや、具体的な音価とは無関係に決めた。「aと関係があるかもしれないが、少なくともaよりはu寄りの母音」と言うことから。ちなみに一例のみではあるが、「白」に於いて露出形と被覆形の交替に関わっており、被覆形での母音がア段となっている。
二拍以上の語での同じ母音字の連続傾向や有坂・池上法則でのオ乙対ウ/ア/オ甲の対立に関連して都合が良い様に思われる。
ちなみに、「高kau」や「刀tau」がオ段甲の音仮名(漢字の音読みを使った万葉仮名)なので、直感的にも問題ないと考える。
母音融合と無関係の長音ではwを増やす。aww
白: Síraw
白玉: Siratama
箱: Xakaw
里: Sataw
cf.
色: Iró
心: Kokoró/Kokóro
物: Monó
来よ: kojo*

エ段甲はe、エ段乙はayとする。後者が特に露出形と被覆形の交替に強く関わり、被覆形での母音がア段となることから。エ段乙がaとiの連音かどうかや、具体的な音価とは無関係に決めた。「aと関係があるが、少なくともaよりはi寄りの母音」と言うことから。
母音融合と無関係の長音ではyを増やす。ayy
上: Ufay
上手: Ufate
酒: Sakay
酒樽: Sakadaru
目: Máy
目蓋: Mábuta
食べる: tabu*, tabayte*>tábayte, tabáyru
cf.
前: Máfe
家: Ifé
女: Mé
書ける: kakéru
虐める: idimeru

イ段乙はuyとする。u/oとiの連音かどうかや、具体的な音価とは無関係に決めた。「uと関係があるが、少なくともuよりはi寄りの母音」と言うことから。露出形と被覆形の交替に強く関わり、被覆形での母音がウ段またはオ段(乙または不定)となる。
露出形がイ段乙で被覆形がオ段のものに「木」や「火」があるが、東国方言や一部の複合語に於いて被覆形がウ段になり得る。
マ行の一拍語「身」には「も」の読みが見当たらない。
また、二拍以上の語に於いてイ段乙がア段やウ段と共存している場合が多いが、有坂・池上法則によればオ段乙はア段/ウ段/オ段甲を避ける傾向にある。
これらから、oyと書くよりuyと書く方が都合が良いと判断した。
母音融合と無関係の長音ではyを増やす。uyy
火: Xúy
火先: Xosakí
火(ふ): Xu*
木: Kúy
木陰: Kokagay
紀伊: Kúyy
果物(木だ物): Kudámono
身: Múy
身くろ: Mukuro
月: Tukúy
月読: Tukujomi
神: Kámuy/kamu*
神柄: Kamukara*
起きる: oku*, okuyte*>ókuyte, okúyru
過ぎる: sugu*, suguyte*>súguyte, sugúyru
cf.
日: Xi
氷: Xi*
秋: Áki
水: Midu
上: Kámi
生きる: ikíru
飽きる: akíru

ちなみに、助詞「のみ」は助詞「の」と「身」が結合したものであるとされる。
のみ=nómuy

甲乙どちらの例も存在する場合は、どちらでも良い。
糸: Íto/Ítaw
取る: tóru/táwru

甲乙が不明、または甲乙の区別が存在しない場合はo/e/iで書く。よって、上代特殊仮名遣いが失われてから発生した活用語尾は、活用の種類に関わらず、常にo/e/iとなる。非形態素頭のvo/jeとは違ってこれらは音節構造には関わらず、また、「活用の種類に従って活用させるのではなく、活用形に従って活用の種類を決める」という構想に従うためである。
しかし、「上代特殊仮名遣いが失われてから発生した活用語尾」であるか否かを判断するのが困難な場合も有るので、二段活用の語尾を一律に乙類で表記することも認める。

上代特殊仮名遣いでの区別を字音仮名遣いにも適用できるかもしれない。しかし、そのような区別をつけている辞書は今の所は存在しないか、少なくとも一般的とは言えない。また、区別をしようとすると書き手の負担が大きくなり過ぎる上、日本語と呼べる範囲を超える可能性もあるので、とりあえず字音に於いてはaw/ay/uy/jeを使わないでおく。

アクセント

アクセント核のある拍にはアキュートアクセント(acute accent英)を付す。
ú/ó/á/é/í
úy/áy/áw
ǘ
(ń/ḿ)

名: Na
木: Kúy
水: Midu
秋: Áki
花: Xaná
会社: Kwaisya
電気: Dénki
お菓子: Okwási
男: Votokáw
大学: Daigaku
文学: Búngaku
雪国: Jukíguni
歳時記: Saizíki
弟: Otoftó
中国語: Tyuggokugo
普及率: Xukífuritu
山登り: Jamanóbori
見物人: Kenbutunin
けんもほろろ: kénmoxororo
お巡りさん: Omáfarisam
金婚式: Kimkónsiki
国語辞典: Kokugozíten
十一月: Zifuhitigwatú

体言や半体言(「分かち書きと大文字」で定義)以外の語は、その直後に付属語が無い限り、語末拍(語末が促音ならその直前拍)にはアクセント核が無い物とする。付属語があれば、アクセントに応じて記号を付ける。
する: suru
する時: suru tóki
するまで: suru máde
するとは: surú to fa
するしか: surú sika
するから: surú-kara
するけど: surú-kedo
「する」と言った: “surú” to itta
して: site
しては: sité fa
これに: Kore ni
これには: Kore ní fa
あの: ano
あの声: ano kóve
「あの」と言った: “anó” to itta
こんにちは: komnitifa
「こんにちは」と言った: “komnitifá” to itta
あっ: ah
「あっ」と言った: “áh” to itta
cf.
月: Tukúy
好き: sukí
駄目: damáy
12月1日: Zifunigwatú Tuitatí/Zifunigwatu-tuitatí
102年: Xyakú Nínen/Xyaku-nínen

前にある語のアクセントの影響を受けて付属語などのアクセント核が弱化することがある。

平板型の動詞が他の動詞連用形の直後に来ると起伏型に変わる。
始める: xazimayru
し始める: si-xazimáyru
終わる: vofaru
し終わる: si-vofáru
忘れる: vasureru
し忘れる: si-vasuréru
負ける: makayru
し負ける: si-makáyru
比べる: kurabayru
し比べる: si-kurabáyru

体言や半体言に於いて、アクセントの変化を発生させる自由形態素連続は複合語とみなす。ただし、アクセントの弱化や制限修飾による変化は除く。
弱化したアクセントの記号は省略可。

平板型アクセントの連体詞が「人」を修飾するとアクセントが変化する。
あの人: ano+xitó>Anóxito
この人: kono+xitó>Konóxito
その人: sono+xitó>Sonóxito
cf.
どの人: dóno xitó

助詞「の」が後続すると平板型になる語がある。その場合は助詞とその直前の体言を繋げる。
ただし引用文や作品名の末では平板化しないこともある。
花の: Xaná+no>Xana-no
男の: Votokáw+no>Votokaw-no
弟の: Otoftó+no>Ootofto-no
昨日の: Kinófu+no>Kinofu-no
「荒城の月」の: “Kwagzyag no tukúy” no
cf.
一の: Ití no
六の: Rokú no
次の: Tugí no
男の子: Votokáwnokaw

「日・上・内・下・人・所」が制限修飾されると語末の拍が核になる。
日: Xi/xí
明くる日は: akuru xí fa
24時間である日は: Nízifu Jozíkan de áru Xi fa
人: Xito/xitó
大きい人は: ofokíji(ofokíi) xitó fa
哺乳類である人は: Xonyúurui de aru Xito fa

「時」が制限修飾されると頭高型になる。
時: Tokí/tóki
時の: Toki-no/tóki no
時は来た: Tokí fa kíta
する時は: suru tóki fa

ただし、アクセントによって意味が変わる場合、制限修飾されていてもアクセントが変わらないことがある。
その「下」とこの「下」とでは意味が異なる。:
Sono ​​“sita” to kono “sita” tó de fa Ími ga koton’áru.
過去・現在・未来という三つの時:
Kwáko/Génzai/Mírai to ifu Mittú no tokí
彼の時は止まったままだ。:
Káre no tokí​ fa tomatta mamá da.
cf.
彼が三つの時:
Káre ga mittú no tóki
相手が彼の時は大人しい。
Afité ga Káre no tóki fa otonasíi.

一つの語がアクセント核を二つ持つこともある。
書いてない: káite vinai>káitenai/káitenái
書くべし: kákubaysi/kákubáysi
書くべからず: kákubayk’árazu
cf.
書いてある: káite áru
書いてない: káite nái
書くべきだ: káku báyki da

京阪式アクセントにおいては低起式の語の最初の母音字にハーチェク(háčekチェコ)を付けると、あるいは高起式の語の最初の母音字にマクロン(μακρόν/macronギリシャ)を付けると良いかも知れないが、保留。
他の方言についても保留。
アクセントの類別に数字を使うと諸方言の表記を統一できて良いかも知れない。

語のアクセントに平板型と非平板型との両形がある場合、筆者は出来るだけ非平板型を選んで書いているが、これは個人的な好みによるものである。