国際石油開発帝石:油田権益取得でエネルギーの安定調達へ

毎日新聞 2015年04月27日 21時15分(最終更新 04月28日 01時00分)

 ◇アブダビ首長国 40年間で原油、日量8万〜9万バレル

 国際石油開発帝石(INPEX)は27日、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国で、陸上油田の権益を取得したと発表した。契約は2015年から40年間で、日量8万〜9万バレルの原油を調達する。これにより、日本の原油・天然ガスの輸入量のうち、日本が自力で調達する「自主開発比率」は2%弱押し上げられる見通しだ。エネルギーの安定調達を後押しすることが期待され、政府は安倍晋三首相をはじめとする「資源外交の成果」と強調している。

 同油田は日量160万バレルを生産する世界でも有数の大型油田。INPEXが取得した権益は全体の5%で、取得額は11億ドル(約1300億円)程度とみられる。アブダビ政府系会社が6割、国際石油資本(メジャー)が4割の権益を保有していたが、14年1月にメジャーとの契約が切れるため、アブダビ首長国は全権益の4割について国際入札を実施。中国、韓国を含め約10社が名乗りを上げていたが、フランスの石油会社に続き、INPEXの落札が決まった。

 政府は10年に策定したエネルギー基本計画で、自主開発比率を30年に40%に引き上げることを目標に掲げている。日本企業が油田権益を確保していれば、輸出国の都合などで売り先を変えられるなどのリスクを避けることができ、エネルギーの安定供給につながるためだ。しかし、これまでは大型の権益確保に苦戦し、10年度に約23.5%だった自主開発比率は、現在もほぼ横ばいにとどまっている。

 今回のアブダビでの権益獲得を巡り功を奏したのが、政府の積極的なUAE支援策の表明だ。13年5月にUAEを訪問した安倍首相は、UAEからの留学生の受け入れ拡大など教育面での協力強化を約束。また、政府は日本の高度医療機関へのアブダビの患者受け入れなど、医療面での支援もアピールした。

 09年に石油資源開発がイラク南部のガラフ油田を獲得して以来の大型案件となり、安倍首相は「資源外交の大きな成果だ」とするコメントを発表した。

 一方、日本企業が現在保有する海上油田権益の多くが18年に失効期限を迎えることになり、契約の更新や、さらなる権益の確保が急務となっている。経済産業省は「資源外交はエネルギー政策の重要な柱。今後も積極的に取り組んでいく」としている。【安藤大介】

 ◇原油権益

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