大阪市を解体し五つの特別区に再編する、いわゆる「大阪都構想」の住民投票が5月17日に投開票される(4月27日告示)。大阪市が始めた住民説明会には行列ができる一方で、橋下徹市長の進め方に「誘導」などの批判もあがる。市民の一人として説明会に参加した。
(新聞うずみ火 栗原佳子)
住民説明会「昼の部」は午後2時のスタート。午後1時の開場時刻を数分回っただけなのに、建物の前には長蛇の列ができていた。4月19日、大阪市生野区の生野区民ホール。行列の先には二つの「関所」がある。大阪市民を証明する何かを提示するチェックポイントと金属探知機だ。しかも、市職員とおぼしき男性がバッグの中まで覗き込む。
この時点で定員450人のフロアはほぼ満席。「前のほう、1席空いてます」という係員の声に、すかさず手を上げ、7、8人横並びの列の中央部に身体を押し込めた。
大阪市の説明会は4月14日から始まった。橋下市長出席のもと、告示前日の26日まで連日、午前、午後、夜の3回行われている。私は19日、朝から西成区民ホールの説明会に出かけたが、10分前に会場に着くと満員御礼。「けさは7時半から並んでいる人がいましたからねえ」。市職員に案内されたのは中継を流すサブ会場だった。
しかし急ごしらえのスクリーンの画質は粗く、音質も悪い。結局、途中で退席し、昼の部に出直すことにしたのだった。
そもそも今回の住民投票は何を問うているのか。「都構想」の是非ではなく、「特別区設置協定書」に対する賛否である。協定書の中身は「政令市である大阪市を廃止し、五つの特別区に分割する」というもの。協定書には「大阪都」という言葉は一切出てこない。
協定書は、すったもんだのあげく維新だけで作成され、昨年10月の府・市議会で否決された。しかし年末、公明が「住民投票には賛成」と方針を転換したことで復活。今年3月の府・市議会では協定書案が一転可決され、住民投票実施の流れが決まった。
会場で配布された資料は「特別区設置協定書について」という39ページの説明パンフレットとA3のわら半紙。後者は、協定書に対する賛否の意見を裏表にそれぞれまとめている。
午後2時、担当職員による説明が始まった。スクリーンにパンフレットの図表などが順次映しだされ、それを淡々と読み上げていく。30分ほどの説明が終わると、生野区長を従えて橋下市長が登場した。後ろにSP、舞台下の左右にも屈強そうなSPが目を光らせている。
橋下市長は「自民、公明、民主、共産の反対派議員に参加を求めましたが、断られました」などと挑発気味に前置き。そのうえで、「府市の二重行政をなくす」「5区に分割して区長を選挙で選び、地域の実情にあわせた住民サービスを行なう」などとスライドを使って説明していった。
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