この10月に新規上場を果たしたばかりの日本コンセプト株式会社は、液体貨物をグローバルに輸送する会社です。

液体の輸送手段といえば、思い浮かべがちなのはタンカー。船いっぱいに液体(原油)を満たして運ぶイメージです。しかし同社が提供しているのは、一般の貨物と同じようにコンテナに入れて運ぶ「タンクコンテナ」。これがグローバルな液体輸送の常識を大きく変えつつあるのだとか。

液体物流業界の今、そして日本コンセプトならではの強みについて、取締役 管理部長の仁科様にお話を伺いました。
2013年、「小さなグローバル企業」日本コンセプトのビジネスがさらに加速しそうである、その理由についてもお話頂きましたので、是非お楽しみに!

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい。

―― 御社はまさに先日(2012年10月4日)、大証ジャスダック市場へ上場されたばかりということで、個人投資家の皆様のご関心も高いものと存じます。
本日は、貴社のウェブサイトに掲載されている会社説明資料を参考に拝見しながら、色々とおうかがいできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは早速、御社の事業内容から…。資料のp.2を拝見しますと、「液体貨物を安全かつ効率的に運ぶことができるISOタンクコンテナ」を自社で保有し、輸送しておられるとありましたが、液体貨物とは具体的にはどのようなものですか?また、なぜISOタンクコンテナだと「安全かつ効率的に」運ぶことができるのですか?

仁科:
当社が扱う液体貨物の大半は化学品です。資料のp.4にも記載しておりますが、有機化学品や天然油、鉱油などが多く、危険物の輸送比率が高いのが当社の特長です。

図表:主な輸送品と取引先

会社説明資料 p.4より引用)

では、なぜ当社はこれらの液体貨物を「安全かつ効率的に」運べるのか。その秘訣は、ISOタンクコンテナ(以下、タンクコンテナ)にあります。
ISO(International Organization for Standardization)とは国際標準化機構のことであり、危険物を一般の貨物コンテナと同様に海陸一貫輸送するための様々な規格を定めております。この規格を充足していると認定されたものをISOタンクコンテナと言います。

こちらの写真でご覧いただけるように、タンクコンテナを利用すれば、液体貨物をこのタンクコンテナに入れたまま、移し替えなしで安全に目的地までドア・ツー・ドアで運べるのです。

ISOコンテナ

会社説明資料 p.2より引用)

―― トラックにも船にもそのまま載せられるのですね。

仁科:
はい。お客様の工場で液体貨物をこのタンクコンテナに荷受けした後は、トラックや鉄道で運び、港のコンテナヤードから船に乗せてコンテナ船で運搬し、目的地の港で降ろした後はまた鉄道やトラックに乗せて工場まで運ぶ…ということができるんです。

このように、いったんタンクコンテナに入れた貨物を移し替えることなく、輸送の手段を組み合わせながら目的地まで運ぶことを「複合一貫輸送」と呼んでおります。

複合一貫輸送

会社説明資料 p.3より引用)

当社はこの複合一貫輸送をタンクコンテナを用いてグローバルに行っています
日本発または日本向けの貨物だけでなく、海外から海外――たとえばシンガポールから欧州へといった液体貨物の輸送も低コストで提供できるグローバルネットワーク、それが当社の最大の強みなのです。

―― なぜ低コストなのですか?

仁科:
ワンウェイ、つまり片道運賃でこのサービスを提供することができているからです。

なぜ、当社が片道運賃でサービスをご提供できるのか。ここはとても大事なポイントですので、順を追ってご説明しますね。

たとえば、東京でタンクローリー車に液体貨物を載せて、大阪まで運んだとしましょう。
無事目的地に到着し、大阪で荷降ろししました。タンクローリー車はまた東京まで帰らなければなりません。では、
ここで質問です。この輸送、東京-大阪の片道運賃だけで提供できると思いますか?

―― うーん、無理です。復路(大阪-東京)の運賃も必要ですから、往復料金でないと。

仁科:
その通りです。タンクローリー車では片道運賃での輸送サービスは提供できないんですよ。

では、これがタンクコンテナだとどうなるか。
トラックに積んでいるタンクコンテナを大阪で下ろしたら、トラックは一般の貨物コンテナを載せて東京に戻って来ることができます。

―― 復路(大阪-東京)の運賃は、新しい荷物の荷主さんに払って頂くわけですね。

仁科:
そうです。それが片道運賃でサービスを提供できるという事なんです。

またタンクコンテナで輸送する場合には、コンテナ船や鉄道等から、より低コストで最適な長距離輸送手段を選択することができ、トラック輸送を極力短くすることで、輸送コストの極小化を図ることもできます。
さらに、タンクコンテナの積載量は、約20トンあり、ケミカル用のタンクローリーやドラム缶に比べて一度に大量に輸送できることから、この点からも単位当たりの輸送コストが低くなります。

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

―― でも、復路のお客様をどうやって見つけるのですか?

仁科:
グローバルネットワーク」が当社の強みだと申し上げた意味は、そこなんです。

当社は、例えばヨーロッパに行ったタンクコンテナの液体貨物を荷降ろしした後、最寄りの施設でタンクを洗浄します。そのタンクコンテナは、現地の化学品メーカーさん等から液体貨物を預かり、他国向け、例えばシンガポールへの輸送に使われます。

シンガポールでまたタンクコンテナを洗浄して、次は韓国に行き、韓国で洗浄した後、日本に持って来る――こういったことを流れのように連綿と続けていかなければ、片道運賃での輸送サービスはご提供できません。

そのために必要なのが、タンクコンテナが行く先々で「集荷ができる」グローバルネットワークです。

主な輸送品と取引先

会社説明資料 p.4より引用)

―― 集荷ができるグローバルネットワーク…。

仁科:
はい。このネットワークを構築できて初めて価格競争に参入できるんです。

船会社に運送会社など、国際貨物輸送業界には、資本力のある大企業は他にいくらでもあります。
それなのに、なぜ彼らが当社の事業領域に参入しないのか、それは「復路」の取引先を見つけられないから、現地発の液体貨物の集荷ができるネットワークを持っていないからなんです。

だから参入しない。
したいだけどできないと言ったほうが良いかもしれません。

―― 参入障壁は非常に高そうですね!

仁科:
そうです。それだけのグローバルネットワークを社長、副社長が今まで20年かけて構築してきているのが当社の強みなんです。

ニッチな産業ではありますが、お金があれば他業態から参入できるというものではありません。

―― なるほど…。ところで、需給バランスの関係で、タンクコンテナが不足するような場面もあるかと存じますが、そういった時はどうなさるのですか?

仁科:
幸いなことに、世界のどこかには必ず空のタンクコンテナはありますから(笑)。
ですから、どうしても調整がつかない時や緊急の場合には、タンクコンテナのある場所から移動(回送)して来ることになります。

ただし、収益性の観点からはそういった回送を最小限に抑えることが重要ですから、お客様ごとの輸出や輸入の状況を把握し、タンクコンテナの繰り回しを意識しながら仕事をお引き受けすることで、過不足が出ないように日々のオペレ-ションの中でコントロールしています。

高収益の秘訣は高水準のタンクコンテナ稼働率

(クリックして画像を拡大:会社説明資料 P16より引用)

―― その日々のオペレーションの結果が、この高水準のタンクコンテナ稼働率となっているのですね!

Q3: 事業環境とその対応は? また、それに対応する戦略は?

―― タンクコンテナでの輸送は非常に価格競争力があるということがわかりました。
今後の事業環境を考えた場合、やはりその点で有利であると言えるのでしょうか。

仁科:
経済合理性という意味でタンクコンテナへとシフトして行くのは自然の流れだと思いますし、実際、すでにそういった動きは起きています。
それに、運賃以外にもタンクコンテナが選ばれる「経済合理的な」理由が少なくとも2つはあるんですよ。

―― それは何ですか?

仁科:
ひとつは、貯蔵機能です。

ケミカルタンカー(化学品を運ぶ専用タンカー)と比較すると、その違いがよくわかるのですが、ケミカルタンカーの場合は、到着した港にストレージタンク(貯蔵のためのタンク)がなければなりません。
その点、タンクコンテナなら保管容器としても使えますので、港についたら貨物をそのまま置いてくることができます。

タンクコンテナの「貯蔵機能」

会社説明資料 P6より引用)

貯蔵機能は、特に新興国のようなインフラが整っていない国で力を発揮します。

日本は先進国ですから、港湾施設にしっかりしたインフラがありますが、新興国にストレージタンクを新たに設置する場合には大きな初期投資が必要ですし、設置後は固定費という費用負担が発生するというデメリットがあります。

ですが、新興国でも、港にコンテナ船を着けることはできるでしょう。
貯蔵用の専用タンクの設置が必ずしも十分でない港でも、タンクコンテナなら、そんな投資は必要ありません。液体貨物を輸入して、そのまま貯蔵ができる。だからこそ選ばれるというところもあるんです。

これって、固定電話と携帯電話の違いのようなものなんです。
中国では、携帯電話が爆発的に発展しましたよね。固定電話よりも先に。これは、携帯電話が大きなインフラ整備をしなくても使えるからなんです。
その意味では、ストレージタンク(貯蔵タンク)は、新興国においてはある意味固定電話のようなポジションに近づいてくるのではないかな、と、これは個人的な見解ですが、私自身はそう思っています。

―― それでは、もうひとつの「経済合理性」とは?

仁科:
小ロットでも運べる、ということですね。

たとえば、500トンのタンカーであったら、「2割だけ搭載して」運ぶなんてあり得ません。500トン運べるタンカーは、500トン運ばないと経済合理性に適わない訳です。

―― まさか他のものを混ぜる訳にはいきませんからね…。

仁科:
そうですね。でも、タンクコンテナならコンテナ自体の数を増減すればそこは融通がききます。500トンなら、タンクコンテナ25本あれば大丈夫です。
異質なものを混載する場合でも、タンクコンテナごとで分ければ取り扱うことができますからね。さらに言えば必要な量を必要なタイミングで輸送できるので、貯蔵機能と合わせることで在庫の効率的な管理が可能となります。
そういう意味でも利便性が高い。タンクコンテナは非常に競争力があるんです。

―― そういった競争力の高さを踏まえた上で、改めて、現在の事業環境をどのように見ておられますか?

仁科:
マクロな意味での事業環境に関して言えば、現在の経済情勢は易しいものではないですね。
これだけの水準の円高が続いていることは、日本の輸出企業にとってみれば大変厳しい。私どもは、(輸出企業の)成果物を運ぶ業種ですから、輸出企業さんがパッとしなければ日本発の貨物は厳しいわけです。

ですから、そこは新しいお客様を増やしていく、具体的にはアメリカなどの海外で新たな貨物を取っていかなければならないと理解しています。

―― つまり、日本発でない貨物を。

仁科:
はい。グローバルで見れば、日本で作らなくとも、アジアのどこかでは作っています。
たとえばマレーシアやタイ、ベトナム、あるいは韓国で作った物が中国に運ばれたり、シンガポールに運ばれたり、あるいは欧州に運ばれたり。
そういった物流はすでにどんどん取り込んでいますし、今後は米国を含む物流にも本格的に参入し、ビジネスを展開していきます。

当社は、規模は小さくともグローバル企業ですし、今後はますますグローバルになっていく。当然の結果ですよね。

―― それが事業環境への対応にもなっているという事ですね。

Q4: 今後の成長戦略は?

―― 今お話いただいた「米国を含む物流」は今後成長戦略の要になるのではと思いますので、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?

仁科:
おっしゃる通り、輸出入のバランスが取れた米国マーケットの開拓は、今、当社として一番の要として取り組んでいる成長戦略です。
今年2月に米国に現地法人を設立し、9月に米国に着いたタンクをアメリカからの輸出に使う、そういった認可を取得しましたので、現在、お客様の開拓を積極的に進めているところです。

アメリカは、世界で一番大きなマーケットの一つです。
さらにご承知の通り、米国では「シェールガス革命」によるシェールガスの増産に伴って、天然ガスの価格が、ピーク時の2~3割の水準で推移しています。これを受けて、天然ガスを原料とするエチレンやこれを原料とする誘導品の製造プラントの建設が急速に進んでおります。
今後、北米からの化学品の輸送量が飛躍的に増大することが見込まれていますので、当社にとって米国が大きなビジネスチャンスのあるマーケットであることは間違いありません。

このような中で、ヒューストンを中心とした化学品のその一大製造拠点を起点とした「米国発の輸送」のビジネスを取り込んでいくことで、受注を格段に増やして行くことができると見ています。

これまで培ってきた日本を含むアジア、そして欧州を結ぶネットワークに米国を加えわることで、当社のグローバルネットワークはさらに強固なものになります。

(クリックして画像を拡大:会社説明資料 P20,21より引用)

―― これまではなぜアメリカ向けを拡げて来なかったのですか?

仁科:
対象エリアの拡大には、経営体力が必要です。

先ほどお話しましたように、お客様の輸送ニーズにタイムリーに答えていくには、私どもがオペレーションしている地域に一定数のタンクコンテナの在庫を常においておく必要があります。逆に言うと、しっかりと現地発の受注をとれなければ、寝かしているタンクコンテナが増えるだけで、採算が低下してしまいます。

収益性を重視するとの経営判断のもとで、当社は一度米国マーケットからは撤退し、アジアとヨーロッパに集中して営業を強化してきたという経緯があります。

ですが、ここに来てタンクコンテナの数も相当増えてきましたし、営業力や財務体力も大きく向上してきましたので、シェール革命で飛躍的なマーケット拡大が見込まれるこのタイミングに満を持して再参入し、米国市場を再度開拓して行こうというのが現在の状況です。

―― 既存のお客様に提供できるサービスの幅も広がりますね。

仁科:
その通りです。これまでは米国向けのお話をいただいても、経営戦略の結果として往復の高い運賃しかご提示できず心苦しかったのですが、今は積極的にお話を伺い、ビジネスを進めている状況です。

もちろん、片道運賃をご提供するためには「米国発」の輸送を安定して確保する必要がありますので、先ほどお話しした通り現地法人を設立してそこの開拓にも力を入れております。

―― わかりました。それでは、国内での成長戦略についてもおうかがいできますか?

仁科:
はい。国内においても、今までの輸送手段が別の手段に変わって行く――先ほどご説明した「タンクローリーからタンクコンテナへ」あるいは「ケミカルタンカーからタンクコンテナへ」といった時代の流れは当然起きております。

タンクコンテナのニーズは、液体貨物の物量の増減に正比例する訳ではなく、それを大きく上回って拡大をしていく力があると思っておりますので、それを、国内においても取り込んでいくのが、当社の成長戦略のもうひとつの柱ですね。

成長戦略「液体流通革命の推進による、国内事業の拡大」

(クリックして画像を拡大:会社説明資料 P23より引用)

―― 具体的な取り組みとしては?

仁科:
国内でワンウェイ(片道運賃)での輸送サービスを提供し、高い競争力と採算性を確保するためには、化学品メーカーさんが集積している地域に自社で洗浄と保管の拠点を持っているかどうかが重要です。

当社ではこのような拠点として京浜(川崎)、神戸、徳山、新潟の4か所に支店を設置しておりますが、さらに来年早々には5か所目となる中部支店(四日市)が稼働する予定です。これにより今まで以上にワンウェイ輸送サービス網が充実します。
また中部支店の開設により、中部地域のお客様に貯蔵や(融点の高い液体貨物の)加温や(タンクローリー、ドラム缶への)積み替え等の付帯サービスを提供できるようになり、同地域だけでなく、国内での競争力が一層強化・充実されます。

Q5: 個人向けIRの方針および個人投資家へのメッセージをお話し下さい。

―― 色々お伺いしてまいりましたが、それでは最後に個人投資家の皆さんへメッセージをお願いいたします。

仁科:
当社は、日本におけるISOタンクコンテナを利用した液体貨物の物流のパイオニアとして、世界の商社・化学品メーカーをはじめとする沢山のお取引先と、長期・安定的な関係を構築しております。タンクコンテナは、経済合理性の面でも、環境配慮の面からも今後ますますニーズが高まる輸送容器です。
私たちはこのたびの株式上場を機に、さらなる成長を目指し、ISOタンクコンテナを利用した、より効率的な国際液体物流システムを構築・運営し、公共性・信頼性・国際性を備えた社会に誇り得る会社を目指してまいります。

当社の事業内容やビジネスモデルをより多くの方にご理解いただけるよう、今後は一層IRにも力を入れてまいる所存ですので、皆様におかれましては当社の今後にご期待をいただき、株主として当社の成長にご参加いただけましたら幸いに存じます。

―― 本日は、ありがとうございました!