きょうの健康 メディカルジャーナル「子どもの投球障害を防げ」 2015.04.27


「きょうの健康」です。
今回は最新の医療情報をお送りする「メディカルジャーナル」です。
テーマは「子どもの投球障害を防げ」です。
投球障害といいますのは野球などで投げる動作によって引き起こされる障害の事です。
実は今年度から全国の中学生の硬式野球チームをまとめる日本中学硬式野球協議会が中学生投手の投球制限に関する統一ガイドラインを導入しまして子どもの投球障害を防ぐ取り組みを本格的に始めました。
今日は成長期の子どもに起こりやすい投球障害について詳しくお伝えします。
お話し頂きますのは…専門は成長期のひじの投球障害です。
松浦さんの所属する徳島大学整形外科は35年前から継続して子どもの投球障害についての研究と取り組みをしていらっしゃいます。
よろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
本当に長く取り組んでこられた訳ですけれどもそもそものきっかけはどういう事だったんでしょうか?取り組みを始めました頃というのは徳島ではやまびこ打線で有名になりました池田高校…。
蔦監督の。
そうです。
…が全盛期で非常に野球が盛んだった訳なんです。
ところが一方で子どもの投球障害というのが非常に多く発生しておりましてこれが問題で取り組みを始めるようになりました。
今回ガイドラインが導入された訳ですが内容を紹介して頂けますか?大きく分けますと3つございます。
まず最初が試合での投球回数の制限です。
2つ目が…最後が…この内容に関しましては複数投手を育成するという事が挙げられてます。
こういった統一ガイドラインが設けられるようになったというふうな事は非常に画期的な事だと思います。
どうしてこのガイドライン設けられるようになったんでしょうか?はい。
じゃあこちらの方ちょっとご覧下さい。
実は中学生小学生の投球障害というのは非常に多く発生してるんです。
これは京都の中学生を対象にした最新の調査結果なんですがひじの痛みが57%。
多いですね。
そうなんです。
また肩の痛みも36%見られているという事です。
また小学生に関しましては私ども徳島県での最新のデータなんですけれどもひじの痛みが29%肩の痛みも16%見られているというふうな事で実はこういった痛みの頻度に関しましては取り組みを始めました35年前からずっとほぼ同じような状態が続いているというふうな事があってこれが非常に問題でこうした問題をどうにかできないかという事で先ほどのようなガイドラインが設けられた訳なんです。
今日はひじについてお話をして頂く訳なんですがどうしてひじの痛みを感じてしまう抱えてしまうんでしょうか?これはまず一つは成長期特有の問題というのがございます。
特に11歳から13歳ぐらいに見られるような骨の特徴というようなのがある訳なんです。
これX線画像なんですけれども片方が成長期の子どもの骨もう片方が大人の骨になるんですけれどもどちらが成長期の子どもの骨というふうに思われますか?右の方が割とくっきり白いですよね。
ですから大人で左の方は何か軟らかそうですから子どもでしょうか。
そのとおりです。
子どもの骨は大人の骨に比べると全体的に丸く軟らかい感じで中に骨の隙間みたいなものが見られてると思うんですね。
そこが大きな特徴というふうにいえますね。
この隙間の所っていうのは実は何もないように見えるんですけれども…。
つながってない。
…ように見えますよね。
でも実はここの所はこれから骨になろうとする軟骨があってそこの所これ出されてますけど骨端線っていうふうに読むんです。
ここはX線では白く写らないんです。
それが徐々にその軟骨部分が骨に置き換わっていってそして右のような大人の骨になってくる訳なんです。
子どもの場合にはこういう骨端線がある場合には骨端線だとかあるいは骨端線のちょっと端にある骨端部っていうんですけれどもこういった所に障害が生じていきやすいとそういうふうな特徴がございます。
まず子どもの骨の特徴という事ですね。
そうですね。
まだほかにも理由がありそうですね。
もう一つの大きな原因は投げ過ぎ投球過多というふうな事が挙げられる訳なんです。
今お話ししましたような骨の特徴がある所に投球というのはちょっと普通の生活ではないような大きなストレスこれがかかってくるんですけれどもこれが多すぎると子ども特有の障害というふうなものが生じてきます。
大リーグのダルビッシュ投手ね手術しましたけど大人の場合ってどうなんでしょうか?大人の場合は骨がしっかり強くなってきますので骨の方の障害というのは少なくなってきまして代わりにじん帯だとか腱だとかっていう軟らかい組織ですねそちらの方が損傷されやすいというふうな特徴がある訳なんです。
具体的に障害について教えて頂けますでしょうか?ひじの障害には2つございます。
1つが内側上顆障害というふうな障害なんですけれどもこちらご覧下さい。
左が正常の骨で右側が障害を持ったX線画像なんですけれども正常の方に比べますと下の所が少し剥がれたような感じに見えてると思うんですけれどもこういったのが見られるんです。
これは投球動作っていうのはこういうふうな感じで投げますよね。
それで手のひらを上の方にして小指側の方ここのちょっと出っ張った所ありますよね。
ちょっとこりこりしてますか?そうです。
ここが内側上顆っていう所なんですがこれが投げるこの投球動作でこういう方向に引っ張られるんですね。
それによって生じるのがこういう内側上顆障害っていう…。
剥がれちゃう?そうなんです。
そういうのが内側上顆障害です。
もう一つが離断性骨軟骨炎といわれるものでこれもこちらちょっとご覧下さい。
これが正常ですか?右の方は少ししまのような感じでこれも少し剥がれたような感じに見られてると思うんですね。
浮いてる感じですね。
そうですね。
これが離断性骨軟骨炎というもので先ほどと同じようにちょっと手のひらを上の方にしますと親指側の方。
今度は親指側ですね。
外側。
そこの所に少しへこんだ所があると思うんです。
ちょっと向きを変えますとこういう所なんですけど。
ここの所に生じるのがこの離断性骨軟骨炎というやつでそれでこれは投球動作でこう投げますとこの先ほどの少しへこんだ所ありますよねここの所の骨と骨が衝突する事によってこういうふうな障害が生じるというふうにいわれてます。
ただ障害の頻度自体は先ほどの内側上顆障害に比べるとこの離断性骨軟骨炎は少し頻度的には少ないというふうな事がいわれてます。
こういうふうになった場合ですねどうしたらいいんでしょうか?これはやっぱりしっかりと治療する事が大事ですね。
治療しないとまず痛みが続いて野球ができなくなるというふうな事がございます。
野球ができなくなるだけじゃなくて日常生活にも支障が出てくるんです。
関節の動きが制限される。
例えば顔を洗う時に右の方のひじがうまく動かないと片方の反対の左手の方だけで顔を洗うとかというふうな事が起こってきたりだとかあるいは物を持つ時に伸びないもんですからなかなか物が持ちにくい。
こういう障害が出てくる訳です。
それ困っちゃいますよね。
その治療ですけど治療法はどういうものがあるんでしょう?治療に関しましてはここにありますように保存療法というふうなもの。
これは投球を一定期間禁止あるいは制限するというものなんですがこれが第一選択になってきます。
先ほどお話ししました内側上顆障害というふうなもの。
これに関してはこの保存療法でほぼ完治致します。
痛みがある期間大体3週間から4週間ぐらいが多いんですがこの痛みのある期間投球を禁止します。
そして完全復帰投球できるようになるのに大体2か月から3か月かかるというふうなところで。
痛みが少しなくなればそうすると少し投げても大丈夫なんですか?キャッチボール辺りから始めて大丈夫です。
なるほど。
もう一つは離断性骨軟骨炎というのがあるんですけれども。
これですね。
離断性骨軟骨炎の場合には先ほどの内側上顆障害とちょっと治療法が変わってくるんです。
内側上顆障害の場合はX線で治りきらなくても投球開始するんですけれどもこの離断性骨軟骨炎の場合はX線できちんと治る事が確認できるまで保存療法をする。
それも病気によって変わってきまして例えば初期だとか進行期だとかというふうな場合にはそういう保存療法をする。
ただ保存療法の期間は1年ほどというふうな事で…。
長いですよね。
かなり長いですよね。
これは長いだけじゃなくてその内容もかなり厳しくて例えば重たい物を持つだとかそういった事も制限。
もちろん投げる打つも制限するんですけれども極端に言えばはしとペンだけしか持てない。
というふうな事でかなり厳しい。
そうですね。
といいますのもこれが進行しますとかなり支障が日常生活にも出てくるというふうな事で進めば非常に重篤な疾患ですので厳重な保存療法が必要になってくる訳なんです。
先ほどのを見ると初期進行手術という事もあるんですね。
残念ながら治りきらない場合には終末期というような状態になるんですけれどもその場合には剥がれてしまった骨軟骨を除去するとそういうふうな手術を行います。
術後大体投球復帰できるのが3か月から6か月といったようなところになります。
それにしても本当におはしとペン鉛筆しか持てないって日常生活にもそんなに深刻に影響するんですね。
そうですね。
ですからこうした障害っていうのは本来指導者保護者といった大人たちが十分にチェック管理してそういう事が起こらないようにするというふうな事と先ほどお話ししましたような子どもの体の特徴といったものを理解して頂きたい訳なんですがそれが十分浸透していないというのが現状でそういったところが問題なんじゃないかなというふうな事が言えると思います。
障害がやはりこういうふうに進行してきますとこれはもう野球だけじゃなくて日常生活にも支障が出てくる。
逆に言えば初期の段階では非常に治りがいい訳なんですよ。
ですからできるだけ初期の段階で障害を発見するという事が必要となってくるというふうに思います。
では早く見つける方法というのはあるんでしょうか?そうですね私ども徳島でやってる一年に1回の野球検診ですねそれによって早期発見する事が可能です。
特に先ほどお話ししました重篤な離断性骨軟骨炎に関しては最近ではかなりよく発見できるようになってきております。
どんな事を検診ではするんですか?左に見られてますようにひじの動きをチェックしたりだとかあるいは右の方のような超音波検査で骨とか軟骨の状態をチェックする。
こういうふうな事を行っております。
今は大体毎年1,500名程度の人たちが受診してくれててそのうちの20%約2割が障害があるというふうな事が分かってきています。
結構多いですよね。
多いですね。
これは全国的に同じような傾向で今は徐々に全国各地でこういうふうな検診活動が行われるようになってきています。
なるほど。
家庭で何か簡単にできる方法というのはどうなんでしょうか?例えばちょっと示しますけれどもひじを少し伸ばしてそれで肩の高さぐらいまで持ってくるんです。
今これだったら僕左右差ほとんどないと思うんですけど例えば右の方のひじが悪くなってくると極端に言えばちょっとこういうふうな感じで伸びなくて手の高さがちょっと高くなるんですね。
こういうふうな事があるかとかそれだとかあるいは動きがスムーズじゃないかとかこういう事をチェックする事で早期発見は可能になってきます。
なるほど。
写真でいうとこういうような形でという事?まさにこういう感じですね。
いずれにしても早期発見が大事だという事になってきますね。
そうですね。
こういうふうな障害の早期発見それと先に述べましたようなガイドラインによる投球制限こういったふうな2つの両輪これを実施していく事によって私たち大人が子どもの障害を防ぐようにしていかなければいけないというふうに思います。
本当に好きな野球をずっと続けていってほしいですもんね。
早期発見そしてガイドラインに沿ってという事ですよね。
どうもありがとうございました。
今日は「メディカルジャーナル」お伝えしました。
2015/04/27(月) 13:35〜13:50
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 メディカルジャーナル「子どもの投球障害を防げ」[解][字]

子どもの投球障害を防ぐため日本中学硬式野球協議会は今年度から試合と練習での投球数を制限するガイドラインを導入した。成長期の子どもの投球障害に対する解説策を示す。

詳細情報
番組内容
今回のテーマは野球などの投げる動作によって成長期の子どもに起きる「投球障害」。ひじや肩の痛みを放置したまま投球を続けると、関節の動きが制限され、日常生活に支障が出ることもある。子どもの投球障害を防ぐため、日本中学硬式野球協議会は、今年度から試合と練習での投球数を制限するガイドラインを導入した。これまで大人が十分な対策を取ってこなかった成長期の子どもの投球障害に対する解説策を示す。
出演者
【講師】徳島大学准教授…松浦哲也,【キャスター】桜井洋子

ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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日本語(解説)
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