おとり捜査官 北見志穂 2015.04.27


(袴田俊郎)事件は解決本部は解散。
この一服はたまらねぇよな。
(北見志穂)あっ!もう少しは手伝ってくださいよ。
(三上勉)どうぞ。
あっすみません。
(井原主任)北見。
あっ袴田さんも。
今度うちのチームに入った三上だ。
中央署から転属してきた三上勉です。
勉は勉強の勉。
よろしくお願いします。
北見です。
よろしく。
あれが刑事か。
世も末だな。
刑事にしとくのには惜しいイケメンじゃないですか。
それに若いけどやり手って評判ですよ。
あのピカピカの靴がか?あんなのはデカの靴じゃねぇ。
デカの力量なんてのはな靴を見りゃ一目瞭然だ!やだやだ…アラ探しの意地悪おつぼね様じゃないですか。
年取った証拠ですよそういうの。
バカ!年なんか関係あるか。
ほら!アイタッ!アイタッ…!ふっ!
(車のクラクション)
(車のクラクション)
(無線)はい北見。
「井原だ。
緊急連絡」袴田さん緊急です!
(井原)「事件発生だ。
今から5分前午前10時0分」ニューコスモス観光本社に悪魔祓い師を名乗る…。
「犯人からバスに爆発物を仕掛けたと電話があった」当該観光バスは現在湾岸道路を…。
「東へ向かって走行中。
付近のパトカーに先導を要請した」「犯人はバスを午前10時30分までに明治中央大学病院の駐車場に向かわせることを要求」「もし途中でバスを停車させた時はただちに爆破すると通告」「バスには21名の観光客に運転手バスガイドの計23名が乗車」
(パトカーのサイレン)落ち着いてください。
(井原)「いたずらの可能性もあるが…」事実なら大惨事になりかねない。
「現段階では犯人の要求を受け入れることにする。
以上」あっあれだ!こちら北見。
前方に当該観光バス発見。
(井原)「了解」・
(パトカーのサイレン)
(救急車のサイレン)よし乗客を降ろせ。
(一同)はい。
大丈夫ですか!気をつけてください。
(工藤刑事)気をつけてください。
完了しました。
お願いします。
やれやれ…結局いたずらですか。

(爆発音)あっ人が…。

(井原)爆発炎上した車の中にいた女性は即死状態だった。
被害者の身元は黒柳美咲33歳。
内科医として小笠原記念病院に勤務。
炎上した車はガイシャ所有のものでガイシャは1か月前まで今回の爆発の現場となった明治中央大学病院に内科医として勤務している。
鑑識の調べでは爆破の火薬は花火から抽出したものと思われ簡単な時限起爆装置もついていた。
爆破装置の作り方は今やインターネットなどで簡単に入手できる時代だ。
バスを誘導した者と車を爆破した者が同一人物だとすればなぜ爆発現場までバスを誘導したのか。
さらに1か月前退職した黒柳美咲がなぜあの場にいたのか。
初動捜査の報告では現場付近での彼女の目撃情報は得られていない。
自殺とは考えられないでしょうか?自らニューコスモス観光にバス爆破予告の電話をかけ世間の注目を集める中で派手に自殺をした。
つまり近頃はやりの劇場型というやつです。
ふう〜。
北見。
自殺説にはプロファイリングの見地から疑問があります。
おっとこっちはプロファイリングときた。
犯人は悪魔祓い師と名乗っています。
それなのに自殺するということは自分を悪魔と思ってることになりませんか?自分で自分を祓うなんて矛盾してます。
自分の自殺説はあくまで推測ですから。
その悪魔祓い師だがマスコミには決してもらさぬように。
各班被害者の勤務先爆薬の購入ルートそれと現場周辺の聞き込みを徹底してくれ。
以上!
(一同)はい。

(小笠原俊彦)院長の小笠原です。
北見です。
袴田です。
どうぞ。
お忙しいところを申し訳ありません。
亡くなった黒柳美咲さんはこちらの病院に勤務なさっていたんですね?はい。
1か月前から来ていただくことになりまして…。
まだ彼女の死が信じられません。
実は美咲先生とは大学の先輩後輩でしてその縁でうちの病院に来てくれるよう僕がお願いしたんです。
大学というと?明治中央大学の医学部です。
美咲先生は優秀な内科医で僕の研修医時代には指導していただいたこともあるんです。
ご遺族の方は?彼女は独身でしたしご両親は相次いで10年前に亡くされてご兄弟もいません。
ご親戚は遠方ですしお葬式その他はうちのほうで執り行おうと思っています。
あのこれは定番でお訊きするんですが誰かに恨まれてたようなことは?美咲先生がですか?彼女に限ってありません。
(大野みどり)美人だし診察も丁寧だったし将来は院長夫人になるんじゃないかってみんな噂しちゃって。
(林康恵)みどりさん。
若い院長といい仲だったのか?違いますよ。
面白半分の噂。
第一美咲先生は院長先生よりも6つも年上なんですよ。
大体一流の大学病院の先生がうちみたいな町の病院に移ってくるなんてワケありに決まってるじゃないですか。
ワケありねぇ…。
焼いてるんですよ。
康恵さん院長先生のファンだから。
でも院長先生が美咲先生にあこがれてたことは確かよね。
あの…こんなこと言っていいかどうか…。
一昨日の晩…。
一昨日…。
事件のあった前の晩ですね?はい。
見たんですよ私。

(みどり)何か思いつめたような感じで…。
自殺の線もありってことかしら?院長の母親にも話聞いてみるか。
薬局のほうの責任者だそうだしな。
すいません警察のもんですが院長先生のお母様…。
あっちょっとお話を伺いたいんですが…。
小笠原弥生でございます。
どうぞこちらに。
はあ…美咲先生は明るくお元気な方でしたから自殺だなんてそんな…。
まあ最もうちの病院に来ていただいてからも日が浅いんですけどね。
大学病院を辞められたのには何か理由があったんでしょうか?ああ…不倫の噂を立てられたんだそうです。
それで居づらくなって…。
見かねてうちの俊彦がこの病院にお誘いしたんです。
不倫の噂…。
美咲先生根も葉もないことだって怒ってらっしゃいましたわ。
亡くなった美咲先生の名誉を傷つけたくないから俊彦も刑事さん達にお話ししなかったんだと思います。
恐れ入ります。
あの当院は全館禁煙になっておりまして。
ああどうもすいません。
(電話)はい。
えっ大先生が発作を?わかりました。
すぐに行きます。
ああ申し訳ございません。
主人の容体が悪いようなのでこれで失礼いたします。
じゃあどうもありがとうございました。
ありがとうございました。
不倫の噂はあったようだがどうもやっかみ半分の噂のようだな。
身に覚えのない噂が元で辞めることになったとしたら黒柳美咲はこの明治中央大学病院を恨んでたかもしれませんね。
だから腹いせに派手に自爆してみせたっていうのか?えっ?おいおい…。
お前さんまで三上の意見に同調するつもりかよ。
そういうことじゃなくて気になるんですよね。
何で爆発場所がこの大学病院なのかって。
それに同一犯だとすればなぜ観光バスを巻き込んで事件を大げさにしたのか。
単に注目を集めたいためとは別に何らかのメッセージなのか…。
ほら始まった。
お前さんのプロファイリングごっこに付き合ってる暇はねぇんだ。
ほら行くぞ!あっお疲れさまです。
(井原)袴田さんちょっと気になることがあるんですが。
ガイシャの亡くなった父親かつてニューコスモス観光の社員だったそうなんです。
ニューコスモス観光の?ニューコスモス観光…。
自分が聞き込んできたんです。
定年前に他社に引き抜かれたこともあってニューコスモス観光ではすぐに気づかなかったと。
(工藤)主任。
ああ。
詳しい解剖結果が出ました。
遺体から大量の睡眠薬が検出されてる。
爆死から逆算して睡眠薬を飲んだのは3時間前。
睡眠薬か。
となるとやはり覚悟の自殺と見て間違いないですね。
それはどうかしら。
悪魔祓い師を名乗る犯人から爆破予告が入ったのは午前10時ちょうど。
その30分後の10時半黒柳美咲の車は爆発炎上し彼女も爆死しています。
爆死した10時半から逆算して睡眠薬を飲んだのは7時半前後。
当然爆破予告の入った10時には睡眠薬が効いて眠っていたはずです。
爆破予告の電話がかけられるはずがありません。
つまり何者かが黒柳美咲を睡眠薬で眠らせたうえ車内に爆発物を仕掛け爆発時刻を設定して立ち去った。
そしてその同一人物かあるいは共犯関係にある者がまあこれは断定できないが悪魔祓い師を名乗り爆破予告の電話をかけた。
はい。
なるほど。
さすが明解ですね。
自殺説は撤回します。
ふんっ!何か?いや外回りの靴には見えねぇからさ。
ああ。
ヨレヨレの服にホコリまみれのチビた靴。
いかにも刑事ですってあれ僕嫌なんですよね。
悪かったな。
ヨレヨレで。
とにかく他殺と見て間違いないだろう。
ガイシャの父親がニューコスモス観光の社員だったというのも偶然とは考えにくい。
ガイシャ本人だけでなく父親絡みの怨恨も視野に入れるべきだな。
(一同)はい。
(電話)
(ボイスチェンジャーの声)「こちらは悪魔祓い師」「東都銀行西新宿支店に爆発物を仕掛けた」慌てなくていいですからね。
慌てなくていいですからね。
どんどん誘導してあげて。
ゆっくり。
どうぞ。
店内の客行員上階のテナントの従業員もすべて避難しました。
ビルの中には誰もいません。
よし。
爆発物処理班に入ってもらおう。
処理班お願いします。
了解。
じゃあお願いします。
東都銀行西新宿支店に人を集めておいて犯行はどこか近くで行うつもりかもしれません。
前回のようにか?犯人にとって脅迫先は何らかのメッセージであって会社そのものに被害を与える気はないとしたら…。
今度は親父が東都銀行に勤めてる娘が殺られるとでもいうのかい?冗談じゃねぇぜ。

(爆発音)爆発したのは数日前から住人のいないホームレスのテントです。
無人のはずだったんですが…。
被害者は長瀬薫32歳。
昨年離婚して実家に戻っており父親の定年も近いこともあって就職先を探している矢先だったと。
主任被害者のご両親が見えました。
(長瀬陽子)こんなことになるなんて…。
(長瀬信二)あの子は…薫は私達のたった1人のたった1人の…。
こんな状況でご無理をお願いしますがどうか犯人を逮捕するためにもご協力ください。
まずお父様の長瀬さんのお仕事ですが。
東都銀行に勤務しております。
西新宿支店ですか?いえ。
今は本店のほうに。
30年ほど前西新宿支店に勤務だったことはありますが。
そうちょうど…薫が生まれた頃です。
黒柳美咲という名にお心当たりはありますか?いいえ。
私も存じません。
先日車の爆発で亡くなった方です。
明治中央大学病院の駐車場で。
ああその記事は読みました。
私もあの大学のOBなもので。
明治中央大学のご出身なんですか?はい。
医学部ではありませんがその縁で付属病院で薫を出産したんです。
その明治中央大学病院で何か思い当たることはありませんか?さあ…。
薫の出産の時にお世話になっただけですから…。
奥さんはいかがです?
(井原)新宿中央公園で爆死した長瀬薫の遺体からも睡眠薬が検出された。
殺害方法は黒柳美咲のケースとまったく同じだ。
使用された火薬も時限装置も同一。
悪魔祓い師と名乗っているところから同一犯による連続殺人事件と断定される。
父親の勤務していた会社に爆破予告の電話をかけ注目が集まったところでその近くで娘を爆死させる。
未だかつてない犯罪の手口だ。
悪魔祓い師と名乗った電話の性別年齢は特定できたんでしょうか?なにぶん変声器を通して声を変えている。
犯行の手口は同一だが2つのケースは接点がない。
黒柳家長瀬家にはもちろん接点がなくニューコスモス観光と東都銀行には取引関係がなかった。
三上。
東都銀行西新宿支店の行員の話だと数日前第2被害者の父親長瀬信二の現在の勤務先を尋ねた男がいたそうです。
顔は覚えてないんですが40歳から50歳ぐらいの男。
これはどう見ても父親に恨みを持つ奴の犯行ですよ。
本人を殺すよりも娘を殺して苦しめたほうが効果的な復讐になりますからね。
何だともう一度言ってみろ!ですから本人を殺すよりも娘を殺して苦しめたほうがより効果的な復讐になると…。
父親のせいで娘が殺されたっていうのか袴田さん!三上の説には穴があるな。
黒柳美咲の父親はすでに亡くなっている。
苦しめるも何も意味がないだろう。
いやしかし犯人は死んだことを知らないのかもしれません。
俺が言いたいのはな父親への復讐とか何とかより2人の被害者の間にまだ俺達の知らない関係があるかもしれねぇだろってことだよ。
被害者同士の接点はもちろんあらゆる可能性を考慮して捜査を進める。
以上だ。
(一同)はい。
(井原)袴田さん。
わかってるよ。
私情を差し挟むなってんだろ。
わかってるよ。
ふん…大人げないとこ見せちまったな。

(三上)そうですか。
袴田さんにそんなことが…。
殺された娘さん刑事なのに助けてやることができなかったって今でも自分を責めてるの。
離婚して娘さんとは別れて暮らしてたから。
だから余計にこたえてるのかもしれない。
じゃあ私はこれで。
もう帰っちゃうんですか?北見さんと僕ならいい相棒になれる気がするんですけどね。
あいにくだけど私にはこれ以上ないって相棒がいるの。
じゃあ。
昨夜はこじゃれたバーでこじゃれた男と楽しく1杯やってたそうじゃねぇか。
ええ。
大方俺の悪口で盛り上がってたんだろう。
まあそっちが望むならいつだってコンビ解消してやるぜ?そんな気もないくせに。
ああ?・
(救急車のサイレン)VTを起こして血圧現在50です。
小笠原さん!お忙しいところをすいません。
実はまた同じような事件があって…。
申し訳ありません。
父が発作を起こしたので大学病院のほうへ運ぶところなんです。
落ち着いたらこちらから連絡しますので。
(弥生)あなた!あなた!あなたしっかりしてください。
あなたあなた!
(救急車のサイレン)どこがお悪いんですか?院長のお父様。
心臓がちょっと…。
半年前に心筋梗塞で倒れられてそれで院長の職を息子の俊彦さんに譲られてここの病室で療養されてたんですが…。
今朝新聞を読んでいたら発作を起こされて明治中央大学病院に入院することになりました。
先代の院長も同じ大学の医学部出身ですし。
明治中央大学病院ね。
第2被害者の父親長瀬信二が30年ほど前東都銀行西新宿支店で担当だった建築会社の元社長っていうのが浮かんだんです。
名前は寺本秋雄。
当時28歳。
会社の負債を残して急死した父の跡を継いだんですが銀行の担当だった長瀬信二に追加融資を断られ会社は倒産。
寺本は夜逃げして現在は行方不明です。
当時28歳っていうと…。
現在58歳。
爆破予告があった数日前東都銀行西新宿支店に長瀬信二のことを訊きに来た男とほぼ年齢は一致するんですよ。
この寺本秋雄ニューコスモス観光とも接点があるんですよ。
当時寺本の会社の社員旅行はいつもニューコスモス観光が手配していたそうなんです。
ふーん。
第1の被害者黒柳美咲の父親がニューコスモス観光の担当者だったのか?いやそこまではまだ。
なにぶん父親は10年前に亡くなってますから。
間違いないですよ。
寺本の会社は土木建設がメーンで発破はお手のもの火薬にも慣れてます。
2つの事件には犯人の何らかのメッセージが込められている。
私はそう思うんですけど…。
だからこれがメッセージなんですよ。
復讐報復という。
でもなぜ今になって…30年も経ってるんですよ。
報復だとしたら何で今まで何も行動を起こさなかったのかしら?たまりにたまった復讐の怨念が爆発したんです。
とにかくこの寺本秋雄の行方をつかむことが先決だ。
そうですね。
はい。
主任。
うん。
どうもすっきりしすぎてねぇか?このヤマはそう単純じゃねぇ。
俺はな…。
えっ?父親のせいで娘が殺されたってことを認めたくないわけじゃないんだ。
それより被害者同士の接点がカギなんじゃねぇかって。
まあ刑事の勘だな。
私も犯人の動機には被害者の父親の仕事は関係ないと思います。
現実に会社には被害はないわけですから…。
(携帯電話)ただ犯人からのメッセージが誰に向けてのメッセージなのか…。
(携帯電話)はい。
おおお前か。
ああ。
俺の情報屋だ。
第2の被害者長瀬薫のことを探っていた探偵がここにいるそうだ。

(水を流す音)荒木さんだね?
(荒木昇)いやぁそうですけどあなた達は?警察のもんだ。
ちょっと話を聞かせてもらおうと思ってね。
あんた長瀬薫って女性を探ってたそうだね?
(荒木)長瀬ですか?いや知りませんね。
新宿中央公園で爆死した女性だ。
いや知りませんよ。
知らないもんは知らないんですからもう帰ってくれますか。
あの様子じゃ当たりだな。
東都銀行西新宿支店に探りを入れていた男っつうのは奴かもしれねぇ。
渡辺由美パシフィック航空のパイロット。
何だ?そりゃ。
デスクにあった書類に書いてあったんです。
ああ慌てて片づけたあれか。
パシフィック航空に女性のパイロットはまだいません。
まさか…。
今度は父親がパシフィック航空でパイロットをしている渡辺由美という女性を探ってるんでしょうか?おとなしく吐くタマとも思えねぇしな。
よし。
探ってみるか。
拝み倒してやっと出してもらったリストだが結構な数だな。
渡辺って名前のパイロット。
渡辺っていう姓は珍しくないですもんね。
ああ。
よし手分けして当たろう。
はい多いほうあげる。
車使っていいよ。
あっ。
じゃあな。
(渡辺聖子)確かに主人…あっごめんなさいね。
ちょっと風邪引いちゃいましてねぇ。
確かに主人はパシフィック航空のパイロットですけれどもそれが何か?あのお宅に由美っていう名前の娘さんいらっしゃいませんか?うちには子供はおりませんけれども…。
そうですか…。
まさかあなた主人が浮気をして私の知らない娘がいるなんて疑ってらっしゃるの?いえそういうわけじゃ…。
信じらんないわ。
だって主人はまじめだけが取りえの人なのよ。
あっでもそういう人に限って陰では大胆になるって言うわよねぇ?どっどうしよう〜!
(携帯電話)はい北見です。
父の容体が落ち着いたので北見さんのご都合がよろしければこれからでも。
よかったですねお父様。
お陰さまでほっとしています。
どうぞ。
それでお話というのは?長瀬薫という名の女性をご存じないかと…。
長瀬薫…?先日新宿中央公園の爆破事件に巻き込まれて亡くなった女性です。
いいえ。
まったく心当たりありません。
美咲先生の友人にもそういう名前の女性はいませんでしたし。
美咲先生がこちらの病院に来られるについては事情があったとお聞きしましたが?僕がぜひとお願いしました。
先輩後輩ではありますが正直惹かれていました。
でも彼女は年下の僕を弟のようにしか見てくれなくて…。
同じ職場で仕事をするようになれば僕に目を向けてくれるかと…。
でももうそんな夢は…。

(ノック)どうぞ。
あっお茶も差し上げませんで失礼いたしました。
どうぞお構いなく。
さあどうぞ。
すいません。
念のために伺いますが…。
はい。
長瀬薫という名にお心当たりがありませんか?さあ…。
美咲先生と同じように殺された被害者だそうです。
まあ…。
美咲先生があんなことになってから俊彦元気がなくて…。
ああ北見さんお生まれどちら?北海道の小樽です。
まあ小樽。
いいところねぇ。
ご結婚は?ああいえまだ…。
そう。
これも何かのご縁だわ。
俊彦のことよろしくお願いします。

(康恵)刑事さん。
出身地がどこか訊かれたでしょ?ええ…。
ステキな女性とみるとお嫁さん候補と見るのよね。
そんな…。
代々続いた病院にはちゃんとしたお嫁さんが必要。
でも弥生先生肝心なことわかってないのよね。
どういうこと?自慢の息子は女性なら誰でも気に入ると思ってる。
でも院長先生美咲先生からひじ鉄くらったのよね。
ということは院長の小笠原俊彦には黒柳美咲を殺害する動機があるってことだ。
何言ってるんですか。
すぐ疑ってかかるんだから。
それも若いいい男となると特に…。
ふんっ刑事の勘がそうささやくんだよ。
大体誠実そうなエリートってのは一番くさいんだ。
人間上っ面の仮面にだまされちまうからなぁ。
(佳代)はいどうぞ。
何か袴田ちゃんまたやきもち焼いてるみたいね。
また?俺がいつやきもち焼いたよ?うふふっ!・
(物音)・
(遠ざかる足音)おはようございます。
おはようございます。
(三上)北見さんビッグニュース。
第2の被害者長瀬薫が殺害された翌日新宿中央公園の爆破現場で寺本秋雄と思われる男がうろついていたそうなんです。
目撃者によれば六条工務店のネーム入りの作業着を着ていたそうだ。
やっぱり寺本がホンボシと見て間違いないですね。
犯罪者は現場に立ち戻るっていいますから。

(井原)三上。
はい。
重要参考人として寺本秋雄を連行しろ。
(一同)はい。
(携帯電話)もしもし今どこなんです?例のパイロットのリスト1人引っかかったぞ。
渡辺由美って娘がいるそうだ。
そんなことより…。
(井原)袴田さんか?もしもし。
(携帯電話の不通音)また単独行動か。

(チャイム)
(渡辺百合子)主人は5年前に亡くなりまして…。
娘の由美さんには私一度も会ったことないんですよ。
再婚なもんですから。
なるほど。
では娘の由美さんは離婚した前の奥さんのほうに引き取られたというわけですね。
今どちらにいるかわかりますか?さあ…。
あっ何でしたら主人の姉にお尋ねくださいますか。
千葉のほうにおりますから。
寺本秋雄さんですね?
(寺本秋雄)ええ…。
お尋ねしたいことがありまして署までご同行願えますか?あっ…ああはい。
おい…。
えっ…?おい…。
こら!お前!・待て!お前こら!
(チャイム)
(渡辺たえ子)これが由美ちゃん。
大学病院に出産のお祝いに行った時に撮ったものなんですけどね。
大学病院というのは?明治中央大学病院。
はあ…私が持ってる写真はこれだけなんですよ。
由美ちゃんももう33になるのねぇ…。
3332…33…。
由美さんの現在の居所ご存じありませんか?弟が離婚してからは音信不通で…。
だから何度言ったら信じてもらえるんですか。
私は誰も人なんて殺してませんよ。
ホントですよ。
事件のあった翌日新宿中央公園に行っているな。
いやですからあれは事件をニュースで知ってそれで興味に駆られて見に行ったんですよ。
事件の被害者が昔恨んでた長瀬の娘でしたしね。
ああ確かにね長瀬のことは恨んでましたよ。
けどだからといってその娘を殺すなんてことは…。
それは…。
だからいやホントです。
あんたねぇ!三上。
だったらなぜ逃げた?いや万引きがバレましてね…。
で警察が来たのかなぁって…。
万引き?
(鈴の音)
(長瀬)どうぞ。
ああすいません。
家内がショックを受けたまま体調を崩しておりまして…。
実はちょっとお伺いしたいことがありまして…。
渡辺由美という名前にお心当たりありませんか?渡辺由美…?いえその方が何か?実は亡くなったお宅の薫さんとほぼ半年違いで生まれてるんですよ。
・同じ明治中央大学病院で。
・薫さんを出産した際何かトラブルのようなものがありませんでしたか?いえまったく。
・何か気になったこととか…。
・トラブルに限らず何でも結構なんです。
(長瀬)本当に何も心当たりはありませんねぇ。
明治中央大学病院には感謝してるんですよ。
ホントによくしてくださいましたから…。
いやですから何か…。
もう…もういい加減にしてもらえませんか?私達は被害者なんですよ。
家内も寝込んでいるというのに…。
私は何としても娘さんの敵を討ちたいんです。
もし…もし何か思い出したら連絡くださいませんか?もう一度最初から話してもらおうか。
ですから事件のあった朝は川崎のコンビニにいましたよ。
つい魔が差して万引きしちゃいましたけどね。

(ノック)東都銀行に爆破予告のあった9時確かに寺本秋雄は川崎のコンビニにいて電話はかけていません。
防犯カメラに万引きするところが映っています。
共犯者がいない限り彼の犯行は不可能です。
主任長瀬さんからです。
第2の被害者のお父さんの。
お電話かわりました。
主任の井原です。
はい。
はい。
はい以後気をつけます。
大変ご迷惑をおかけしました。
失礼します。
苦情の電話だ。
袴田さん単独で何かぎ回ってるんだ?連絡がついたらすぐに知らせろ!はい。
(携帯電話)今どこなんです?よう!「よう」じゃありませんよ。
もうカンカンなんですから主任。
主任に話したのか?探偵の荒木のこと。
いえ警察が表立って動いたら逆効果になるかもしれませんし。
お前さんも少しは捜査のイロハがわかってきたようだな。
でもこのまま黙ってるわけには…。
寺本秋雄が事件とは無関係だってわかったんですから。
どうにも妙なんだが第1の被害者黒柳美咲第2の被害者長瀬薫そしてパイロットの娘渡辺由美。
この3人はほとんど半年違いでこの世に誕生している。
しかも3人の親が3人共出産に関係したのはこの明治中央大学病院だ。
ちょっと待ってください。
第1の被害者黒柳美咲は明治中央大学病院に勤務はしていましたが出生地は熊本県です。
その熊本県警に照会してもらったんだがなんと黒柳美咲の母親も妊娠当初はこの明治中央大学病院に通院してたそうだ。
じゃあ3人の母親は多少時期はずれてるかもしれないけど1年半か2年の間のどこかでこの明治中央大学病院の産科に通ってたと?そういうこと。
(静子)私がこの産科に在籍して25年になりますがトラブルがあったような話は聞いておりませんねぇ。
残念ながら30年以上前となりますとカルテも残っておりません。
どうも…。
ありがとうございました。
う〜ん…。
そうだわ。
当時のことを知ってるかもしれない人がここに1人いる。
はっ?失礼します。
突然に申し訳ありません。
警察の者ですがちょっと参考にお話を伺わせていただいてよろしいでしょうか?
(小笠原隆)警察?何でしょう?小笠原先生はこちらの大学の出身ですよね。
俊彦さんからも伺ってます。
息子をご存じでしたか。
はい。
いろいろご協力いただいてます。
33〜34年前先生はこの大学病院には?ええ在籍してました。
まだインターンでしたけど。
しごかれてましたよ。
当時病院内で何かトラブルのようなものはありませんでしたか?産科のほうなんですが。
産科ですか?何かご存じですか?いいえ何も聞いていません。
私は内科でしたから。
すみません。
どうもお役に立てなくて。
どうもお邪魔しました。

(ドアの開く音)何なんです一体これは!父の面会には必ず僕に連絡ください。
申し訳ありませんでした。
失礼します。
北見さん。
本当にすみませんでした。
いえこちらこそすいません。
ムキになってしまって…。
面会謝絶がとれたばかりのとこだったものですから。
いえそんな…。
どうかしてたんです。
お詫びに今度食事でも付き合ってください。
じゃあ。
何だあの剣幕…。
父親の体のことを心配してのことでしょ?それだけかな?何かにおうんだよな。
念のために言っておくがお前さんが食事に誘われたからってやきもちで言ってるんじゃないぜ。
そういえば…。
あっ?二度の発作…。
えっ大先生が発作を?あなたしっかりしてください。
私達が被害者の聞き込みに行った時に限って…。
それにあの時の新聞…。
こんばんは。
あら北見さん。
近くまで来たもんですから。
ちょうどよかった。
私ももう帰るところ。
ちょっと付き合ってくださる?あら?ねえ誰かこれ触った?いいえ。
いいえ。
あっそう…。
ああ…薬の在庫も何もかもこれ1台で管理してるから…。
もっとセキュリティーのことも考えなきゃいけないわね。
はい常酒一丁!ああっ…!はい常酒二丁!はいどうぞ!こんなところにお誘いしてご迷惑じゃなかったかしら?いいえ。
ここはよくいらっしゃるんですか?ううん。
ホントのこと言うとねこんなところに1回来てみたかったのよ!ふふふ…。
カンパーイ。
う〜ん。
ああははは…。
ご主人のお加減はいかがですか?ああどうもありがとう。
お陰さまで随分落ち着いたみたい。
あの人自分が病人だってことも忘れて新聞やテレビでスポーツやニュース見て興奮したりするから…。
ああ見えてね大学時代はラグビーで鳴らしてたのよ。
ふふ…。
お知り合いになったのはその頃?ううん。
彼とはねひと回り近く年が離れてるから。
私が薬学部に在籍してた時に父の勧めであれよあれよという間に婚約して結婚。
大学卒業して半年もした頃にはもう母親になってたわ。
小笠原記念病院は何代も続いた病院だそうですね。
そうなの。
亡くなった父がね主人を見込んで私と結婚させたのよ。
だから跡取りの俊彦が生まれた時にはホントにほっとした。
ふふふ…。
わけもわからないうちに母親になっちゃったけど子供っていうのは生きる支えね。
出産されたのは明治中央大学病院で?ええ。
33〜34年前トラブルがあったようなことを聞いてらっしゃいませんか?明治中央大学病院で。
さあ…その頃は私も高校生だったし主人からもそんな話を聞いたことがないわね。

(ため息)
(留守電)「用件は1件です」
(発信音)
(母)「お母さんです」「小学校の仲良しだった和美ちゃん女の子を出産しました」「2人目よ。
志穂ちゃんも出産のこと考えたらもううかうかしてられない年ですよ」子供か…。
やっとお帰りか。
昨日からずっと留守でさ管理人さんにお願いして開けてもらったんだ。
いやぁ待ちくたびれたよ。
いやぁ歩き回るのは探偵の仕事ですから。
俺達デカと同じってわけだ。
なあ?だいぶアコギな商売してるそうじゃねぇか。
何なら令状持って来ようか?いやいやだから…人捜しを頼まれて動いてただけですよ。
人捜し?いや電話だけでうさんくさい話だと思ったんですけどねポストに100万の現金入り封筒が入ってて。
1件につき100万じゃおいしい話だし…。
その人捜しっていうのは…?長瀬薫と渡辺由美…。
黒柳美咲は?いやその名は聞いてません。
依頼されたのは2人だけですから。
東都銀行西新宿支店に現れた男っていうのはやっぱりあんただったんだな。
はい。
まあところが長瀬薫があんなことになっちまってもうびっくりしたのなんのって…。
まあだけど単なる偶然かなって。
単なる偶然だ?デタラメぬかすな!金さえもらえば何でもありか。
えっ?少しはここが痛まねぇのかここが!あんたな殺人の片棒を担いだかもしれねぇんだぞ。
殺された娘の親の気持ちにもなってみろ!袴田さん!洗いざらいわかってることしゃべってもらおうか。
渡辺由美に関してはまだ調査中で居所はつかめてません。
通訳をしている母親は離婚後一人娘の由美を連れてパリに行き向こうで再婚したらしいってとこまでは突き止めたんですけどね。
依頼人とのやり取りは?向こうからの電話だけです。
それも電話の声変えてるみたいで…。
今度依頼人から電話があったら渡辺由美の居所はまだ調査中ってごまかして俺に連絡入れろ。
わかったな?はい。
この周辺をもう少し洗い直せ。
はい。
北見お前さんまで単独行動か?申し訳ありません。
よっぽどのお土産持って帰ってきたんだろうな?次のターゲットは恐らく渡辺由美。
渡辺由美?何なんですか?いきなりそんな名前。
ホコリまみれの靴をすり減らして歩けばいいネタにも当たるってことよ。
2人の被害者とその渡辺由美の共通点が明治中央大学病院の産科か…。
確証はありませんが33〜34年前今回の殺人事件につながる何かがあった。
やっぱり親のせいですよ。
きっと父親が誰かに恨まれるようなこと…。
すいません。
つい…。
何で謝る?若いのに労わられるようじゃ俺もおしまいだな。
袴田さん…。
俺のことが目障りならいつでもクビにでも何でもしてくれ。
老兵は消えるのみ。
いつでも消えてやるよ。

(袴田愛の声)お父さんタバコやめたほうがいいよ。
とても声かけられなかった…。
あそこは最後に別れた場所ですもんね。
愛ちゃんと。

(ドアの開く音)あらいらっしゃい。
何だよこんなところで油売ってるのか?しょうがねぇな。
俺にも何か食わせてくれ。
はいはい。
本日のおすすめ定食まだありますよ。
さっきは悪かったな。
その…何だ人間腹減ると虫の居所が悪くなってさ。
しかし解せねぇよな。
33〜34年前何があったか知らねぇが何で今頃なんだ?そうなんですよね。
犯人は几帳面な性格だと思うのに何で今まで何も行動を起こさなかったのか…。
几帳面?第1の事件は爆破予告の電話があったのは午前10時。
そしてその30分後に爆破。
第2の事件は午前9時に爆破予告の電話がありその30分後の9時半に爆破。
いずれもきりのいい時間です。
なるほど。
(佳代)はいどうぞ。
それと一人っ子というのが気になります。
被害者2人そして渡辺由美いずれも一人っ子です。
一人っ子ねぇ…。
まあ少子化の時代だし珍しくもねぇだろう。
でも33〜34年前ですよ。
3人が3人共一人っ子っていうのはどうも…。
一人っ子っていや小笠原院長も一人っ子だぜ。
お前さんが疑いたくない気持ちもわかるがな…。
小笠原院長は医者って職業柄几帳面だろうしな。
(携帯電話)はい。
おおあんたか。
何か連絡あったのか?はいありました。
たった今。
で刑事さんの指示どおりまだ調査中って答えときましたけど依頼人のほうはかなりいらだってる様子であさっての晩また連絡するがそれまでにわからなかったら探偵社変えるって。
依頼人つまり犯人は殺る気だ。
本気なんだよ。
もうこれ以上の犠牲者はごめんだ。
犯人は荒木探偵事務所に私達警察の捜査の手が入ってることを察してもうすでに他の探偵社を依頼した可能性もあります。
一刻も早く手を打つ必要があります。

(ドアの開く音)外事課の協力で渡辺由美のパリの現住所が判明しました。
現在は母方の姓で藤村由美33歳です。
ヨーロッパの航空会社で客室乗務員をしており3日後の土曜日にはフライトで日本へ来るそうです。
この予定を犯人が知ったら…。
一連の事件からいってもたとえ爆破予告がどこにあろうと狙われるのは藤村由美…彼女の命だ。
私おとりになります。
(電話)逆探お願いします。
どうぞ。
はい。
はい荒木探偵事務所です。
(ボイスチェンジャーの声)「調査の報告をしてもらおう」あっどうもどうもちょっと待ってください。
ええとですね…渡辺由美は両親がすでに離婚してまして現在は藤村由美と名を変えてパリに在住。
ヨーロッパの航空会社の客室乗務をしてます。
明日の土曜日のフライトで日本に帰ってくる予定です。
「到着は何時の便だ?」ええとですね…上海発成田空港行きで成田到着予定時刻は午後12時50分です。
「航空会社は?」ええ航空会社ですか?航空会社はですね…。
「そこに誰かいるのか?」いやあっ…。
(電話の不通音)ダメです。
携帯からとはわかったんですが場所は特定できません。
クソ…。
三上です。
今から声紋データを送りますのですぐに鑑定してください。

(井原)犯人はどこで接触してくるかわからん。
肝心の動機がな…。
動機さえはっきりしてれば手の打ちようもあるんだが…。
とにかくあらゆる場合を想定して警備に当たる。
北見頼むぞ。
はい。
主任声紋鑑定の途中報告です。
うん。
まだ詳しい結果は出てないんですがボイスチェンジャーを通した声の主は若い男かもしくは女性ということです。
若い男?はい。
やっぱりあいつだ。
動機はわからんが小笠原俊彦あいつしか考えられない。
袴田さん。
そろそろ時間だろ?はいいってきます。
出かけた?ええ。
急な会合に出席しなければならなくなったからって。
土曜は外来は休診なんですけれどいつもは院長先生もいらっしゃるのですが…。
ひと足遅かったか…。

(弥生)刑事さん。
あっ何かご用ですか?ああいや…。
院長先生の行き先ご存じありませんか?さああいにく存じませんけども息子に何か?ああいや…。
それじゃあ。
あと3時間か。
長瀬さん。
亡くなった娘さんを出産した際明治中央大学病院で何かあったはずです。
奥さん話してください。
このとおりです!主任…。

(携帯電話)北見です。
(ボイスチェンジャーの声)「そうお前は由美ではない」「まず無線マイクを外せ。
他の装備もだ」「言うとおりにしなかったらすぐに爆破する」どこを?「それは言えない。
これは脅しではない」わかりました。
「その携帯電話を置き警備をまいて第1駐車場のC44に駐車してある車に乗れ」「妙な真似はなしだ」「お前の行動は常に監視されていることを忘れるな」
(電話の不通音)《なぜ知ってるの?携帯の番号を…》《私がおとりだってことも…》三上…北見がおかしい。
確認しろ。
北見さんの姿はありません。
「三上です。
北見さん確認できません」「工藤です。
確認できません」空港周辺に全車検問要請しろ。
はい。
こちら指令車。
おお主任見えてきたぞ。
30数年前明治中央大学病院で何があったか。
もう1件確かめなきゃならんけどな。
何北見が消えた?
(電話)はい井原だ。
「捜査本部に主任宛ての電話が入ってますが」よし転送しろ。
(ボイスチェンジャーの声)「北見志穂は預かった」「私は悪魔祓い師」無事なのか?北見は。
「そっち次第だ」「本物の藤村由美を渡さなければこのおとりの女刑事の命はない」もしもし落ち着いて話し合おう。
時間をくれ。
1日いや半日でいい。
(電話の不通音)どうだ?発信基地は?特定するには通話時間が足りません。
(パトカーのサイレン)
(直子)あなた何ですか?小笠原さん殺された長瀬薫さんの母親が何もかも話してくれましたよ。
33年前この大学病院の産科で何があったのか。
やっぱり知ってたんですね。
困ります勝手に!人の命がかかってるんだ!小笠原さん第3の犠牲者を何としても食い止めたい。
そのためにはあなたの協力が必要なんだ。
頼む。
時間がないんだ!私なら大丈夫だ。
2人にしてくれ。
(ため息)まさかとは思っていたが事件には30数年前のあのことが関係していたのか。
その30数年前のことにあなたもかかわっていた。
そうですね?はあ…。
はあっ!はっ…。

(足音)気がついたようね。
あなたは弥生さん…。
北見さんあなたのことは気に入ってたしできればこんな目に遭わせたくはなかったわ。
でも仕方がないわ。
私どうしても渡辺由美を殺さなければならないのよ。
でもどうして?なぜそんなことを?なぜって…。
悪魔だからよ。
30数年前明治中央大学病院では人工授精が行われていた。
人工授精?どうしても子供がほしいのに夫の側に問題があって子供ができない夫婦に明治中央大学病院ではある種の人工授精が不妊治療の一環として行われていた。
精子の提供者は肉体的にも精神的にも健康な医学部の学生が選ばれたわ。
もちろん匿名でどの夫婦に提供したかは秘密にされていた。
その提供者の1人が当時インターンだった夫なの。
そのことを知ったのは俊彦を出産するために入院した明治中央大学病院のナース達の噂話でだったわ。
ショックだった。
いくら私と結婚する前出会う前のこととはいえ夫のDNAを受け継いだ子供がこの世の中のどこかにいるのよ。
妻に対する裏切り以外の何ものでもない。
もしその子供が私達の目の前に現れたらそう思うとたまらなかった。
ご主人にはそのことを?もちろん問い詰めたわ。
初めは否定したけど私が書斎でメモを見つけ出すとすぐに認めたわ。
メモ?夫が提供した3人のメモよ。
3人って…。
夫はどの夫婦に提供したのか教えられてはいなかった。
でもある日偶然産科教授のデスクの上にあった書類を見てしまいとっさに自分が提供した分をメモして残しておいたのよ。
その3人っていうのは…そう黒柳美咲長瀬薫渡辺由美の3人よ。

(ドアの開く音)この3人の女誰?浮気の相手?メモを突きつけられてすべてを話すしかなかった。
メモはその場で焼却してお互いに忘れようと誓った。
だがあなたも奥さんも3人の名を忘れはしなかった。
メモの一件以来妻は私を拒否するようになった。
善意の医療行為だったのに不潔で許せないと。
主任急いでくれ。
小笠原隆の別荘だ。
場所は…。
了解。
パトカーに連絡してくれ。
はい。
(パトカーのサイレン)そうあのメモを見て以来私と夫は形ばかりの夫婦。
この別荘だって夫が女達との密会のために私に内緒で借りたものなのよ。
それでも離婚しなかったのは俊彦のため…。
父の遺してくれた小笠原記念病院に泥を塗らないため。
そしてとうとう恐れていたことが起こったわ。
私達の目の前に夫の血を引く黒柳美咲が現れたのよ。
息子に紹介されて名前を聞いた時の驚き。
父親のことを聞くと…。
私が生まれた頃はニューコスモス観光に勤めていましたが10年前に病死しました。
間違いない。
あのメモの中にあった1人に間違いない。
とうとう恐れていた悪魔が我が家にやって来たのよ。
何も知らない息子はともかく初めは反対していた夫までもが彼女を歓迎したわ。
それに…心臓発作を起こして弱気になっていたせいかとんでもないことまで言い出したのよ。
君と俊彦と2人でそう姉と弟のように手を携えてこの病院を守り育てていってくれれば私も思い残すことはない。
息子が彼女に恋してることは気がついていたわ。
でも息子の心ばかりかこのままでは病院まで取られてしまう。
代々続いた小笠原の病院を…。
だから彼女は悪魔なのよ。
悪魔は祓わなければ成敗しなければならないのよ。
それで黒柳美咲さんを?彼女に電話したのよ。
あなたは人工授精で生まれたのよ。
実の父親を教えてあげましょうかって。
あなた一体誰なんです?来ればわかるって…。
もしもしもしもし。
(電話の不通音)
(弥生)明くる朝彼女は約束の時間どおりあの駐車場で待ってたわ。
弥生先生あっ…。
(弥生)途中で目が覚めないように睡眠剤を注射したわ。
10時に爆破予告の電話を入れて10時半に爆破させた。
そして長瀬薫さんまでも…。
黒柳美咲のようにいつ私達の目の前に現れるかわからないわ。
今度は現れる前に成敗してしまわなければそう思って探偵社に頼んで捜してもらったのよ。
彼女も美咲さんと同じように呼び出したんですか?実の父親の存在は半信半疑だったわ。
でも彼女も約束どおりあの公園にやって来た。
9時に東都銀行に爆破予告の電話を入れ9時半に爆破装置をセットされた長瀬薫さんは爆死した。
あなたは薬剤師として数量には当然正確で几帳面なはずだし爆薬についても知識はあったでしょうしね。
もっと早くに気がつくべきだった。
爆破装置のことはインターネットで簡単に調べられたわ。
でもなぜ爆破予告をして世間を騒がせたのは何のためです?悪魔祓いと同時にご主人への復讐も込められていた。
私は長年裏切られ苦しめられ続けてきたのよ。
人工授精に度重なる浮気。
今度は主人が苦しむ番だわ。
大きなニュースになれば当然主人の耳にも入る。
そしてあなたの思惑どおりご主人は事件を知る度に発作を起こした。
黒柳美咲さんの死の時も長瀬薫さんの時も…。
ははは…!天罰が下ったのよ。
これ以上もう罪を重ねるのはやめてください。
お願いです。
自首してください。
俊彦さんだってそう願っているはずです。
そもそも真実を話していれば美咲さんに対しても大人の対応をしたはずです。
あなたには立派なお医者様の俊彦さんがいるじゃないですか!すべてはあの子のためこの世の悪魔を祓わなければいけないのよ。
残るはあと1人。
(パトカーのサイレン)
(電話)「犯人から電話です」よし転送しろ。
(ボイスチェンジャーの声)「本物の由美を…」引き渡す決心はついたか。
もう待てない。
あと5分北見刑事は死ぬ。
(井原)「待ってくれ。
もしも…」あと5分。
私は本気よ。

(足音)あっあっ!ああ…。
ううっ。
ああー!きゃあー!うっ…。
あと5分で爆発するの。
もう5分もない!何っ早く逃げて袴田さん。
早く!バカ野郎!俺達は相棒だろ!死ぬときゃ一緒だ。

(爆発音)袴田さん。
中だ!あっ離して!袴田さん…。
いつも言ってるだろ。
いざって時は必ず助けてやるって。
お前さんも一人前の刑事になったようだな。
確保しました。
母さん…。
母さん!俊彦…。
お父さんに全部聞いたよ。
僕お母さんのパソコン偶然見てしまってまさかって思って心配してたけど…。
もう大丈夫よ。
悪魔はみんなお母さんが祓ってあげますからね。
ふふふ…。
お母さん!
(すすり泣き)
(パトカーのサイレン)じゃああと頼んだぞ。
はいわかりました。
はあ〜父親のせいで娘が殺された。
結局そういうことになんのか。
袴田さん…。
うん?おっと!下手な慰めはごめんだぜ。
ホントかわいくないんだから。
慰めなんてお呼びじゃないでしょ。
じゃあ愛の告白か?えっまあ間違えてもそんなことはねえよな。
あははは…。
当ったり前じゃないですか。
うぬぼれるのもいい加減にしてくださいよいい年して。
うるせぇ。
チョイ悪おやじがもてるの知らねぇな。
2015/04/27(月) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
おとり捜査官 北見志穂[再][字]

爆破予告犯から来た挑戦状!!狙われた三人の美女に謎の接点が…爆発5分前、絶体絶命の女刑事!

詳細情報
◇出演者
松下由樹、蟹江敬三、黒田福美、河相我聞、小野寺昭、小木茂光、半田健人、赤座美代子、なぎら健壱、エド山口

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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