NNNドキュメント「命を運ぶ電車〜JR脱線事故10年 遺族の執念〜」 2015.04.27


早朝から深夜まで
私達を目的の場所まで運んでくれる電車
しかしひとたびレールを外れると大惨事を招きます
10年前に起きたJR福知山線脱線衝突事故
(淺野さん)運転手が100何kmで突っ込んだからだけであんな事故起きないですよ。
これまで安全を軽視して来たということでは決してなかったつもりなんですが。
106人も殺しといて何でこういう所でこうなったんか説明する責任があるやろがいや!
事故直後から遺族とJRの議論は全くかみ合いませんでした
おたくのほうがいんぎん無礼や言うてんねん。
(踏切の音)
あの場所を今も走り続ける電車
(大森早織さんの歌声)♪〜
(大森重美さんの声)会社がちゃんとしておかないと会社にダメージになるんだってのはそういう罪というか罰というかそういうものを作っておくってことですね。
残された者の責務として加害企業に向き合い続ける遺族
(淺野さんの声)加害者と一緒にやるっていうこれはね加害者自らの気付きその認識をいかに変えるかっていうことです。
脱線事故から10年鉄道の安全を求める遺族の執念を追いました
「お客様の掛け替えのない尊い命をお預かりしている責任を自覚し安全の確保を最大の使命であるとの決意のもと安全憲章を定めます」。
兵庫県宝塚市に住む…
事故で妻陽子さんと妹を亡くし娘が重傷を負いました
今搬送している者があるんでそこでまぁちょっとまだそれが分からんと。
で着てるものでは違うと。
今到着している者は違うと言うとんですけどねうん。
事故は当時23歳の運転士の速度超過によって起きました
制限速度70kmのカーブにおよそ116kmで進入した電車は曲がりきれずに脱線
マンションに衝突しました
乗客106人が死亡562人が負傷する大惨事となりました
くの字に折れ曲がった2両目は最も犠牲者が多く1両目はマンションの1階駐車場に潜り込み大破
通学のために乗っていた学生も大勢亡くなりました
妻の安否が分からないため淺野さんは安置所となった体育館に足を運び続けました
陽子さんと対面できたのは事故から40時間後のことでした
38年間連れ添った妻の突然の死
淺野さんの人生は一変しました
(淺野さんの声)あんまり出しゃばらない。
といって昔の人のように…三歩下がってっていうスタイルでもない。
「私生まれ変わってももう一回お父さん選ぼうと思うがあんたはどう?」っていう。
何か周りにも公言してたようですよ。
僕の頭の中には彼女は半年か1年か地球上のクルージングに行ったんだろうと。
それはまぁいつか帰って来るだろうという思いをむしろ自分で抱くようになりましたね。
そうでもしなければ自分が納得できない。
国鉄の分割民営化以降営利追求の路線を歩み続けたJR西日本
私鉄との差別化を図るため京阪神の主要路線を「アーバンネットワーク」と名付け電車のスピードアップを図りダイヤも過密なものになって行きました
JR尼崎駅手前のレールは事故の9年前に急なカーブになり運転の難所ともいわれていました
ここにATS自動列車停止装置はありませんでした
事故前に設置されるはずでしたが経営上の判断で先延ばしされていたのです
心からおわびを申し上げます。
しかしJRは当初置き石の話を持ち出しました
え〜石等がですねレール上にあって車両がその上を通過しますと出来る痕跡でありますが粉砕痕というものを確認をしております。
その上事故当日の社員の不適切な行動が次々と発覚
事故を起こした企業とは思えない非常識な行動に遺族だけなく社会的にも批判の声が上がりました
鉄道事業者としての説明責任を第一義とするっていう言葉は今の垣内社長のほうはどう認識してるんですか?それは遺族とか負傷者が一番知りたいことを…に対して説明すべきだというこの一点ですよ。
事故調なりにですねいろんなデータ等も押さえられていると。
原因究明をしなさいなんて私言ってないねっ。
それは事故調がやるんだよ。
何でこんな事故を起こしたのか何で106人も死ぬようになったのか殺したのか。
これについて社内的に当然議論してるはずでしょ?その反省をしたのは事実ですけれどこれは先程から申しますようにこんなに大きな事故を起こしたわけですから…。
反省に至る根拠理由があるはずです。
それを説明するのが説明責任じゃないんですか?って言ってるんです。
JRとの対話は最後まで平行線のままでした
2年後国の鉄道事故調査委員会は事故の背景に日勤教育があったことを指摘しました
ミスをした運転士が一定期間乗務を外され草むしりや反省文を書かされる懲罰的な再教育制度です
今回の事故の運転士も過去に3回日勤教育を受けていました
なぜATSが付かなかったのかとかあるいはなぜ運転士をああいうメンタル的に追い込んだのかとかつまり日勤教育ですよね。
検証して総括するということを自らがホントにその気になって掛かって組織的にやらないとやっぱり何が悪かったかって分からんまままた行きよる。
それが一番…また再発する可能性…芽持ったままですから。
うん。
(淺野奈穂さん)和菓子買って来たんやけど。
そこにもあんねんまぁまぁええわ。
これあの…先お茶出そか?向こうで飲む?うん向こう行く。
二女の奈穂さんは母とおばの3人で2両目に乗っていました
全身を車体に押しつぶされ一時は生死の境をさまよいます
奈穂さんはバスや電車など公共の乗り物に乗ることができなくなりました
JRの担当者が立ち会い止まったバスなどで乗車訓練を始めましたがドアは開けたままです
事故で長時間閉じ込められた恐怖心が残っているからです
(奈穂さん)イヤ〜あ〜!・あっ開けてあげよう・もうイヤ…もうイヤ。
(男性)これイヤ…OK。
(奈穂さん)これイヤ。
(男性)前これやったんちゃうかったっけ?
(奈穂さん)ちゃうちゃうあっち。
・前は多分観光バスタイプ…・あっホント。
あともうちょっと落ち着いて。
とにかく大丈夫やわうん…大丈夫。
え〜っとあの感じでもう閉まってもうた状態…。
(男性)うんすぐに出れるから大丈夫。
奈穂さんは10年たった今も電車に乗ることはできません
お互いを気遣うが故父と娘が事故について正面から話したことはありません
父が一番強かったのは…。
母が亡くなったこと妹がこういうことを背負ったこと家族がボロボロになったんですけど…。
それとホントにたくさんの人がボロボロになって行くのを見てて…。
これだけのことを起こしてしまったことは無駄には絶対にされたくないっていう思いですよね。
意味のあることに変えてほしいっていうそうすれば多分少しは納得できるような気がします。
事故から4年
淺野さんは一つの決断をしました
加害企業であるJRと同じテーブルに着き共に事故を検証する取り組みです
遺族の申し出に対しJRは8か月後にようやく応じました
月に1度の会合で淺野さんは責任を問うのではなく安全を追求しました
そりゃ被害者側がこんなん加害者に向かってこんな場で一緒に議論しようやなんていうの普通ありますか?それはねちょっと長くなりますが私がずっと事故後考えてたのは被害者って何なの?っていう…。
自問自答して来たんです。
今度の事故の被害者として自分らが何をできるのか社会に対して何かこの事故を発信しようあるいは教訓を何か明らかにしようとすると我々黙ってていいのかと。
その後の捜査で事故の後就任した山崎正夫社長が鉄道本部長時代にATSを付けなかったことで捜査の対象になりました
歴代の社長3人は検察審査会の2度の議決により強制起訴されました
争点となったのは経営トップとして現場のカーブの危険性を認識していたかどうかです
裁判に重点を置く遺族が出始める中淺野さんは傍聴には一度も行きませんでした
うちの女房とか妹を殺しといてね「何や!」っていう言い方は非常に感情論としては分かります。
僕もそりゃ当初そうでした。
でもねそこから何が生まれますかね。
やっぱりあの心情的にその怒るあるいはその相手に対してこう罰を求めるあるいは罰を科す。
これは心情論としては私はもう何も否定はしませんけれどもそこから何か生まれますかね?
たくさんの命を運ぶ電車が今日も走り続けています
♪〜
事故で娘を亡くした…
♪〜
(大森さんの声)♪〜もう一回まぁ…♪〜声を聞きたいわね。
歌じゃなしにね♪〜普通にしゃべってる♪〜その声を聞きたいね。
♪〜
1両目に乗っていた長女の早織さん
事故から5日目にようやく遺体が発見されました
卒業後も大学で声楽を学んでいた早織さん
公演の写真を整理するため大学に向かう途中の事故でした
(大森さんの声)23歳やと運転手がねうちの娘と一緒やと。
ほんでこれだけ1人の責任でいいのかってなことを当然私はそりゃ…。
組織が…その時はね組織じゃなかったんですけどね。
大森さんはJR西日本の裁判はほとんど傍聴して来ました
そこで直面したのは司法の限界です
歴代3社長の控訴審判決
一審同様大阪高裁も全員に無罪を言い渡しました
運転士の異常な運転は想定外で3人は脱線事故を予見することができなかったという司法判断です
この裁判でねちゃんとした結論が出ればいいんですけどそうじゃないからね。
まぁやむを得ないんだと。
まぁ悔しさが全くないとは言いませんけどね。
まぁ自分にできる範囲でやって行くとか変えて行くと。
このままでは良くないんでね。
そう思ってますけどね。
大森さんは有志で組織罰について考える勉強会を立ち上げました
日本の法律では企業の刑事責任を問うことはできません
組織罰が適用されるイギリスでは有罪になれば罰金や社会への公表といったペナルティーが科せられます
(大森さんの声)厳しく罰するというようなことはねプレッシャーになるしね。
あのそのほうが効果はあると思いますね。
責任が問われないでしょう。
問われないということは組織としてちゃんと改善というか立て直しもできないしやらないし。
また同じような事故が起きる可能性が大きいと思いますね。
そうならないためにちゃんと組織罰的なものを組織の罪を問えるようなものを作って抑止力とすると。
そういうことを期待しますけどね。
(鈴の音)
(社員達)「安全確保に最も大切な行動は基本動作の実行確認の励行および連絡の徹底である」。
事故の後風通しの良い企業を目指して来たJR西日本
異なる職場の意見交換を積極的に進めています
(運転士)何でこれ60kmなんやろなと。
直線走ってて。
当初やはりどうしても私どもの企業風土の中に内向きであるとかあるいは部門の壁があって自分の責任範囲はここまでだというようなことがあってそれがまぁ悪い形で表に出てしまった…という部分もあったと思います。
お客様の命をお預かりしているそういう責任を我々自覚しなきゃいけない。
淺野さんが加害企業と続けている安全フォローアップ会議
しかしその話し合いの途中の…
安全に関する重大なミスは決してなくなっていません
鉄道というのは実は地域独占産業でそういう側面があるからつぶれないんですよ。
そのことがねやっぱり市場の厳しい批判を妨げてる面があるからその環境の中でまぁありていにいえばちょっとややぬるま湯につかる部分があるので。
そこをですね特に遺族という外部の視点から見てですね遠慮なく指摘をし事故の原因何であったのかを問題提起をするということはね非常に意味のあることである閉ざされた組織が気付かない視点がそこで見いだされる場合があるわけですよね。
淺野さんとJRの共同作業は4年間で27回を数え去年1冊の報告書にまとめられました
報告書にはあの事故につながった組織的な背景が細かく記されています
それぞれの部署の連携のなさや現場任せの安全管理が複合的な要因となり大事故につながったことが分かります
(真鍋社長)安全管理体制の維持向上に第三者の視点を活用するということであります。
で私どももこの視点から社外の機関による評価を受けることにしたいというものでございます。
JR西日本は外資系の企業と契約し自分達の監査が身内に甘くなっていないかどうか外部のメスを入れることにしました
(車内アナウンス)中山寺を出ますと川西池田…。
大森さんは娘の命を奪った現場を通り過ぎるたびにJRへの思いを強めています
(大森さんの声)大きな事故起きたらばやっぱりどこに責任があったとかねちゃんとけじめをつけてそこからスタートすると。
何かダラダラダラと終わってもうてさぁそこからってあまり変わりにくいんじゃないかと思いますね。
安全への取り組みがようやく形になった淺野さん
しかしまだ終わったとは思っていません
こうすりゃ安全になりますっていう話はないんですよ。
これをどういうふうに安全な組織に仕上げて行くかっていうプロセスそのものが安全に向けて動いて行くベクトルになればいいしモチベーションとして高まって行けばいいんだろうという思いですね。
(警笛)
(警笛)
JR福知山線脱線衝突事故から10年
私達の生活に欠かせない鉄道
その安全を遺族の責務として問い続けます

元アメリカ海兵隊員アレン・ネルソンさん
ベトナム戦争を生き延びた彼が命の続く限り訴えたメッセージとは
2015/04/27(月) 00:55〜01:25
読売テレビ1
NNNドキュメント「命を運ぶ電車〜JR脱線事故10年 遺族の執念〜」[字]

乗客106人が死亡したJR福知山線脱線故から10年。妻と妹を失い二女が重傷を負った淺野弥三一さん(73)が加害企業とともに「鉄路の安全」を模索する姿を伝える。

詳細情報
番組内容
乗客106人が死亡したJR福知山脱線衝突事故から10年。妻と妹を失い二女が重傷を負った淺野弥三一さん(73)は、遺族でありながら加害企業と同じテーブルにつき組織事故の原因を模索する道を選んだ。一方、企業の罪を問う刑事司法の創設を目指す遺族もいる。長女を亡くした大森重美さん(66)は「個人だけを裁く現在の法律には限界がある」と考え有志の勉強会を続けている。鉄路の安全を願う遺族の執念を伝える。
出演者
【ナレーター】
牧野誠三
制作
ytv

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント

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