サイエンスZERO「恐竜大発掘 出るか!?日本初の完全骨格」 2015.04.26


北の大地で日本の恐竜研究の歴史を変えるかもしれない大発掘が行われています。
最初に見つかったのは尻尾。
その後長さ1メートルを超える巨大な骨など数々の発見を重ねてきました。
そして先月。
頭が見つかったという事はもしかして全身骨格があるかも!?恐竜の全身骨格は日本ではめったに出ないんです。
今回の大発見につながるそのキーワードは…化石の向きと海成層!?う〜ん一体どういう事でしょう?我々はこの発掘作業に…国内では非常に珍しい恐竜大発掘プロジェクト。
その全貌に迫ります!へえ〜。
結構大規模な恐竜発掘が行われていたんですね。
面白そうですよね。
一体どんな恐竜なんですかね?楽しみですよね。
うん。
「サイエンスZERO」ではつい最近も恐竜を扱ったんですが冒頭からいきなり質問です。
そもそも恐竜とは何ぞや?でも前も出てきたようなステゴサウルスとかですよね。
それは正しいんですが実はどこまでが恐竜かについては意外と誤解が多いんですよ。
えっ誤解ですか?はい。
奈央さんに問題です。
あっワニがいますね。
正解は…えっあれ?海にいた首長竜ですとか翼を持った翼竜は実は恐竜ではないんです。
あ〜知らなかったそれは!これ何でかと言うと…だから恐竜じゃないんですよ。
そうなんだ。
これまで日本で見つかった恐竜の化石いくつか見ていきましょう。
あ〜。
何か部分的にしか分からないからちょっとどんな恐竜なのかは想像しづらいですよね。
日本で発見される恐竜の化石って断片的なものが多いんですよ。
だからね全身が見つかったらこれメチャメチャすごい事なんですよ。
そうなんですね。
こちらご覧下さい。
今回最初に見つかったこれ恐竜の尻尾の化石なんです。
何かこれは結構そろって形がちゃんとしてますよね。
これパーツがそろってるんで今回の発掘はすっごく期待されてたんですよ。
ただここに懸案が1つ。
それは…注目して頂きたいのは真ん中に連なる太〜い骨。
脊椎の中でも椎体と呼ばれる骨です。
一番大きな部分の直径がおよそ8.5センチ。
一番小さな部分が直径6.5センチです。
これ崖から発見されたんですね。
…で仮にこの残りの部分が崖の中に埋まってるとしてですよ。
どっち側からつながってるかが問題なんですよ。
向き向き。
そう。
ヤッターって事ですよね。
「う〜ん残念!」みたいな。
どっちなんだろう?実はですねその運命の瞬間からカメラは密着していました。
恐竜大発掘プロジェクトの現場は…発掘に向けた事前調査です。
化石の続きを確かめる勝負の日。
(鈴の音)恐竜研究の第一人者北海道大学の小林快次さんが調査の先頭に立ちます。
熊よけの鈴を携え山深い道を歩き続ける事30分。
たどりついたのは傾斜40度の崖の中腹。
尻尾の化石はここで発見されました。
表面の土壌を取り除くと泥岩泥が固まった岩にたどりつきます。
うわっ!こんな強くやってて大丈夫なんですかね?これは化石から少し離れた岩。
でもこんな固い岩の中に化石が隠れているんです。
早速化石のかけらが見えてきたようです。
この先に隠れている化石。
それは尻尾だけなのかそれとも胴体なのか。
次に出てきた化石は…。
茶色だな。
あ〜出た!骨だ。
あ〜骨だ!あ〜よかったよかった!やったね!やったね!椎体が現れました。
その直径はおよそ9センチ。
これまで見つかった中で最も大きな椎体です。
つまりこの先は胴体方向に続くはず。
まあうまくいけば…胴体に続く骨が見つかったんですね。
何かホッとしましたね。
本当ですよね。
スタジオにはその発掘の指揮を執られました北海道大学総合博物館の小林快次さんに来て頂きました。
9センチの骨が出てきた時実際現場ではどんな感じだったんですか?もし大きいのが出れば当然体が埋まってる可能性がありますので。
本当にフィフティーフィフティーだったんですけどあれが見つかった時っていうのはもう最高にうれしかったですね。
やっぱり全身見つかるというのはすごい事なんですか?例えば北米大陸とかアジアの中国とかモンゴルに行くと比較的全身骨格っていうのは見つかっているんですね。
私もよく発掘に行くんですけど。
でも日本ってやっぱりなかなか見つかってなくて。
一つは山に行くと植物がいっぱい生えてますよね森林で。
そうすると…もう一つはちょうど日本っていうのはプレートとの境界にありますのでそうすると…今回のむかわ町穂別の恐竜なんかは地層がほとんど90度ぐらいに立っているというのでなかなかほかの大陸とは違うような発掘になりますね。
そっか。
それだけ地殻変動が起こってたという事ですよね。
地殻変動が多いと変形しますので地層が曲がったりあとは断層といいましてずれたりするんですよね。
そうすると仮に恐竜の地層があってもそれを追いかける事が難しかったりするので大陸とは違った探し方を…。
バラバラになるみたいな感じですか?そうですね。
地層がちょっとずれたりするので予測ができないって事があったりします。
じゃあこれまで見つかった日本の化石っていうのは僅かに露出していた岩みたいな所から見つかったって事ですか?そうですね。
地層がまず少ない。
限られてるという事もありますし。
あと有名な恐竜化石産地として北陸一帯とか福井県であったりあとは兵庫県ってすごく有名。
最近有名になってるんですけどああいう所の大体日本の恐竜っていうのは河川堆積物っていいまして川で運ばれた堆積物の中に恐竜の骨が残っています。
そうするとどうしても…そうすると全身で見つかるっていうのはなかなかまれだっていう事になってしまいますね。
でも今回の発見はこれまでとは全く条件が違ったんです。
あの恐竜が生きていた7,200万年前の発掘地点はこんな所だったんです。
うわ〜!あれ?アンモナイトがいますね。
はい。
あっ海だったんですか?結構深い所に積もった堆積物というのが分かってます。
その地層というか積もったものが地殻変動で陸地に上がって今発掘現場につながってます。
えっだけど…そうですね。
陸上にすんでいた恐竜が何らかの原因で死んでそれで流される訳ですね。
ちょうどこういう感じで多分流されていると思うんですけど。
このようにして10キロぐらい流されてそれが化石になる訳ですね。
さっき尻尾が見つかりましたけど…その時に体の中にたまったガス…死んだ時に中で発生しますけどそのガスが浮き輪の役割をしてプカプカと流されてそして化石化するという意味では全身骨格が発見されると。
へえ〜。
さあ本当に全身骨格が埋まっているのでしょうか?ついに本格的な発掘の始まりです。
日本初となる完全な全身骨格を目指し発掘隊の挑戦が始まりました。
やっかいな固い岩に対抗するため登場したのはショベルカー。
化石が見つかったのはこの場所。
掘り出しやすくするためにまずは両脇の崖を切り崩していきます。
そのあとは削岩機で岩石を削り骨が近づいたら手持ちの道具で細かく掘っていく。
徐々に道具を小さくしていくのが基本です。
出てきた茶色い石は椎体の化石。
尻尾の芯にあたる部分です。
えっそんな所から?そして椎体の下に位置する血道弓と呼ばれる部分。
発掘初日から尻尾の一部と見られる化石が次々と見つかります。
ところが化石を前にして小林さんが頭を抱えます。
どうしたというのでしょうか。
多くの化石が狭い範囲に密集していました。
現場で取り出そうとするとほかの化石を破壊しかねないのです。
とにかく出して…ここで登場したのが海外の発掘ではよく用いられる石膏を使った化石の保護法。
ジャケットと呼ばれています。
石膏を染み込ませた麻布で周囲の岩ごと化石を包んでしまう。
いわば化石のギプスです。
石膏が固まったら岩ごと現場から持ち帰ります。
こうする事で化石を壊す事なく安全に回収できるのです。
持ち帰った化石にはクリーニングと呼ばれる作業が行われます。
断面の焦げ茶色の部分が化石。
化石以外の岩を少しずつ丁寧に削っていくと正確な化石の形が現れてきます。
発掘開始から1週間。
見つかる化石が徐々に大きくなってきました。
胴体に近づいています。
現れた化石は幅だけでも15センチほどあります。
そして更に下方向に続いています。
でかいですね。
これまでは尻尾ばかりでしたがこの化石は後ろ足の一部です。
そしてこの恐竜の種類の特定につながる発見がありました。
指の先の部分?そうですね。
この恐竜は植物を食べるハドロサウルス科の仲間だというのです。
ハドロサウルス科の指は幅広い長方形の形が特徴です。
発掘されたのは丸ごと全体が一つの指の骨。
ハドロサウルス科の特徴と一致していました。
でかいなやっぱ!でっかいですね。
発掘19日目徐々に化石の分布も絞られてきました。
そしてこの年最大の発見を迎えます。
それは発掘隊の目の前には少し前から現れていました。
あっそうかもそうかも!岩が剥がれて隙間から大きな化石の一部が姿を見せていました。
巨大な後ろ足の化石でした。
ももの部分の大腿骨に加え膝からすねへとつながった状態で見つかりました。
関節の形が保存されている非常に状態のよい化石です。
実はずっと目の前にあり触ってもいましたが誰も気付いていなかったのです。
クリーニングされた大腿骨がこちら。
恐竜の巨体を支えていた太ももの骨で長さは1.2メートルにも及びます。
この恐竜がいかに巨大だったかを物語っていました。
うわっ。
もう着実に胴体に近づいていってますよね。
でもやっぱ大きいですね。
大きいですね。
ただこれだまし絵というか隠し絵みたいになってて見えないんですねあれね。
ですよね。
こちらご覧下さい。
今回見つかったその大腿骨。
実物の大きさです。
ギャッ!これから推定される恐竜のサイズはこちら。
いやこんなに巨大な生き物が歩いてた訳ですよね。
でもこのハドロサウルスってどんな恐竜なんですか?ティラノサウルスとかトリケラトプスああいう恐竜が生きていた白亜紀後期という時代にすんでいた恐竜です。
へえ〜。
これで重要なのはこの恐竜がいろんな大陸にいる。
例えばユーラシア大陸であったりあとは北米大陸にいた事も非常に大きいですし…。
それではこちらご覧下さい。
うわっいろんなタイプがいるんですね。
そうですね。
今世界中から数十種類のハドロサウルス科が見つかってます。
…でこの大繁栄のカギなんですけどもこの恐竜の頭骨。
特に…ではこれをちょっとご覧下さい。
ちょっと待って下さい。
大きいなこれ!これモンゴルから発見された…ハドロサウルス科のカギというものなんですけどくちばしを見てもらうとカモノハシみたいにくちばしを持っているという事がまず1つとあと奥に歯がぎっしりと生えているんですね。
この辺ですか?こういう所ですね。
というふうにして植物を食べていました。
すご〜い!これは兵庫県から発見されたハドロサウルス科の下顎。
ちょうど今歯が見えるように撮った写真です。
どこが歯か分かりづらいと思うんですけども実は一つ一つが…えっ一つ一つがこういう形?そうですね。
え〜!そんなに…。
ハドロサウルス科というのは恐竜の中でも特に…先ほどハドロサウルス科というのは白亜紀後期という時代に栄えましたって話しましたけど実はその時代というのは植物もある大きい変化がありました。
裸子植物って裸の植物ですから。
被子植物は覆ってるんですね。
やっぱり一つ覆う事がある事で…ハドロサウルス科のもう一つの大きい特徴っていうのは実は頭の上にあるトサカ。
これご覧になると分かると思うんですけど。
すごいいろんな形があって個性的ですね。
先ほどは食べるという話をしましたけど生命としても当然子孫を残すっていう非常に重要ですので…という事にまた全力を注いだ恐竜という事があります。
今回穂別北海道の恐竜に関しても…今年9月この恐竜の全貌を解き明かすため発掘隊は最大の目標である頭部の発見を目指します。
現場の崖は更に切り開かれ落石防止の金網が張られるなどより大規模な体制となりました。
ほぼ全身が埋まっている事を確信した発掘隊は大きく石膏を作り効率よく化石を回収していく作戦に切り替えます。
2年前の地表はこちら。
それから6mも掘り進んでいます。
頭骨への期待が高まる中重大な発見が相次ぎました。
歯の化石が次々と発見されたのです。
歯が見つかるという事は近くに頭の化石が埋まっているはず。
小林さんはその分布に注目していました。
特に今年…小林さんはこれまで見つかった尻尾や足の化石との位置関係そして歯が集中して見つかる事からこの部分に頭骨が埋まっていると予測したのです。
発掘を始めて16日目。
小林さんは現場から持ち帰ったある化石に着目しました。
ここに骨の輪郭を…例えばこうあるんですよね。
こうやって。
…でここからこうやって。
ここからまた入り組むんですよ骨が。
見えているのは化石の断面。
小林さんは頭骨ではないかと感づいていました。
この断面は本当に頭骨なのか。
急きょクリーニングが行われます。
そしてついにその日がやって来ました。
これはこれまで見つかってきたハドロサウルス科の頭骨。
今回の化石は上顎の断面と一致しました。
頭骨の化石である事が確認されたのです。
大発掘は頭の化石にまでたどりつきました。
残りの大部分もこの中に隠れている事が期待されます。
へえ〜。
形見ながら何か当てはめていく感じがパズルみたいですよね。
ですよね。
断面で判断できちゃうって事は先生の頭の中には3Dのイメージが入ってるんですかね?やっぱり論文なんかでもよく図はあるんですけど写真とかあるんですけど…そうするとその形っていうのを目だけで認識するだけじゃなくて触る事で結構かなりインプットされてるんですよね。
そうすると頭骨の中でもこの断面かなこの断面かなというのを想像していくとこれは多分上顎の骨の一個の断面だっていうのが分かってきたりします。
すごいですね。
今回は顎の部分でしたけど頭のほかの部分も見つかりそうなんですか?多分頭骨のほとんどはまだクリーニングしてない段階ですけどもジャケットって先ほど言った白いあの中にたくさん入っているというのは確信してますね。
今回すごい大発見だと思うんですけど…日本ってなかなか恐竜が見つからないという冒頭で話しましたけど意外に実はあるんじゃないか。
実は僕はあるとは思ってはいたんですけど…僕は子どもの頃って日本からは恐竜の化石は出ないというふうに教わった覚えがあるんですよ。
それがだんだん進んできて断片が見つかってそして全身骨格まで来たと。
そうですね。
今回の場合も最初発見されて博物館の方で7年間も恐竜と分からずにずっと保管されていたんですよね。
今まで恐竜じゃないなと思ってたものが恐竜だったりする事もありますのでそういう目で見て…。
まあそうあってほしいですし…小林さんどうもありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに。
2015/04/26(日) 23:30〜00:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「恐竜大発掘 出るか!?日本初の完全骨格」[字]

11月23日放送分。恐竜発掘に2年半完全密着取材。当時海だった地層に、なぜか恐竜化石が眠っていた。実は海の地層だったからこそ完全骨格の可能性が高いのだという。

詳細情報
番組内容
2014年11月23日放送分。北海道で日本の恐竜研究の歴史を塗り替える大発掘が行われている。見つかった化石は植物を食べることに究極に進化した「ハドロサウルス科」。発見状況からは、日本で初めてのほぼ完全な全身骨格の可能性が高いのだ。番組取材班は、全身骨格と見積もられる前から、2年半にわたってこの調査・発掘に完全密着。どのような技術で恐竜を発掘するのか、どのようなプロセスで種が同定されているのか。
出演者
【ゲスト】北海道大学准教授…小林快次,【司会】竹内薫,南沢奈央,【キャスター】江崎史恵,【語り】土田大

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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