ある夜のこと。
村人たちから信頼の厚い占い師のばあさんの家に旅姿の少年が一夜の宿を求めてやってきました。
最初は断ったがなにやら思い詰めた様子なので詳しく話を聞いてみました。
すると継母から命を狙われ少しの荷物だけを持って逃げ出し旅を続けているという。
夜な夜な亡くなった母が夢枕に現れ導かれるようにここに来たのだと言いました。
身なりも振る舞いも裕福な家で育ったと見えその容姿は目を見張る美しさです。
このままでは目立ちすぎて追っ手が来て捕まるかもしれない。
まずは安全に身を隠せる場所を見つけ誰にも身元を知られないようにしなければと思いました。
次の朝ぼろを着せ仕上げに頭から灰をかぶせて目立たぬようにして長者どんの屋敷へ連れていきました。
幸い人手が足りなかったので雇ってもらうことになり見た目から灰太郎と名付けられました。
屋敷には大勢の使用人と病弱な娘とその世話をするばあさんが住んでおりました。
娘は歳も近くまじめに働く灰太郎を誰よりも身近に感じておりました。
(灰太郎)はいお嬢様。
ありがとう。
あっはい。
おい灰太郎葉っぱ片づけておけよ。
はい。
灰太郎それが終わったら庭掃除しとけよ。
はい。
ヘヘヘ。
おい湯がぬるいぞ。
はい。
まだまだぬるいぞ。
さぼるなよ。
はい。
こんな日々の繰り返しで気がつけば10年の月日が流れておりました。
そんなある日年に一度屋敷の者が楽しみにしている芝居見物に出かけようとした折娘の具合が悪く一緒に行けなくなりました。
心配した長者どんは灰太郎に娘の世話を頼み出かけていきました。
えっ。
大丈夫ですか?ウフフフウソついちゃった本当は具合悪くないの。
娘は行きたいところがあるので灰太郎に一緒に来るように言いました。
いつも優しく気にかけてくれるお嬢様のお供ができることが嬉しくて急いで着替えてきました。
お嬢様。
もうすぐだから待ってて。
えっ誰?灰太郎でございます。
ほんとに灰太郎?はい。
あ〜。
はぁ…。
あっ!お嬢様お嬢様。
みんなが戻ってきてから屋敷は大騒ぎ。
娘は目覚めたものの目はうつろで何を聞いても返事がありません。
心配した長者どんは医者に診てもらうことにしました。
熱もないし大丈夫でしょう。
どうぞ。
お連れしました。
あっばあさま。
どれどれふんふん。
なるほど。
ひょっとして灰太郎の顔を見たのかい?はっウフ。
アハハハ心配ないこりゃ恋わずらいじゃ。
恋わずらい相手は誰じゃ?恐らく使用人の誰かじゃろう。
好きな相手がおれば婿をとってもおかしくない年ごろじゃ。
明日みんなを集めて杯を持たせ娘がその杯を受け取った者を婿にするがええ。
長者どんはみんなに身を清め精一杯の支度をしてくるように伝えました。
灰太郎を見たか?来るわけなかろうが。
着替えるもんがないからのぅ。
(3人)アハハハハおっ。
さあ始めようかのぅ。
うん?はあ?あれは誰じゃ?さあ存じませぬが。
あっ受け取られたぞ。
チクショウ運のいい奴じゃ。
顔見せて灰太郎。
はい。
(みんな)えっ灰太郎!?
(みんな)お〜!
(3人)し信じられん!本当に灰太郎なのか?ああ。
なんという美しさじゃ。
なぜ今まで隠しておった?ばあさんはなぜ隠さねばならなかったのかそのすべてを長者どんに話しました。
事情を知った長者どんはばあさんに礼を言い使用人たちにはこれからは婿殿と力を合わせ屋敷を盛り立ててくれと頼みました。
跡を継いだ灰太郎はみんなの信頼を得て屋敷を栄えさせ幸せに暮らしたそうです。
昔むかし山里の村に長者と3人の使用人がおりました。
酒好きの長者使用人を束ねる頭小さくても働き者の大助正直だけが取り柄の小太郎です。
(小太郎)行ってくるでなトラ。
(トラ)ニャ〜。
おや?小太郎の奴が見えねえな。
オラならここだ頭!
(2人)うん?ほら見るべこんなに採っただよ!そんなところで採ってたら滑って転ぶぞ。
早くこっちへ来い。
心配すんなってこう見えてもオラ…。
あ〜!
(2人)あっ。
(大助)だから言わんこっちゃねえ。
飯にすっか。
3人は得意な仕事も不得手な仕事も助け合ってこなしました。
そんな使用人たちを長者様は大事にしました。
長者様は大好きなお酒を飲みながら3人の話を聴くのが楽しみでした。
優しい人たちに囲まれて小太郎は幸せでした。
(セミの鳴き声)おや小太郎の奴どこ行ったんだ?あんまり暑いんでそこらへんでのびてるかもしれませんよ。
なに小太郎の奴がいなくなった?捜すんじゃ。
小太郎や〜い。
返事しろ。
出てこい。
小太郎はとうとう見つかりませんでした。
使用人たちは小太郎が山で死んだものと思い深く悲しみました。
そして三年後の夏になりました。
「はぁ〜毛野の国より天の国」「神の怒りで舞い上がる」
(2人)あっあの声は!お前今までどこ行ってたんだ?長者様もオラたちも心配したぞ。
へい急に眠くなったんで少し横になったらお日様が…。
こいつ酔っ払ってる。
(小太郎)トラけえったぞ。
トラがいねえどこにもいねえ!トラならおととしの盆にプイッと出ていったきり戻ってこねえよ。
アハハハなに言うだあいつは去年オラが山で拾ってきたんでねえか。
いいか小太郎。
お前がいなくなったのは三年前の夏なんだぞ。
えっ三年?最初はみんなよりたくさんキノコを採ってやろうと山の奥へ向かったんじゃ。
行っても行っても見つからずそのうち疲れてしまってすると不思議な池のあるところに出たんじゃ。
どうにものどが渇いて池の水を飲んだんじゃ。
すると飲めば飲むほど気分がよくなって寝てしまったんじゃ。
目が覚めて慌てて山を下りたらこのありさまじゃ…。
ふ〜む…その池の水は酒じゃな。
そんなバカな…。
いや昔から滝が酒になったという言い伝えがあるくらいじゃ。
それにこの男仕事は半人前でも正直なことでは村いちばんじゃ。
(大助)長者様は酒に目がないからのう。
黙らっしゃい!次の日長者様は小太郎に道案内をさせて酒の池を探しに山へ登りました。
(長者)ここか!こんな池は見たことがない!頭大助小太郎!村へ戻ってもこのことを話してはいかんぞ!
(3人)へい。
それでは早速…。
プッ!このウソつきめ!ただの水ではないか!しばしお待ちを!苦楽駄無羅塔苦楽駄無羅塔…。
もう一度飲んでみてくだせえ。
ん?こりゃ上等な酒じゃ!
(2人)ん…うまい!お前何か隠しておるな。
お前が唱えた呪文で池の水が酒に変わったんじゃろ。
それは…。
それをわしに教えてくれ!天狗様のお言いつけじゃ。
それだけは勘弁しておくんなせえ。
天狗様じゃと?それが何じゃ。
これまでよくしてやった恩を忘れたか!お前がそんな恩知らずとは思わなかった!今日限りお前には出ていってもらう!どうかそれだけはご勘弁を…。
そんなら教えてくれるな。
あれはオラが居眠りしてたときのことだ…。
人の声がして目を覚ますと池のそばで人の何倍もの身の丈の天狗様が酒を飲んでいらっしゃった。
この世に人間ほど愚かな生き物はいない。
人の物が欲しくなると殺してでも奪おうとする。
だから戦が絶えんのじゃ…。
ん?酒が切れた。
では私が。
苦楽駄無羅塔苦楽駄無羅塔…。
ん?これは酒の匂い…。
いったい…。
ひいっ!見たな!ひいぃっ!そこな者ここで見聞きしたこと決して人に話すなよ!決して言いません!どうか命ばかりは!その呪文を教えるんだ!でも天狗様のお言いつけが。
お前は正直だけが取り柄なんじゃ。
今までの恩を忘れてわしに隠し事をしてよいと思ってるのか!さあ!さあ!さあ!わかりました。
オラ正直に生きるだ。
苦楽駄無…。
わぁ!助けて!わぁ〜っ!小太郎は正直になろうとして天狗との約束を破ってしまいました。
それから小太郎は二度と戻ってきませんでした。
昔岩手の茂市を流れる閉伊川筋の村に兼吉という男がいました。
この兼吉穏やかでのんびり者ですが笛の腕が立ちその音色は村の人々はもとより山の動物たちまでもがうっとりと聞き入ってしまうほどでした。
ある春の日村の家々から1人ずつ山の木の伐採に出るようにと代官所からお達しがありました。
おお兼吉どんも来たか!また笛を聴かせてもらいたいのう。
そうじゃ兼吉どんの分までわしらが仕事をする。
その代わりわしらに笛を吹いて聴かせておくれ。
(みんな)そうじゃそうじゃそれがいい!そうみんなが言うので兼吉はのんびりと寝て待つことにしました。
そして仕事も終わり代官所から握り飯と酒が運ばれてきました。
さぁ兼吉どん笛を頼む。
よっ!待ってました。
(兼吉)へぇ…それじゃ…。
〜そのうち仕事の疲れと酒の酔いもあり全員ぐっすりと寝入ってしまいました。
〜これはいったいどうしたことじゃ!
(2人)わっ!わ〜!目を覚ました村人たちは獣の群れに腰を抜かして驚きました。
クマが襲ってくるんじゃないか!?
(2人)このまま生きて帰れるんじゃろうか〜!兼吉は一心に笛を吹き続けます。
そして獣たちはその音色にうっとりと聞き入っておりました。
〜そして獣たちは互いに争うこともなく姿を消していきました。
(2人)今のはいったい…。
は…まるで夢のようじゃ。
お前さん方どうなさった?兼吉は笛に夢中で獣たちに囲まれていたことにまったく気づいていませんでした。
一日の作業を終えた村人たちの労をねぎらうために代官所では宴が準備されておりました。
今日はご苦労であった。
しかしこの藩の大事な事業である。
皆の衆しっかりとふんばってくれよ。
さぁ遠慮せずにどんどん飲んで食べなされ!はて先程より皆浮かぬ様子じゃがいかがいたした?お代官様今日わしら信じられないことに出くわしたんでございます。
村人は先程の出来事を代官に話しました。
ほお!それはいいことを聞いた。
兼吉とやらおぬしに頼みごとがあるのじゃ。
オラにですか?そうじゃ。
わしと一緒にがま淵に行って怪物退治の手伝いをしてもらいたいのじゃ。
怪物退治なんぞ…。
オラは笛を吹くことしか能のない男です。
その笛こそ必要なのじゃ。
代官の話を聞くと…。
このところ村のはずれにあるがま淵というところに…。
怪物が現れるようになったそうです。
うわぁ〜!何をするわけでもなくただ佇んでいるのですが村人は恐れて近づくことができません。
しかし代官が出向くと決まって姿を現しませんでした。
そこで兼吉の笛でおびき寄せて退治しようというのです。
それから数日後霧の深い夜に代官と兼吉は捕り方を従えがま淵にやって来ました。
やはり出ないな…さぁ兼吉笛を。
お代官様ここはひとつオラに任せてもらえませんか。
その怪物もしかしたら何か言いたいことがあるやもしれません。
そう言うと兼吉は笛を吹き始めました。
〜やがて兼吉と代官の前に大きな黒い影が現れました。
〜その黒い影は兼吉の笛に聞き入っているようでした。
そして代官もいつしか笛の音に心を奪われていました。
お代官様。
おお?代官が我に返ると霧は晴れ怪物の姿はもうありませんでした。
お代官様あの黒い影はこのがま淵の主です。
最近がま淵の祠には誰もお参りに来ず荒れ果てていくばかりなのでそれを伝えたかったようです。
オラの耳には主の声がはっきりと聞こえました。
なに?それはまことか?なるほどこれはいかん…。
代官は早速がま淵の祠をきれいにして村人が安心してお参りができるようにしました。
それ以来淵の主は姿を現さなくなりました。
兼吉の奏でる笛の音はどんな生き物をも魅了しました。
人々は笛吹き兼吉…と呼んだということです。
2015/04/26(日) 09:00〜09:30
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし[字][デ]
「灰かぶり灰太郎」
「天狗の酒」
「笛吹き兼吉」
の3本です。お楽しみに!!
詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。
この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
語り手
柄本明
松金よね子
テーマ曲
『一人のキミが生まれたとさ』
作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
歌:中川翔子
コーラス:INSPi(Sony Music Records)
監督・演出
【企画】沼田かずみ
【監修】中田実紀雄
【監督】鈴木卓夫
制作
【アニメーション制作】トマソン
ホームページ
http://ani.tv/mukashibanashi
ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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