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美少女5人が、オーナーとかGMとか外国人獲得とかプロ野球の球団運営にのりだした! 作者:三半次浦

フロントシャッフル

印税脱税息犯人の作家がデブで切れゼイゼイ

 超体育会系で、高校大学共々、野球の実績を全面に押し出し、入学の門を強引に切り開いただけに、国語はてんで苦手で文章構成力皆無のルナに小説執筆は敷居が高すぎた。
「書き出しがすーと入れば、溢れ立つ発想力を余すことなく投入すれば、荒削りだけど、ダイヤの光を放つノベルが書けるはずだけど」
 ネットサイトだけに、執筆はもっぱら、PCのキーボードに思いの丈をぶつけるか、慣れたスマホで、友人に向けて急ぎのメールを打つように両親指を滑らかに動かすかだ。
 ルナは、スカウト部全員に支給される14型モニタのノートパソコンで執筆活動を開始する。本来、このノーパソは、当然仕事用。選手データを整理したり、球団上部にスカウト活動を精密に報告したりするためのもの。趣味に過ぎない小説執筆は禁じられる使用のはずだが、ルナはマニュアル通りに仕方なく執筆しているのだ。これも立派な仕事上の一環で禁じ手にはなりえない。
 現代若者らしく、PCスマホの操作には長けているルナは、肝心要と位置づけた一行目を試しうちしては、しっくりこず、すぐさま消しては書き直す作業を繰り返す。
「『今日は晴れです。でも私の心は曇り模様です』。ぬぬ、なーんか違うなあー。『自転車を走らせたら坂道でいきおいつきすぎて転びました。痛かっです。お母ーさんと泣き叫びました』。ぬぬぬぬ、野球とも恋愛とも無関係な語りだしは読者の興味を逆に惹くかもしれないけど、これ、ちょっと関係なさすぎねー」
 題材は慣れ親しんだ野球で、舞台はこれも自身と年代が近いハイスクール。そして、物語は恋模様を中心に動く構想だ。スポーツと恋愛の組み合わせ。爽やかな青春ものを想起するが、ルナが生み出す最初の一文は、どう考えても、小学生、それも低学年の児童が宿題の課題で出された作文をいやいや書いたようなレベルにしかない。
「『資格、視覚、死角、四角。野球に必要なものはどーれ? 恋愛に必要なものはどーれ? 答えは全部』……ぬぬぬぬぬぬ、なーんか、しっくり来たぞー。この一文が、核弾頭に、切り込み隊長に、牽引役になって、あたしのインスピレーションの泉をサクッと刺激して、地球が終わるような大洪水が起きるくらいに、ドバドバーとアイデアが溢れ出てきて、それが眠りこくっていた名文書きの才能にガッチリと車輪が噛み合い、芥川賞とか、直木賞とか、このミステリーがすごい!とか、富士ファンタジア文学賞とか、侍ジャパン小説大賞とかを受賞しちゃうくらいの小説が生み出されるはず!」
 ルナが何を思ってその一文の書き出しに満足したのか、他人には到底理解できないが、とにかく、ルナはこの文章をルナノベルズ球団の栄えあるトップバッターに指名した。
 最も労力が必要な最初がかっちり決まれば、あとはルナいわくスイスイだ。
「あたしって野球の天才であることは間違いないし、顔とスタイルだって、アイドルとして通用する自信がある。それに加えて、文才まで備わっていたら、神はあたしに二物どころか、三物も与えたことになっちゃうじゃない? それじゃ他の人にあまりに不公平ねー。小説家なんて、見るに耐えない顔していて、運動神経ゼロで懸垂もできない、ないない、人生、なんにもないくんとか、さんが、なるものでしょう。あたしに与え過ぎじゃない? まあ与えれたからにはそれを最大限に武器に人生を謳歌させてもらいますけど」
 ルナはもう大小説家になったつもりだ。小説に疎いルナでも聞いたことはある。この小説サイトはネット最王手で、ここから生まれた作品からの文庫化などは日常茶飯事。なんとアニメ化までして、当然そこまで行けば印税ガッポリ。中には莫大な収入を惜しんで隠して脱税で逮捕された作家すらいる。
「印税。素敵な言葉ね。寝てても遊んでいても、預金通帳には使えないくらいのお金が振り込まれる。はあー。ただキーボードを思いのまま叩くだけで金になる。キーを乱打する音が、チャリン、チャリンと金がそこら中に散らばる音にも聞こえてきたわー」
  本来はハンデ師に流していい情報を混ぜ込ませるだけが目的の執筆活動。そこにアクセス数や読者の反応を期待する余地はどこにもないはずが、ルナは間に入る人脈の仲介人からの返礼待ちより、自分の小説に魂を揺さぶられた真の読者からの反応を心待ちにしてしまっている。
 ただ最王手で莫大なアクセス数を誇るこの小説サイト、裏を返せば、ライバルとなる作品群も星の数あるということ。よほど、読者のニーズを掴まない限り、アップされた小説は、一瞬にして海底に埋もれていく。
「え、アクセス2? って、なんで、なんで、天才の小説をみんな見ないの? どうせ、2のうちの1は情報欲しさの人脈の誰かさん。ってことはアクセスしてくれた真の読者は一人?」
 ルナは十分単位で判明する自分の作品へのアクセス数のあまりの少なさにめまいすら覚える。
「まあ、いい。とりあえず、一人、読者さんゲット。この読者さんを離さないように精進すれば、きっと すぐにでも、あたしの作品の素晴らしさに皆、気づいてくれるはず」
 ルナらしい切り替えの速さを見せたが、不意に届いた感想欄へのメッセージがふたつ。ひとつは情報提供を感謝する人脈からの返礼に違いない。
「でもって、もうひとつのメッセージは、驚くべき才能をいち早く見つけられた自らの幸運とあたしへの御礼メッセージに違いない。ふふふ、アクセス実質1で1の絶賛って、打率でいうと十割打者じゃない。天才じゃない、うふふ」
 
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