安保法制:基地周辺住民に賛否 期待と懐疑、不安が交錯

毎日新聞 2015年04月25日 00時32分(最終更新 04月25日 09時41分)

 自衛隊の活動範囲を大きく広げる政府・与党の協議が、大詰めを迎えた。自衛隊を「普通の軍隊」にしていくための安全保障法制を巡って、基地のそばの住民たちの間で賛否は割れ、期待と懐疑、不安が交錯する。【まとめ・鈴木泰広】

 埼玉県と東京都にまたがる陸上自衛隊朝霞駐屯地。近くに住む同県朝霞市の男性会社員(26)は「攻撃対象にされないかと不安も正直あるが、武力がなければ国民を守れないので(安保法制が進むのは)仕方がない」。

 神奈川県横須賀市には米海軍基地と陸海空の自衛隊基地がある。米軍基地で働く同市の男性(50)も「戦争を起こさせないために、ぎりぎりの外交努力とともに集団的自衛権を行使する構えが必要だ」と理解を示す。

 一方、愛知県の航空自衛隊小牧基地のそばに住む同県春日井市の男性(72)は「基地が戦争当事国の攻撃目標にされる恐れが高まる。知らない間に戦争に巻き込まれるのはごめんだ」。米海兵隊と海自航空部隊が共同使用する山口県の岩国基地の近くに住む主婦(54)も「集団的自衛権にしろ安保法制にしろ憲法9条を骨抜きにする。暴走列車に乗っている気分」と批判的だ。

 沖縄県には在日米軍施設の74%が集中する。米軍普天間飛行場がある同県宜野湾市の主婦(53)は「自衛隊と米軍が一体化し、日本が米国の戦争に巻き込まれることが現実味を帯びてきた気がする。有事に真っ先に狙われるのは在日米軍基地。そう思うと怖くて仕方がない」と語った。

 ◇揺れる自衛官

 安保法制を巡り、防衛省内や現場の自衛官の反応も複雑だ。

 防衛省幹部の一人は「任務は政治が決めること。我々は命令を受け淡々と遂行するだけだが、これまで以上に危険を伴うなら派遣について国民の理解が大前提だ」と話す。

 別の幹部は「危険だから派遣できない、というなら組織の存在意義にかかわる」と言う。「国内の災害派遣でも危険な任務は多い。海外派遣の時だけ『自衛隊員を危険にさらす』と反対することには違和感がある」

 北海道千歳市の陸自東千歳駐屯地に所属する30代の男性自衛官は海外派遣に懐疑的だ。「約20年前に入隊したころ国連平和維持活動などもほとんどなかった。海外派遣も最初は希望者優先だろうが、将来はどうなるか」

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