官邸にドローンを飛ばした元自衛官が実はブログに犯行について書いていて、ニコニコ静画にオリジナルのマンガを書き残しているらしいというのをFacebookで発見した。なんの気なしに読んでみて、その質の高さに驚いたのだが、彼はきっとこんな犯罪を試みなくても、マンガという表現で世に自分の考えを問うことができたんじゃないだろうか。そんな気にさせる全二話の短編だ。
僕がレビューを書いた『デモクラティア』や『ギャングース』でも、実は裏テーマでは、世代間の対立について描いている。しかも、その描き方は『理由なき反抗』のような古い道徳に対する若い世代の反発ではなく、税金の分配というゼロサムゲームを描くのだ。シルバーデモクラシーと言われる状況で、この国で少しでも公平な税の分配を行おうとしたとき、ある種の過激主義者がこうした考え方になることは、わからなくはない。
1980年(昭和55年)に発表された田中康夫の『なんとなくクリスタル』のなかで、合計特殊出生率の、当時の実績と予想が掲載されていた。それを見ればわかるが、もう30年以上前に少子高齢化、医療保険や年金制度がかなり高い確率で破綻する運命にあることがわかっていた。
そして、有権者の平均年齢が57歳(2012年のデータ)となり、選挙でこの問題が解決される望みがほぼ絶たれた今、世の中のことをよく知ろうとしている、投票意欲の高い人ほど絶望感が増している。『デモクラティア』や『ギャングース』がある程度の人気を得ている状況というのを、民主制における多数派(60代後半以上の有権者)がどう受けとるのか、全く気にしないのか。前の戦争のときのように、どっちにしろ一回ガラがこないと誰も理解できないのか。
話は変わるのだが、ちょっとだけ気になったのが、このマンガの中で「ワシラが命を懸けた戦争」という表現が出てくるところだ。実は戦争で一番死んだのは1923年(大正10年)生まれで、現在90代である。70代、そして80代も85歳以下は戦争のとき子どもで、命をかけて戦闘してはいない。だからはっきり言って戦争に行った老人というのはものすごく人口としては少なくなっているのだ。このマンガのように70代っぽい老人は子どもだったのである。若者はこういう説教をまともに聞いてはいけない。
ネタバレになるのだが、このマンガは破滅に向かうストーリーかと思いきや、テーマとは全く反対の結末を迎える。彼の意図したものだったのか、あまりに悲惨な結末を避けるために中庸を選んだのかわからない。彼が現実の世界で採った選択肢とこのマンガがどのように関係しているかも分からない。ただ、彼を突き動かした衝動は「絶望」だったのだろうということは、なんとなくわかる。なぜなら、物語の結末においても若者の問題というのはいっさい解決していないことが描かれているからだ。
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