事前レビュー「UI考(番外編) AppleWatchについて、あまり語られてない視点」の続き、週末に使ってみた雑感。
通知マシーンとしての素晴らしさ
通知マシーンとしては文句なく素晴らしい。手首に対する自然なノックからはじまる通知と確認のプロセスは、みにまるに設計されている。Facebookのメッセンジャーやカレンダーなどとの相性は抜群だった。
全てをぶちこわす致命傷
いっぽうアプリのプラットフォームとして考えた場合、これはまだ実用に達していないと判断した。おそらく一番致命的な問題はレスポンスの遅さだ。 Apple Watchの謳う最大の価値は、「携帯を取り出すより楽」なことと「グランサビリティ(一目瞭然性)」だった。ところが実際触ってみると圧倒的に遅い。これはiPhone本体とのBT通信が全てを台無しにしているためだ。
例えばグランスやアプリを使用する場合を考えてみよう。アプリ利用時にユーザーが行うプロセス数を比較した場合、Apple WatchとiPhoneでは下記のようになる。
Apple Watchグランス/アプリの起動プロセス
iPhoneアプリの起動プロセス
図表の上では、Apple Watchのほうがプロセス数が少ない。だが実際に試してみると、iPhoneを使った場合のほうが明らかに速い。これは以下の3つの制限が、Watchにおけるスピード面でのボトルネックとなっている為だ。
スムーズな体験を阻む三大ボトルネック
この速度のボトルネックと操作性により、結局のところWatch上でアプリを操作するという選択肢はほぼありえない。ある程度以上の操作を想定すると、トータルの行動コストで考ればiPhoneを取り出すほうが、明らかに利便性が高くいからだ。可能性のある分野はせいぜい、現状ステータス、ログの確認、何かの忘備録ぐらいであると考えられる。
Apple Watchに向いたアプリ
Apple Watchに向かないアプリ
あえて長所というならば、Watchでは「通知をみたあとにアプリでなにかをする」というプロセスが発生しづらく、「通知をみる→終了」という行動になる点だろうか。この特徴により、リアルワールドでの行動からが阻害されにくくなる点は確かにあった。ユーザーが手を離せない作業をしている場合や、ランニングなどを行っているときには有効な特性であると考えられる。
しかし、これはWebサービス側からすればこれは逆に離脱率の増加であり、仮にWatchが普及した場合、回遊率やらPV、ActiveUser数やらは大きく下がるものと思われる。
Watchアプリを作るべきか?
現状としては、中立からNoという立場にある。これは市場シェアがまだ小さい点が一つ。そして仮に市場シェアが大きくなっても、ユーザーは「Watchのためにアプリを乗り換える」という行為が想定できない点だ。Watch対応はあくまで副次的要素であり、ユーザーがアプリを使うかどうかの最大の点は、そのアプリをiPhone側で使っているかどうかに依存すると思われる。つまり、新規プレイヤーのためのフロンティアではなく、すでに勝っているプレイヤーが余剰人員で対応すべきもの・・・ということだ。
「話題性目的」か「人と金、時間が余ってる」のどちらか、あるいは真にWatchのためのアプリ、そういったものでなければWatch対応は見合わないのではないのか。アプリを作るのではなく、単に通知だけ対応しておけばよいと考える。