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シゴトノオト
シゴトがうまくいくヒントがありそう!人気のコノ人に「シゴト」について聞きました
月曜更新
ひがしでまさひろ 1988年2月1日生まれ、埼玉県出身。2004年、第19回『MEN’S NON-NO』専属モデルオーディションでグランプリ受賞。12年映画『桐島、部活やめるってよ』に出演。同作品では、第67回毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞、第36回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。14年映画『クローズEXPLODE』では初主演、『寄生獣』ではパラサイト・島田秀雄役、『アオハライド』ではヒロインが恋する馬渕洸役と幅広い役で多くの観客を魅了。テレビではご存じ、13年放送のNHK連続テレビ小説『ごちそうさん』で朝の顔の一人として活躍、現在はNHK大河ドラマ『花燃ゆ』で久坂玄瑞の熱い魂を演じている。
課題や悩みを抱えながら
自分の生きかたを証明し続けていきたい
映画『桐島、部活やめるってよ』の俳優デビューからわずか3年。
国民的作品のメインキャストに名を連ねるのも、もはや自然のこと。
「飛ぶ鳥を落とす勢い」でスター街道まっしぐらの俳優・東出昌大の人気ぶり、
もはや日本人離れした長身と美形だけが理由ではなさそうだ。
東出昌大が、こんなにも愛されるワケは?
稽古の量と質で
セリフを自分の言葉へ
人前で、「ライブで演じること」が芝居の原点だと思います。その歴史に触れてみたいという気持ちが以前からあったので、舞台『夜想曲集』への出演のお話をいただいたときは、とてもうれしかったです。同じ演出家のもと、同じセリフを何十回も何百回も掘り下げて稽古するのも、映像とは違うところ。新しい経験でどんな発見が生まれるのか楽しみです。
プレッシャーはありますが、それを超える稽古の量と質で自信をつけたいと思います。わかりやすいのが、セリフを噛むんじゃないか……!?という心配です。でも、よく考えてみると日常生活において、喋りながら噛むことってほとんどないんですよね。本当の言葉を話しているからだと思うんです。だから、セリフが自分の言葉になるまで落とし込めば、噛むこともないし、よりその人物として生きられるんじゃないかな、と思います。舞台は遠くから見ているお客さまもいらっしゃいますので、ニュアンスだけでなく全身を使って表現したいです。とにかく、やりきること。来てくださるお客さまが「よかった」と言って帰ってくれるものを目指します。
ビジョンは考えず
今を全うする
現在出演しているNHK大河ドラマ『花燃ゆ』では吉田松陰の弟子・久坂玄瑞を演じています。役柄ごとに、自分の気持ちが変化していくほうで、今は、その時代を命がけで生きている人物を演じることでアドレナリンが放出されています。時代劇の衣装に身を包むと、心も溶け込みやすくなる、不思議ですよね。下駄を鳴らしながら台本を読んでいるとセリフが覚えやすいんですよ。楽しみながらも、もちろん悩みながら演じています。たとえば、NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』では、主婦層のかたには「いい!」と思ってもらえたとしても『花燃ゆ』を見た、歴史好きのお父さんがたから「こんなのは久坂玄瑞じゃない!」と言われてしまったら終わりです。常に新しいお客さまを目の前にして、瀬戸際です。だからオンエアを見ていると、自分が出てないシーンでは「おもしろい作品だなあ!」と手放しで感心できるのですが、自分が出ると「感情が動いていたはずなのに画(え)には出てないな」など一気に自分の演技のチェックをしてしまったりします。ただ、ほかの作品も含めて自分のいいところを見つけようとは思っていません。自分にプラスの評価をしてしまうと、次も同じことを狙ってしまう悪循環になってしまうと思うから。役が違うし作品が違う。そのときごとにリセットして、役柄をしっかり生きることを大事にしています。今後のビジョンというより、技術的な部分での課題はいくつもあります。まず、感情を入れてセリフを言うと、言葉と言葉の間が均一になってしまうクセを直すこと。感情が入っているのは大前提ですが、いろんな「間」があって、緩急がついていないと見ている人は白けてしまいます。『セリフは歌のように、歌はセリフのように』と言ったりしますが、もっと「見えかた」を考えた役づくりを心がけようと思っています。このシゴトはご縁によるものだと思っています。何年後に何をしたい、とか具体的なことは考えないようにしています。いただいたシゴトを全(まっと)うしながら成長していきたいです。
このシゴトに対して
覚悟ができました
「役者さんって忙しいんでしょう?」と聞かれることがよくあります。表に出ているからそう思われがちですが、役者は現場に1番最後に入って1番最初に帰るんです。照明部さん、美術部さん、撮影部さん、衣装部さんなど、スタッフの皆さんは役者が入る前から準備をして、帰ってからも後片づけをしています。自分ばかりが疲れているのではないので、弱音は吐かないように心掛けています。プラス戦友意識、みんなで一緒につくっていることを忘れないことで、モチベーションが上がります。
以前『an』でインタビューを受けたときに「まだ役者とは言えない」とコメントしていました。役者として成長する実感が得られない部分があり、このシゴトを続けられるかどうかの不安もありました。たぶん、いつでも逃げられる道を用意しておきたかったのだと思います。ちょうど同じタイミングで事務所の社長に「最悪、このシゴトじゃなくても食っていく根性はあります」と生意気なことを言ったことがあります。社長からは「シゴトは『生きかたの証明』だと思え。今このタイミングでこのシゴトが続けられなかったら、この先、何をしてもダメだしそんな甘い考えでほかのシゴトに就けると思ってはいけない。目の前にあることをやり続けることで、作品が生きかたを証明してくれる」という言葉をもらいました。その言葉は、とても心に響きました。もう言い切らないといけないし、言い切ります。僕は、今もこれからも、役者です。もし、シゴトがなくなったとしても役者しかない、という覚悟ができました。
イギリス最高の文学賞「ブッカー賞」を受賞した経験を持つ世界的作家・カズオ・イシグロの初短篇集を初舞台化。短篇集の中から『老歌手』『夜想曲』『チェリスト』の3篇が選ばれ、1つの戯曲として再構築された。現在日本の演劇界が注目する脚本の長田育恵、演出の小川絵梨子のタッグにも期待が集まる。東出さんは初舞台にして、チェロ奏者を演じるため、役づくりとしてチェロの演奏にも挑戦しているとか。濃厚な舞台になりそうだ。
オフィシャルサイト➡http://hpot.jp/stage/nocturnes
■原作:カズオ・イシグロ ■脚本:長田育恵 ■演出:小川絵梨子
■出演:東出昌大、安田成美ほか