印南敦史 - スタディ,仕事術,働き方,書評 07:30 AM
「年収1億円の時給はいくらか?」稼げるコンサルタントが意識しておくべきポイント
『稼げるコンサルタント 稼げないコンサルタント』(柳生雄寛著、すばる舎)の冒頭「はじめに」には、次のような一文があります。
サラリーマンをやめて、コンサルタントとして独立したけれど、会社員のときのほうがお金の面でも精神的な面でもよかったと言う人は多いのです。逆に言うと、稼げるコンサルタントはこのような悩みを解決している人とも言えます。
コンサルタントには漠然と「稼げる人」というイメージがあるだけに、少しばかり意外な気もします。が、著者は、このような悩みが起こるのは仕方がないことだといいます。なぜなら多くのコンサルタントは、稼ぐためのコンサルティングの技術を学ぶ機会がないから。我流でコンサルティングをしているため、稼げるコンサルタントとは逆のことをしているということ。
かくいう著者は、船井総合研究所で1日35万円以上の報酬を得るトップコンサルタントとして経験を積み、独立後は多くの企業のコンサルティングに携わっているという人物。つまり本書は、そのような経験によって導き出した、「稼げるコンサルタント」の共通点をまとめたものだということです。
では、もし「稼げるコンサルタント」を目指したいのなら、どのような考え方をすべきなのでしょうか? 第1章「年間報酬3000万円を実現し、1億円超えも現実的になる「年収戦略」の違い」からポイントを引き出し、稼げないコンサルタントと稼げるコンサルタントとの違いを比較してみましょう。
年収1億円の時給がいくらか言えるか
稼げないコンサルタントは年収1億円に憧れているだけで、
稼げるコンサルタントは年収1億円の時給がいくらか言える
会社員をやめ、独立したてのコンサルタントは、「1億円プレイヤーになりたい」というような夢を抱くそうです。しかし、こういう漠然とした夢を見ているコンサルタントは、一生、年収1億円には届かないと著者は断言しています。
なぜなら、1億円という数字は漠然としすぎていて、「どんな仕事を、どれくらいの時間こなせばいいのか」がわからないから。なにを何時間やるのかが明確でなければ、いいコンサルティングはできないので、クライアントに結果を出させることも不可能。したがって、お金を稼ぐことなどできないという流れです。
それに対し、1億円の収入を得ているコンサルタントは、「1時間あたりいくら稼げばいいのか」を知っているもの。別な表現を用いるなら、「年収1億円は時給でいくら?」と聞かれたとき、パッと答えられた人は、年収1億円を達成できる可能性が高いということ。
年収1億円=時給5万円
1億円÷12カ月=840万円(1カ月で稼ぐべき金額)
1カ月に21日働くとしたら、日給は40万円(840万円÷21日=40万円)必要。
実働8時間だと考えれば、時給は5万円(40万円÷8時間=5万円)。
ここまで明確になってはじめて、1時間5万円を稼げるコンサルティングの内容を決めることが可能に。つまり、目標を分解して、いま、なにをすべきかを見極めることが重要だというわけです。(22ページより)
時給を上げる方法を考えられるか
稼げないコンサルタントは年収を上げようとし、
稼げるコンサルタントは時給を上げる方法を考える
ビジネス書にはよく、「自分の理想の年収をイメージする人だけが、その収入を達成する」というようなことが書かれています。しかし、コンサルタントでありながら、年収という単位だけで収入をイメージする人は、稼ぐことは不可能だと著者。
理由は、「年収を上げよう」と考える以上、目標が漠然としていて具体策がイメージしにくいから。すると「仕事量で理想の年収を稼ぎ出す」という思考に陥ってしまっても無理はないわけですが、それでは有効なコンサルティングはできないということです。
では、稼げるコンサルタントはどうしているのでしょうか? この点について著者は、「(稼げるコンサルタントは)年収を上げることを考えるのではなく、前項でも触れたとおり『1時間の単位を上げる』ことを考えている」のだと説明しています。たとえば、1億円プレイヤーになるのなら、「1時間5万円」でコンサルティングできる方法を模索するということ。この視点を持っていれば、仕事の質を重視するようになれるというわけです。
そして単価で考えるコンサルタントは、緻密に稼ぐ手段を考えるそうです。彼らは「理想の時給を稼ぎ出すためには、どうすればいいのか?」と考えるので、具体的なアクションをイメージすることが可能。欲しい時給を稼ぎ出す手段を考え、それを積み上げていったときに、年収は高まるという考え方です。つまり、稼げるコンサルタントの時給が高くなるのではなく、時給の高いコンサルタントが稼げるコンサルタントになるということ。
ここで著者は、「稼げるコンサルタントはどんなことを考えているのか」を具体的に挙げています。
1.時給いくらを手にするか?
2.「どんなコンサルティング」を「何人に」「いくらで」するのか?
3.どんな人をターゲットとするか?
4.もらうギャラの3倍はクライアントに稼がせる
5.なぜ、自分はコンサルタントをしているのか?
6.なにを伝えるのか?
7.誰とやるか?
8.何回やるか?
9.どのようにコンサルティングするか?
10.いつからいつまでやるか?
(41ページより)
他にもいろいろありますが、稼げるコンサルタントは、最低限このようなポイントを押さえているそうです。そして、もうひとつ「注意すべきこと」として著者が訴えているのは、「場所とパッケージにこだわらなければならない」ということ。
まずは場所ですが、どこでコンサルティングを行なうかはとても重要。時給5万円をもらうときに、チェーンの安いカフェでコンサルティングをするという発想はナンセンス。時給に合った場所を選び、クライアントの不満が出ないようにするべきだということ。
また、時給5万円をいただくのに、安っぽいスーツを着てコンサルティングを行なうことも厳禁。どれだけいいノウハウを持っていたとしても、見た目が頼りなくては、クライアントは高いギャラを払うことに躊躇してしまうもの。つまり、パッケージを整えることも、コンサルタントの大切な仕事だということです。(36ページより)
このように、「稼げるコンサルタント」と「稼げないコンサルタント」を比較しながら要点を解説しているところが本書のメリット。以後も「営業戦略の違い」「対人スキルの違い」「マインドの違い」「コンサルスキルの違い」を比較したうえで説明がなされているため、とてもわかりやすいと思います。
また、書かれていることの多くは、コンサルタントを目指す人のみならず、すべてのビジネスパーソンが応用できそうだとも感じました。
(印南敦史)
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