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社説:赤字の秋田内陸線 路線維持、広範な議論を
県と北秋田、仙北の沿線2市が80%近くを出資する第三セクター秋田内陸縦貫鉄道(北秋田市)の2014年度経常赤字が、3年ぶりに2億円を超える見通しとなった。
赤字を2億円以内に抑えるという経営目標は、会社、県、2市が10年に確認した4者合意に基づく。以来、県と2市は赤字補填(ほてん)のため毎年、2億円を拠出している。2億円を超える分は県と2市の負担にはならないが、経営目標の達成は4者が合意した秋田内陸線存続の条件だ。
そもそも赤字が続くようでは会社は生き残れない。秋田内陸縦貫鉄道はその重みをいま一度かみしめ、一層の経営努力をしてもらいたい。
経営圧迫の最大の要因は、利用者数の落ち込みによる減収だ。年間の利用者は全線開通した1989年度の107万人をピークに急速に減り、2013年度は33万人と3分の1以下となった。14年度も4〜12月は25万人余りで、13年度同期を5%ほど下回っている。沿線人口の減少で定期利用者が減り、観光利用も思うように伸びていないからだ。
県議会の「第三セクター等の経営に関する調査特別委員会」は昨年12月、三セクの経営実態や課題をまとめた報告書を公表した。内陸線については「今後数年間、地元の熱意を見極め、成果が見えなければ路線廃止などを検討するべきだ」と提言。「生活の足として必要といった抽象的な理由で多額の公費投入を継続することには県民の理解が得られない」とも指摘した。
提言を受け、県は本年度、沿線住民3千人を対象にアンケートを行う。利用実態やニーズを把握し「地元の熱意」を探る。
全線開通以来、内陸線には赤字補填だけで県と沿線自治体から50億円以上が投じられてきた。地域交通を守るためだ。観光路線として沿線外から利用促進を図ろうという視点も重要だが、何のため、誰のための路線維持なのかという問いに、まずは地元が「熱意」を示し、少しでも利用増を図ってほしい。
内陸線の営業距離は94・2キロで、三セク運営の鉄道としては全国屈指の長さだ。その分、施設の維持や更新にも多額の費用が掛かる。
施設整備は輸送の安全確保に欠かせない。4者合意に基づいて、改修は県が担うことになっているが、財源としている基金の残高が想定以上のペースで減っている厳しい現実もある。
内陸線に限らず、乗客が減れば公共交通機関の存続は危うくなる。人口減が進む本県では、遅かれ早かれ交通基盤の根幹が揺らぐ地域も出てくるだろう。
赤字路線の維持に、財政支援はどこまで許されるのか。路線を維持することの効果は財政支援に見合うのか。内陸線の赤字を沿線のみの問題と捉えるのではなく、路線バスなども含めた公共交通機関全体へ議論を広げる契機としたい。
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