最近、あるテレビ番組の取材に協力して、築40年超の老朽マンションを取材して回った。かなり危ういマンションもいくつかあった。
マンションは基本の構造が鉄筋コンクリートでできている。鉄筋を周りのコンクリートが包み込んで躯体を形成しているのだ。
コンクリートは新築の時にはアルカリ性だが、空気中の二酸化炭素と化学反応を起こすことで、徐々に中性化が進む。数十年後、中性化が鉄筋に達するとさびが生ずる。さびた鉄筋は膨張して、まわりのコンクリートを破壊する。
中性化の速度は年間0・5ミリと言われているが、これは建物によってかなり異なる。水セメント比率が小さいほど中性化の速度は遅いとされている。水を多く混ぜることで打設がしやすい「シャブコン」は、建設直後は何ともないが数十年後の耐久性はかなり危うい。
コンクリートの中性化を防ぐには、大規模修繕時に1・5センチ程度のポリマーセメントモルタルを外壁の表面に塗布すれば、寿命は60年程度延びるとされている。
しかし、実際にそれぞれのマンションの寿命が何年なのかは誰にも分からない。というのは、日本に鉄筋コンクリートの住宅ができてから、まだ100年もたっていないからだ。
本格的にマンションが建設、分譲され始めて区分所有法が施行されてからですら約53年である。つまり、日本には築50年のマンションはあっても、築80年のものはほとんどない。
さらに建設業界のアピールを信じれば、コンクリートの性能は50年前よりも進化している。「100年コンクリート」という概念も日本建築学会で定められている。もし本当にそうなら大規模修繕なんて不要なはずだ。