社説:スカイマーク 消費者利益を守れるか

毎日新聞 2015年04月27日 02時31分

 経営破綻し、民事再生手続き中のスカイマークが、全日本空輸を傘下に置くANAホールディングスの出資を受けることになった。

 航空自由化により誕生した国内の独立系4社中、先に経営難に陥った3社はすでにANA陣営にある。ANAと日本航空(JAL)の両巨頭に属さない「第3勢力」が事実上、不在となることで、競争が緩み、運賃の引き上げなど消費者の不利益につながることはないか、心配だ。

 スカイマークの破綻直後から、同社への資金支援を続けてきた投資ファンドのインテグラルは、大手航空会社に出資を仰がず自主再建する道を目指していた。しかし、ANA側の資本参加抜きでは再建計画に対する大口債権者の支持を取り付けるのが困難な情勢となり、出資受け入れを決断した模様だ。

 合意によると、出資比率はANAの最大19・9%に対し、インテグラルが50・1%と過半を占め、「独立性も第三極というポジションも維持できる」(スカイマーク)という。

 しかし、社長を含む取締役の半数を実質、ANA側が指名するという。再生スカイマークがのびのびと独自色を出し、本気で既存勢力と競争していけるのか、気がかりだ。

 既存の大手にない革新的な事業のやり方で、消費者に新たな選択肢を提供する。競争を活発にし、既存業者のサービスも刺激する。そんな役目が期待される新規参入者だが、本来、挑むべき相手が主要株主という関係の中で、どこまでそうした役目を果たせるか、疑問を拭えない。

 ただ、だからといって「日本の航空業界で新規参入者の成功は無理」とあきらめるのは早計だろう。海外には格安航空会社(LCC)の成功例が多数ある。そうした実績のある国外勢に、新たな競争の担い手役を期待する道もあるのではないか。

 それには、環境整備が要る。その一つが外資による出資を3分の1未満に抑えた外資規制の緩和だ。対日観光熱の高まりもあり、日本の国内線事業への参入に関心を持つ海外のLCCはある。しかし、それには3分の2以上の出資を日本国内で募らなければならない。新規参入者に、リスクを取って資金を拠出する投資風土が乏しい現状では、なかなか困難だ。

 もちろん、外資規制さえ緩めれば、競争が活発になり、消費者の利益につながる、というものではないだろう。パイロットや整備士などの人材確保も新規参入の課題だ。

 だが、「成長戦略」「地方創生」を掲げる安倍政権である。観光はその両方で重要な分野だ。消費者の選択肢を増やし、地方経済の活性化にもつながる新規参入の道を大胆に開拓してほしい。

最新写真特集