大都市のあり方を直接、住民に問う、過去に例のない試みだ。後戻りできない…[続きを読む]
特別養護老人ホームやグループホームを対象に、高齢者への虐待の有無につい…
特別養護老人ホームやグループホームを対象に、高齢者への虐待の有無について聞いた全国調査で、1510施設が「あった」「あったと思う」と回答した。この項目に答えた約9千施設の約17%にあたる。
調査はNPO法人が実施、この3年間について聞いている。虐待は▽暴力▽緊急やむを得ない場合を除く身体の拘束▽威嚇的、侮辱的な言葉▽状態に応じた介護を怠ること、などだ。
虐待が高齢者の人権を侵害する行為であって、許されないことは論をまたない。同時に、虐待の土壌として、介護現場の人手不足があることも、かねて指摘されている。認知症や、手厚い対応が必要な高齢者の増加もあって、職員の労働は過重になりがちだ。余裕のなさや疲れが高齢者に対する配慮や優しさを奪ってしまう。
人手不足の解消と、人手不足の原因となっている低賃金問題の解決が急務であることを改めて訴えたい。介護職の平均賃金は、全産業平均に比して月約10万円低い水準だ。
しかし、現実には賃金の原資となる介護報酬は今年度から引き下げられている。予算措置を待っていては、問題の解決が先送りされることにもなりかねない。賃上げ以外にも、虐待を防ぐためにできることは尽くすべきである。
まず、職員に対する研修の充実だ。人手不足を背景に、異業種から介護の職場に移る人も増えている。何が虐待にあたるのか、知らないための虐待、対応に困って高齢者を怒鳴りつけてしまうことを防ぐためには、知識や介護技術を基礎から丁寧に教える必要がある。
経験を積んだ職員にとっても研修は日々の介護を振り返ったり、高齢者への接し方で気になる点を互いに指摘し合ったりする機会になる。
基本的には各施設での実施になるが、国や自治体も積極的に関わるべきだ。都道府県が実施して参加を募る方法もあるし、研修を実施する施設や業界団体に費用を助成する支援もある。また、施設のトップに対する研修が効果的だとの指摘もあり、これを行政が主催してもいい。
高齢者虐待防止法は、自治体に虐待の相談・通報窓口を周知させるよう求めている。家族の通報や職員の内部通報があれば、自治体は施設への事実確認を含めて必要な対応を取ることになる。窓口が広く知られ、施設が「外の目」を意識するようになれば、抑止にもつながる。
虐待の根絶に、官民の知恵が求められている。
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