5年に1度、約190カ国の担当者らが核軍縮などを話し合う核不拡散条約(NPT)再検討会議が、27日から始まる。

 核兵器のない世界への歩みは依然として進まず、むしろ核を巡る世界の状況は悪くなっているなかでの開催だ。今年は広島、長崎への原爆投下から70年の節目にあたる。暗雲を払う道筋を示すことを期待したい。

 2010年の前回会議では、核廃絶への具体的措置など、64項目の行動計画を盛り込んだ最終文書が採択された。しかしこの5年間、その中身はほとんど達成されていない。

 例えば核大国である米ロの戦略核。3割減らす条約が11年に発効したが、両国の関係悪化でその後の交渉は停滞している。ロシアは核使用を示唆する動きすら見せ、不透明感を増す。

 懸案だったイランの核開発を巡っては米国などと枠組み合意に達した。一方、前回会議で開催を約束された中東非核化への国際会議は、関係国の合意が得られず開催のめども立たない。

 NPTの非加盟国に目を転じれば、インド、パキスタンは核兵器を増やしている疑いが強い。NPT脱退を宣言した北朝鮮も核実験を継続する。

 こうした情勢にどう歯止めをかけるか。

 風穴をあける端緒として期待したいのが、国際法で核兵器を禁じようという動きだ。前回会議の最終文書で「核兵器の非人道性」が明記されたのを受け、非核保有国の間で急速に拡大している考え方だ。

 昨年末、非人道性をテーマにウィーンで開かれた国際会議には米英も参加した。ただ核を安全保障の根幹に位置づける核保有国側は、核兵器の禁止は断固として応じないかまえだ。

 会議を主催したオーストリアは、再検討会議を前に禁止に向けた「効果的な措置」を考えようと呼びかける文書を出した。

 核保有国が主張する段階的核軍縮に進展がないなら、もっと効果的な別の道を考えるのは当然だろう。議論に背を向けず、接点を探ってほしい。

 残念なのは、米国の「核の傘」に依存する日本が非合法化に否定的なことだ。被爆国として特別の立場にある日本は、非核保有国側との橋渡しが期待されてきた。これではその役割を果たすどころか、核廃絶への流れを遅らせる恐れすらある。

 会議に合わせ、30人を超す被爆者が渡米する。最高齢の斎藤政一さん(90)は「生きている限り核廃絶を訴える」と語る。願いの実現に向け、とりわけ日本に積極的な行動を望む。