(沢嶋雄一)アブソリュートポジションN56W328E154S298ポジション確認。
怪我なしウイルス反応なし。
アブソリュートタイムB0214736年60時72分87秒。
西暦変換しますと1876年3月5日13時35分。
無事タイムワープ成功しました。
コードナンバー632456。
これから記録を開始します。
沢嶋雄一。
彼はタイムスクープ社より派遣されたジャーナリストである。
あらゆる時代にタイムワープしながら時空を超えて人々を記録していくタイムスクープハンターである
コードナンバー632456
明治4年廃藩置県が断行された。
日本中の武士たちは仕えるべき藩主を一斉に失う。
大量失職である。
小池長兵衛41歳。
彼もまたその一人である
この時代の人々にとって私は時空を超えた存在になります。
彼らにとって私は宇宙人のような存在です。
彼らに接触する際には細心の注意が必要です。
なぜなら私自身の介在によってこの歴史が変わる事もありえるからです。
彼らに取材を許してもらうためには特殊な交渉術を用います。
それは極秘事項のためお見せする事ができませんが今回も無事密着取材する事に成功しました。
1867年の大政奉還で武士の時代は終わった。
徳川家はもはや武士たちを養う事ができなくなった。
そこから大リストラが始まったのである
多くの武士は農業や商工業サービス業などに転職し全く新しいライフスタイルを見つけていくしかなかった。
だが元武士というプライドが邪魔をする。
長兵衛は進むべき道を見つけられないまま漫然と過ごしていくしかなかった。
生活費はすぐに底をつき妻とはやむなく縁を断ち里に帰した。
今は傘はりの内職でかろうじて食いつないでいる
(六之助)いるかい?長兵衛さん。
(長兵衛)おお。
また寝そべってんのかよ。
あんたいつもそんな事ばっかりやってるね。
六之助は同じ長屋に住む世話役である。
長兵衛を気にかけ時折こうして顔を出す
隣町の。
武士の生き方しか知らぬ長兵衛に商売へ踏み出す勇気はなかなかわいてこなかった。
元武士の多くは慣れない仕事に苦労し事業に失敗した。
転職は困難を極めていた
だが生活は限界に来ている。
このところ食事さえまともにとれない日が続いている。
そして長兵衛は一大決心をした
(正次郎)長兵衛ここだここだ。
長兵衛の長年の友人であり信頼できる男であった。
長兵衛は正次郎と一緒ならと商いに踏み出す事を決めた
新店舗の候補物件。
あまりの小ささに戸惑う長兵衛。
だが不安はそれだけではなかった
元武士にとってカステラ作りという菓子職人の見習いなど軟弱に思えてならなかった
決めるぞ。
返事がなあ…。
何だよ。
彼らが修業する店松野屋はカステラの人気店だ。
連日その味に引かれた客でにぎわっている
その味を守る主の寅吉は頑固一徹な職人だ
その後日本の文化と相まって独自の進化を続けてきた。
明治のこのころにはすっかり庶民に親しまれていた。
日本人の口に合うよう製法や材料に工夫が加えられていった。
そこには職人たちのなみなみならぬ努力があったのである。
当時のカステラは現代のものに比べて硬いものが多かった。
だが松野屋のカステラはしっとりとした軟らかさがある。
それが人気の理由らしい
いいですか?じゃあ端っこを。
ああ出来たてです。
何か現代でいうとホットケーキに近いような何かそういう味ですね。
おいしいですね。
どんな食材が使われているのかカステラの成分分析を行うべくリサーチを行う事にした
こちら沢嶋。
コードナンバー632456。
第2リサーチ室どうぞ。
(無線・女)「はいこちら第2リサーチ室」。
アイテムの成分分析をお願いします。
「了解しました」。
分析の結果水あめが含まれている事が分かった。
水あめこそ松野屋カステラの味と食感の秘密だった
2人を待っていたのは予想外の展開だった
こっちは私と一緒に店を手伝ってくれる小池長兵衛です。
よろしくお願いします。
聞こえないのか?はい。
え〜っとほうき…。
ここにある。
そっちの裏にもあるから。
はい。
いつまでやってんだよ。
もうすぐ終わります。
ご主人すみません。
武士の時代には受ける事のなかった屈辱的な扱い飛んでくる叱責
その翌日もやらされるのは掃除ばかり。
長兵衛の気持ちはなかなかついていけない
ここほら。
何だこれ?四角いものは四角くやれよ。
しまっとけよ。
おいおい…。
こんな事したらこれにほこりが入っちゃうんだよ。
何考えてんだよ。
も…もうすぐ終わりますから。
もう一回ふき掃除しろ。
毎日毎日掃除ばかりやらされ全くカステラの製法を教えてもらえない。
長兵衛の我慢は限界に達していた。
そしてついに…
探ってる?何をだよ。
我慢なんかできるかよ!そんな事はないよ。
世間にはそういうやつもいるけどあの人は違うよ。
おいちょっと待て!待て長兵衛!うるせえ!はっきり言いますけどね…。
それが人にものを教えてもらう態度かよ?
(正次郎)長兵衛もういい!うるせえ!すんませんすんません!人にものを教える時はちゃんと敬意を払うんだよ。
侍を何だと思ってるんだ!何だお前その態度は。
それが人にものを頼む態度かよ?金払ってるから教えてもらうってそんな甘い考えか。
金なんかいつでも返してやるよ。
お前なんか二度と来んな!ああそれが本音ですか!それが本音ですか!やめさせようと思ってたんだろう!人の事いじめていじめて最後にやめさせようと思ってたんだろう!この野郎!何考えてんだいい年して!「いい年して」だと!?この野郎!長兵衛!長兵衛!長兵衛さん!長兵衛さんどこ行くんですか?
それから長兵衛は店に戻ってこなかった。
正次郎と共に長兵衛を訪ねる
長兵衛。
それだけを言いに来た。
何だと?おれへの当てつけか?何をばかな事を言ってるんだ。
いいからこれでも食って少しでも腹の足しにしろ。
それからこれからの事を考えるんだな。
余計なお世話だ!おれはもう考えてるよ!何だと…。
もう少し我慢できんのか!何だと…。
お前はそう思うかもしれないけどなおれはそう思ってるんだよ!昔になんかしがみついてないよ。
おれはおれの考えでやってんだ!またどっかでな!「どっかで」だと。
この野郎!何だよ!いい加減出てけ!すいませんすいません!
その夜長兵衛に距離を置いてカメラだけ残し部屋を後にする。
長兵衛はしばらく何かを考えていた
だが空腹には勝てないらしい。
正次郎の持ってきたカステラに手が伸びる
そしてそれをほおばる。
店を飛び出したふがいない自分を恥じたのかそれとも空腹に負けた自分に悔しかったのか。
カメラは彼が男泣きする姿を捉えていた
その後奇妙な行動に出た。
何かを決心したように刀を腰に差し外に出ていく。
まさか…。
一抹の不安がよぎる
翌日長兵衛の消息をつかむため松野屋で情報収集に当たる事にした。
…がその時!
このとおりです!私の方からもよろしくお願いします。
お願いします!え?表を掃除しなって言ってんだよ!はい!その間考えとくよ。
長兵衛!
長兵衛の大小の刀は結局主の寅吉が預かる事になった
その晩長兵衛はまげを落とした
よろしくお願いします。
こいつを手伝ってやれ。
分かりました。
そんな中うれしい知らせが2人に入る。
遅れていた開店資金が長屋の六之助のおかげでめどが立ったというのだ。
このころ友人知人の間で商売を始めたいという者がいると奉加帳が回された。
カンパでお金を集めるシステムだ。
時代は江戸から明治になってもお互いに助け合う精神は庶民の間で脈々と受け継がれていた
少しでも力添えしたいってそう素直に私に言ってくれたんだよ。
長兵衛。
ありがてえ事だよな。
長兵衛の中に込み上げてくるものがあった。
なんとしても頑張ろう。
長兵衛の決意はますます固くなる。
そして…
明くる日正次郎もまたまげを切った。
もはや武士としてのプライドはない。
2人の気持ちを受け止めた寅吉はカステラの作り方を本格的に教えていく
もっと速く。
もっと速く。
その白身と黄身を混ぜ合わせ小麦粉を入れる
蓋をして上下から熱を加える
この熱の倍ぐらいの熱をここに加えたいんだ。
上に。
時間は線香1本半。
およそ1時間だ
線香見とけって言っただろう!焼きの時間は線香1本半。
よく見とけよ線香。
犬も食わねえこんなもん。
慣れない作業なかなか思いどおりにはいかない
線香ばっか見てんじゃねえよ。
外の天気見ろよ。
雨が降りゃ粉だって湿気てんだよ。
その事頭に入れて火加減しねえか。
言われている事だけをやっていては駄目なのだ。
自分の頭で考え自らの力で道を切り開いていかなければならない。
変化に対応しなければ生き残る事はできない
ただいま午前2時を回ったところです。
まだ一度も納得した出来のものは出来ておりません。
果たして間に合うのでしょうか。
2人に修業の期限が迫っていた
お願いします。
焼きはうまくいった。
果たして味は…
無言で彼らのカステラを捨てる寅吉。
結果は不合格。
焼き加減に集中しすぎたため材料の配分を間違えたのだ。
頭では分かっているが体がついてこない。
焦りと緊張からミスが続く。
だがまだ時間はある。
期限は明日まで。
夜を徹して彼らはカステラを作り続けた
え〜長兵衛さんと正次郎さんにとって今日が修業の最終日となります。
ただいま最終試験中です。
寅吉さんに試食をしてもらい店が出せるかどうかそれを判断してもらう事になっています。
果たして結果はどうなるでしょうか。
よかったなおい。
よかったな。
彼らの店が開店した。
そこには頭を深々と下げる長兵衛の姿があった。
長兵衛はかつて別れた妻と復縁をした。
自分を支えてくれる人の存在を今ほどありがたいと思う事はなかった。
2人の元下級武士の小さな店はどの史料にも記録される事はない。
だが彼らのように時代の波にもまれながらも諦めず懸命に生きていた者たちが確実にいた
どうぞカステイラでございます。
本日開店でございます。
ありがとうございます。
いらっしゃいませ。
以上コードナンバー632456アウトします。
2015/04/22(水) 01:30〜02:00
NHK総合1・神戸
タイムスクープハンター セレクション「リストラ武士の奮戦記」[字]
「タイムスクープハンター」のアンコール放送。時空ジャーナリストの沢嶋雄一(要潤)が明治の初期、職を失った元下級武士を密着取材。カステラ作りの修業ぶりを描く。
詳細情報
番組内容
今回の取材対象は旧幕臣の下級武士。1867年の大政奉還を受け、徳川の時代は終わった。職を失った3万人の武士。そのうちの一人・長兵衛は、友人と一緒に人気のカステラ店に頼み込んで職人修業をする。ところが、主人の寅吉は厳しく、店の掃除しか命じなかった。ある日、大げんかが発生。その後、修業を再開するが失敗ばかり…。はたして、リストラされた武士は転職をすることができるのか?彼らの奮闘ぶりをドキュメント。
出演者
【出演】要潤
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドラマ – 国内ドラマ
バラエティ – その他
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