ことしも大学の門をくぐった新入生たち。
その大学が今、揺れています。
大学のレベルを示す世界ランキングに日本で100位入りできたのは東大の23位そして京大の59位だけ。
国は国際競争力の低下を懸念しています。
大学の競争力アップのために何をすればいいのか。
去年、国が打ち出したのがスーパーグローバル大学構想です。
指定された大学では今留学生の受け入れや外国人教師の増加など体制作りに着手しています。
しかしグローバル人材をどう育てればいいのか戸惑いが広がっています。
グローバル人材はどうすれば生み出せるのか。
取り組みを始めた現場の模索から考えます。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
世界で活躍できる人材を育てる教育環境を整備しようと国は総額1000億円に上る大規模な予算を、今後10年間スーパーグローバル大学に指定した37の大学に支給します。
スーパーグローバル大学創成支援事業と名付けられたこのプロジェクトは大学教育の国際化でグローバル化した世界で通用する専門的知識優れたコミュニケーション能力発想力、教養などを持つ学生を積極的に育成しさらに世界各国から優秀な学生を日本に呼び込もうというものです。
国境を越えたビジネスの最前線や世界トップレベルの研究機関で活躍できるグローバル人材は日本の国際競争力の向上には不可欠とされているからです。
スーパーグローバル大学に指定された大学にはとかく内向きになりがちといわれてきた学生たちに海外留学の機会を積極的に提供し国内においても外国人留学生や教師と接する機会を増やし多様な価値観を学べる環境を作ることがご覧のように求められています。
国は大学の国際化にアクセルを強く踏んだわけですけれども指定された37の大学では今具体的にどうやってグローバル人材を育てるのか考えなくてはなりません。
少子化によって大学間で学生の奪い合いの激化も予想されている中で大学のグローバル化はブランドイメージ向上にもつながると見られてはいるんですけれども大学が具体的に何を目指すのか模索は始まったばかりです。
スーパーグローバル大学の指定を受けた37校の一つ140年の伝統を持つ立教大学です。
今、大学では、変革への布石が次々と打たれています。
その一つが外国人留学生です。
現在抱える留学生は500人余り。
それを世界300の大学と提携を結ぶことで、最終的に4倍の2000人にまで増やす計画です。
こちらが今度寮として使用する建物ですのでご紹介をいたします。
留学生受け入れのために日本人学生と共同生活する国際交流寮の準備もキャンパスの近くで始まっています。
さらに外国人教員を20%にまで増やしたり英語による授業を始めるなどして日本人学生の国際感覚を高めようとしています。
去年、国が全国の大学に呼びかけたスーパーグローバル大学創成支援事業。
徹底的な改革を通じて大学の国際化を求めるこの事業に104の大学が応募。
それぞれの大学が出した改革案を国が審議したうえで37の大学が選ばれました。
13の大学が選ばれているタイプAでは世界の大学ランキングでトップ100に入ることを目標にしています。
一方、24の大学が選ばれたタイプBでは、各大学が日本の大学のグローバル化のモデルとなってけん引することが求められています。
この構想を打ち出した文部科学省です。
グローバル人材をどう育成するかはそれぞれの大学の方針に委ねられているとしています。
グローバル化をけん引するタイプBの指定を受けた立教大学。
創立者が掲げる真理の追究を重視した教育を行ってきましたが経営に対する危機感をきっかけにグローバル化へとかじを切りました。
立教大学の志願者は去年前年比で10%減少。
ことし持ち直したものの大学側は志願者が減少傾向にあると危惧しています。
さらに、明治大学と両方合格した場合、15年前は7割以上の学生が立教大学を選んでいましたが、今では逆転。
4割以下にまで落ち込んでいます。
加えて財政面でも、近年赤字に転落した年もある中大学のブランドイメージを回復させいかに志願者獲得につなげるか。
立教大学はグローバル化をその足がかりにしたいと考えています。
グローバル大学として指定され、国が示した枠組みを踏まえたうえでどのような人材を育てるのか。
国からは、その大学ならではの特徴ある育成方針が求められています。
その期限が夏に迫る中、この日学部長クラスの幹部が集まり検討を行いました。
グローバル人材を育てひいては国際競争力を向上させたい国。
一方、グローバル化を経営基盤の強化につなげたい大学。
それぞれの思惑が交錯する中改革への道は手探りの途上にあります。
今夜は、大学をはじめとする高等教育政策がご専門でいらっしゃいます、筑波大学大学研究センター准教授の加藤毅さんをお迎えしています。
スーパーグローバル大学に指定された大学は今、その期限に向けて、議論を活発に行ってる段階だと思うんですけれども、目標達成をしなければいけない項目が、いっぱいある中で、それを達成した暁には、大学がどう変わる、何が、どんな変化が起きるのか、期待できますか?
まず一番大きな変化は、キャンパスの日常が変わるってことだと思います。
日本の中で言いますと、どうしても日本語で日本の人とつきあってというふうなことが多くなってしまうんですけれども、今、いろいろな数値目標というふうなことで、なるべくキャンパスを国際化しよう、グローバル化しようというふうなことでやってます。
その中で日常生活の中で、例えば、英語を使う機会が普通に増えてくる、あるいは外国人と触れ合う機会が増えてくるというところからまず始まってくると思うんですけれども、そういった活動を通じて、徐々に、徐々にグローバルなものに対するアレルギーがなくなるというか、なんとなく日本の中と外、グローバルというふうなものに対して、どうも何かバリアのようなものが、心理的なバリアのようなものが。
壁ですね。
壁があるんじゃないかと思うんですけれども、そういったものが気が付かないうちに、いつの間にか克服されていて、自然にグローバルにふるまう世界で活動できるというふうな、そういうふうな準備ができていると、そういうふうな時間を過ごすことができるような、そういうキャンパスになっていくんじゃないかと。
そうすると人種や宗教の違う方々と、普通に接する、あるいは留学したことによって、また何か変わるとか。
いろいろ変わると思います。
まず、やはりことばの壁というのは非常に大きいのですけれども、日常的に外国人の学生とつきあってますと、日常会話の中で、あるときは日本語で話して、あるときは英語で話すというふうなことが、いつのまにか自然にできるというふうなことも当然起こってきます。
これはやはり、ボーダー、グローバルな壁を外すという意味では、非常に有効な経験だと思いますし、あるいはいろんな異文化とつきあうというふうなこと、大変難しいことでありまして、話としては聞かされていても、実際に経験しなければ分からないというふうなことが、たくさんありまして、学生時代にいろんな経験をして、いろんな失敗をして、そこで学ぶことを通じて、将来、グローバルな場で活躍するというふうなときに、そのときのために、有意義な準備ができる、そういうふうな場として、キャンパスというふうなもの、キャンパスでの経験が生きるというふうなことも当然あると思います。
こういう、国の方からは、こういうことは、やはり配慮しなければいけないとか、言ってはいけないこととか、そういったことがやはり、目に見えないけれども、接しないと分からないことが、たくさんありますよね。
たくさんあると思います。
学生時代にこそ、失敗をして、そこで本当に身につけるというふうなことができると、それは本当にけうないい経験になると思います。
そうしたことで、自分はどんどん外に出ていけるようになる人材が、輩出されると思うんですけれども、それにしても10年間で37の大学に対して、1000億円という予算をかけることになって、さて、そこのいわば投資に対して、どれだけ成果が上がるんだろうか。
先ほどのVTRで、文部科学省の審議官の方は中間評価をしっかりしていくと、厳格な評価、そして対応もあるとおっしゃっていたんですけれども、そのグローバル化の、大学のグローバル化が成功してるか、成功していないかっていうのは、これ、非常に評価が難しいことではありませんか?
難しいと思います。
先ほどのVTRの中で、タイプAとタイプBとありましたけれども、ここではタイプBに限定して、少し議論したいと思うんですけれども。
日本のグローバル化のモデルですよね。
大学としてのモデル校になると。
まずはやはり、キャンパスをグローバル化するということで、いろいろな数値目標がありますから、これは当然、達成しているというふうなことが求められるのは当然です。
あとはやはり、そのキャンパスを国際化する、グローバル化することはできるんですけども、じゃあそこで育つ学生がどう変わったかってことですよね。
キャンパスの雰囲気が、どう変わったか、そのあたりについて、できれば目に見えるような形で、大学の関係者、大学を見てる人たちがなるほど、この大学は変わったよねというふうな、そういうふうに思ってもらえるような、そういう成果が出てくると非常にいいんじゃないかと思います。
それはなかなか数値目標という形では難しいとは思いますけれども、そういうふうな形で大学が変わると、学生が変わると、雰囲気が変わるというふうなことが起こると、それは非常に価値のある、効果があることなのではないかというふうに思います。
それほど、お金がかかるものなんですか?
国際化というのは、本当にお金がかかります。
今回のこのスーパーグローバルについても、結局のところ、事業を実現するためには非常にお金がかかるということで、それぞれの大学が自分たちの財源から捻出するということを当然やってます。
実際に何がかかるかっていうと、留学をするというのは、これは当然お金がかかるわけです。
それから、やはり優秀なパートナーと一緒に事業をやろうと思うと、それは優れた先生を招へいしようと思うと、お金はかかりますし、あるいは優秀な学生を獲得するためには、奨学金というふうなものもかかりますし、いろんな形でお金がかかってきます。
ですからそこはやはり、必要なものだというふうなことで、ご理解いただくといいんじゃないかと思います。
そして、時間もかかるでしょうね。
さあ、続いてご覧いただきますのは、スーパーグローバル大学に指定されていない大学の取り組みです。
地方に根ざし、そして専門性にこだわったこの大学独自のグローバル化の動きです。
群馬県高崎市にある高崎健康福祉大学です。
一見、グローバル化とは無縁に見えるこの大学でも独自の戦略で取り組んでいます。
大学の薬草園では120種類以上の薬草を育て生薬の研究を行っています。
東アジアで需要が伸び漢方薬の原料として注目を集めるその生薬の分野でグローバル化を図ろうというのです。
3年前、ベトナムの薬科大学と提携を結びました。
多種多様な薬草があるベトナムで生薬をもとにした新薬の開発などに共同で取り組もうとしています。
この大学が、こうした取り組みを始めたのには理由があります。
前身は、主に地元の女性が通う家政学を中心とする女子短期大学でした。
しかし15年ほど前志願者が半減し定員割れに陥ったのです。
自分たちの大学はなんのために存在するのか。
考える中で目標に据えたのが地元へ貢献できる人材育成でした。
福祉や医療に特化した4年制大学に生まれ変わらせ高い技能を持つ職業人を育成。
そうすることで志願者を増やし大学の生き残りを図ろうとしたのです。
少人数制の授業で技能を身につけさせ国家資格も取得させています。
看護師や理学療法士などの合格率は全国平均を上回るようになりました。
またこの4月から訪問看護のエキスパートを育成する施設を作り新たな人材を育てようとしています。
地域と時代のニーズを踏まえた戦略で、大学の志願者はこの15年で8倍に増えました。
こうした地域貢献をより一層進めるためにあえて踏み込んだのが特定の分野におけるグローバル化構想でした。
ベトナムの生薬以外にもドイツのリハビリやフィンランドの介護など先進地に学生を留学させ高い技能を身につけさせる取り組みを世界各地で展開しています。
地方の大学が国からの指定を受けることもなく独自のグローバル化の形を見いだしたのです。
この大学では今後も成長性のある分野を見定めたうえでグローバルな人材育成を続けていきたいとしています。
ここで、こちらのグラフをご覧ください。
これは18歳人口と、4年制大学の数を表したグラフです。
ご覧のように、18歳人口は減少傾向を続け、一方で、4年制の大学の数は増え続けています。
現在、4年制の私立大学の46%が定員割れという厳しい状況です。
加藤さん、その厳しい生き残り競争というものがあるわけで、スーパーグローバル大学に指定されていない多くの大学、そのうちの、一つ、今見ました高崎健康福祉大学は、独自のグローバル化の取り組みをしていた。
どのようにご覧になられましたか?
大変、意欲的な試みだと思います。
こういった試みを見て思うのは、やはり日本の大学というのは、いろいろな非常にすばらしい種をたくさん持ってるというふうなことでないかと思います。
地方の比較的新しい大学なわけですけれども、国境を越えて、世界に出ていくと、いろんな形で新しい価値を生み出すことができるわけですね。
相手方がこの大学の持っている技術であるとか、知識を欲しいということを言ってきてくれるわけだし、そこでいろいろな共同研究ができたりとか、あるいは学生が学ぶような場が出来ているとか、そういうふうな形で、活動が本当に広がるわけですね。
地方にいながら世界のピンポイントですけども、世界の本当に質の高い人たちと触れ合うことができる、教員も学生も、触れ合うことができるというふうなことが、実際にできているということですね。
大学が本当に、グローバル化しているということじゃないかと思います。
実際、大学でもいろんなやり方で、世界とつながることができるということですけども、国際的な教育環境のもとで、成功してグローバルに通じる人材をどうやって育成するのか。
そのグローバル人材として、成功する人材って、なんなのか、どう考えたらいいんでしょうか?
いろいろな考え方があると思いますが、例えば先ほどの立教大学の例で見ますと、キャンパスで例えば外国人から授業を受ける、英語で授業を受ける、あるいは外国の友達と授業を受ける、会話をする、ディベートをする、いろんな形で、自分が、無意識のうちに自分を縛っていた、そういうふうな壁を取り払うことができるようになってくるのではないかと。
そうすると、世界が広がってくるんじゃないかと思うんですね。
先ほど、今の高崎健康福祉大学の例がそうなんですけれども、日本の中で籠もっていては、気が付かないのだけれども、世界に出てみると、実は自分の持ってるものが、非常に価値があるものだったと、非常に求められる、意味のある重要なもので、それを世界に出ることによって、それが価値が顕在化するというふうなことがあったわけです。
同じように、日本の学生も今までのように日本の中に籠もるのではなくて、大学でもって、そういうグローバルに出ていく準備ができるというふうなことができて、それでごくごく自然に、意識せずに外国に出ていくことによって、いろんなことが見えてくるんじゃないかと、いろんなことが発見できる、自分が分かる、あるいは、自分の持っているいろんなポテンシャルが発揮できるというふうなことなんかも期待できるんじゃないかと思います。
このプロセスを通して、どんな変化を日本にもたらしますか?
もちろん外国人が増えるということもあるかと思うんですけども、そういった日本の学生が、変わるわけですね。
日本が本当にグローバルに活躍できる学生が増えてくる、そのことによって、日本社会がグローバル化していく、それで社会が活性化していくということが起きてくると、スーパーグローバルの試みはすばらしいんじゃないかと。
2015/04/23(木) 01:00〜01:26
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「どう育てる?グローバル人材〜始まった大学の模索〜」[字][再]
世界の大学ランキングで低迷する日本の大学。国は、「スーパーグローバル大学」構想を立ち上げ、競争力アップを目指す。どんな人材をどう育てるか、大学の模索を見つめる。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】筑波大学准教授…加藤毅,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】筑波大学准教授…加藤毅,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:18535(0x4867)