失礼します。
練習を終えマッサージルームにやって来ました。
チームメートとの会話に耳を傾けてみると…。
数ある中で?どっちになりたいか?その思考回路はかなり独特。
来年のオリンピックで金メダルが期待される日本のエースです。
専門は…4つの泳法全ての完成度と持久力が求められる究極の種目です。
北京オリンピックで8冠。
水の怪物…世界大会で41個の金メダル…なみいる強豪を抑えて現在…目指すはキングオブスイマー。
その速さの秘密はどこにあるのか。
水中ハイスピードカメラが明らかにしたのは常識にとらわれない独自の泳ぎ方。
「どこまでも速くなれる」。
そう信じて歩んできた競泳人生。
しかし世界一を懸けたレースで惨敗。
課題を突きつけられました。
自らを追い込んだアメリカ合宿に密着しました。
(場内アナウンス)「萩野公介東洋大学」。
己の壁を打ち破れ。
萩野公介20歳。
その真実の姿に初めて迫ります。
朝7時。
大学の寮からプールに向かう萩野選手。
その口には…。
萩野選手は東洋大学の水泳部に所属しています。
この日のプール。
周囲がざわついていました。
いつもマイペース。
指導するのは…あの北島康介選手を育てた名将です。
一日の練習は6時間。
多い日には10キロ以上泳ぎ込みます。
平井監督が伝えるのは100mのラップタイム。
萩野選手は常に自己ベストなみのスピードで泳ぐハードな練習を繰り返します。
萩野選手の意識の高さには多くのメダリストを育てた平井監督も舌を巻きます。
冗談でね…コーチ仲間で冗談で言うんですけど萩野を苦しめるような練習メニューをねどうやったら作れるのかっていうようなね。
「天才だ天才だ」言われるんですけど天才っていうよりかはすごい努力家なんですよね。
萩野選手が大きな注目を集めたのは高校3年生で出場したロンドンオリンピック。
(実況)萩野は現在3番手。
萩野はどうだ〜!?萩野公介銅メダル獲得!400m個人メドレーで銅メダル。
日本男子初の快挙を成し遂げました。
そして自由形の4つで競う400m個人メドレー。
トップレベルの泳ぎと豊富なスタミナが求められます。
萩野選手の持ち味は自由形での圧倒的な加速。
大柄な海外の選手が相手でも一気に抜き去ります。
現在の世界ランキングは1位。
アメリカの権威ある競泳専門誌で世界最優秀選手に選ばれました。
萩野選手の速さの秘密はどこにあるのか。
私たちはハイスピードカメラによる撮影を行いました。
1秒間を250コマに分けて撮影できる水中ハイスピードカメラ。
これは水上の映像と水中の映像を合成する特殊なカメラです。
萩野選手の泳ぎをハイスピードカメラで分析するのは初めての試み。
すごいですよね本当。
お願いします。
よ〜い…。
(ホイッスル)水中ハイスピードカメラが捉えた萩野選手の自由形。
水をかく動き。
そしてキック。
どこに秘密が隠されているのか。
スポーツバイオメカニクスが専門の中島求教授。
気が付いた事がありました。
(中島)すごいですね。
やっぱり…これがすごいですよね。
注目したのは水上と水中を合成した映像。
萩野選手は水面より上に出ている部分が多いというのです。
クレーンカメラの映像で見ても頭や背中が大きく水上に出ています。
同じ大学の選手と比較します。
左が萩野選手。
頭や肩の位置を比べると違いが分かります。
体の大部分が水中にある場合大きな水の抵抗をはね返して泳がなければなりません。
一方の萩野選手。
水上に出ている部分が多いため水の抵抗が小さくスピードを出しやすいのです。
一体どのような意識で泳いでいるのか萩野選手本人に映像を見てもらいました。
やっぱり泳ぎながらも…もう一度ハイスピードカメラの映像を見てみます。
手のひらで水をかく瞬間下向きに強く押し込んでいました。
この動きで体を浮き上がらせているというのです。
中島教授は映像から動作解析を行いました。
赤い線は水をかいた時に力が生み出された方向です。
一般的な泳ぎ方では水の抵抗に逆らうため水平方向に水をかいています。
一方の萩野選手。
下に押し込むようにかき上向きの大きな力を得ていました。
体を浮かせ水の抵抗を小さくする事で大きな推進力を得る。
それが萩野選手が編み出した独自の泳法なのです。
まあそういったとこも非常に大事かなというふうには思います。
萩野選手の速さの秘密。
その肉体にも大きな特徴がありました。
泳いだ直後に行っているのは乳酸値の測定。
メモに記された萩野選手の乳酸値は20.5ミリモル。
ほかの日本代表選手の2倍近い値。
これは萩野選手が自らを限界近くまで追い込んでいる事を示すデータです。
体がエネルギーを生み出す時につくられる乳酸。
一定以上たまると脳が筋肉の動きを抑制します。
アスリートでも10を超えると思うように体を動かせなくなるといいます。
萩野選手の乳酸値は20.5。
通常の選手の限界を超えてもエネルギーをつくり出せる事が明らかになりました。
スポーツ生理学の専門家で日本代表チームのスタッフも務める岩原文彦さん。
これは萩野選手が激しい練習を続けてきた成果だと分析します。
体を浮かせて抵抗を避ける独自の泳ぎと高い乳酸値が示す驚きの肉体。
それが萩野選手の速さを支えていたのです。
親が全くスポーツもできないですしそんな馬みたいに血統書つきみたいなそんな感じでは全くないのでまあ自分は本当に…萩野選手の水との出会いは生後6か月。
母親とのベビースイミングがきっかけでした。
2歳の時には一人で泳げるようになっていたといいます。
ちょっと分かるんですけどすごくここヘルパーっていう…8歳から10年間通ったスイミングスクール。
一人のコーチが萩野選手の才能を引き出しました。
前田覚コーチです。
小学生にして既に高いレベルの泳ぎを身につけていた萩野選手。
前田コーチは技術指導よりもハードな練習を行う事を重視しました。
それが自己ベストなみのスピードでの泳ぎ込みでした。
そういう部分がやっぱり彼の中で…僕は毎日ハードな練習を続けてこの優秀選手賞の盾をもらいました。
(場内アナウンス)「萩野君御幸ヶ原SS」。
限界ギリギリのトレーニングで急成長を遂げます。
スイミングスクールの壁に並ぶ賞状。
各年代の記録を次々と塗り替えていきました。
そして中学2年生の時競泳人生を変える存在に出会います。
(実況)金メダル!断然強いマイケル・フェルプス!あのマイケル・フェルプス選手が北京で8冠を達成したのです。
常識を打ち破る快挙に強い衝撃を受けました。
フェルプスに近づきたいと臨んだ2年前の日本選手権。
個人6種目にエントリーし周囲を驚かせます。
自由形で優勝。
背泳ぎでは第一人者の入江陵介選手を下します。
シャ〜ッ!シャ〜ッ!フォ〜ッ!
(実況)なんと日本新記録で史上初の5種目制覇!前人未到の5冠。
自分を信じて努力すれば成長に限界はない。
(雄たけび)その思いが萩野選手を高みへと導いてきたのです。
萩野選手はアメリカでの強化合宿に臨みました。
標高2,100mアリゾナ州フラッグスタッフ。
多くのアスリートが高地トレーニングを行う町です。
4月の日本選手権に向けた1か月間の合宿。
代表クラスのスイマー10人が参加しました。
代表復帰を目指す北島康介選手の姿も。
萩野選手は日本選手権を来年のオリンピックに向けた重要な大会と位置づけていました。
空気が薄い高地での合宿。
取り組んだのはレース終盤での泳ぎの強化。
(酸素を吸入する音)高地の環境でも限界ギリギリのタイムでの泳ぎ込みを繰り返します。
萩野選手には向き合い続けてきた一つの課題がありました。
金メダル候補として挑んだ2年前の世界選手権。
(拍手と歓声)萩野選手は7種目に出場し最後は400m個人メドレー。
テイクユアマーク。
(スタートの合図の音)序盤から飛ばして先頭に立ちます。
しかしラスト100m。
得意の自由形で失速。
トップを奪われます。
すると粘る事ができず次々と抜かれます。
結果は…まさかの惨敗でした。
更に去年冬の短水路世界選手権でも優勝を逃します。
世界の舞台で勝てないのは何が足りないのか。
オリンピックまで1年半。
萩野選手は今回の合宿でその答えを見つけたいと考えていました。
そんな萩野選手を指導してきた平井監督。
気になっている事がありました。
萩野選手が周囲と交わろうとせず自分の世界に没頭する姿が見られたのです。
萩野選手は自らの力で壁を乗り越えようと考えていました。
まああの…自分で言うのもなんですけどあの〜基本…そうなんですよ。
人に興味がないんですよ。
別に人が何してようが何を考えようがどんな事をしていようが別にその人の勝手なんで別に勝手にやっていてくれっていう感じなんですよ。
合宿中盤。
萩野選手の心が動かされる出来事がありました。
日本選手権での代表復帰を目指し追い込みの練習を続けていた北島選手。
その時…。
右足の付け根に痛みを感じ練習を中断。
緊張が走ります。
動揺する萩野選手。
違う。
違います。
大丈夫です。
トレーナーの指示で練習を打ち切りました。
次の練習日。
トレーニングを再開した北島選手の姿がありました。
痛みの影響が少ない自由形やバタフライで泳ぎ込みます。
厳しい状況でも前を向き続けていました。
苦しいでしょうけどもでもそれさえも自分の試練の1つとして数えているような雰囲気すら漂わせているので。
これが金メダリスト北島康介なのか。
多分…多分っていうか間違いなくそこなんですけど。
弱っている時にいかに自分に打ち勝つ心を持ってるとかっていうのが非常に重要になってくると自分は思ってる。
合宿終盤。
萩野選手に変化が現れ始めました。
はいいきま〜す!よ〜いパン!萩野選手試合を想定したタイムトライアル。
全力で400mを泳ぎ込みます。
その直後の事でした。
へい!そ〜れ!
(萩野の掛け声)厳しい練習を続ける仲間たちに掛け声を送ります。
これまでほとんど見られなかった姿でした。
(萩野の掛け声)自分に欠けていた強さを身につけるために。
北島選手の姿から導かれた行動でした。
(拍手)そして今月の日本選手権。
オリンピックにつながる夏の世界選手権代表を決める大会。
最大の注目は萩野選手でした。
しかし…。
(スタートの合図の音)1種目目の400m自由形。
優勝はしたものの自己ベストからは2秒近くも遅いタイム。
このあとの2種目でもタイムが伸びません。
泳ぎに違和感を感じていました。
このあとのレースも楽しみにしています。
頑張って下さい。
ありがとうございます。
萩野選手でした。
残すは最も力を入れてきた400m個人メドレー。
レース前日。
プールに萩野選手の姿がありました。
大会期間中としては異例の泳ぎ込み。
1時間半にも及びました。
そして迎えた400m個人メドレー当日。
ライバルとなるのはこの大会好調の瀬戸大也選手。
自己ベストもマークし打倒萩野を公言していました。
ベストには程遠いコンディション。
そして上り調子のライバル。
苦しい状況の中でも勝ちきる事ができるのか。
(場内アナウンス)「ファイナルカウントダウン!テンナインエイトセブン…」。
合宿で培った強さをこのレースで見せる。
「よ〜い」…。
(スタートの合図の音)最初のバタフライ。
瀬戸選手と競り合う展開。
僅かに瀬戸選手がリード。
続くは得意の背泳ぎ。
トップに立ちますがリードを広げる事ができません。
そして平泳ぎ。
瀬戸選手が猛烈な追い上げ。
250mのターンの時…。
逆転されてしまいます。
それでも食らいつく萩野選手。
ここが勝負どころ。
競り合ったまま最後の自由形へ。
徹底して磨いてきた自由形。
(実況)2人の勝負!再び逆転します。
(実況)350のターン。
先頭萩野。
2位瀬戸。
ラスト50m。
(実況)一気にここで差が広がった。
体1つのリードに変わった。
残り15m。
萩野がここで一気にペースを上げてきた!どんどんどんどんリードが広がっていく!萩野が4分8秒54。
勝ったのは萩野選手。
大きな意味のある勝利でした。
あの〜こうやってあの〜まあまあやっぱりタイムとしては満足いかない部分ありますけどこうやって優勝する事ができてうれしく思ってます。
苦闘の中でつかんだもの。
というふうに自分の中では思ってるのでオリンピックの金メダルっていうのは。
やっぱり…自分の弱さと向き合い乗り越えた日本選手権。
オリンピックまでにもっと強くなる。
萩野公介。
自らの可能性を信じて。
2015/04/23(木) 01:30〜02:15
NHK総合1・神戸
アスリートの魂「水の覇者になる 競泳 萩野公介」[字]
日本競泳界に現れた怪物、萩野公介選手に密着。最強のマルチスイマーになるためにこの春、課題克服に挑んだ。「常識を覆す挑戦こそが楽しい」と語る20歳の挑戦に迫る。
詳細情報
番組内容
2m近い大男がパワーで世界の覇権を握ってきた競泳界にあって、身長177cmの萩野公介選手は、無駄のない泳ぎで速さを身につけてきた。番組ではハイスピードカメラを駆使して速さの秘密を徹底分析。驚きの泳法を解き明かす。さらに、アメリカでの高地合宿から4月の日本選手権までに密着。個人メドレーの自己ベスト更新、そして出場全種目制覇はなるか?最強のマルチスイマーになる夢に挑む20歳の闘いを見つめる。
出演者
【語り】杉本哲太
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – スポーツ
スポーツ – マラソン・陸上・水泳
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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