額縁をくぐって物語の中へ「歌川国芳“東都名所三ツ股の図”」 2015.04.23


フレーム!フレーム!今日も国芳の絵なんだろ?
(フレーム)そうよ。
今日はね最近のニュースやインターネットでも話題を呼んだ絵なの。
こちら。
あこれ知ってる!川の向こうの建物がスカイツリーそっくりだって話題になったよね。
そうなの。
国芳の予言じゃないかってね。
確か場所も今の所と近いんだよね?そうなのよ。
他にもね画面右手の橋の向こうには高層ビルらしきものが見えるとか。
そう言われてみれば確かにそんなふうにも見えるよね。
それにしても「東都名所」と銘打ってる割に地味というか名所らしくない絵だよね。
確かに…。
でもこの絵には国芳なりのこだわりがあったみたい。
これはね国芳が30代の若い頃描いた絵なの。
もしかしたら国芳の原点があるかもしれないわね。
なるほど。
じゃあスカイツリーの謎と国芳の原点まとめて探ってくるよ。

(男性1)もうちょっと薪くべてくれ。
(男性2)まだ足りねえか?燃やしすぎんなよ。
のどかな広々とした景色だな…。
それにあのスカイツリーほんとに似てるよね。
あれは船を燃やしているの?…っていやまさか。
ちょっと話を聞いてみるか。
すいませんあの…すいませ〜ん。
何だよ忙しいんだから。
うまくいかなかったら弁償してもらうよ。
いやそんな…。
こんにちは。
あの…お二人はまさか船を燃やしているんじゃないんですよね?あったりめえだろ。
船を燃やしてどうすんだよ。
船を長もちさせるためにね船底を焼いているの。
こうすると腐りにくくなるからね。
焼きすぎちゃ元も子もねえけどな。
もうちょっと焼いた方がいいかな。
あちちちち。
ところでここはどこなんですか?ここは海?それとも川?隅田川に決まってんだろう!ここは小名木川が隅田川に合流する三ツ股だよ。
ああそれで三ツ股。
ところであの〜向こうに見える高い塔。
あの火の見やぐらの隣にある…。
あれって何だか知ってますか?塔?あの辺に火の見やぐら以外に何かあったっけ?ねえよな。
あんな所に塔なんて。
俺も知らねえ。
幻じゃねえのか?そうだよな幻だよ。
え〜っ幻って…。
ああ火が消えかかってるよ!ああごめんごめん。
う〜ん…じゃあもう少し他の人にも話を聞いてみるか。
すいませんそこで何をしているんですか?貝をとってるんだよ。
うまいよ!この辺のあさりはうまいんだぜ。
ほらそこの船の船頭さんも貝を探っているだろう。
ああ確かに。
ところでちょっとお尋ねしたいのですがあなたの後ろにあるあの高い塔のような建物何だか知ってますか?え?火の見やぐらの横にある建物かい?よく知らないなあ。
うん?え〜っと…。
じゃああの右手の橋の向こうのたくさんのビル…じゃなくてビルみたいな建物は?あああれは建物じゃないよ。
あっちなら俺でも分かる。
お〜い船頭さん!
(船頭)何だい?この人をさあの橋の向こうまで連れてってやってよ。
永代橋の向こうに建物が見えるなんて言ってるから。
アハハ。
えっ?あれ永代橋なんですか。
まあそれとスカイツリーの方も気になるんですけどね。
(船頭)しかたねえな。
じゃあ乗んな!ありがとうございます。
…よいしょ!よいこらどっこいしょっと。
(船頭)じゃあ隅田川を下って出発!おっ気持ちいいな〜。
(船頭)永代橋の橋桁もこの船ならくぐれるからよ。
うん?うん?あっ!あれって塔じゃなくて船だ。
(船頭)そのとおりだよ。
永代橋をくぐれない大型の船がとまっているんだよ。
なるほど。
だからこちら側には小さな船しかないんだな。
橋をくぐればもう佃島だよ。
あっそうなんですか?
(船頭)国芳はあの辺りも絵に描いてるんだ。
そっちでも聞いてみたら?同じく…ああ橋桁を描いているんですね。
ああそれが永代橋を描く時の浮世絵のお約束なんだよ。
永代橋は江戸で一番長い橋だから橋全部は描けずに端を描くってね。
なるほど。
うまいですね。
じゃあ早速あの船に近づいてみるか。
あの〜こんにちは。
お話聞かせて頂けませんか?おおよく来たな。
今仕事中だからあんまり話せねえんだけどさ。
何しに来たんだい?え〜とあの…。
国芳の絵に描かれた不思議なビル…いやもとい塔の事を調べに来たんだけどなかなか分からなくてね…。
あ〜あいつはマニアックな江戸通だからな。
江戸通?江戸っ子でも知らねえか知ってても気に留めねえような江戸の風物をちょいちょいっと絵に描きやがるんだよ。
例えばこの紙。
うん?そういえば紙が上から降ってきている。
ちょっと1枚捕まえてみな。
えっ?はい…。
よっ!あっお札じゃないですかこれ。
それはな瓦書と言って水難者を弔ったり厄よけするために川にまくお札なんだよ。
江戸ではどこにでもある習慣だけど浮世絵に描くやつはあんまりいねえよな。
それにほら左手の方を見てみな。
あれは食べかけのスイカ?え〜…。
でそういえば右手には桶。
これゴミを描いてる?名所絵なのに?そうそう。
だから案外にいちゃんが突き止めようとしている塔も江戸っ子の生活に関係しているものかもしれねえぜ。
え〜と…そう言われてもな…。
ねえちょっと何やってんのさ?早く行ってよ。
ああすまん。
待たせたな。
じゃあ出発するよ。
えっいやいやいやあのまだあの話が聞きたいんですけど…。
ねえ早くして。
じゃあ悪いけどまたな。
いやぁそう言わずにちょっと…ちょっと待ってあれ待って…。
行っちゃったよもう…。
あの塔は国芳の想像の産物なのかな。
どうもみんな火の見やぐらの隣のあの塔には見覚えがないって言うんだけど。
そうなんだ。
なんか違う絵にも入っていたみたいじゃない。
そっちでは何か分からなかったの?まあ確かに「東都名所」の「佃嶋」にも入ったんだけどこのシリーズはリアリティーのある江戸っ子の習慣を描いてる事が分かったよ。
だって川に浮かぶゴミとか描いてあるんだよ。
まあこれが名所絵でいいのかなって感じ。
広重の「江戸百景」とは全く違うよね。
これを出した頃の国芳はまだ若く人気はいまいちだったのよね。
広重の「江戸百景」は100枚出したけど好評で120枚以上作る事になったじゃない。
この「東都名所シリーズ」は人気が出なくてすぐ打ち切りになってしまったの。
へ〜おやおや人気者の国芳にもそんな時代はあったんだね。
まあ国芳がピックアップする題材がマニアックすぎたのかもしれないね。
でもそれだけ国芳は自分の見たものにこだわって描いてたって事じゃないかしら。
ないものは描かない。
本当にあるものは描く。
だからこの絵のスカイツリーみたいに見えるものは何かしら本当にあったものなんだね。
よしもう一度聞いてくる。
すみません。
あれ?すみませ〜ん。
あのちょっと聞きたいんですけど…。
おやまたにいちゃんかい。
何か用か?あのスカイツリーみたいに見える建物なんですけどあそこの塔について聞きたいんです。
ええまたかい?知らないって言ったろう。
いやいや「何か」って事じゃないです。
あれどのくらいの高さなんですかね?隅田川の向こう岸までの距離感がないから分からなくって…。
ああああそうか。
そうだな…。
隣に火の見やぐらが建っているだろう?ええ。
あれが高くて大体5間。
つまり9メートルくれえだからその倍で20メートルくれえかな。
やっぱり建物にしちゃ高すぎるな。
ああ〜!もしかしたら…。
もしかしたら?国芳の演出かもしれねえな。
えっ?というと…?国芳はよリアリティーのある絵を描く一方で大うそもつくんだよ。
まあ浮世絵だ。
そういうもんだけどな。
例えばこの三ツ股はこんな平らな土地じゃねえし前に広がる隅田川だって本当は…ほらこんな感じなんだぜ。
うわ船でいっぱい。
江戸の町の流通はなんと言っても川だからね。
この絵みたいなのどかな時なんてねえよ。
いろんな素材をもとに国芳が頭の中でこしらえたものさ。
あの火の見やぐらと塔だって隅田川の川幅と本当の建物の高さを考えたらこのぐらいになるはずだけどそれじゃ面白くねえだろう?うんあんまり描く意味がなさそうというか…。
それにもしあそこに本当にある火の見やぐらしか描かなかったら寂しい絵になると思わねえか?うん。
確かに2つ塔があった方が絵が面白くっていい感じになりますよね。
そうだろう?だから国芳は実際にはない塔を描いたって事だと思うよ。
う〜んでもあの形が気になるんですよ。
スカイツリーに似てるし…。
あれ木組みなんですかね?どうしてあんな形の塔を描いたのか…。
国芳のオリジナルなんですかねえ…。
う〜ん…。
おいスカイツリーだかすいかつりだか何だか知らねえけどあれ見た事あるか?そういえば…井戸掘りのやぐらに少し似てるかな。
ああなるほど。
おいにいちゃん!そういえばあれは井戸を掘る時に建てるやぐらに似てるよ。
国芳も確か描いてたはずだ。
え?本当?あ確かに似てますね。
だろう?これは井戸を掘る時に組む仮設のやぐらで掘り終わったら畳んじゃうんだよ。
なるほど。
短期間しか見る事ができないものなんですね。
そう。
確か井戸を深く掘るには塔を高く建てなきゃいけないはずだし海岸沿いでは高いやぐらも組まれたはずだ。
あの辺りにはまあさっきから言ってるとおりそういうものが建った覚えはねえがもしかしたら国芳はどこかで見たやぐらをあそこに描いたのかもしれねえな。
なるほどね。
国芳はこの絵を面白くするためにどこかで見た井戸掘りのやぐらを彼一流の演出でこの絵に描き込んだんだな。
国芳のスカイツリーの正体はこういう事だったんだ。
ヘヘヘヘ…にいちゃん分かってよかったな。
(2人)ヘヘヘヘヘヘヘヘ…。
池田君いろいろ調べてみたけどやっぱりあの場所で大規模な井戸掘りをしたという記録はなかったわ。
あれは国芳の創作ね。
なるほどね。
とにかく他の絵師にない個性は強く感じるよね。
結局人気は出なかったみたいだけどこの絵には誰になんと言われようと自分の信じる絵を描くんだという国芳の意志を強く感じたよ。
そうね。
でもこの絵についてはこんなふうにも思うんだ。
当時国芳は売れていなかったから暇で毎日絵を描く場所を見て歩いていたのかもしれないね。
それである日未来を少しだけ見てしまったのかもしれない…なんてね。
国芳ってそんな不思議な話が似合いそうじゃない?あら池田君ロマンチスト。
すごい!やっと気付きましたか。
もう半年以上たってんじゃないですか。
遅いですか?遅いですよ。
2015/04/23(木) 23:30〜23:45
NHKEテレ1大阪
額縁をくぐって物語の中へ「歌川国芳“東都名所三ツ股の図”」[字]

国芳は、江戸時代に東京スカイツリーを描いていた?最近話題になった“予言者”国芳の謎を解く!

詳細情報
番組内容
【キャスター】池田鉄洋,【声】杉本るみ
出演者
【キャスター】池田鉄洋,【声】杉本るみ

ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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サンプリングレート : 48kHz

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