これなんとかなりませんかね?番組を見て頂くという事で。
本当にありがとうございました。
頑張って下さい。
ありがとうございました。
(拍手)
(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(拍手)
(桂吉弥)吉弥のほうでもおつきあい願いますが。
私桂吉朝という者の弟子でございましてねうちの師匠は10年ほど前に亡くなりましたですけどもまぁ「住み込みの弟子をお願いします」っちゅうたら「いやお前来るのはええねんけどな住み込みやったら家狭いさかいなお前が来たら俺が出ていかなあかんから…」。
(笑い)「ちょっと米朝師匠所頼むわ」っちゅうて米朝師匠の所で内弟子住み込みを3年やらせて頂きましてね。
で私が向こう行きました1年後に米朝師匠が人間国宝に認定をされまして。
私が向こう行きました1年後に米朝師匠が人間国宝に認定をされましてね私が向こう行きました1年後に米朝が人間国宝…。
(笑い)まぁ半分は私のおかげかなと思たり…。
(笑い)するんでございますが。
今日は落語京都のね祇園町の連中が出て参りますがそういう所にまぁお付きとして運転手として行かせて頂いたんでございますがねでまぁワ〜ッとお飲みになってお遊びになって帰って参りますというと米朝師匠の奥さんが起きて待ってはるんでございますな。
米朝師匠は酔っぱらってシュッと寝はるんでございますけどね「あ〜吉弥君ご苦労さん」ってな事言うてねええ「アア〜ッ勉強させて頂きました」。
便利な言葉でございますな。
うん。
まさか「ええ芸者も別嬪やし舞妓もかわいかったです」ってな事言えませんので「勉強させて頂きました」。
(笑い)「あ〜そうか?勉強。
ご苦労さん」言うてね。
で何日か経ちますというとお茶屋から高額の請求書が米朝夫人の所へやって来る訳でございまして。
「吉弥君。
この間の請求書」。
「ハア〜」。
「高いわ〜」。
「ハア〜左様か」。
「あんた勉強させてもうた言うてたな?」。
「ええ」。
「高い授業料やこと」。
(笑い)辛いな〜てなもんでございますけどね。
今日はその高い授業料を払いまして身につけた成果を皆さんに聞いて頂く…。
(笑い)訳でございますけども。
エヘヘ。
(拍手)あっパラパラとありがとうございました。
(笑い)京都は室町辺りの旦那でございますが芸者舞妓ねお茶屋のおかみさん仲居さん皆連れまして春のこってございますから「ちょっと出かけようか」っちゅうて野駆け山行きてな事言ってピクニックハイキング。
一八繁八という幇間も両名お供を致します。
この二人が大阪で幇間やってたんでございますがしくじりましてねつてを頼って京都で働いてるんでございますが。
まぁ昔も今も京都っちゅうのは町並みがあんま変わっとりません。
鴨川を越えまして祇園町から西へズ〜ッとね道とって参りました。
堀川という川を越えますと二条城。
お城を尻目にころして出て参りますと昔は野っ原でございますな。
春先のこってございますんで空には雲雀がピ〜チクパ〜チクピ〜チクパ〜チクさえずっていようか野にはかげろうがもえていようか遠山に霞がたなびいてレンゲタンポポは花盛り。
麦が青々と伸びた中を菜種の花が彩っていようかという本陽気。
その中をやかましゅうてやって参りますその道中の陽気なこと。
(下座囃子)
(下座囃子)「ちょっと旦那さん待っとくんなはれな。
女子連中皆遅れてまんねやないかいな。
そないどんどん行きなはんなてもう」。
「お〜い。
早来い早来い早来いよ〜」。
「まあ〜そないどんどん行かれたらついていけまへんやないかいな。
な〜?」。
「へえ。
そないどんどん行かれたらついていかれへんわ」。
(笑い)皆さんボ〜ッと見てる場合じゃございません。
(笑い)これ舞妓ちゃんの簪ビラビラが揺れてるところでございましてねこういう細かい所から人間国宝への道が始まる訳でございます。
(笑い)「一八っつぁん兄さんお願いがあんの」。
「何でんね?」。
「蝶々捕まえてほしいの」。
「蝶々?そんな物捕まえてどないしまんね?」。
「蝶々捕まえてもろたらな髪の毛一筋外してそれへくくりつけてこの辺飛ばして持って歩こと思て」。
「もうかわいそうな。
向こうも生きてまんねやで。
あんたも嫌やろ?あんた胴の辺り縄でくくられてズルズル〜ズルズル〜って」。
(笑い)「やめたあげなはれ」。
「旦那さん。
もう一八っつぁん兄さん蝶々捕まえてくれはらへん」。
「一八。
子供の言うてるこっちゃ捕まえたりぃな」。
「ア〜ア〜分かりました。
いてたら捕まえたげるがな」。
「そこにいてるえ」。
「どこに?」「その辺蝶々だらけ」。
「ええ?蝶々だら…。
ほんに。
私菜種の花やとばっかり思てましたけどああ〜黄色い蝶々が花の間に留まってまんね。
ええ任しときなはれ。
私こんなん得意ですわエヘヘ。
蝶が菜種か菜種が蝶か」。
「芝居と違うであんた」。
「分かってまんがな。
今度はもうこういうふうにねピヤッとこう…。
あら?アハ〜ン。
ヨッとこう…。
あれっ?おっとお〜ウウ〜ン」。
(笑い)「トンボと違うで」。
「分かってまんがなお前。
こないしたらどない思います?この蝶々『まあ〜この人トンボ捕まえはんねやわい』と安心しきってるところをこないしてこうね。
逃げまっしゃろがなほんまに。
ヤ〜ットショッとイヤ〜イッイヤ〜イッ…。
アア〜ッアハッ犬の糞掴んだ」。
(笑い)「汚いなほんまに。
そこの小川で手洗いぃな」。
「ア〜ッえらい目に遭いましたがなもう。
けど旦那この間の八卦見当てよりましたで」。
「何ちゅうて?」。
「お前の手は糞掴み」。
「阿呆な事言うてんのやない」。
「今日どこ行きまんの?」。
「分からんとついてきてんのんかい。
今日愛宕山に登って愛宕さんにお参りや」。
「あっ愛宕山?」。
「あ〜こらぁ一八繁八には気の毒な。
お前ら大阪の人間やろ?な?京は山が多いさかいに山行きに慣れてるけどな大阪には山が無いさかい」。
「何言うてまんねあんた。
大阪にも山おまっせ」。
「あるかいな」。
「ありまんがなあんた。
茶臼山真田山天保山そらぁ険しい」。
「何が険しい」。
(笑い)「あんなん山やあれへん地べたのニキビやがな」。
(笑い)「ボロカスでんなあんた。
ほな京はあと山おますか?」。
「京都は山ばっかりやな東山に西山鞍馬山に愛宕山比叡山比良の連山ちゅうて山ばっかりや」。
「ヘ〜エその愛宕山っちゅうのはどこでんね?」。
「もう麓まで来越えてるがな」。
「ええ?」。
「麓まで来てるっちゅうねん」。
「ええ?ふも…。
まあ〜っ」。
「けったいな声出して。
あんまり高いさかいびっくりしたやろ?」。
「ひ低すぎるさかいびっくりしましたんやがなほんまにもう。
これ1つだけでっか?愛宕山二階おまへんの?何やもうこんな低い山やったらあんた2つ重ねといてけんけんで上がったるわ」。
(笑い)「えらい勢いや。
ほなもう皆弁当とかこの一八に持たせたらええで」。
「こっち貸しなはれこっち貸しな。
まとめてまとめて。
ハイハイハイハイね?ヨ〜チョッチョ〜ッとヨッコイショ〜っと。
ヘ〜ッ。
あ〜どうぞどうぞ先行っとくんなはれ私も繁やんも足に自信がおますさかいねあんたらがどんどん行て私らちょっと一服してますわへえ。
でじきに行きまっせ。
すぐ追いつきまっせ。
プシュ〜ッと行きますさかい」。
「テヘヘ〜ッ。
ほたら一八繁八置いて先行こうか?」。
「へえ。
ほな一八っつぁん兄さんお先繁八っつぁん兄さんお先。
皆よろしいか?こけんように裾からげて行きまっせ。
ごおじゃごじゃごおじゃのあとに誰がつく」。
(下座囃子)「ほな行くで。
ヘヘヘ」。
(下座囃子)
(笑い)
(下座囃子)「ハ〜アッえらいもんやな。
旦那の言うとおりやがな。
舞妓まで裾からげて千鳥にツッツッツッと登っていきよる」。
「何感心してんねんな繁やんほんまにもう。
あ〜嫌やわ〜こんな仕事。
大阪しくじるんねやなかったな〜。
大阪やったらこんなしんどい仕事あれへんのやがな山行きやて。
ほれで京都の人間はしみったれてけつかるさかいな座敷に居ったら銭使うさかいじきに『外行こう外行こう』っちゅうてほんま嫌やわ」。
「ぼやきないなお前もあの旦那に世話なってんねやろ?悪い事ばっかりでもあれへんがな。
な〜?ここまで来たらひんやりとして空気がうまい」。
「ええ?空気がうまい?おいしい?パパパパパ」。
(笑い)「空気に味ございません。
ほんまにもう。
あ〜まぁ確かにひんやりしてなハア〜今頃梅が咲いてるわ。
な〜。
ええ?遅咲きやヘヘッ」。
・「チ〜ンリ〜ンテ〜ンレ〜ンドッツルテンか」・「梅にも春の色添えてチチンチ〜ン」・「若水」「この唄山登りと合わんな」。
(笑い)「そんなもんに合わせてたら日ぃ暮れてしまうでほんまに」。
「一八っつぁ〜ん。
早うおいなはれな〜」。
「へ〜い。
それ行けやれ行けやどんどん行きなはれほんまにもう。
ドッコイドッコイドッコイドッコイヨットショッとほんまに」。
(笑い)・「愛宕山坂」「アハハ古い唄やでこれエヘヘ」。
・「エ〜エエ〜坂二十五丁目の茶屋の坂」・「婆旦那さんちいとお休みなんし」・「しんしんしんこでもたんと食べ」・「登りゃうんと坂ヤ〜レ坂エ〜エエ」・「坂坂坂坂坂坂」「ヨットショッと」。
(笑い)・「愛宕山坂エ〜エエ坂二十五丁目の茶屋の坂」・「婆旦那さんちいとお休みなんし」・「しんしんしんこでも食べうんと坂」「フウ〜ッ」。
・「ヤ〜レ坂坂坂坂坂」「ヨットショッとヨイッヨットショッと」。
(笑い)・「愛宕山坂エ〜ッ坂二十五丁目の茶屋の嬶」・「旦那さんちいと」「フウ〜ッアハハ〜ハッウッ鼻の穴が10ほど欲しいわ」。
(笑い)・「愛宕山坂エ〜エエ坂二十五丁目の茶屋の嬶」・「旦那さんちいと」「アア〜ッし…アア〜フ〜ンヨシャック〜ッアチャチャ…アハ〜ンアハ〜ンアハッ」。
(笑い)「アハッアハ〜ンアハッアハ〜ンウ〜ンウ〜ンウフ〜ンウ〜ンエエエ〜ン」。
(笑い)「へたばっとるやないかいな。
一八〜。
大丈夫か〜?」。
「もうあか〜ん」。
(笑い)「2つ重ねてけんけんで上がれ〜」。
「アハ〜ッ旦那〜私亡きあとは」。
「何を言うてんね。
そんなんでくたばってたまるかいな。
繁八。
尻突きで上がってこい尻突きで」。
「尻突きっちいいますと?」。
「鈴鹿峠で子供が出てきて言うやろ?『旦那さん。
尻突きまひょか?』てな。
突くほうも突かれるほうもポンポンと弾みがついてええねや。
尻突きで上がってこい」。
「へい。
分かりました。
ええ。
しばらくお待ちを。
一八おい。
悪かったお前ばっかり荷物持たせて。
私が弁当持っと」。
「アハハ〜ンえらいすまんな繁やんだんだん重とうなってきたな」。
「ヨッシャヨッシャヨッシャよし。
ほんでお前後ろ回って私の尻突け」。
「お前ええほうへばっかり回るな〜」。
(笑い)「お前のほうが楽ちんやね」。
「突くほうも突かれるほうも弾みがつくねん。
ええか?」。
「チョチョチョッジャ〜ジャ〜ジャ腰掛たりしいないな。
突くけどお前も登ってや」。
「分かった分かった。
じゃあちょっとな一八突きようが難しい」。
「何で?」。
「いやこの間左ボ〜ンと打って青丹でけてんねん。
ちょっと左突かんといて」。
「あ〜そう。
右は?」。
「出来物がでけてんねんでんぼが」。
(笑い)「あ〜右もちょっと遠慮して」。
「真ん中?」。
「いぼ痔や」。
「突く所あれへんがな」。
「冗談やがなお前」。
(笑い)「そない言わんと行きへんがな。
頼むで」。
「分かった分かった。
お前も登らなあかんっちゅうねん。
いくで〜繁やん。
いやドッコイショ」。
(下座囃子)
(下座囃子)「ハッハッハッハッ」。
「おっおっおっアハハハハ。
あ〜こらぁ楽ちんやええわ。
ヨイヤ〜ヨイヤ〜ヨイヨイ」。
「踊ったりしいないな。
ワア〜イ」。
「え〜旦那。
お待っとうあんで」。
「いつまでかかってんねんな。
さぁさぁ弁当にすんねんけどなあの茶店でちょっと汁の物か何か…」。
「あ〜皆まで言わんと旦那さんちょっと案問して参りますんでへえ。
あっお婆ん茶店のお婆ん」。
「はいはい何でございますかいな?」。
「ちょっとそこで弁当使おっちゅうねんけどな汁の物か何かでけへんかいな?」。
「あ〜山家の店じゃでうどんぐれいしかでけまへんが」。
「うどん?モッチャリしてるな〜。
うどんの台抜きいうてな…。
そこに何や土器積んだあるがなええ?素焼きの盃それで酒でも飲まそうっちゅう趣向か?」。
「いえいや。
これは土器投げの土器じゃ」。
「土器投げ?」。
「一八。
知らんやろ?うん私に任しとき。
お婆ん。
久しぶりやな。
ちょっと5枚ほどもらおか。
はいはいはいはい。
みんなちょっと弁当待て。
こっち出といで出といで。
ウ〜ンあんまり出たらあかんで危ないさかい。
どうじゃ?な〜ここまで来たら京都の町が一望できるやろ」。
「ハア〜ッええ?旦那さんこんな高い所まで来ましたんかいな?」。
「ああ。
清滝試みの坂ちゅうてな〜。
はいはいあのほうにええ?谷の所に的が設えたあるやろ。
今からなこの土器投げていやまあ的に当てるのは難しいけど周りの仕切りの中にちょっと放り込んでみるさかいなえ〜ちょっと見ときや。
エヘッ」。
カッ。
「プッ」。
カッ。
「プッ」。
「お腹すいてまんの?」。
(笑い)「食べてんねやあれへん噛み切ってな…」。
カッ。
「ペッ。
風切りをこしらえる。
うん。
まず風向きを見ないかん。
ビュ〜ッとな。
うんうんうん。
そうそうそうそう。
あっなるほどなあ〜上と中と下では風向きが違うさかい。
まずは天人の舞っちゅうのをちょっとやってみようか?ええか?イヤア〜ッどうだ?見てみいなな?右へ行くと思いのほか左へグ〜ッと回ってきたやろ?うんそうそうそう。
ほいでまた右へこう行てな。
ハア〜舞を舞う如くに優雅に飛んで〜っほ〜ら入ったほ〜ら入った。
み見たか?見たか?な?今度はお染久松比翼投げ。
うん2枚の土器を一遍に投げるさかいな。
イヨッイヨッと。
ほ〜ら見てみいな同じようにさも1本の糸で繋がれてるようにうまいこと飛んでほ〜ら入ったほ〜ら入ったハハハハ。
今度はな獅子の洞入り一直線。
実はこれが一番難しい。
まっすぐに。
イヨッ」。
「ほ〜らっ入った〜っ。
久しぶりやけどうまいこといたわいなハハハハ」。
「しょうもな」。
(笑い)「何言うてまんねん一人でほ〜ら入ったほ〜ら入った子供やがなほんま。
お婆はん。
土器100枚」。
「100枚もどないすんねん」。
「そのうち95枚預けときますわ。
こっち貸しなはれほんまに。
まずは風切りをこしらえま風切りをね」。
「食べたらあかんでほんまに吐き出すねん」。
「分かってま。
まずはね風向き見ます風向きを。
イヨ〜ッ」。
(笑い)「風無いな?」。
「何をしてんねんなお前。
仰向けに放ってどないすんねんうつ伏せに放るさかいに風をはらんでピヤ〜ッと飛ぶねやないかいな」。
「分かってます。
わざとやりました」。
(笑い)「ヘエ〜天人の舞をお見せ致しま。
イエ〜ッフフ〜。
どこか行てもうたな〜」。
(笑い)「あ〜舞忘れよったんやな?ほんまにもう。
稽古せえよ〜ほんまにもう。
次はねお染久松比翼投げ。
2枚の土器がさも1本の糸で…。
ほ〜ら。
糸切れた〜」。
(笑い)「左と右に泣き分かれっちぇっちゅうやっちゃなほんまに。
仲ようせえよ〜ほんまにもう。
獅子の洞入り一直線。
実はこれ私一番得意でんねん見ときなはれやほんまにシュ〜ッといきますさかいほんまにもう。
イヨ〜ッとほら。
茶店へ入った」。
「おい」。
(笑い)ガチャ〜ン「ギャ〜ッ」。
「お婆んに当たったんと違うか?」。
「お婆ん。
ごめ〜ん。
面白ないわほんまにもう。
旦那に私は…。
投げてて思い出しましたわ大阪にいる時分にね大阪の旦那と花屋敷っちゅう所行きましたんや。
ほんならね銀貨とか銅貨投げまんね。
へえ。
シュ〜ッシュ〜ッシュ〜ッ。
的に当たったらチャリ〜ン下に落ちたらチャリチャリチャリ胸がス〜ッとしますでほんまに。
それこそあんた土器100枚投げてなんぼでんねん?」。
「ええ?大阪のお方はお金を投げなさる?」。
「そうでんがなほんまにもう。
シュ〜ッシュ〜ッ。
チャリ〜ンチャリ〜ンチャリ〜ン。
ス〜ッ。
やっぱり京都と大阪違いまんな〜」。
「ハアそうか。
まぁこんな事もあるかいなと思て持ってきてよかったわ。
どうじゃ?一八これ」。
「何でんね?」。
「小判や」。
「ええ?」。
「小判」。
「お婆ん?」。
「お婆んやあれへん」。
(笑い)「こんなお婆んどこに居てんねんな。
小判や」。
「戎さんの?」。
「偽物と違うがな。
な?ああ20枚本物や。
ピンピロリ〜ン。
ようしなるな?ジョンジョロリ〜ンと。
小判20枚」。
「どないしまん?」。
「どないするって大阪の方がお金放るねやったらこれをここからピヤ〜ッと放ってみよか?」。
「阿呆な事言いなはんなあんた向こうは小銭でっせ〜小判20枚て一財産やおまへんかいな。
アハ〜ハッ旦那さんはね京都のお方やけど太っ腹ですわね。
そやけどあんた投げよう思ても手が言う事聞きまへんで。
急性リューマチ神経痛っちゅうねんガチッガチッちゅう」。
(笑い)「何を言う。
放るっちゅうたら放る」。
「もうやめときまひょうなもう。
ね?ほなこないしまひょ。
放ったつもりでみんなで1枚ずつ分けて帰りまひょうか?」。
(笑い)「分けてどないすんねん。
ええ?放るっちゅうたら放る」。
「やめときなはれてもう旦那。
な〜?もうチョットチョットもうやめ。
ええ?そんな…。
いやいやいやあっアア〜ア〜ッ!ア〜ッ放った放った放ったがな」。
「みんなちょっと出といで。
よう見ときや。
ええ?松の緑に黄金の色がキラキラ〜キラキラ〜と輝いて。
あ〜これがほんまの散財やな〜フフフ。
胸がス〜ッとした。
よし行こか」。
「チョッちょっと待っとくんなはれええ?こ小判は?」。
「小判は放ったよ」。
「放ったって見えてまんがな」。
「ええ?見えてるて?」。
「あんなもん見えてたらあんた誰ぞが拾いまっせ」。
「うん。
拾たら拾た者の物や」。
「ええっ?」。
(笑い)「私が拾たら?」。
「お前にやる一八」。
「ありがたい。
届かん」。
「当たり前やがな。
届かん所に放るさかい気持ちがええねや。
さぁ行こう」。
「ア〜ッちょっと待っとくんなはれほんまに。
下に行く道ないんかいな?あっお婆ん茶店のお婆ん」。
「はいはい何でございますかいな?」。
「当たったん?」。
(笑い)「嘘かいな。
もうしょうもない所に手もっていきないな。
下に行く道下に行く道」。
「はいはい毎年的を仕替えに行きますんでな梅ケ畑のほうから道が」。
「ええ道か?」。
「はいはい。
こけ道じゃ」。
「苔が生えてんの?」。
「ヒョコヒョコこける道じゃ」。
(笑い)「何にも出えへんか?」。
「出や致しません。
出たところで熊か狼」。
「十分やがなほんま」。
(笑い)「ええのがあるやないかいなこの傘ええ?『下の茶店の傘』?『返さないかん』?エヘヘ小判20枚拾ってきたらお前こんな物5本でも6本でも買うたるわ。
ウワ〜ッ大きな傘や。
お婆ん。
もらうでこれ。
エヘッ旦那。
ええのが手回りました。
私ねこの傘で今からフワフワフワと下りていきまんね」。
(笑い)「小判20枚頂きまっせ。
繁やん。
羨ましいことないか?ヘヘ〜ンエヘヘ」。
(傘を振る音のまね)「エヘヘこれでピョ〜ンと飛んだらなエヘヘ小判20枚私の物や。
行てきます飛んできます。
よっしよっしヘ〜ッヘ〜ッ」。
(傘を振る音のまね)「高いな〜」。
(笑い)「思い切って飛んだらええねや。
な?目つぶってポ〜ンと飛んだらええわい。
いきまっせ〜。
一二の三つ。
後ろへ飛んだらあかんな」。
(笑い)「ちょっとちょっと走ってこうかな?一二三四五六七八…七八やな?ヨシヨシヨシヨシ一二三四五六七八…七八。
ヨシヨシヨシヨシ一二三四五六七八…七八。
ヨシヨシヨシヨシハア〜ッハア〜ッ走ってきて七八や。
な?人生に一遍思い切らなあかんとこあんねん一八。
今日がその日や七八でフワフワや。
よ〜し一二三八。
手前で目が開くな〜」。
(笑い)「繁八」。
「はい」。
「一八の背中後ろからド〜ンと突いたれ」。
「ええっ?ほんな事して大丈夫?」。
「大丈夫や。
あれだけ大きい傘持ってんねやな?命に悪やならんやろ。
けがしてもちゃんと面倒見たる。
あいつ飛びたがってんねん後ろから突いたれ」。
「ハア〜ッ。
一八飛びたいか?」。
「飛びたいな〜」。
「ほんまに飛びたいか?」。
「ほんまに飛びたいな〜」。
「飛びたけりゃほ〜ら飛べ〜」。
(下座囃子)
(下座囃子)「ハ〜ッ飛んだ…。
飛びよった飛びよった飛びよったえらい男や飛びよった。
一八〜。
飛んだかよ〜」。
「一八っつぁん兄さ〜ん」。
「ヒイ〜ッ」。
「大丈夫かいな?一八〜。
けがは無いか〜?」。
「けがはおへんか〜?」。
「一八。
けが無いか?けが〜」。
「ヒイ〜ッ」。
「大丈夫かいな?お〜い。
けがは無いかよ〜?」。
「ウフッけが?けがけ…」。
「ハア〜ッハア〜ッ飛びました〜っ」。
「今気が付きよったんやがな」。
(笑い)「お〜い。
けがは無いかよ〜?」。
「けが?けが…。
ハア〜ッハア〜シャッシャシャシャカカカッククククックククッウ〜ッウッウウ〜フッウッウッウ〜フッケ〜ッヤチャッチャッチャッチャッチャッチャッウウ〜ッ。
けがはどこにもございませ〜ん」。
「金はあるかよ〜?」。
「金?金?金?せや小判拾いに来たんや」。
(笑い)「あ〜あるあるあるあるあるあるあるある。
ありますありますございま〜す。
ありがとうございます。
あるあるあるあるあるあるアハ〜ッあるあるあるある。
エヘ〜エッ一二三四五六七八九。
一二三四五六七八九。
18枚やでおい。
こうなったら2枚が大事やでほんまに。
あんな所にひっかかってけつかんねエ〜イヤ〜ッエ〜イヤ〜ッハア〜ッ。
ピンピロリ〜ン」。
(笑い)「イヨッ。
ジョンジョロリ〜ン。
一二三四五六七八九十。
ア〜ッハッ。
20枚確かにございました〜」。
「それ皆お前にやるぞ〜」。
「おおけありがと〜う」。
「どないして上がんのんや〜?」。
(笑い)「エエ〜ッ?」。
「狼に食われてしまえ〜。
ほなさいなら〜」。
「ちょっと待っとくんなはれな旦那はん。
どないして上がったらええのかいな〜?」。
人間追い詰められるとえらい知恵の出るもんでございまして何を思いましたか帯を解いて着物を脱ぐと下には腐っても幇間別染めの長襦袢が着てございます。
横糸をツ〜ッと抜くと縦に細こうに裂きだしよった。
ツ〜ッツ〜ッセッツ〜ッツ〜ッツ〜ッ。
今度はそれで縄をないだしよったんで。
「イヤ〜アッイヤ〜ッ。
ちょっと待っとくんなはれな〜。
イヤ〜ッエ〜ッ。
こんな所で縄ないすると思わなんだわ。
エエ〜ッ待っとくんなはれ」。
のうては繋ぎ繋いではない長い長い絹製の縄をこしらえますと先に手ごろな石くくりつけましてビヨ〜ンビヨ〜ンと振り回し始めよった。
あの辺には嵯峨竹と申しまして太うて長い竹がこうはすかいに生えております。
その1本めがけてシュ〜ッ。
クルクルコツッ。
「イ〜ヤッチエエヘッイ〜ヤッチエエヘッエヘッエヘッウ〜ンフ〜ンウハッア〜ッチェイヨッウンッイ〜ッア〜ッア〜アッアア〜ア〜ッハア〜ッ」。
竹をこう十分たわめておいて地面をばひとつ…。
(拍手)っと蹴りますというとツッツッツツツツツツッ。
「あ〜。
旦那さんただいま」。
「上がってきよった」。
(笑い)「えらい男や一八上がってきよった。
ほいで金は?」。
「忘れてきた〜」。
(笑い)
(拍手)
(打ち出し太鼓)
(拍手)2015/04/25(土) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
日本の話芸 落語「愛宕山」[解][字][再]
3月12日に開催した第350回NHK上方落語の会から桂吉弥さんの「愛宕山」をお送りします。
詳細情報
番組内容
3月12日に開催した第350回NHK上方落語の会から、桂吉弥さんの「愛宕山」をお送りします。【あらすじ】旦那が芸者や幇間(ほうかん)をひき連れて、京都・愛宕山への山遊び。山が苦手な幇間の一八と、繁八もお供をする。さて、若旦那は茶店でかわらけを買って、名物の「かわらけ投げ」を始めるが、こともあろうに小判三十枚を投げてしまう。小判は拾った人の物だといわれた一八は日傘を使って谷に飛び降りようとするが…。
出演者
【出演】桂吉弥,大川貴子,桂米輔,桂米平,桂二乗,増岡恵美
ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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