小さな旅「砂に咲く夢〜千葉県館山市平砂浦〜」 2015.04.25


(テーマ音楽)
(風の音)
海風が刻む砂のさざ波
(風の音)
風の造形は刻一刻と姿を変えていきます
(風の音)
千葉房総半島の南の端。
5kmにわたって弧を描く砂浜は館山市の平砂浦です
(波の音)
5月。
初夏の海には波と遊ぶ人たち
絶え間なく吹き寄せる「房州の風」です
(波の音)
林に囲まれ風を避けるようにハウスが並びます。
1,300世帯が暮らす西岬地区では136軒が花の栽培に取り組んでいます
夏を彩る花が出荷の最盛期を迎えていました
おはようございます。
おはようございます。
ひまわりのハウスですね。
きれいですね〜。
ありがとうございます。
今お花の切り取り?そうですね出荷前の。
はい。
花農家の2代目山田滋さんが栽培しているのは切り花用のひまわりです

2月末から9月にかけて70万本を東京の市場に出荷しています

小ぶりなひまわりは最近父の日に送る花束としても人気があります
周りを明るくする華やかな表情です
何か太い重い感じの花だったのがあらまあみたいに。
はいスリムな。
美人系ですね。
美人系ですね。
このちょうどいい太さなんですよね自慢っていったら。
太さ?はい。
太すぎないし横にした時に垂れないんですよね。
全然垂れない。
これが一番飾りやすいというか挿しやすいしって言われますね。
花屋さんにいろいろ行くんですけどこのぐらいの太さが一番理想だって言います。
西岬地区のひまわりは水を吸い上げる道管が太く茎が丈夫で花が長くもつと言われています
丈夫なひまわりを育てるのは浜から続く砂の土壌です
これひまわりの苗ですか?そうですね。
まいて20日ぐらいたつやつなんですけど。
ほんとに砂にじかに生えてるんですね。
はい。
砂地では水や養分が流れてしまいひまわりは大きくなれません
しかし厳しい環境だからこそ必死に根や道管を発達させます
粗食で頑張ってる子たちなんですね。
そうですね強く。
過保護じゃないんです。
過保護じゃない。
結構困らせて困らせて作ってるんでやっぱり丈夫なひまわりが出来やすいんですよね。
うわ〜。
平砂浦の人々は代々風と砂に向き合い暮らしてきました。
山田さんの家の裏手には巨大な砂の斜面が広がっています
風と戦い花の栽培を始めた父喜一郎さんが時折足を運ぶ場所です
これが全部砂で出来てるんですか?すご〜い。
これ海からみんな来た砂なんですか?全部海岸から上がってきた砂がここに積もって砂山になりましたね。
すごい。
高さはおよそ100m。
1km先の海岸から風で吹き寄せられた砂が年月と共に積もりました
風が吹くと一晩で畑が埋まる事もありましたねえ。
風が強くて砂を飛ばしてきて。
足へ当たると痛くて歩けないくらい砂が飛びました。
「一夜の風で田畑が砂にうずまってしまうという千葉県房総半島の突端「房州砂漠」と言われるこの地方で今農民たちは砂防工事に懸命です。
しかし年中吹きつける猛烈な西風と目も開けないほどの砂で工事はなかなかはかどりません。
こうした自然の猛威の中で人々は長い長い努力を続けています」。
住民の要望を受けて昭和24年に始まった千葉県の砂防工事。
喜一郎さんたち地元の農家も加わり松の苗木を植え続けました
砂山と海との間に植えた木々は60年たって大きな緑の壁になりました
防風林は今海岸線4.5kmにわたって立ち並び暮らしを守っています

5月下旬。
地元の人たちが苗木を植えていました。
防風林の一角で松枯れが起こり伐採した所を緑に戻します
かつて松を植えた人たちの子供の世代です
苗をいたわるために根元にはわらを敷きます
大木に育つまで50年。
次の世代のために取り組みは受け継がれていきます
風と砂の力でそびえ立つ砂山。
子供たちの冒険心をかきたてます
よ〜いドン!頑張れ〜!
部活動の場にしているのは地元房南中学校陸上部
砂を蹴り駆け上がる伝統の特訓です
ファイトー!ファイト!ファイト!
(生徒たちの声)
素足に伝わる砂の熱です

平砂浦の弓なりの海岸線と強い風は多彩な波を生み出します
(粟田)はい波が来たよ。
そう!目はまっすぐ。
はい。
ここで生まれ育った粟田海さん。
夢はプロサーファーです
サーフィン教室を手伝いながら国内外の大会で腕を磨いています
(波の音)
幼い頃から平砂浦で経験を積み中学2年の時16歳以下の国内大会で準優勝しました
行くよ!立って!
練習の合間に足を運んだのがこの砂山です
砂を波に見立てて何度も滑り降りました
粟田さんが思いを新たにする風景があります
よいしょ。
おお海が見えますね〜。
きれいだ。
砂山のてっぺんから望む海

夢を育んだ青い舞台です
ここで時々遊んでたのは自分の限界をちょっとずつ超えていく時に気持ちに影響っていうか役には立っていると思います。
限界にちょっとずつ挑んでいく…。
今これ行けるかな行けないかなと分からない時でも行ってみようっていうちょっと前向きな気持ちになれるようになってるのはもしかしたらこういう所で遊んだのは生きてるかもしれないですね。

今月末にはプロサーファーも参加する伊豆での大会に出場します

西のかなたに鮮やかな富士

夢は世界に広がります

防風林に囲まれた神戸地区です。
砂の田んぼには絶え間なく水を引き畑では砂地に強い作物を育ててきました
ここでトウモロコシの栽培に力を入れている人がいます
安西淳さん。
専業農家として2ヘクタールの畑を耕しています
養分の少ない砂地に植える事でトウモロコシは実に栄養を蓄えようとします。
そのため甘みが増してくると言います
乾燥した砂の畑では水の管理に特に気を配ります
苗の一本一本にたっぷりと注がないとすぐに枯れてしまいます
安西さんが土に向かうようになったのは18年前です
地元の高校を卒業後東京の百貨店で働いていました。
28歳の時父親が脳梗塞で倒れ突然ふるさとの畑を継ぐ事になりました。
農業の技術は何一つ知りませんでした
ここはほんとに苦労した。
ここほんと砂地で見て分かると思うんですけど貝殻出てるでしょう。
貝殻出てるって…いまだにやっぱり苗作りから失敗したりあるいは収穫時期が失敗したりで失敗の連続です。
とりわけ苦労したのが風から作物を守る事でした。
風よけを張っても倒され収穫間際のトウモロコシが折れる事もしばしばでした
大量の竹を自分で切り出しては何本も支柱を立て補強していきました
実が大きくなる初夏。
今年も850mの風よけを一人で張りました
お〜っす。
おはよう。
何やってんの?
訪ねたのは仲間の畑
おはよう。
何植えてるの?さとうきび。
さとうきび!?すげ〜ね。
幼なじみの田邉純一さん。
砂に強い品種選びから栽培出荷まで何でも話し合える仲です
田邉さんは新しい風よけを始めていました。
背の高いサトウキビをトウモロコシ畑の周りに植える取り組みです
やっぱり風で砂が飛ぶんでなるべくここに網張ってみたりとかいろいろやってるんですよね。
たまたまサトウキビがあるんで風よけになったらいいなぐらいで植えてみようと。
でもねサトウキビですよ。
(笑い声)びっくりですね〜。
へぇ〜面白い事考えるよねさすが。
まあ内緒にしとこうと思ったんですけどね。
(笑い声)
風と砂に仲間と共に立ち向かいながら

トウモロコシの収穫は間もなくです

花農家山田さんのハウスではひまわりの出荷に追われていました

涼しいうちに切り取った花は直ちに選別します
一家5人。
総出の作業です
花に近い葉だけを残して丁寧に取り除きます
届いた先で咲いて一番華やかになるように
長男の桂さんは東京の大田花き市場で修業し去年の秋ふるさとに戻りました
ひまわりっていうものがもうあってそれに適してる土地もあって逆にそこがちょっとプレッシャーでもあるんですけどそこでどうやったらいい花が作れるのかっていうのはいろいろ勉強していきたいですね。
ひまわりは見てて元気が出ますね。
やっぱりほんとに太陽であったりそういう象徴であるっていうのがよく分かるなっていうのは思ってますね。
大きさが合わず出荷できなかったひまわりは大切に玄関先に飾ります
暮らしを支えてくれる花に思いを込めて
(風の音)
(テーマ音楽)
(テーマ音楽)2015/04/25(土) 05:15〜05:40
NHK総合1・神戸
小さな旅「砂に咲く夢〜千葉県館山市平砂浦〜」[字]

南房総、太平洋に面し砂浜が続く千葉県館山市平砂浦。砂地の畑では、切り花のひまわり。先人達が築いた砂防林。サーフィンにかける夢。風と砂に抱かれた暮らしを訪ねる旅。

詳細情報
番組内容
房総半島の南端、太平洋に面し5キロの砂浜が続く千葉県館山市平砂浦(へいさうら)。かつて「房州砂漠」と呼ばれた荒れ地は、戦後砂防林が築かれ耕作地が広がった。子どもたちが走り込み、サンドボードに興じる「砂山」は、砂との闘いを今に伝える。砂地の畑では、手塩にかけ育てられた切り花のひまわりやトウモロコシ。砂防林の保全を続ける地元の人々や、サーフィンに夢をかける若者もいる。風と砂に抱かれた暮らしを訪ねる。
出演者
【語り】山田敦子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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