愛川欽也さん追悼特別番組 西村京太郎トラベルミステリー 2015.04.25


(西本刑事)次から次へと忙しいね全く…。
北条君これ全部データ出ししといて。
(北条刑事)わかりました。
俺こっちすぐやるから。
(十津川警部)いやぁ…無事に事件が解決してよかったな亀さん。
(亀井刑事)はいご苦労さんでした。
(北条)何読んでるんです…あー!ニヤニヤしちゃってどうしちゃったんです?いや兄貴から久しぶりに絵はがき来たんですけどね温泉巡りで超幸せなんだって。
お兄さん?確か西本のお兄さん3年前に奥さん亡くして今は独り身だったよな。
そうなんですよ。
その寂しがってたやつが…。
ちょっと見てやってくださいよ。
ちょっと見てやってくださいよ!あらららら!
(西本誠治の声)俺は今秋田の大湯温泉にいる。

(誠治の声)ここですてきな未亡人と知り合ってね。
1週間ほど一緒に温泉巡りをすることになった。
(亀井の声)西本のお兄さんもなかなか隅に置けないな。
(西本の声)これがいい男なんですよ。
でもなぜか不器用で常に失敗しては1人。
落ち込んでるんですね。
小回りが利かないんですね。
弟の私と違って。
あれ?弟のお前の方が小回り利かないんじゃないか?えー小回り利かなきゃお巡りさん失格じゃないすか?
(西本の声)でもまあやれやれですよ。
ほんとに義姉さん亡くなってから兄貴ずっともう寂しそうでしたからね。

(十津川直子)どうもお邪魔しました。
ありがとうございました。
今日はこの子のためにわざわざ様子見に寄っていただいて。
(直子)じゃあね。
いい子でちゃんとお仕事するのよ。
じゃあ失礼します。
ありがとうございました。
どうぞお気をつけて。
はい。
(車の走行音)
(朝倉多紀)あっ!
(多紀)うっ…。
大丈夫ですか!?あ…はい。
大丈夫ですか?
(男性)大丈夫ですか!?
(多紀)はい大丈夫です。
ひき逃げですよ!突然ライト消した車がこの女性に向かってきて。
ひき逃げ!?
(男性)はい。
あっナンバー見えた?
(女性)見てない。
(男性)そうか。
(直子)ありがとうございました。
お気をつけて。
(直子)どうも失礼します。
いろいろありがとうございました。
いいえ。
本当に病院に行かなくて大丈夫?はい。
かすり傷ですみましたから。
(直子)そう。
ところでひき逃げに心当たりはないっておっしゃってたけどほんとに心当たりないの?はい。
弁護士の仕事はしてますけど特に恨まれるようなことは…。
そう。
ほんとお世話になりました。
いいえ。
それじゃあ。
失礼します。
ひき逃げ?
(直子)そう。
朝倉多紀さんっていうきれいな人。
弁護士さんなんですって。
ほう…。
彼女はねひき逃げされる心当たりなんかないって言ってるんだけど目撃者は彼女に向かって車が突進してきたって言ってるの。
西本。
その後お兄さんどうした?温泉巡りするって絵はがき寄越してからちょうど1週間経つな。
ああそうだよね。
そうなんですあれ以来全く音沙汰なしなんですよ。
きっとあれじゃないですか。
旅先で知り合った女性と温泉巡りなんてめったにないシチュエーションだから舞い上がっちゃってるんじゃないですか。

(誠治)はい。
はいどうも。
(三宅文子)どうもありがとう。

青森と秋田を結ぶ奥羽本線特急「かもしか2号」は青森を9時57分に出発し弘前大鰐温泉碇ヶ関大館鷹ノ巣二ツ井東能代森岳八郎潟に停車終着秋田には12時28分に到着する
青森から秋田まで約2時間半の旅である
(車掌)失礼します。
乗車券特急券を拝見いたします。
はい。
(車掌)ありがとうございます。
(車掌)どうもありがとうございます。
失礼します。
はい。
ありがとう。
はぁーおいしい。
幸せな時って何を口にしてもおいしいのね。
この幸せが永く続くといいんだけど。
続くさ。
2人の気持ちが一緒なら。
(アナウンス)「大館大館」
(アナウンス)「秋田秋田終点です」「ご乗車ありがとうございました」お客さん終点の秋田です。
お客さん?
(サイレン)なんだ?兄ちゃん!?にに…兄ちゃん!すいません兄に何かあったんですか!?あの…弟なんですけど兄ちゃん!すいません。
(北山警部)秋田県警の北山です。
えっ!?聞きたいことがあります。
いや今兄がちょっと大変な…。
そのことで。
はっ!?実は秋田で殺人事件がありましてね。
容疑者の1人西本誠治さんに事情聴取にと来てみたら2階で首をつっていたんです。
え…。
まだかすかに息があったもんで急いで119番して救急車に来てもらったんですよ。
兄が…そんな…。
殺人事件の容疑者だなんて…あり得ません!そんなバカなはずは絶対に…。
(鈴木刑事)自殺を図ったのが何よりの証拠でしょう!自殺ってあなた…!
(北山)あなたあての遺書がありました。

(誠治)「私は大変なことをしてしまった」「死んで詫びるより仕方ない」「仕事柄弟のお前に迷惑がかからなければいいがと思っている。
誠治」た確かに…兄の筆跡ですがでも…信じられませんそんな…。
そんなバカな!
(北山)三宅文子さんという名に心当たりは?ありませんありません。
(北山)お兄さんと一緒に温泉宿に同宿した女性です。
今朝一番でチェックアウトして途中黒石の銀行で500万円下ろして2人でかもしか2号に乗ったまではわかってるんです。
調べろ。
500万?その500万三宅文子さん本人が自分のキャッシュカードで下ろしてるんですが肝心の500万がなくなってるんです。
念のため家の中調べさせてもらいますよ。
(鈴木)警部!これ見てください!この500万円は証拠品としてお預かりします。
いやいや違う違う。
これ違う…あの…違う。
いやこれ絶対なんかの間違いですよ。
あのね…兄に会ってちゃんと話を聞きます。
病院…病院!その前にあなたの連絡先を。
私は警視庁の人間です!西本功!嘘だと思ったら調べてください!うわっ!あ…。

(電話)はい十津川でございます。
ああ西本さんこんばんは。
ちょっとお待ちくださいませ。
あなた。
あ?西本さん。
おう。
はい。
どうした?夜分…申し訳ございません。
実は…兄が…自殺を図りまして。
自殺を!?蘇生術でなんとか一命は取り留めておりますが…意識はまだ戻っておりません。
実は…。
警部兄には殺人の容疑が…。
「かかっておりまして…」温泉に同行した女性を殺したというんですよ。
はい。
あの…絵はがきの。
でも警部…兄は決してそんなやつではありません。
「だって僕が父のカメラを壊した時も身代わりになって笑っていいよと言って…」「父にずっと怒られ続けてくれたやつなんですよ」そんなやつなんです…。
そんなやつが女性に手をかけてましてや金盗んだなんてそんなことができるはずがないんです!「すいませんすいません…すいません警部取り乱して…」「すいません…警部」明日から2日…2日で結構です。
休暇をいただけませんか?兄の旅を…兄の旅をたどってみたいんです。
わかった。
幸い事件も解決してるし君の気の済むまで調べてくればいい。
ああ。
ただ…警視庁としては君の後押しはできないぞ。
うん。
そんなことをすれば秋田県警の捜査を妨害すると受け取られるからね。
ありがとうございます。
西本さん同じ警察の人間とは知らず先ほどは失礼しました。
(北山)まあしかし事実は事実でしてお話ししなければなりません。
当然です。
詳しい話を聞かせてください。
西本のお兄さんに殺人容疑?しかも自殺を図っただなんて…。
西本はお兄さんの無実を信じている。
何があったのか調べてみたい兄さんの旅を最初からたどってみたいと朝一番の列車で向かった。
ああ…。
秋田県警からは第一容疑者が東京の人間だということで正式な捜査協力の依頼が来ている。
はい。
被害者は三宅文子48歳。
1年前に夫を亡くし子供はいない。
現住所が青森県弘前市。
大変な資産家なんだそうだ。
事件発生は昨日16日昼すぎ。
秋田駅に到着した特急かもしか2号の車内で首を絞められて死んでいるのが発見された。
遺体を発見した車掌の証言では被害者には連れがいた。
その男は大館までの切符を持っていたところから大館で1人下車したと思われる。
その連れの男っていうのが…。
西本誠治だと秋田県警はにらんでいる。
解剖所見によると死亡推定時刻は昨日午前11時前後。
これは大館駅に列車が到着する前後の時間だ。
いらっしゃいませ。
お疲れ様でございました。
確かに1週間ほど前宿泊されていましたが。
じゃあ三宅文子さんという方も同じ頃お泊まりになってたんですね?はい。
その時の担当の方にお話をお伺いしたいんですが。
(時子)でもあの女性の方が殺されたなんてテレビを見てびっくりしました。
2人とも来る時は1人だったんですね。
はい。
それぞれ別々にお一人で。
男性がお泊まりになったのはこのお部屋です。
女性の方は廊下の一番奥のお部屋に。
(時子の声)お夕食は1階のレストランでしていただくんですけどその時にお二人意気投合されたようで。
お客さんに喜んでもらえるでしょ。
それがうれしくて作ってるんです。
一度見てみたいですお店。
(時子の声)こちらに5日お泊まりになったあとお二人ご一緒にタクシーで出発されたんです。
黒石に寄って別の温泉へ行ってみるとおっしゃって。
黒石…。
ここから北西に行ったところにある古い町です。
あの…その時の運転手さんわかりますか?はい。
私が乗せたのは黒石のこみせ通りまでで。
黒石のこみせ通り…。
ええ。
古い町並みが残ってるんですよね。
(運転手)2人で少し町を歩いて昼食を取るって。
じゃあちょっと待っててください。
はいすいません。
この男を見かけませんでしたでしょうかね?いや全然わかりませんね。
ああ…。
こんな人を見かけませんでしたでしょうか?おーいい男だばって…見たことねぇな。
人を捜してるんですが…。
こういう男…記憶ございませんでしょうか?あーちょっとわかんないですね。
どうもすいません。
(マスター)ああいらっしゃいましたよ。
え…。
(マスター)三宅さんとご一緒に。
ご存じだったんですか?三宅文子さん。
ええ。
うちの店を気に入っていただいてこちらへいらっしゃると食事に寄ってくださいましてね。
ああ…。
でもまさかあんなことになるとは…。
ニュースを見てびっくりしちゃって。
であの…2人の様子はどうでしたか?どうって…。
(マスターの声)とても仲が良さそうでした。
三宅さんうれしそうにニコニコして1年前にご主人を亡くされて寂しそうにしてたから。
あーよかったな!って思ってたんですよ。
結局あの男は三宅さんを殺したわけでしょ?であの…その男の様子はどうでしたか?それが…。
人を殺しそうな男には全然見えなくて。
あ…。
優しい人の良さそうな感じの良い男でね。
2人がどんな話をしてたか覚えてらっしゃいますか?そうそう!私があいさつに行った時…。
私の見つけた人すてきでしょ?結婚するのよ私たち。
えー!そうですか。
結婚!?
(マスター)これから2人で温泉巡りを楽しむんだって。
そりゃ幸せそうだったのに。
もう弘前には帰りたくない。
なんか弘前の家で面白くないことがあったのかそれであんな男にだまされたんですよ!であの…こちらを出たあと2人がどこへ行ったかおわかりになりますか?
(マスター)タクシーを呼んでくれって言われましてね近くの落合温泉の方へ。
警部!秋田県警からのファクスです。
被害者三宅文子についての詳細です。
(北条の声)家は青森県弘前市にあり青森でも有数の資産家でして。
土地を市内と郊外に所有し数十億の資産があるとみられています。
亡くなった三宅文子は三宅の家の跡取り娘ですが婿養子である夫は1年前に病死子供はいません。
家族は妹の三宅夕子46歳。
半年前に離婚した彼女は一人娘の清美25歳を連れて実家に戻りともども三宅姓に戻っています。
他には市内で藍染めの土産物店をやっている三宅晴夫55歳。
彼は亡くなった先代の連れ子で文子と夕子姉妹の腹違いの兄にあたります。
2年半前に亡くなった先代は婿養子だったため連れ子である長男の晴夫ではなく三宅の血を引く長女の文子が家を継いだということです。
それと血縁ではありませんが被害者三宅文子の亡くなった夫の妹朝倉多紀38歳がいます。
朝倉多紀は東京で弁護士をしています。
朝倉!?ひき逃げ?そう。
朝倉多紀さんっていうきれいな人。
弁護士さんなんですって。
警部。
何か?ん?ああいや。
しかし資産数十億っていいますと遺産が絡んだ事件かもしれませんね。
うん…。
どうもありがとう。
いらっしゃいませ。

(満江)うらやましいくらいに仲の良いご夫婦に見えたんですけどね。
警察から問い合わせが来てもうびっくり!であの…2人は同じ部屋に泊まったんですか?ええ。
このお部屋に。
(西本の声)例えば2人が口げんかをしているとかそういう…。
(満江の声)全然。
そうそう女の方言ってましたよ。
今が一番幸せ。
(満江の声)男の方もニコニコして。
幸せそうに見えたんですけどね。
警部。
西本です。
朝早くにすいません。
どうした?何か掴めたか?兄と三宅文子さんの2人は夫婦として宿泊カードに記入しています。
兄は決してそんな冗談が言える人間ではないんですよ。
ですから本当に本気だったんだと思います。
住所も兄はちゃんと東京の自分の住所を記入しています。
ですからまあ秋田県警もすぐに兄の住所にたどり着いたわけなんですが。
兄に悪意が…殺意があったとは到底思えないんです。
これから500万下ろした黒石の銀行に寄りましてそれで兄たちが乗ったかもしか2号に乗ってみようと思います。
わかった。
実は君のことをマスコミが嗅ぎつけてね。
現職の刑事の兄が殺人事件の容疑者になったということですね。
ああ。
こっちは大丈夫だ。
君のお兄さんが犯人だと決まったわけじゃないからね。
ただ課長とも相談したんだがね君はもうしばらくそっちにいて兄さんの足取りを調べたまえ。
申し訳ありません。
はい。
じゃあ失礼します。

(支店長)警察には何度も申し上げているとおりATMで預金を引き下ろされていますので私どもお二人を目撃しているわけではないんです。
まあただ三宅文子さんのキャッシュカードは身体認証のICカードでして本人と認証できなければ引き下ろせません。
(支店長の声)従いましてご本人様が引き下ろしたことは間違いありません。
身体認証のカードですと私どもの銀行では一度に500万円を引き下ろすことができます。
それ…偽造の可能性はないんですか?いいえ!絶対にありません。

(アナウンス)「まもなく発車いたします。
ご乗車の方はお急ぎください」「かけ込み乗車はおやめください」
(発車の笛)
(アナウンス)「大館大館」「ご乗車ありがとうございました」
(西本の声)兄貴はここで降りたんだ1人で…。
大館…。
秋田第二の都市。
なんで兄貴ここで降りたんだろうな…。
何をしようとして…。
キャッ!何か私にご用ですか?あ…いえ。
あなた黒石からずっと私をつけてましたよね?人違いです。
変な言いがかりつけないでください。
ちょっと待ちたまえ!そんなはずはないでしょう。
離しなさいその手を!運転手さんお願い!
(携帯電話)はい十津川。
おお西本か。
妙な女が?君をつけていたとは穏やかじゃないな。
はい。
まああの…それはともかく今日は大館に泊まって明日は男鹿の方へ行ってみようと思うんですはい。
はい。
確かに兄は大館で降りたんですが殺された三宅文子さんは男鹿の駅までの切符を持っていました。
「また連絡いたします。
はい」ああ。
妙な女が尾行していたっていうと…。
三宅の家に関係ある人物なんでしょうか?わからん。
ただ都会風の女だったそうだがね。

(チャイム)
(三宅清美)お母さん…。
(三宅夕子)誰だと思ったの?この恥さらし!何すんの!?帰ってよ…帰って!自分のしてることがわかってるの!?三宅の家の恥さらしもいいとこよ!恥さらしはそっちじゃない!娘のあとつけてきたりして…。
もう私の好きにさせてよ!帰って!
(清美)帰ってよ!
(施錠音)開けなさい!開けなさいったら!
(ベルボーイ)お客様!お客様!お客様…。
娘の部屋に入ろうとしただけじゃないの!
(パトカーのサイレン)ご苦労さん。
(清水刑事)ご苦労様です。
ああ。
今日の昼過ぎにメードが発見しました。
検視官の話ではこの角に頭をぶつけて脳内出血を起こしたところをこのクッションか何かで口をふさがれての窒息死だろうということです。
このクッションを鑑識に回してよく調べてもらってくれ。
(小林刑事)はい。
(日下刑事)遺体の様子から死亡推定時刻は昨夜の9時前後ということです。
昨夜の9時前後…?はい。
えー身元なんですが運転免許証を所持していました。
(清水)三宅清美25歳。
三宅?まさか…。
(清水)そうなんです。
住所は青森県弘前市です。
すぐに弘前の家族に電話をして連絡をとってみます。
ああ頼むよ。
あっありがとう。
(電話)
(電話)
(三宅晴夫)いやいい。
俺出る。
(電話)あもしもし。
警視庁…?私三宅晴夫と申しますが…。
そうです。
夕子の兄です。
え!?清美が…。
至急親御さんに連絡をとりたいんですがね。
母親の夕子は昨日から外出してるそうでして…。
すぐ携帯の方に連絡とってみます。
失礼します。
そうか母親は留守か…。
ええそうなんです。
警部。
昨夜8時頃被害者が激しく言い争っていたそうです。
(北条)言い争っていた相手というのはどうやら母親らしいんです。
母親?母親もこのホテルに泊まっていたっていうんですか?はい。
別の階のお部屋に…。
確かなんですか?母親だというのは。
(ベルボーイの声)はい。
娘の部屋に入ろうとしただけじゃないの!三宅夕子様でしたら10階のお部屋に1泊されていましたが今朝早くチェックアウトされています。
チェックアウト!?チェックアウトは何時ですか?午前8時です。
何かお急ぎのご様子でした。
どうも。
どうもありがとう。
午前8時だったらもうとうに弘前に着いてるはずですがね。
すいません。
こちらに宿泊していた三宅清美の親戚の者ですが。
あちらに…。
失礼ですが…あなたは?朝倉多紀と申します。
弘前の三宅の義兄から電話をもらいましてとるものもとりあえず来たんですけど本当なんでしょうか。
清美ちゃんが…三宅清美が亡くなったというのは…。
あっちょっとここへ下ろしてくれ。
間違いありません。
三宅清美です。
亡くなった三宅清美さんとはどういう間柄だったんですか?はい…親戚の中では比較的年が近いせいか「多紀姉さん」と慕ってくれていました。
まさかこんなことになるなんて…。
何か心当たりのようなものは?いえ全く…。
清美ちゃんが東京に来てることさえ知りませんでした。
三宅文子さんの密葬の翌日に上京されたそうです。
私も密葬には参列しまして。
その日の最終便で帰京しました。
本当に明るくていい子だったんです…。
(北条)警部!こちらが亡くなった三宅清美さんの…。
母の夕子でございます。
この度はお世話になりまして…。
多紀さんあなたも駆けつけてくれたのね。
はい。
亡骸を…。
間違いなく清美ちゃんでした。
そう…。
こちら警視庁の十津川警部さんと亀井刑事さんです。
この度は…ご愁傷様です。
犯人はわかりましたの?ああいえ今のところ全くわかりません。
ま…どうぞ。
いやあのそのことでね何か心当たりはありませんかね?いえ全く見当もつきません。
失礼ですがここへはどちらから?もちろん弘前からです。
弘前?いや実は…私ね1時間ほど前にお宅に電話してるんですよ。
そしたらお出かけで留守だって聞きましたがね。
昨日このホテルに1泊されたことはわかっているんです。
で今朝8時にチェックアウトされていますね。
だからなんだとおっしゃるんです?まるで!まるで母親の私が娘をどうにかしたみたいなおっしゃり方じゃないですか!夕子さん落ち着いて。
犯人を見つけてもらうためにも正直に何もかもお話しした方が…。
当然でしょ。
あなたは黙ってて。
確かにこのホテルに1泊しました。
朝一番の飛行機で弘前に帰るつもりで羽田に向かったんですが途中気が変わってデパートで買い物をしていた時に兄から携帯に連絡が入ってそれでここに駆けつけたんです。
私と娘がゆうべここで言い争っていることももうお耳に入ってるんでしょうね。
(夕子)ただのくだらない親子喧嘩です。
(夕子)一人暮らしがしたい家を出たいと弘前の家を飛び出したものですから…。
お嬢さんはこのホテルで誰かと会う約束だったんじゃないんですか?そんな心当たりありませんか?いいえありません。
あの付き合っていた男性の方はいらしたんですか?もう大人ですし好きな男の人はいたと思うんですけどでも紹介もされていませんし見当もつきません。
ところであなたのお姉さん三宅文子さんは秋田で亡くなられた。
大変な額の遺産だと聞きましたが…。
私には関係ないことです。
第一娘が殺されたこととなんの関係があるんです?
(夕子)私にも多少財産があります。
父が亡くなった時に1億円分けてもらっていますしね。
別に姉の遺産なんて当てにしておりません。
もうよろしいでしょうか。
あのこれから弘前へお帰りですか?こちらで荼毘に付してから帰りたいと思っています。
(多紀)失礼します。
ちょっと意外でしたね。
まあ普通は何はともあれ遺体を郷里の自宅に運ぶ人が多いと思うんですがねえ。
警部!ん?フロントの話ではガイシャの部屋に外部からの電話はなかったそうですが館内電話が1件あったそうです。
館内電話?はい。
三宅清美さんのルームナンバーを教えてくれと。
ゆうべの9時10分前ぐらいだったそうです。
8時50分頃か?ええと死亡推定時刻の10分前ですね。
男性の声でそれも若い男ではなく中年過ぎの男性の声だったそうです。
そうか。
そっちで荼毘に…。
わかった。
朝倉多紀さん?そうそうそういう名前だった。
あっ名刺もらってる。
ちょっと待って。
えーと…。
あああったあった。
ほら。
(直子)彼女が何か?思わぬ展開になってきてね…。
警部!所轄に問い合わせたところひき逃げにあったのは朝倉多紀さんに間違いありません。
そうか…。
えっ?警部まさか彼女も遺産相続に絡んで狙われたんじゃないですよね?三宅の家の遺産相続に彼女は直接関係ないだろうが…。
一応話を聞いてみよう。
はい。
(多紀)あの時お世話になった方が警部さんの奥様だったんですか。
その節はお世話になりました。
いやいや。
家内も心配しておりました。
ありがとうございます。
でもあれはたまたま偶然出くわしてしまった事故でしたから。
どうぞおかけください。
はあ。
失礼します。
本当にそうお思いなんでしょうか?三宅文子さん三宅清美さん。
お二人が亡くなられてるんですよ。
それにおまけにあなたまでもが…。
これ本当に偶然だと思ってるんですか?一連の事件は遺産相続が絡んでいると思われませんか?2人の死は悲しいことです。
でもその死に遺産が絡んでいるとは…。
単なる偶然です。
ましてや私がひき逃げされたことが遺産と絡んだことだとは…とても信じられません。
いやしかしですね…。
第一私は三宅の人間ではありません。
亡くなった兄が文子姉さんと結婚していたというだけの関係ですし。
三宅の家の遺産などの管理は弁護士であるあなたが?いいえ。
ご覧のとおり私はいまだにイソ弁の身ですし一切タッチしておりません。
三宅の家には先代からの立派な顧問弁護士の先生もいらっしゃいますしね。
念のためもう一度伺いますが三宅清美さんが上京された理由。
何か心当たりはありませんか?前にも申し上げましたが本当に心当たりがないんです。
(北条)青森県警に問い合わせた三宅文子の親族のリストです。
遺書があった場合その内容によりますが遺産の法廷相続人はこの丸印のついた2人です。
どうも私はこの母親の三宅夕子が気になりますね。
娘の死を知りながら涙ひとつ見せずにこっちで荼毘に付して帰ってしまったっていうんですからね。
確かに娘の死を悲しむ母親の姿とは程遠かったな。
母親がまさかとは思いますがね。
はずみってものはありますね。
なんらかの諍いでそのはずみで娘の清美を殺してしまう…。
私にはねそんな風に考えられるんですよ。
とにかく弘前へ行ってみよう亀さん。
はい。
じゃあありがとうございました。
ご苦労様です。
おお。
ここか…。
はい。
さすが立派な構えですね。
でも家には留守番のお手伝いさんしかいません。
三宅夕子はまだ東京から戻ってないんですよ。
青森県警には話を通してある。
はい。
手分けして聞き込みにあたろう。
(2人)はい。
三宅家ってのはこちらじゃ名門だそうですね?そうですね古いですね。
ああ…。
あそこの兄妹ねお得意さんだからこう言っちゃなんだけど仲は悪かったね。
警部!おう。
三宅清美は勤務先の証券会社に3日間の休暇届を出して上京してる。
ということは親子喧嘩の勢いで飛び出してったってことじゃないですねこりゃ。
上京するなんらかの目的があったはずだ。
男ですかね?それなんだがね付き合っていた男性はいたようなんだがそれが誰なのかは同僚の誰も知らないようだ。
隠していたっていうことは不倫ですかね?うーん…。
近所の評判はどうなんだ?はいそれが2人共あまり近所付き合いがなかったようなんですよ。
でもまあ2人は近所でも評判の美人姉妹だったようです。
姉の三宅文子の方はおっとりしてるが気位が高い。
妹の夕子の方はしっかり者だが気が強い。
でもあの出入りの八百屋さんが何度も2人が口喧嘩をしてるのを見てるようです。
どうも姉妹の仲はあまり良くなかったようですね。
遠い親戚の人も言ってますね。
三宅夕子は気が強くて煙たがられていたってね。
そうか…。
(携帯電話)はい十津川ですが。
ああどうもお世話になります。
どうかよろしくお願いします。
はい。
青森県警からだ。
三宅の家の前に人を配置してくれてね。
三宅夕子が帰宅したそうだ。
(ノック)失礼いたします。
どうも。
三宅の義兄に顧問弁護士の青木先生です。
清美ちゃんの事件を担当してくださってるんです。
警視庁捜査一課の十津川です。
こちらが亀井刑事西本刑事です。
亀井です。
西本です。
どうぞ。
(青木俊郎)申し遅れました弁護士の青木です。
十津川です。
大館?こちらの弘前ではなくお住まいは大館なんですか?はい。
親の代から大館の方で開業しておりまして。
(ノック)お取り込みのところ大変申し訳ありませんが亡くなられた清美さんは付き合っていた男性がいたようなんですがその人物に心当たりはありませんか?存じ上げません。
前にもそうお話ししたはずです。
皆さんはいかがですか?いやあ知らないなあ…。
さあ?私は…。
いつまでこんなことをしてるおつもりなんです!?付き合っていた男性よりもさっさと犯人を見つけたらどうなんです!?夕子さん犯人を見つけるための手順なんですからこれは。
三宅に関係ないあなたは余計なことに口挟まないで。
すいません。
出過ぎた真似を…。
(ノック)
(野澤利彦)失礼します。
あっ院長先生〜!こんなに早く来ていただいてすみません。
いえ…。
失礼します。
ちょっと疲れておりまして診察していただきますの。
お医者さんですか?はい。
かかりつけの野澤医院の院長先生です。
ところで亡くなった三宅文子さんの遺産分割協議はされたんでしょうか?いいえまだです。
莫大な遺産ですし全財産の目録を作るだけでも何日もかかりますので。
遺言状はなかったんですか?あります。
私が預かっております。
それはまだ公表はされてないんですか?ええ。
皆さんが揃ったところでと思っていたんですが…。
(青木)清美さんがあんなことになってしまって…。
(三宅)大体文子が悪い男に引っかかりさえしなけりゃあ…。
旅先で出会った男に騙されて殺されるなんて…!西本って男が…。
西本…?さっきあんた西本って言ったね?はい。
文子を殺した西本って男東京の現職刑事の兄だって新聞に書いて…。
あんたなのか!?はい。
確かに私の兄ですがしかし間違っても人を殺めるようなそんな男では決して…ありません!帰れ!帰ってくれ!帰れよ!!申し訳ございません。
いやいや謝ることはないよ。
君のお兄さんが犯人だと決まったわけじゃないんだから。
そうだよ西本。
もしこの2つの事件の犯人が同一人物だとしたら三宅清美が東京のホテルで殺された時君の兄さんはね意識不明で病院に入院してるんだよ。
犯人のはずないじゃないか。
ははい…。
警部。
もうちょっと聞き込み続けます。
ああ頼むよ。
私は弘前署の方にちょっと顔を出しておく。
はい。
おい西本。
はい。
あっそれじゃあ…。
俺は帰る!な?ああ夕子によろしくな。
はい。
じゃ私もこれで。
あっ何かあったらまた連絡してください。
はい。
ありがとうございました。
折り入って話があるの。
そう明日。
男鹿の桜島で。
うん。
わかった。
(三宅ひろみ)ちょっとあんた!何してんの?そこで…。
いやなんでもないよ。
西本さん?北条です。
(北条)病院へ寄ってきたんですがお兄さん依然として意識不明の状態です…。
ありがと。
あっすいません。
北条君からでした。
兄はまだ昏睡状態だそうです…。
なあ元気出せよ。
これからじゃねえか勝負は。
事件が解決したらお兄さんだって回復するよ。
そう…そうだよ。
はい。
どうも。
三宅夕子さんにもう一度お話を伺いたいと思いまして。
あいにく外出しておりますが。
あのどちらへ行かれたんでしょうか?ちょっと駅前まで買い物に行ってくると申しまして。
早かったのね。
何かあったんですか?夕子さんが出かけたまままだ戻らないんです。
携帯にかけても応答がないし…。
多紀さん!あっ…。
あっどうも。
夕子さん出かけたまま戻らないんだって?そうなんです。
先生ならもしかして行き先をご存じじゃないかと思ってお電話したんですが。
いや私は…。
所轄の方にも協力を要請しておきましたので。
ありがとうございます。
では。
じゃあ。
(パトカーのサイレン)ご苦労様です。
秋田県警の北山です。
お電話では何度か。
十津川です。
お世話になってます。
(北山)この崖の上から転落したようです。
単なる事故とは考えにくいですね…。
ええ。
他殺自殺の線も十分考えられます。
自殺…?やはり娘の三宅清美を手にかけた…。
それはこの母親の三宅夕子でしょうかね?それを悔いての自殺か…。
いずれにしろ合同捜査本部が敷かれることになると思います。
よろしくお願いします。
十津川警部。
いやこちらこそ。

(北山)ガイシャの遺留品です。
ハンドバッグの中にこののし袋に入った100万円を所持していました。
100万円ですか!?それと男鹿駅から大館までの未使用の切符も所持してました。
おそらく帰りの切符と思われます。
(鈴木)警部すいません電話です。
ああ。
失礼。
帰りの切符を持っていたとなると自殺の線は消えるね。
そうですねえ…。
それにしても100万とは…。
これのし袋に入れていたとするとこれは礼金かなんかでしょうかね?そう考えざるを得ないね。
礼金だとすると誰かに渡すために出かけたんでしょうかね?おそらくな。
わざわざ男鹿まで出かけてるんだ。
誰かに会うためだったと考えるのが妥当だろう。
問題は三宅夕子が男鹿で誰に会っていたかだ。
その相手に夕子は礼金の100万を渡そうとしたんでしょうか?そうだとしたら渡さずに三宅夕子がそのまま所持していたというのも不自然だしね。
どうも謎が多いな…。
そもそもその100万の礼金一体なんのための礼金だったのか…。
十津川さん死亡推定時刻が判明しました。
昨日の午後2時前後ということです。
昨日の午後2時前後?あの辺りはわざわざ観光客も下りてきませんしそれで発見が遅れたようです。
被害者の足取りですが秋田駅で男鹿線に乗るところを駅員に見られています。
男鹿線というのは…。
ああ秋田から男鹿を結ぶこの線ですよね。
そうです。
おそらく弘前からかもしか2号に乗って秋田で乗り継ぎ男鹿から現場の桜島へはタクシーで移動したものと思われます。
今タクシー会社にあたってます。
(多紀)あの…。
前後の状況から見てこれは殺人事件かと思われます。
殺人?三宅夕子さんは誰かと桜島で会いその人物によって殺された可能性が強いんです。
まさかそんな…。
夕子さんが殺されたなんて…信じられません…。
桜島で誰に会っていたのか…何か心当たりありませんか?いいえ。
まさか男鹿の方に行っているとは…。
弁護士の青木先生はいかがですか?先生?ああ失礼…。
一体何がどうなってんのか…皆目見当がつきません。
三宅の家の方が3人も亡くなっています。
三宅文子さんの遺言書公開していただくわけにはいきませんか?さあそれは…私の一存では…。
どなたか公開に反対なんでしょうか?いいえそういうわけでは…。
差し出がましいようですがやはり弁護士としては公開すべきだと思います。
お二人とも弁護士の先生方ですので単刀直入に伺いますが昨日の午後2時頃どちらにいらっしゃいました?アリバイということですか。
ご存じだと思いますが手続き上どなたにもお伺いすることになっておりますが。
昨日のその時間なら家におりました。
ちょっと調べ物があったもので。
どなたかご一緒でしたか?
(青木)いえ…。
家内はひと月前に実家の方に帰っておりまして今は一人暮らしなものですから。
朝倉さんあなたはどちらに?私はずっと三宅の家におりました。
実は昨日の夕方の便で東京へ戻ろうと思っていまして夕子さんのお顔を見てあいさつをしてからと思っていたんですが…。
念のために伺いますが5月20日の日はどちらにいらっしゃいました?5月20日…。
三宅清美さんが東京のホテルで亡くなった日です。
あ…あの日は大学の同窓会がありまして東京に。
ほう東京に…。
調べてもらえばわかります。
新宿のホテルに1泊してますから。
あっ大丈夫ですか青木先生。
お顔の色が…。
大丈夫…大丈夫。
(清水)青木弁護士は問題の日間違いなく新宿のホテルに1泊しています。
でそのホテルなんですが殺された三宅清美が宿泊していたホテルのすぐ近くなんです。
はい日下に代わります。
同窓会も青木弁護士が宿泊したホテルで行われてまして確かに出席しています。
お開きになったのは午後8時半頃でして二次会には出席していません。
お開きになったのは午後8時半頃…。
三宅清美の死亡推定時刻は午後9時前後。
どうも引っ掛かりますよねあの青木弁護士ってのは。
遺言書の公開は渋っているしそれに三宅清美が殺された同じ日に近くのホテルに宿泊してたってのは…。
確かに単なる偶然にしちゃあ出来過ぎてるな。
あれあの…ホテルのフロントにかかってきた電話の件ですがねかかってきたのは午後8時50分前後。
三宅清美のルームナンバーを聞いてたって言ってました。
青木弁護士ということは十分考えられるね。
中年過ぎの男性の声だったというし…。
三宅清美の不倫の相手っていうのは青木弁護士じゃないでしょうか。
ああ…ただ中年過ぎの男性の電話の声ということに限れば三宅晴夫も考えられる。
彼は事件当夜弘前の自宅にいたということなんだがはっきりしたアリバイはない。
警部青森県警に確認をとったんですが三宅晴夫の昨日のアリバイはないも同然ですね。
昨日は午前10時からずーっと外に出ていたというんですが…。
まあ本人はパチンコ屋をハシゴしてたって言うんですけどね。
どの店に写真を見せても全く裏がとれなかったと言うんです。
青森県警の話では先代が亡くなったあと遺産のほとんどは長女の三宅文子が受け継いでいます。
それで妹の夕子とそれから三宅晴夫にはそれぞれ1億円ずつ分与されてるんですがここ数年仕事もあまりうまくいっていずさらにこの不況ですからね。
倒産の噂さえささやかれています。
三宅文子の遺産の分配にあずかれるかどうかは死活問題というわけか…。
はい。
まあ遺言書の内容にもよりますがね三宅文子の遺産を相続できるのは三宅晴夫しかいませんね。
向こう行こう。
はい。
それにしてもなぜ亡くなった三宅夕子は大館駅までの帰りの切符を持っていたのか…。
なんで大館で下車するつもりだったのか…。
大館…。
ん?いや兄も…兄も大館で下車しています。
もしですよ。
兄が…。
兄も大館で誰かに会うつもりで下車したんだとしたら…。
大館…。
はい。
あっ…大館といえば青木弁護士も…。
ああ間違いない。
事務所も住居も大館だ。
すると三宅夕子は大館に寄り青木弁護士に100万円渡すつもりだったんでしょうかね。
警部とにかく私すぐ…貸してください。
青木弁護士に会ってきます。
すいません失礼します。
(消防車と救急車のサイレン)
(電話)えっ火事!?ついさっき。
青木弁護士の家が全焼しまして。
はい…そうなんです。
それで弁護士が運ばれた病院に来てみたんですが面会はさせていただけません。
意識不明なんだそうですはい。
その担当の医師の話では助かるかどうかは五分五分なんだそうです。
驚きましたね火事とは。
所轄の話によると放火の疑いもあるそうだ。
放火!?偶然とは思えないねぇ…。
いやぁ全くあまりにも見事なタイミングですね。
亀さんそもそもの出発点かもしか2号に明日乗ってみよう。
(アナウンス)「まもなく発車いたします」
(発車のベル)車両は全部で3両でこの1号車の一部がグリーン車。
あの仕切りの後ろは全部自由席です。
グリーン席は12席だけか。
はい。
この窓際に座っていたのが三宅文子。
でこの通路側に座ってたのは西本の兄さんの西本誠治。
それから秋田県警の調べによりますと当日のグリーン席はすいていたそうででそのほかに別々に男性が2人乗っていたそうです。
で1人は30代と思われる男。
もう1人は中年のでっぷりした山男風の男。
風邪でもひいていたのかマスクをしていたそうです。
サングラスの男にマスクの男か…どうもにおうな。
車掌の証言によってモンタージュを作ったんですけどね。
何しろ正面からちゃんと見てなかったもんですからまあはっきりしなかったんですがこれがモンタージュです。
そうか…このグリーン席にはホームに降りる乗降口がないのか。
はい。
さっき私たちが入ってきたあの1か所だけです。
自由席の乗客が列車を降りるためにこのグリーン席を通ることはない。
密室ですね。
そして自由席との仕切りのドアは自動ではなく手動…。
次の停車駅が問題の大館ですね。
大館駅には2分間停車するのか…。
亀さんトリックが解けたよ。
警部。
おうご苦労さん。
ご苦労様です。
説明する。
(一同)はい。
かもしか2号のグリーン席は動く密室同然だった。
犯人はそれを利用したんだ。
(北山)動く密室?かもしか2号が大館駅のホームに滑り込んだ時まだ理由は不明なんだが容疑者西本誠治は三宅文子と別れ1人乗降口に向かった。
それを見間髪を入れずグリーン席にいた乗客の1人が仕切りドアの前に立って見張りもう1人は素早く三宅文子の後ろの席に回り用意していたロープを首にかけ一気に締め上げる。
そしてそのまま2人は大館駅で下車する。
大館駅の停車時間は2分。
犯行は十分可能だ。
じゃあ兄は…西本誠治はやっぱり…犯人じゃなかったんですね。
このグリーン席に乗っていた2人の乗客。
そう考えられる。
しかし…。
1人はハンチングにサングラス。
1人は登山帽にマスク。
あまりにも不自然だと思いませんか?しかも1人は眠っていた。
1人は窓の外を見ていた。
車掌に顔を見られないようにしていた。
変装をしていたのかもしれないな。
あっ…まさか三宅晴夫が…。
三宅晴夫?ガイシャの異母兄妹の三宅晴夫ですか?この一連の事件が遺産絡みの事件だとすれば今現在この莫大な遺産を相続できるのは三宅晴夫しかいません。
そう。
三宅文子三宅夕子三宅清美。
この3人が死んで一番得をするのは三宅晴夫です。
警部犯人が…かもしか2号の同じ車内に乗っていたんだとしたら…。
もう最初から大湯温泉からつけてきてたのかもしれませんね。
今から落合温泉に行って詳しく話聞いてきます。
小林!
(小林)…はい!
(北山)我々も事件関係者をもう一度洗い直してみます。
お願いします。
亀さん私たちは三宅晴夫に会ってみよう。
はい。
三宅文子さんがかもしか2号の車内で殺された日あなたも同じグリーン席に乗っていたんじゃありませんか?私が?何を言い出すんですか。
私はずっと店にいました。
女房になんでも聞いてください。
文子に夕子に清美までも…。
三宅の人間が次々に殺されるなんて…。
私はね刑事さん断腸の思いなんです。
(携帯電話)あっちょっと失礼。
青木弁護士が命を取り留めたそうです。
はい。
声は出ませんが筆談ならと医師の許可が下りたそうです。
亀さんと一緒に病院へ行ってみるよ。
西本の兄さんが大館で降りたのは青木弁護士に会うためだったと思うんだがね。
私もそう思います。
そうとしか考えられませんよ。
しかしなぜですかね?それが謎ですね。
これはあくまでも推理なんだがね。
三宅文子が西本のお兄さんを大館に行かせ青木弁護士に何かを頼んだんだと思う。
何かって言いますと?例えば遺言書。
それも新しい遺言書。
誰かにとって都合の悪い新しい遺言書があったとしたら…。
だから青木弁護士は遺言書の公表をためらったんだ。
お待たせいたしました。
筆談の用意ができましたので。
我々の言うことは聞こえるんですね?はいそれは。
早速ですが西本誠治というこの男があなたを訪ねて行きませんでしたか?この男は三宅文子さんから新しい遺言書を預かってあなたに届けに行ったんじゃありませんか?「ニシモトシラナイ」「文子サンタノマレテナイ」お宅が全焼したのは放火の疑いがあります。
あなたは何かを知っていたから殺されかけたんじゃありませんか?「ワタシシラナイ」誰かに口止めされているんですか?我々は三宅文子さんたちを殺した犯人を捕まえたいんです。
本当のことを話してくださいよ。
三宅文子さんは莫大な財産のことを心配していたんじゃありませんか?財産争いもあったと思うんですがどうなんですか?「ワタシシラナイ」男鹿で殺された三宅夕子さんのことはどうです?彼女が所持していた100万円はあなたへの礼金だったんじゃありませんか?「100万円シラナイ」警部何を聞いても答えてくれそうもありません。
もう一度出直しましょう。
ああ…。
では。
青木弁護士のお見舞いですか?はい。
あなたも大変ですねぇ。
次から次に事件が起きて。
あなた自身も気をつけてくださいよ。
東京ではひき逃げも起きてますし。
ありがとうございます。
ああそれから…青木弁護士のご家族のことご存じありませんか?奥さんはひと月前実家に帰っているとのことでしたが。
さあ詳しいことは何も。
ご夫婦の間にお子さんがないことは聞いておりますけど。
(北条)青木弁護士の家族は1か月前に別居した奥さんの千鶴子さん55歳だけです。
はい。
奥さんの実家は男鹿です。
住所申し上げます。
男鹿市…。
(携帯電話)はい。
青木弁護士の地元での評判いいですね。
「堅物と言えるぐらい真面目な人格者」とか「人望があります」ですとか…警部ちょっとお待ちください。
あっ日下です。
奥さんとも円満でおしどり夫婦だったそうでして…。
(日下)「突然ひと月前奥さんが男鹿の実家に帰ったことをほとんど知る人間はいません」そうか…。

(青木千鶴子)主人も命を取り留めましたそうでともかくほっとしております。
病院の方へ奥さんは?立ち入ったことを伺うようですがご主人の青木俊郎さんとはどうしてひと月前から別居を?何かあったんでしょうか?それとこれとは…。
事件とは関係ないと思いますけど。
実は放火の疑いもありましてね。
事件を解決するために何もかも話していただけませんか?失礼ですがねご主人が不倫をしていたっていうようなことはありませんか?年甲斐もなく娘みたいな子に…。
家を出たのは主人の不倫が原因です。
その不倫の相手は?三宅清美さんです。
顧問弁護士が聞いてあきれます。
それは間違いないんでしょうか?だって私見たんです。
清美ちゃん…。
(千鶴子の声)事務所にいる主人に用があって行くと…。

(千鶴子の声)主人は泣いて謝りましたけど…。
でも根が真面目なだけにどんどん深みにはまっていくようで。
それで私…。
2人の関係を知っている人間はいますか?いいえ私だけです。
弁護士という仕事柄もありますし誰にも言っていません。
あっ…一度清美さんのお母さんが訪ねて来て…。
(夕子)どうやら清美が不倫をしているようなんです。
青木先生には時々相談しているようですし相手のこと何か漏れ聞いてらっしゃるようなことはないかと思いまして。
まさかその相手が主人だとも言えず知らないとお答えしましたけど…。
やはり青木弁護士と三宅清美は不倫関係だったんですね。
2人とも秘密にしだからこそ結びつきも深まってしまったのかもしれないな。
っていうことは青木弁護士は東京での同窓会っていうのを隠れみのに上京し口約束をしていた三宅清美もやはり上京し2人が会ったっていうことは考えられますね。
ああ。
三宅清美が宿泊していたホテルの館内電話から清美のルームナンバーを問い合わせてきたのは青木弁護士とみて間違いはないだろう。
それで2人は三宅清美の部屋で会ってでなんかの諍いで…三宅清美を殺してしまったっていうことでしょうかね。
ああ…遺言書のこともあるし不倫のことも含めてもう一度青木弁護士に問い合わせてみよう。
(携帯電話)はい。
落合温泉に行って大正解でしたよ。
仲居さんが怪しい男を覚えてました。
(文子)待って!私のことつけ回すのやめてください。
2人の様子を伺ってた怪しい男というのがなんと三宅晴夫だったんですよ。
もう仲居さんにちゃんと確認しましたから間違いありませんはい。
三宅は偽名で宿泊しておりまして。
で兄たちがチェックアウトしたあと5分も経たないうちにあわただしくチェックアウトしています。
一連の事件はこれは遺産を独り占めするために三宅晴夫が青木弁護士と組んでやった犯行なんでしょうかね。
三宅晴夫が誰かと組んでいたのは間違いないと思うがね。
その相手が誰なのか…。
え…?あれ?青木さんなら今朝早く転院なさいましたよ。
転院!?
(看護師)はい。
ありがとうございました。
大学病院の近くにあって治療にも何かと都合がいいっていうんで弘前にある三宅家かかりつけの医院に転院しましたよ。
かかりつけの?転院の手続きをとったのは三宅晴夫です。
(野澤)やけどの専門医もいる大学病院にも近いですしね。
こちらです。
青木先生お客様ですよ。
何かありましたら声をかけてください。
奥さんの千鶴子さんに会ってきました。
三宅清美さんとは不倫の関係にあったそうですね。
そのことを責める気はありません。
ただ本当のことを知りたいんです。
青木さん書いてくださいよここに。
「シラン」「カンケイナイ」誰かに口止めでもされたんですか?青木さんいいですか?三宅文子さん夕子さん清美さん3人も亡くなっているんですよ。
あなた弁護士でしょ!知らぬ存ぜぬってそうやって黙りこくってたら卑怯じゃないですか!青木さんもう一度書いてください。
「三宅文子夕子清美ワタシカンケイナイ」三宅晴夫にも会っていこう。
はい。
(ひろみ)さあどこさ行ったんだか。
出たら出たっきりの鉄砲玉みてえな人だはんで。
(三宅)ただいま。
あっあんた刑事さん。
あっこれは刑事さん何か?青木弁護士を野澤医院に転院させたのはあなただそうですね。
ええ。
三宅の家が世話になっている先生ですし。
それにこっちの方が何かと便利かと思いまして。
それが何か?
(携帯電話)あっちょっと失礼。
はいもしもし?えっ青木先生が?はいすぐ伺います。
青木先生の容態が急変したそうです。
行きましょう!たった今息を引きとられました。
容態が急変したということですか?はい。
睡眠導入剤を多量に含んでしまったようでして。
手を尽くしたんですが…。
あの…睡眠導入剤をどうやって手に入れたんでしょうか?眠れないと言うので私が処方した分と前の病院で処方された分をこっそりためて隠し持っていたようです。
こんなものが残されていました。
「不注意で火を出し申し訳ありません青木」自殺だなんておかしいですよ。
いくらなんでも明らかにタイミングが良すぎますよ。
何かからくりがあるんじゃないかと私も亀さんもにらんでいる。
それと気になるのはこのモンタージュだ。
(小林)これですか。
例のかもしか2号のグリーン席に乗っていた2人の男。
車掌がはっきりと顔を見ていなかったんでちょっとあいまいですよね。
このサングラスの方の男なんだがね顔の輪郭それから年格好からみて野澤院長に似てないか?まああの…似てるって言われればそんな気もしますがね。
転院先の野澤院長についてわかっていることは?はいあの…みんなで手分けして調べました。
えーっと…野澤利彦38歳。
8年前亡くなった父親の跡を継いで院長になってます。
これが評判がいいんですよ。
(清水)そうなんです。
今時珍しいくらい患者の身になって考えてくれると誰も悪く言う者はありません。
金儲け主義とは一線を画した経営方針と合わなかった妻とは5年前に離婚しています。
子供はいません。
(北条)その別れた奥さんは青森の資産家のお嬢さんでその辺も生き方が合わなかったのかもしれません。
というのも野澤院長は愛人の子でして正妻との間に子供がなかったため中学生の時に野澤医院に引き取られたそうなんです。
まあその辺の事情もあって貧しい患者に優しかったのかもしれませんね。
意外と苦労人なんだね。
この山男風の男が三宅晴夫ででもう1人が野澤院長だとすると事件はこの三宅晴夫と野澤院長の2人が仕組んだんじゃないんですかね。
引き続き野澤院長の身辺洗い出してみてくれ。
(一同)はい。
亀さん青木弁護士との筆談のメモ持っていたよね。
あります。
この遺書みたいなものもこれは左手で書かれたもんです。
青木弁護士が書いたものかどうかはわかりませんよ。
でも誰でも右利きの者が左手で書くと下手な字になるんですよ。
亀さんちょっとこれ見てくれ。
三宅文子三宅夕子の2人はこれさん付けせずに呼び捨てにしてる。
あっそうですね。
どんなに親しかったかは知らないが三宅姉妹は赤の他人だろ。
え…。
警部この1回目はですね「サン」が付いてますね。
さん付けせず呼び捨てにしたのは身内だったからじゃないのかな?すり替わったんですね!2回目に会った男彼は三宅晴夫だったに違いない。
すり替えが可能だったのは…。
野澤医院に転院したからだ!警部…!うわ…またですか?
(三宅)もういい加減にしてくださいよ。
あなたの全身を包帯で巻いたのは野澤院長ですか?えっ?なんの話ですか?あなたが青木弁護士にすり替わったってのはわかってるんですよ。
知りません。
私にはなんのことだかさっぱり…。
このボールペン覚えてますか?あなたがこのボールペンで左手でメモを書いてくれたんです。
あなたは指先まで包帯を巻いていたから大丈夫だと思ったんでしょうが実は人差し指の先の包帯がほつれてましてねえ。
このボールペンに指紋が残ってしまったんですよ。
念のためあなたの指紋を取らせていただけませんか?このボールペンの指紋と照合したいんですが…。
なんでもなけりゃ指紋を取らせてくれても構わないでしょう?う〜ん…そんな義務はないでしょう?配達の途中なんですよ。
失礼します。
亀さんボールペンありがとう。
はい。
彼はあとひと押しで落ちますね。
警部のハッタリがこんなに効くとは思いませんでしたよ。
私ねこれからもう一度青木弁護士の奥さんに会ってきますよ。
今度の事件と青木弁護士とがどう関わっているか…。
そこになんか事件を解くカギが隠れているような気がしてならないんですよ。
頼むよ亀さん。
はい。
あっああ…どうもどうも…。
お待たせしました。
ああいいえ。
実家を出られたそうですね。
はい。
実家も弟の代になっておりましていつまでも厄介になっているわけにはいきませんので。
主人の葬儀を済ませたらこちらで働かせていただくことになってるんです。
そうですか。
あの〜ご主人から三宅晴夫さんのことについて何か聞いておりませんか?いいえ。
仕事上のお付き合いのことはあまり申しませんでしたし…。
ああじゃあ特に親しかったってわけじゃないんですね。
はい…。
いえね三宅家の人々が次々に亡くなられてねで三宅家の遺産を継ぐのは三宅晴夫さん1人ってことになるんですけどその晴夫さんも罪に問われるようなことになっちまったら三宅家の遺産を継ぐ人はいなくなってしまいますねえ。
あらもう1人いらっしゃいますでしょ?ええっ!もう1人?2年半前に亡くなられた先代が愛人に生ませたお子さんが…。
(携帯電話)はい十津川。
おお亀さんか。
えっ?もう1人!?その亡くなった愛人はですねやはりここ男鹿出身だそうで。
ええ私あの訪ねてみます。
頼むぞ。
おお!
(男性)その辺は知らないんですが…。
(多紀)もう1人?先代が愛人に生ませた子がいるそうですが何か聞いてらっしゃいませんか?さあ…私にはそんなお話見当もつきません。
野澤院長のことなんですが…。
野澤先生が何か?古くからのお知り合いですか?中学生時代は同じ学校で同級生でした。
でも高校大学と進路が分かれましてめったにお会いすることもなくなりました。
中学時代の彼はどうでした?もちろん成績は優秀でしたけど正義感が強くて気持ちの優しい人でした。
弱い者いじめをするような子には1人で立ち向かっていって…。
あなたも助けられたお一人ですか?私?そうかもしれません。
子供時代はメソメソして意気地なしでしたから。
彼は愛人の子だそうですね。
えっ?もしかして刑事さん野澤先生に三宅の血が流れている…そうお考えなんですか?あり得ませんそんな話。
(携帯電話の操作音)
(呼び出し音)俺だ。
まずいよこのままじゃ。
男鹿で?わかった。
あっ警部動き出しました。
尾行します。
いやいやいや悪い!遅くなって。
おいおいおいそっちは崖だぞ。
(野澤)うわっ!
(三宅)うわーっ!やめろー!やめろっ!やめろ!三宅野澤逮捕する!
(手錠をかける音)うわあああ!
(風の音)やっぱりここでしたね。
あなたのお母さんはこの男鹿出身だったそうですね。
そしてこの入道崎近くの村であなたは生まれた。
父親は三宅家の先代。
そうあなたこそ三宅の血を引く愛人の子だった。
何をおっしゃるんです?私は朝倉の家で生まれ育った朝倉多紀です。
戸籍ではあなた朝倉家の養女になっていますね。
私ね同じこの男鹿出身の青木弁護士の奥さんに話を聞いてきました。
そして昔の事情に詳しい方に話を伺いました。
私は確認してきました。
本来ならあなたは三宅家の三姉妹になる人だ。
しかしあなたはずっと日陰の身だった。
あなたが姉の夕子さんから冷たい仕打ちを受けるのを私たちも目にしています。
少女時代から妹として扱われることなくあんなふうに弱い者いじめをされてきたんでしょう?
(文子・夕子)「あかりをつけましょぼんぼりに」「お花をあげましょ桃の花」「五人ばやしの」
(多紀)あのこれを…。
どきなさい!邪魔よ。
(泣き声)生みの母は私を産んですぐに亡くなりました。
それで三宅の父は当時三宅の家の番頭だった朝倉の父に私を養女として引き取らせたんです。
姉二人から見たら私はずっと使用人の娘でした。
いつなんですか?あなたが本当は三宅の家の血筋を引いた娘だと知ったのは。
子供心に薄々気付いてはいましたが2年半前…。
(三宅仙蔵)朝倉多紀を実子として…。
(多紀の声)三宅の父が病床についてしばらくして私たち3人が呼ばれたんです。
その席で…姉2人の前で私を認知してくれたんです。
多紀来い来い。
これを。
3人で仲良く…。
(夕子)お父様!
(文子)お父様!しっかりしてお父様!お父様!
(多紀の声)あっという間に急変して…。
何よこんなもん!
(多紀の声)もちろん遺産は分けてはもらえませんでした。
でも不満はなかった。
元々三宅の財産をあてにしたことはありませんし大学もアルバイトと奨学金で卒業したくらいでしたから。
ただ父に認めてもらえたそのことだけで十分でした。
そんなあなたに同情した野澤院長があなたを助け一連の事件を仕組んだんですね?違います。
野澤先生は関係ありません!確かに子供時代から私を力付け励ましてくれました。
でもすべては…すべては私一人が計画し実行したことです!
(野澤)何を言うんだ!多紀ちゃんは悪くない!私が…私が計画し実行したことです。
利彦さん…。
あー危ないとこだった。
私まで殺されるとこだった。
すべてはねこの2人がやったことなんだ。
私は関係ない。
そうでしょうか?そもそもあなたが犯行をたきつけたんじゃないんですか?店の経営が思わしくなく金が欲しかったあなたは遺産の分け前がどうしても必要だった。
バカな!私には関係ない。
あんたが…あんたが兄と三宅文子さんの旅をつけ回したんでしょうが!だから…文子は惚れっぽいから旅先で妙な男に引っかかったりしたら大変だよ。
心配で兄貴としては当然のことをしたまでだよ!もし三宅文子さんが再婚ということになったら遺産は再婚相手にいってしまう。
そのことをあなたは恐れたんだ。
そして東京の朝倉さんに連絡をした。
三宅文子さんが再婚しそうだと。
はい。
早く手を打たないと大変なことになると…。
赤の他人に三宅の財産取られちまうんだぞ。
悔しくないのか?
(三宅)「あんなに散々いじめられて…」「今だよ今思い知らせてやらないでどうする?」
(多紀の声)ちょうど学会で上京していた利彦さんに相談しました。
これ以上我慢することないよ。
僕が助ける。
2人一緒なら…!そして2人で周到な殺害計画を立てた。
遺産争いによる犯行だとわかった時に自分が容疑者から外れるように念のためひき逃げ事故を装った。
大丈夫ですか?大丈夫ですか?ええ…。
(男性)大丈夫ですか?大丈夫です。
(野澤の声)そのとおりです。
(野澤の声)ひき逃げの車を運転したのは私です。
そしてまず三宅文子さんを殺害した。
(多紀)三宅の兄から2人の結婚は間違いないと切迫した電話を受け私も利彦さんと一緒にあのグリーン席に乗り込みました。
(多紀の声)男物のヤッケの下にいっぱい着込みたくさん詰め物をして太った体に変装して…。
そして大館に到着する寸前…。
あっああ!ロープで絞殺し何食わぬ顔で大館駅で降りた。
だったら…なんで兄はとんでもないことをしてしまったと言って自殺など図ったんでしょうか?大館で下車した君のお兄さんは三宅文子さんから託された新しい遺言書を青木弁護士に届けに行ったんだよ。
2人の旅行の費用にと下ろした500万を三宅文子さんから預かってね。
温泉まで身内の人間につけてこられて彼女は焦っていたに違いない。
一刻も早く新しい遺言書を有効なものにしなければと。
新しい遺言書には自分にもしもの時は結婚する西本誠治にすべての遺産を贈るとそう明記されていたに違いない。
そうですよね?はいそのことはすぐ青木先生から電話をもらって知りました。
もし新しい遺言書が届けられたら連絡をもらうことになっていたんです。
人格者で知られる青木弁護士がなぜ職業倫理にもとるような真似をしたのか…。
朝倉さんあなたは青木弁護士と清美さんの仲を知っていた。
それを利用して圧力をかけたんですね?はいそのとおりです。
三宅の兄に新しい遺言書のことを話すと俺に任せとけと言って…。
そうだよ。
俺が電話したんだよ。
(電話)もしもし。
やっぱりうちに帰ってたのか。
男鹿で落ち合うつもりが肝心の三宅文子が殺されたニュース見たらそりゃしっぽ巻いて逃げ帰るよな。
(三宅)殺したのはあんたも同然だもんな。
え…あなたは一体誰なんですか?
(三宅)あんたが遺言書届けた青木弁護士文子の味方だと思ったんだろうが大間違い。
あんたたちのやってることは全部筒抜けなんだよ。
(三宅)あんたが文子に近付いたりするから文子は死ななくてもいい命を落とすはめになったんだ。
あんたのせいで文子は死んだんだよ。
それで兄は…!お前がっ!ああっ西本さん…!何する…乱暴はやめろ!西本さん!西本さん!そして次は三宅清美さんだ。
清美さんはあなたを姉のように慕っていた。
彼女が上京したのはね青木弁護士とつかの間の逢瀬を楽しむだけではない。
あなたに会ってね相談をしたいっていう目的があったんじゃないのかね?はい…。
私にだけは青木先生とのことを打ち明けてくれていてあの時も相談に乗ってくれと言うので午後8時半にホテルの彼女の部屋を訪ねました。
ねえどうしよう。
お母さんが追いかけてきてこのホテルにいるみたいなの。
心配なのよお母さんも。
相手が誰かわかったら大変なことに…。
やめてよ!ねえやっぱりこの恋は諦めた方がいいんじゃない?やめて!あなたまだ若いんだし。
(清美)やめてよ!
(多紀)ねえ清美ちゃん聞いて。
何?なんでお母さんみたいなこと言うの?何?なんでなんで?ちょっとねえ清美ちゃん!落ち着いて清美ちゃん!なんでよ!なんで!?
(机にぶつかる音)
(多紀)清美ちゃん?大丈夫?清美ちゃん。
ねえ清美ちゃん?
(電話)その時の電話が青木弁護士だったんでしょうね。
殺すつもりはなかった。
でも…でもあの時殺意がなかったと言ったら嘘になります。
清美ちゃんの顔が夕子さんや文子さんと重なって…。
そして夕子さんまでも…。
(多紀)清美ちゃんのことで私を怪しみだしたんです。
この先の桜島に呼び出された私は家にいるふりをして抜け出し日曜日で休診だった利彦さんの車で先回りをして待っていたんです。
早かったのね。
清美を…清美を殺したのはあなたでしょう?
(夕子)愛人の子のくせに何よ!昔結婚に反対して邪魔したからその仕返し?大体愛人の子がお医者様と結婚しようなんて高望みもいいとこ。
(夕子)そのお医者様があなたと同じように愛人の子であったとしてもねえ。
(笑い声)警察にすべて話すわ覚悟しときなさい。
いやっああ!
(夕子の悲鳴)
(落下音)
(野澤)子供の頃からいつもいつも多紀ちゃんはいじめられてどれだけ意地悪されたか…。
だからと言って…だからと言って人を殺していいってわけはないでしょう?青木弁護士の家に放火をしたのは三宅さんあなたですね。
しょうがなかったんですよ。
いつ警察にしゃべるか知れたもんじゃないし。
それに新しい遺言書を燃やす必要があった。
だから…新しい遺言書とともに口封じをするしかないと…。
そして命を取り留めた青木弁護士を自殺を装って殺害した。
言っときますけどね私この手で誰一人殺してませんから。
睡眠薬飲ませたの野澤院長だし。
青木弁護士にすり替わって筆談に応じ書き置きまで残した。
殺人の立派な共同正犯だ。
おい。
共同正犯ってのはなんですか?共同正犯ってのはなんですかーっ!?それにしてもいくら子供の時からないがしろにされたとは言え仮にも血のつながった姉妹をさ…。
1年前朝倉の兄が亡くなってからは三宅の家の財産管理はいい加減でこのままだと財産を失うことになるかもしれないと…。
見かねて私弁護士の仕事柄助言できるかもしれないと申し出たんです。
でも…。
しおらしい顔してあなた三宅の財産狙ってるんでしょ?そうなのね?人のものを取ろうなんて亡くなったあなたのお母さんそっくり!生みの母のことまで罵倒されて私もう我慢できなかったんです。
そっちがその気なら取ってやろう。
三宅の財産取ってやろうと…。
2年半前三宅の父が亡くなった直後認知書を破られた悔しさから三宅の父との親子関係を証明するDNA鑑定をしてもらってありそれを使って強制認知の訴えを起こすつもりでした。
強制認知?死後3年以内でしたらその裁判が起こせるんです。
弁護士の仕事柄それを知っていたあなたは強制認知によって三宅の家の遺産を自分のものにするつもりだった。
はい。
でも…そんなこと許されることじゃないのに…。
私…私…利彦さんまで巻き込んで…。
多紀ちゃん!ごめんなさい。
(野澤)僕こそ止めればよかったのに…。
君の気持ちをあおるようなことをしてしまった。
ごめん…ごめんよ。
西本。
はい…。
あっああ?ああああっ!ああ警部あいつですよ私をずーっとつけ回してた怪しい女!
(笑い声)紹介しておこうか。
はい?新しく捜査一課の仲間になる久保田あかね巡査部長だ。
捜査一課に転任する前にと初めて長い休暇を取って東北を旅してたんですって。
久保田あかねです。
よろしくお願いします!
(あかね)すいませんお仕事の邪魔をして…。
(あかね)あっちこっちで聞き回ってて怪しいなと思って。
申し訳ありません!なんだよ紛らわしいことをするなよほんとに…。
それでなくても小回りがきかないんだから!
(十津川と西本の笑い声)じゃあ警部お先にちょっと。
説教でもしておきます。
ああ頼むよ。
じゃあ…。

(携帯電話)はい。
西本さんのお兄様がたった今集中治療室から出ることができたの。
そうなの。
意識が戻られたの。
記憶の方はまだ元どおりってわけにはいかないけど追々回復するだろうって先生が。
西本さんに早く伝えてあげて。
わかった伝えるよ。
ありがとう。
うん。
(携帯電話)はい西本ですが。
はいはい…。
ほんっ…ほんとですか?ありがとうございます!やったー!ねえ警部今日の夕日は目にしみるぐらいきれいですねえ。
ああ最高だね。
2015/04/25(土) 12:00〜14:25
ABCテレビ1
愛川欽也さん追悼特別番組 西村京太郎トラベルミステリー[再][字]

密室列車・特急かもしか、途中下車連続殺人!男鹿〜弘前、温泉めぐり新婚旅行で花嫁が殺された…狙われる女系家族

詳細情報
◇出演者
高橋英樹、愛川欽也、大路恵美、浅野ゆう子、森本レオ、小野寺昭、矢崎滋、結城しのぶ、未來貴子、山村紅葉

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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