報道特集【広島土砂災害の無線交信記録▽脱線事故から10年、奇跡の回復】 2015.04.25


今、逮捕された男が福井県小浜署から出てきました。
今日午前9時過ぎ、迷彩服姿で福井県小浜警察署を出た無職の山本泰雄容疑者。
先月22日から今月22日までの間に、東京・千代田区にある総理官邸の屋上に放射能マークのシールを貼ったドローンを放置し、官邸職員の業務を妨害した疑いで警視庁公安部に逮捕された。
事件が急展開したのは、昨日午後8時過ぎ。
山本容疑者が福井県警小浜警察署に出頭してきた。
迷彩服姿でドローンのコントローラーや砂を持っていたとのこと。
これまでの調べで、ドローンに搭載されていたプラスチック容器には、およそ100gの砂が入っていたことが確認されていて、放射性物質のセシウムが検出されている。
これについて山本容疑者は、原発政策への抗議だ、福島県の砂をプラスチック容器に入れたと話しているとのこと。
さらに…山本容疑者は今月9日未明、港区赤坂にある駐車場からあちらの官邸に向けドローンを飛ばしたと話しているということです。
山本容疑者は自らのブログに犯行をほのめかす書き込みをしていた。
それによると、今月8日にドローンを飛ばそうと試みたものの、天候が悪かったために一度断念し、翌9日の午前3時半頃、再び赤坂を訪れ駐車場から飛ばしたとのこと。
山本容疑者はこのブログで、官邸サンタを名乗っていて、去年12月24日のクリスマスイブにもドローンを官邸に飛ばす計画を実行しようとしていたことを明かしている。
折しもこの日、総理官邸では第3次安倍内閣の組閣が行われていて、もし実行されていれば、混乱などが起きた可能性があるなど、ブログからは山本容疑者がかなり以前から犯行計画していた様子がうかがえる。
このほか去年10月に鹿児島県の川内原発に行った様子も書かれていて、そこに写真が掲載されている車は、出頭した際に乗ってきたものと同じ車と見られている。
さらに今年3月には、福島県を訪れ汚染土を採取したと見られる記述もあり、ドローンに積まれていた放射性物質との関連も疑われる。
そして…ドローンが発見された当日の今月22日にはこんな書き込みをするなど、ドローンが見つかるのを待っていたかのような心情をつづっている。
さらに、黒く塗り替えられたドローン2機の写真とともに使わずじまいかとの書き込みがあった。
またしても総理官邸に向けてドローンを飛ばそうとしていたのか。
山本容疑者の自宅周辺では山本容疑者が近所の人たちと交流していた形跡はうかがえない。
警視庁公安部は山本容疑者が国の原発政策に関して抗議するためにドローンを侵入させたと見ている。
ドローンを飛ばした容疑者のブログには本人のいら立ちが書かれていたそうです。
今後、官邸の警備強化やドローンの法規制論議が強まるかもしれませんが、この事件とは別に、変わらないのは福島県の汚染地域の深刻な現実です。
捜査本部のある麹町警察署から中継です。
こちら麹町警察署にはつい先ほど、山本康雄容疑者を乗せた捜査車両が入りました。
山本容疑者を乗せた車が麹町警察署に入ります。
警視庁公安部は今後、山本容疑者の本格的な取り調べを行うことにしている。
山本容疑者のブログにはドローンを侵入させた今月9日以降、黒く塗り替えられたドローンの写真とともに、もう1回やるかとの書き込みや、第2の矢を射直す準備などの記述があったが警視庁公安部への取材で、山本容疑者が調べに対し、もう一度官邸にドローンを飛ばすつもりだったとの趣旨の話をしていることが新たにわかった。
警視庁公安部は山本容疑者がドローンを飛ばしたものの、期待したような騒ぎにならず、もう一度飛ばす準備をしていたと見て、犯行に至ったいきさつや動機について詳しく調べる方針。
千葉県船橋市に住む18歳の少女が行方不明になり、遺体で見つかった事件。
遺体発見現場は主犯格と見られる男の親族が所有する敷地内であることが新たにわかりました。
捜査本部前から中継。
千葉県警船橋東署前です。
まず、成田空港近くの畑で埋められた状態で見つかった遺体だが、警察が身元の確認を進めた結果、今月19日から行方がわからなくなっていた船橋市の野口愛永さんと判明した。
野口さんを千葉市内で車で連れ去り警察は、井出裕輝容疑者と中野翔太容疑者、16歳の少年と18歳の少女の4人を逮捕しているが、その後の調べで、野口さんの遺体が見つかった場所は主犯格と見られる井出容疑者の親族が所有する敷地内であることが新たにわかった。
また、警察の取り調べに対し、中野容疑者が野口さんを監禁、暴行した上で埋めたという一連の犯行に関与した旨の供述を始めたことも新たにわかった。
また、野口さんと面識があったのは逮捕された4人のうち18歳の少女だけで、ほかの3人は18歳少女に頼まれてやったなどと話しているとのこと。
警察は、4人が殺害に及んだ可能性があると見てさらに調べを進めている。
日本時間の午後3時過ぎ、ネパールでマグニチュード7.9の巨大地震があった。
首都カトマンズでは多くの建物が倒壊し、死傷者が出ている模様です。
アメリカの地質調査所によると、日本時間の今日午後3時11分頃、ネパール中部でマグニチュード7.9の巨大地震があった。
震源は首都カトマンズの北西81km付近、震源の深さは15kmと見られている。
ロイター通信によると、首都カトマンズでは多くの建物が倒壊して死傷者が出ている模様。
また、インド北部の国境付近でも死者が出ているとのこと。
また、アメリカのCNNテレビはこの地震でヒマラヤ山脈のエベレスト周辺で雪崩が起きたと報じている。
カトマンズのホテルに宿泊している日本人の観光客はJNNの取材に対し、30秒ほど大きな揺れを感じた、ホテルの外壁が崩れて停電していると話していた。
乗客ら107人が死亡した兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故。
事故から今日で10年がたった。
兵庫県尼崎市の事故現場には献花台が設けられ、朝早くから遺族や負傷者らが訪れて手を合わせた。
また、JR西日本の真鍋社長らも朝早く現場を訪れ、献花した。
事故から10年。
しかし、遺族ら残された人たちの悲しみは今も癒えることはない。
福知山線脱線事故についてはこの後の「特集」でもお伝えします。
いよいよでしょうか。
今日25日はイギリスのキャサリン妃の第2子出産の予定日だとも言われており、病院前では誕生を待つ人々が増えている。
24日にはこんなサプライズも…今、現場で大きな動きがあったようです。
メディアも来て何かを撮影していますけれども、あんまり似てないかな、これ。
ウィリアム王子夫妻のそっくりさんも登場。
お祝いムードが高まっている。
観光面から復興を支援しようと被災地へ通じる岩手県のJR釜石線で蒸気機関車「SL銀河」の運行が始まった。
40年ほど前まで実際に岩手で走っていたSLを修復したもので、去年に続き2年目の定期運行。
SL銀河は休日中心に運行される。
アメリカ・インディアナ州の高校で23日、コンサートの最中に突然ステージが崩落する事故があり、観客がその瞬間をカメラで撮影していた。
AP通信によるとこの事故で12人以上がケガをした。
ステージの下にはオーケストラ用のスペースが設置されていて、「特集」です。
広島で74人が死亡した土砂災害は発生から8カ月あまりがたちましたが、JNNでは災害発生時のリアルタイムの警察無線の交信記録を独自に入手しました。
緊迫の現場で一体、何が起きていたのでしょうか。
土石流が繰り出した源流に近いところなので、まだ当時の生々しい記憶がここで何人かの方が亡くなられたりしたので、あそこにも花が手向けられていますね。
未曾有の土砂災害から8カ月たった現場を金平キャスターが再び訪れた。
半年以上が経過しても、まだ災害のつめ跡は深く残されたまま。
土石流で大きな被害が出た県営緑ヶ丘住宅。
この女性は先月、県営住宅に戻ってきたと言う。
ぬぐえない豪雨への不安。
それでも住み慣れた我が家を手放せなかった。
一方、別の場所へ移り住んだ人もいる。
岡田俊秀さん。
当時、土石流に押し潰された自宅からの脱出を「報道特集」に語ってくれていた。
しずくが垂れる方向へ逃げたです。
家族全員助かったものの、土石流で倒壊した自宅は今…悲劇を繰り返さないため、国は、砂防ダムの建設計画を進めている。
岡田さんが45年間暮らした自宅の跡地もこの砂防ダム建設による立ち退きの対象になってしまった。
現在、4kmほど離れた別の地区で暮らしている。
まだなじめないんですよ、新しいところは。
この年になってね、こういう目に遭うとは思わんかったですわい。
住民の人生を変えた土砂災害。
発生当時、警察と消防は混乱を極めていた。
今回、JNNは災害発生当時の警察無線の交信記録を独自に入手した。
広島県警本部と被災地の警察署、そして現場の警察官とのやりとりが録音されている。
通報が相次いだのは被災地周辺で1時間に100ミリを超える猛烈な雨が降った午前3時頃からだった。
当時、県警本部で無線指令に当たったのは大屋律子警部補。
もう3時過ぎからいっぺんに110番通報の着信音が鳴り響きまして、全く途切れることがありませんでした。
当時の勤務員が全員で対応に当たったんですけど。
災害に関する110番通報は午前4時からの1時間で100件を超えた。
通信指令室では通常の倍の態勢で対応したが、それでも全く追いつかなかった。
そのことを物語る音声が交信記録に残されている。
大屋警部補の背後で鳴り響くプルップルッという短い呼び出し音。
これは通報を受ける回線がすべて埋まり、さらに通報者が待っていることを告げている。
広島県警が初めて直面した緊急事態だった。
当時、同じように通報が相次いだ消防も混乱を極めていた。
消防の通信指令室の当時の写真。
こちらも職員が総出で通報を受けていた。
消防車の出動を示す赤いランプが並ぶ。
ほとんどの消防車が出動していた。
当初は何が起きているのかわからなかったんですけど、本当に次々と110番が入電してくることで今までに経験したことがないような、本当に甚大な災害が起きているというのは思いました。
今回、入手した警察無線の音声をすべて文字に起こし、多く使われているキーワードを抽出、色分けした。
すると、時間帯によって大まかな傾向が見えてきた。
午前3時台は増水や氾濫など、青色で示した大雨に関する言葉が並ぶ。
4時台になると青色は減り、茶色で示した土砂崩れや土石流などの単語が目立つ。
さらに5時台になると、赤で示した人命や危険など、より切迫したやりとりが増えてくる。
既に道路の浸水などで多くの警察官が出動している中、土砂崩れが起き、一気に人命にかかわる通報が相次いだことがわかる。
テープには現場の警察官からの報告も録音されている。
その交信記録から、豪雨で道路が通行できなくなったり、排水機能がマヒしたりしたことで、救助活動に大きな支障を来していた実態が見えてくる。
このやりとりがあった8分後、さらに詳しい報告が上がってくる。
被害が大きかった地域を管轄する安佐南警察署。
その日、当直の警察官のほとんどが災害対応に当たった。
ここですね、最初は。
もっと土砂が積んであって、車もあったですね。
車が原形をとどめてないような感じで。
しかし、現場に到着できても打つ手はなかった。
自分が行けば何かできるかもしれないと思ったんですが、いざ行ってみると、土砂の量にしても、倒木にしても圧倒的なもので、1人では全く歯が立たない。
迫り来る土石流。
現場の警察官も危険にさらされていた。
本当にこれが起きとるんかいうような感じのどうしたらいいのかという感じです。
その中でもできることを考えながら勤務をして、周りの近所の人にほかに生き埋めになっとる人はいないかとか、家でおらん人はいないかとか、そういうのを聞いて回ったり、無線で応援を要請したり、できることをやりました。
どうしても無線ですので、直接その現場を見ているわけではありませんので、どういう指令をすればいいんだろうかと。
住民の方を助けて、現場に向かう警察官が災害に巻き込まれないためにはどういうふうな指令をすればいいのか、それをずっと考えながら指令をしてました。
午前5時過ぎ、無線交信の内容はさらに緊迫する。
特に41人が犠牲になった八木3丁目からの通報が集中した。
住民が自宅の屋根に上がって何かを叫んでいる、それから自宅の屋根にしがみついているというのは、非常に悲痛な内容の通報が寄せられた場所が、ここです。
八木3丁目の辺りですけれども、この辺りほとんど家が流されてしまって、当時の悲惨な状況のつめ跡が、今もこのように残っています。
指令の数が多くて、通常の無線のやりとりができない場合に使われる「一方的に指令」という文言が増えてくる。
通報を受けて現場に向かった警察官が目にしたのは…県警本部からの指令を受ける安佐南警察署で当直の責任者を務めていたのは細川大地警部補だった。
生き埋めになっているという指令が入ってきた、その後に同様の通報が立て続けに入ってきたというところで、もうこれは、いわゆる異常な事態だということは私だけではなくて、そのとき当直についてた全員が感じてました。
あのときの本当に110番通報というのは、住民の方たちの警察官、警察に何とか助けてほしいという、本当に必死の電話だったと思うんです。
現場の警察署の方も混乱を極めている状況でしたし、警察官も本当に助けに行きたいけれど行くことができない。
安佐南警察署では、すべての署員を緊急に呼び出したが、県警本部からの指令の数は対応し切れないものだった。
机の上には救助の指令所が処理されないまま並んでいた。
歯がゆいっていうんですかね、皆さん助けを求めて通報されているわけですから、そこに全部が全部に対応できないという点ではですね。
歯がゆいというところですかね。
その後も助けを求める110番通報が相次ぎ、朝までに300件近くに及んだ。
初動的にできることをやろうとしたし、やったんですけれども、実際に発生した損害、被害というものの大きさっていうのを考えると、うーん…あの日、救助にかかわった警察官たちは、今も自問を続けている。
あのとき、どうすればよかったんだろうかと、どうやったら1人でも多くの人を助けて、警察や消防も直面したことがない大災害。
その経験を今後に生かすことはできるのか。
ツイッターには、救助を求める投稿だけではなくかなり早い時点から危険の察知につながるつぶやきがあった。
投稿は救助を求める最初の119番通報より早く始まり、地鳴りや土のにおいなど、危機を知らせる幾つものサインがあった。
避難のタイミングが生死を分ける土砂災害。
全国では毎年、1000件近く発生している。
早期の避難につなげるため、SNSの住民の声に着目した研究が始まっている。
これは直ちに身を守る行動をとるような情報かなと思ってます。
この研究は特に、局地的な集中豪雨で効果を期待されている。
感じられた不安感みたいなやつをストレートにつぶやかれているやつが、実は重要な防災情報がそこに潜んでいるということがわかってきまして、避難勧告、指示を判断する後押しする情報としての使い方になります。
取材に当たりましたRCCの吉住記者です。
土砂災害の発生当時の取材というのはどのように記憶されていますか?すごく大きな被害が出た八木地区を取材したんですけれども、救助を要請しても2時間くらい助けが来ないと、倒壊した家の2階で救助を待ったというような被災者の方の声を聞きました。
被災地というのは広島市の中心部から比較的近い場所なんですよね。
ということは救助の体制というのは、県内の中では比較的整っている場所なんですけれどもそれにもかかわらず、そういう事態になってしまったのはなぜかなと感じたのは記憶しております。
警察無線からも当時の混乱ぶりというのが浮かび上がってきてるんですけど、どうして今回、取材思い立ったんでしょうか?我々が取材これまでできていたのは、災害が発生した後の話なんですね、すべて。
ただ、これだけの大惨事になったそれから、また救助が遅れたということで、なぜ、そういうふうになったのかを調べるには、発生当時何が起きていたのか、そこを知らなければいけないと思って、最終的に警察無線にたどり着いたということなんですけど。
この音声というのは被災された方にとっては、非常につらい記憶をよみがえらせるような音声だと思うんですよね。
ただ、この音声というのは災害の検証する、避難を検証するというよりも、災害の記憶自体を継承していくことにも使っていかなくてはいけない、そういう意味では非常に貴重な資料だというふうに思います。
私も8カ月ぶりに現場に行ったんですけど、行政がようやく本腰を入れたというのがよくわかったんですけれども、かつて取材した人たちに個々に聞き歩いていたら、不安の声がまだ残っていて、対策のテンポが遅いとか、あるいは立ち退きを命じられたところと残っているところで微妙な地域のいろんなものが生じてきて、何とか事故の教訓を生かしてほしいものだなと思いながら現場を見てきました。
次はニュースでもお伝えしたJR福知山線の脱線事故です。
事故から10年が経ちました。
JR西日本が刑事責任に問われない現状に怒りの声を上げる被害者がいます。
一方で、奇跡的な回復をとげた女性は失われた記憶を求めて今もリハビリに励んでいます。
遺族と負傷者、それぞれの10年です。
ここまで回復するのに10年かかった。
週に一度、自宅の周りをゆっくりと歩く女性。
10年前の脱線事故で生死の境をさまよい、最も症状が重いと言われた鈴木順子さん。
ご覧のように電車が折り重なるように脱線しています。
2005年4月25日。
兵庫県尼崎市で起きたJR福知山線の脱線事故。
スピードを出し過ぎた電車がカーブを曲がり切れず脱線し、マンションに激突した。
1両目と2両目はつぶれ、運転士1人が死亡、乗客106人が犠牲になった。
鈴木順子さんは、この電車の2両目に乗っていた。
当時30歳、パソコンの資格を取るため講習に向かう途中だった。
あれから10年。
107人が亡くなった兵庫県尼崎市の脱線事故。
鈴木順子さんは電車の2両目に乗っていた。
事故直後の順子さん。
脱線の衝撃で脳は腫れ、口の中はガラス片や砂で傷だらけだったと言う。
搬送先の医師は…順子さんは何とか一命を取りとめた。
しかし意識が戻る気配はなく、家族は毎日、順子さんに話しかけ続けた。
事故から5カ月後、順子さんは初めて言葉を口にする。
それはお母さんだった。
しかし、意識は戻ったものの表情はうつろで寝たきりの状態が続いた。
母親のもも子さんはこの頃、順子さんが絶えず口にしていた言葉に、胸が締めつけられた。
当時のカルテを見ても、回復は厳しいと記されている。
事故から10カ月。
大きな転機となったのは、プールでのリハビリ。
水の浮力を使って体を動かす感覚を少しずつ取り戻していった。
事故から11カ月が過ぎ、ようやく自宅に帰ることができた。
事故のとき、口の中に入った砂やガラス片を飲み込まないよう懸命に口を閉じていたためか、事故後、食べ物を口に入れるのを嫌がった。
しかし、自宅に帰って少しずつ食事をとるようになり、会話も交わせるようになった。
この頃は事故の状況を詳しく話していた。
そして今…リハビリを兼ね、車いすから離れて台所に立つ順子さん。
つくった料理を家族と一緒に食べるのが楽しみの1つ。
私にもできることがあるんだって思います。
料理してるときは、みんなに食べてもらえるし?ちょっとうれしいです。
包丁を持ったり、野菜を切ったり。
事故の後、全くできなかったことが大分できるようになった。
しかし、事故そのものの記憶が今は抜け落ちてしまっている。
激しく頭が揺さぶられたことで起きる高次脳機能障害という記憶障害で、自分がなぜ車いすなのか、幾つになったのか、時々わからなくなると言う。
順子さんにとって、この10年は失った記憶を取り戻すための時間だった。
事故への怒りという感情も、まだ起こらない。
記憶と自分との闘いだという。
1本の電車が乗っていたすべての人の人生を変え、一瞬のうちに100人を超える人の命を奪った。
オペラ歌手を目指していた大森早織さん当時23歳。
1両目に乗っていて犠牲になった。
事故の後、父親の重美さんにJRから渡されたのは、泥にまみれた早織さんの楽譜だった。
大森さんは、企業の責任を明らかにしたいと考えている遺族の1人。
業務上過失致死傷の罪でJR西日本の歴代3社長が強制起訴された裁判。
大阪高裁は先月、事故の直接の原因は運転士の極めて異常な運転とし、3被告は事故を予見することはできなかったとして一審に続き無罪となった。
再発防止のため、情報公開による原因究明に重きを置く日本では、企業責任を問う法律はない。
裁判で歴代社長の責任が問われない現状を目の当たりにした大森さん。
企業自体を裁く新たな法律が必要だという思いを強くしている。
8年前、企業や組織を罰する法律を導入したイギリス。
法整備に向け立ち上がったのは、鉄道事故の遺族だった。
橋の向こう側にビルがあります。
オレンジ色の屋根の。
あそこで事故が起きたんです。
1997年、ロンドンで起きた特急列車と貨物列車の衝突事故。
モーリーン・カヴァナーさんは、29歳の一人息子を亡くした。
事故の25分前に息子から電話がありました。
いつものように世界一愛しているよ、また後でねと言ってくれました。
それが最後の電話でした。
2007年、イギリスで成立した法人故殺法。
死亡事故が起きた際、安全対策が不十分だと認められれば企業を罰し、上限のない罰金を科すことができる。
また、有罪となった事実を公表する義務がある。
モーリーンさんは事故を起こした企業の責任は厳しく問われるべきだと考え、国や議員に法律を変えるよう訴え続けた。
絶対に法律を変えなければならないと思いました。
私のためではありません。
重大な鉄道事故も起きていない。
この法律の制定にかかわった弁護士は…イギリスで事故による死亡率が低下しているのは間違いありません。
この法律が減少傾向に一役買っていると私は思っています。
大事故を起こした企業の責任は、どこまで問われるべきなのか。
今の日本の現状を大森さんはもどかしく思っている。
大森さんは、事故の責任を明確にするため企業を罰する法律をこれからも求めていく。
意識不明の重体から奇跡的な回復を遂げてきた鈴木順子さん。
550人以上が負傷したこの事故で、順子さんは最も重症と言われてきた。
脳の損傷が激しく、当初、医師からは意識は戻らないと言われていた。
元の姿に戻りたい、その一心でリハビリを続けてきた。
家族と暮らす家では、冗談を交え絶妙な会話のキャッチボールを交わす。
しかし、事故の記憶は今は全くない事故前後のことも覚えていない。
部屋の至るところに貼ったメモを見て、事故に遭った事実を思い出す。
この10年を無駄な時間にしたくないと話す順子さん。
同じことの繰り返しのように見える日々の積み重ねが様々な機能を回復させていた。
歩けるようにと始めたリハビリ。
8年前は、少しの移動だけでバランスを崩していたが…今は手すりや壁を使うと自分の力で立ち上がることができる。
立ち上がって歩く感覚をリハビリのために少しずつ思い出して、記憶していく欠かさず続けてきた体のリハビリもまた、記憶を取り戻すことにつながる大切な時間だった。
事故で致命的なダメージを受けた順子さんの脳。
この10年で一体、どのような変化が現れたのか。
画像で見ると事故直後と比べ、全体のしわが増えているのがよくわかる。
一方で、前頭葉の周辺、記憶に関係する部分は黒くなったままあまり変わっていない。
それでも、目に見えるような変化はなくても、新たな記憶の積み重ねで覚えられることが格段に増えているのも事実。
失われた機能を周りの細胞が補完する形で回復しているのだという。
今月、40歳の誕生日を迎えた順子さん。
記憶と体がわずかずつ回復を見せる中、心にも変化が芽生え始めている。
自分でできることを進んでするようになった。
介護に追われてきた家族を見て、変わろうとしているのかもしれない。
事故の記憶はまだ戻らないが、10年という時間を自分なりに受けとめている。
そうですね、お願いします。
取材に当たりましたMBS毎日放送の橋本記者です。
順子さんのお母様との会話を聞いていますと、大変ウィットに富んでいまして、ここまで回復したのかとものすごい生命力に圧倒されました。
10年間見つめ続けてきて、いかがでしたか?私自身も最初に本当に一番初めにお会いしたときには、ここまで回復されるとは思いませんでした。
どうして本当に回復できたのかということが不思議に思うんですが、いろんなドクターに聞いても、やはり鈴木順子さん自身の生命力の強さだと皆さんおっしゃるんですね。
あとはご両親をはじめご兄弟や家族のいろんな声かけであったり、様々な刺激が本当に回復に結びついたのは間違いないと思います。
この10年、その変化を見ることができました。
本当に驚くべき回復力なんだけれども、ただ、事故当時の記憶だけが抜け落ちているというか、逆に失われていっている部分もあるわけですね?1年5カ月後のインタビューでは、あれだけ事故のことをはっきりと答えていらっしゃったのに、今、あの話をされてましたよねと確認をしても、そのことを覚えていない、事故のことを思い出せないとおっしゃる。
その辺りというのは本当に不思議で仕方がありません。
ああいう大きな事故を受けて、事故の瞬間の記憶を失ってしまう方というのはいることはいるというふうには伺うんですが、だけれども彼女の場合はそれ以降の記憶は積み重なっていて、本当に不思議なことが確かに多いんですよね。
でも、記憶ということで考えたらいろいろなことが回復していることは間違いないです。
それにしてもあれだけの大事故で企業の責任を裁く法律が日本にないというのは、イギリスの例を挙げてましたけど、事故の教訓というのが生かされていない部分があるじゃないかと思いますね。
VTRに出てきました組織罰を求めていきたいというご遺族もいらっしゃれば、逆に再発防止をはっきりさせるためにJRと一緒に、ともに考えていかないかというふうな考え方のご遺族もいて本当にいろいろなご意見があるのは確かです。
ただ、107人の命が奪われたこの事故で誰の責任も問われないのはどうなのかといった声が依然として多いのも確かですね。
あとはJR西日本には事故を知らない社員も増えていますので、事故を本当に風化させないことが今後の大きな課題だと思います。
この後はスポーツ、林さんです。
メジャーリーグ、マーリンズのイチロー選手が尊敬する王貞治さんの通算得点の日本記録に並んだ。
4試合連続の先発出場となったイチローは5回の第2打席。
ショートにうまくとられるも、自慢の足で悠々セーフ。
4試合連続安打をマークする。
この後2塁に進んだイチローはピッチャー・レートスのヒットで一気にホームを駆け抜ける。
イチローはこの得点で日米通算1967得点となり、王貞治さんの持つプロ野球記録に並んだ。
そのイチロー選手の憧れ、同じ51番を背負ったバーニー・ウィリアムズさんが正式に引退を表明。
この日、セレモニーのため、一日だけヤンキースと契約を結んだ。
ウィリアムズさんは走攻守3拍子そろった選手としてイチロー選手が尊敬する存在だったるレッドソックス勝利の方程式。
8回から登板した田澤は今シーズン初失点となるホームランを打たれるも、しっかり後続を断ち、抑えの上原につなぐ。
その上原もランナーを出すが、最後は伝家の宝刀スプリット。
今シーズン4度目の方程式、完成。
プロ野球、広島×阪神は波乱の幕開けとなる。
2回、広島の打席には40歳の黒田マウンドには21歳の阪神・藤浪。
その2球目。
藤浪のボールは黒田の胸元へ。
さらに3球目。
黒田はのけぞるように転倒。
危険なボールを続ける藤浪に対し、怒りをあらわに。
両チーム入り乱れ一触即発ムードに包まれる。
異様な雰囲気の中、続く1番・田中の打球は…ファースト・ゴメスのエラーを誘い広島が勝ち越しに成功する。
援護をもらった黒田は打たせてとるピッチング。
18のアウトのうち実に15個を内野ゴロでとる。
勝利への執念を見せた黒田、6回3失点で3勝目を挙げた。
続いてテニスのバルセロナオープン。
大会2連覇を狙う錦織選手、クレー巧者を破り準決勝進出。
セットカウント1−1で迎えたファイナルセット。
世界ランク5位の錦織が実力の差を見せつける。
第4ゲームをブレークし、勢いに乗ると…ラインギリギリを狙ったショット。
さらに、バックハンドボレー。
精度の高いプレーで相手を圧倒し、13連続ポイントを奪い、勝利。
準決勝では世界ランク28位、スロバキアのクリザンと対戦する。
Jリーグでは神奈川ダービーとなったF・マリノスと湘南の一戦。
アデミウソンの来日初ゴールでF・マリノスが先制する。
後半36分からはキャプテン・中村俊輔がリーグ戦に初出場。
するとその4分後、喜田がパスカットから抜け出し、ラストパス。
中村は得点には絡まなかったが、積極的な守備で復活をアピール。
チームは3試合ぶりの勝利。
今日は1つ目の特集で広島土砂災害についてお伝えしました。
金平さんは8カ月ぶりに行きましたよね。
行ったんですけど、一番ひどいところの現場に行ったら、たまたま手を合わせている人がいて、遺族の方かなと思ったら、気仙沼から来ていて、災害のときに助けてもらったので、その恩返しに来たと、広島人に助けてもらったんですって。
2015/04/25(土) 17:30〜18:50
MBS毎日放送
報道特集[字]【広島土砂災害の無線交信記録▽脱線事故から10年、奇跡の回復】

広島土砂災害で警察の無線交信記録を入手▽JR福知山線脱線事故から10年。奇跡の回復と闘いの日々

詳細情報
番組内容
【無線交信で明らかになる土砂の現実】
去年夏に74人の命を奪った広島の土砂災害。JNNは広島県警の無線交信記録を入手した。記録的な豪雨で次々と土砂に飲み込まれる住宅。無線交信で明らかになった過酷な現実。

【脱線事故から10年 奇跡の回復】
10年前に107人が亡くなったJR福知山線脱線事故。奇跡の回復を遂げた被害者・鈴木順子さんだが、今も記憶障害が残る。被害者と家族の闘いの日々を追った。
出演者
【キャスター】
金平茂紀(TBSテレビ報道局)
日下部正樹(TBSテレビ報道局)
小林悠(TBSテレビアナウンサー)
林みなほ(TBSテレビアナウンサー)
関連URL
▽番組HP

http://www.tbs.co.jp/houtoku/

▽twitterのアカウントはこちら!

http://twitter.com/tbs_houtoku

▽facebookのアカウントはこちら!

http://www.facebook.com/tbs.houtoku

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32722(0x7FD2)
TransportStreamID:32722(0x7FD2)
ServiceID:2064(0x0810)
EventID:2719(0x0A9F)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: