北野武がいま輝いている3つの理由
日本を代表し続けるタレント!
80年代に漫才コンビ「ツービート」で人気を博して以降、お笑い芸人から司会者、俳優、映画監督まで各分野で才能を発揮。名実ともに日本の芸能界を代表する重鎮として第一線で活躍中です。
努力をやめない型破りの“天才”!
映画監督としては、1997年の『HANA-BI』でベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞。世界的名声を得たのちも、さまざまな作風にチャレンジし続けています。
最新作は集大成にして新境地!
最新作『龍三と七人の子分たち』は、当人物が引退した元ヤクザでありながら、コミカルなエンターテインメント。監督・北野武と芸人・ビートたけしが融合した新たな世界観を確立しています。
残酷なことばかり考えてるわけにはいかない
—— 本日インタビュアーを務めます作家の樋口毅宏と申します。よろしくお願いします。
北野武(以下、北野) よろしくお願いします。
—— さっそくですが、『龍三と七人の子分たち』、ほんとにおもしろかったです。安定のくだらなさといいますか、ギャグがいちいちタチが悪くて。
北野 ふふ。
—— 武さんの映画は、いつも3部作になっている印象がありました。たとえば、監督デビュー作『その男、凶暴につき』(1989年)から『3-4x10月』(1990年)、『あの夏、いちばん静かな海。』(1991年)まで、あるいは『TAKESHIS’』(2005年)、『監督・ばんざい!』(2007年)、『アキレスと亀』(2008年)など。そして、その3作目を、それまでの2作とは趣向を変えているという印象があったんです。
北野 うん。
—— 今作も『アウトレイジ』(2010年)、『アウトレイジ ビヨンド』(2012年)と、硬派でエンターテインメントなヤクザ映画が続いたところで、今回思いっきりコメディタッチでした。しかも、登場人物はアウトレイジのなれの果てのというか、またまた「全員悪人」でした。
北野 まあ、「あいつをどうやって殺そうか?」とか、残酷なことばかり考えてるわけにもいかないでしょ。だから、一回休もうと思って。いま続けて同じ路線の三作目をやると「深作(欣二)さんに似てきたぞ」とかいわれちゃいそうだし。
—— ああ、なるほど。既成のヤクザ映画の批評になっていました。
北野 それもちょっと嫌だから、なんかほかにねえかなって、自分で映画のあらすじなんかを書き留めてるネタ帳みたいなのがあるんだけど、それ見たら「ジジイのヤクザが大暴れ」って書いてあったのね。
—— ははは!
北野 プロデューサーの森(昌行)さんが「それどうですか?」っていうから「じゃあ、いまから書くわ」って。他にも「親分は懲役刑の年数と、殺人と傷害の件数で決める」ってセリフのメモがあってさ。それが、バスでカーチェイスした後のオチにつながるんだけど。
—— あれはひときわタチが悪かったです(笑)。日本だとマンガでしか見られないようスペクタクルがあって最高でした!
北野 そんなのが書いてあって、そのオチからさかのぼっていくんだけど。
—— オチから逆算してストーリーを書かれたんですね。『キッズ・リターン』(1996年)のときも、最初はあの自転車の二人乗りで校庭をグルグル回ってるラストシーンだけを思いついていたとおっしゃっていましたが。
北野 そう。「これをやりたい」っていうイメージが最初にあって、『龍三と七人の子分たち』でも、あのオチにいたるまでをアタマから書いていくんだけど、じゃあ七人の子分はどうするかってんで、「はばかり(便所)のモキチ」だとか「五寸釘のヒデ」っていうキャラクターを作ろうと。
—— みなさんキャラが立ってましたね。
北野 ヒデは五寸釘を投げるわけだから、その腕前を見せるには、殴り込みに行く暴走族の事務所にダーツがあるといい。
—— あそこも爆笑しました。中尾彬さん扮するモキチは最高ですね。武さんの映画では、過去の作品で悪い役をやっていた人が次の作品ではいい人というパターンが多いです。『アウトレイジ ビヨンド』ではあんなにドスの利いた幹部を演じていたのに。
あとは、サウナで龍三の指キャップが抜ける(※龍三はヤクザ時代に小指と薬指を詰めている)っていうネタがやりたかったから、指キャップをつける理由を考えたり。
北野 そうやって台本を行ったり来たりしながら、筋に必要なものを配置していくんだよね。
—— 武さんは、よく映画作りを方程式に例えられますよね。ジャンルこそ違えど、僕も物書きとして、そこから合理的なプロットの組み立て方など多くを学ばせてもらいました。
ヨボヨボのおじいちゃんにも好きにやってもらった
—— 今回、主人公の龍三を演じた藤竜也さんは北野映画初出演だったわけですが、それを含めてキャスティングも非常に効いていました。
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