PerfumeのSXSW―真鍋大度とMIKIKOが語る舞台裏

2015.04.24 10:00

0 0

人気テクノポップユニット・Perfumeをはじめ、数々のアーティストやCMなどの振り付けや舞台演出などを手がけているMIKIKO氏と、テクノロジーとエンターテイメントの可能性を追求し続けているライゾマティクス・真鍋大度氏。2人は、2010年に開催されたPerfume東京ドーム公演をきっかけに手を組み、振付と演出とで分担しPerfumeのライブを作っている。今回は、先日アメリカにて行われたイベント・SXSWにおけるPerfumeのパフォーマンスについてその舞台裏を聞くと共に、真鍋氏が演出を手がけるMIKIKO氏主宰のELEVENPLAYの公演「MOSAIC ver.1.5」についてのお話を伺った。2人が考える、テクノロジー×エンターテイメントとは。

音楽・映画・インタラクティブ祭典「SXSW」でのタッグ

Perfumeをメインにタッグを組む、MIKIKO氏と真鍋氏

2015年3月17日、テキサス州オースティンにて行われた、SXSW(South by Southwest)。SXSWとは、音楽祭や映画祭、インタラクティブな作品などを一挙に集めた大規模なイベントのことである。ここで行われたPerfumeのパフォーマンスは、まさに圧巻。当日の様子はライブ配信もされて、世界中の人々は息を呑んで映像に釘付けになり、そして熱狂した。

このライブは、エンターテイメントの面からだけでなくテクノロジー面からも高い評価を得て、国内外問わず多くのメディアからの注目を集めている。このときの振り付けはMIKIKO氏が、舞台演出や映像などは真鍋氏をはじめとしたライゾマティクスが担当。ライブ映像だけでは分からない、舞台裏の様子などを伺った。

ライブで魅せるのか、映像で魅せるのか

SXSWにて行われたパフォーマンス。Perfume / Story

--先日行われたSXSWを振り返ってみて、いかがでしたか?

MIKIKO:
SXSWが開催される前に、Perfumeがワールドツアー3rdでアメリカのニューヨークとロサンゼルスを回っていたんです。その時のライブが現地の人たちにすごく好評で、自分たちが想像していた以上の反響がありました。おそらくSXSWの事務局がそういった情報を得て、今回お話がきたのだとおもいます。

Perfumeの出た日が、インタラクティブフェスティバルの最終日でミュージックフェスティバルの初日という両方を掛けあわせたライブが求められている日でした。まさかPerfumeでその場に行けることは想像していなかったので、とても嬉しかったです。曲は中田ヤスタカさんにSXSW用に書き下ろしてもらって、振り付けなどを作りました。

真鍋:
僕は3回目のSXSWだったのですが、これまでに「いつかPerfumeで来れたらいいよね」なんて言う話をしていたので、行けることができてよかったです。Perfumeの一ファンでもあるので、念願叶ったという感じですね。

--現地でみるだけでなく、ライブ配信もされていましたが。

MIKIKO:
SXSW自体が、小さな箱のなかで普段見られないようなアーティストを生で見られるというのが醍醐味なんですね。Perfumeが普段やっているライブ会場よりもかなり狭い空間でライブをしたので、現地で観ていたお客さんは「こんな近くでPerfumeが見られるんだ」っていうことが、とておレアな体験だったのではないかと思います。

逆に、当日現地で観られなかった人や日本の人は、Perfumeが遠くに行ってしまうのではないかという不安があると思ったので、多くの人達にライブ感と映像でしか味わえない体験をしてもらうということになって、ライブ配信をすることになりました。小さい会場だったからこそ、生まれたアイディアだったのかなと思います。

映像を見てもらえれば分かるんですが、網戸のスクリーンに映像を投影したりなど新しい試みをたくさんしてみました。網戸を使った演出は私が今回したかったことなんです。でも会場が狭いし、普段はスクリーンを動かすということもしない。でも、そこでPerfumeがパフォーマンスする意味を見出すために、彼女たちがスクリーンを動かしてそこに映像がついてきてくれるような演出にしたい、ということを大度さんにお願いしました。

--カメラが会場内を動き回っているような、不思議な映像でした。どのような仕組みになっているのですか?

真鍋:
スクリーンに追従する部分については、スクリーンの上にセンサーがついてて上にはカメラがたくさん設置されているんです。そのカメラでスクリーンの位置を観測しつつ、スクリーンの動きに合わせて投写するソフトを使いながら動かしていました。カメラワークについては、AR技術を用いています。マーカーがついた対象物に映像がついてくる、拡張現実っていう言い方をしますね。

でも、そのようなマーカーベースのことは既に色々なところでやられているなという気がしたんです。じゃあ、さらに現実を拡張するにはどうしたらいいかということを考えた時に、現実を拡張するのではなく、異次元と現実の繋ぎ目が全く分からない状態ができるといいんじゃないかと思いました。現実と異次元の世界を行ったり来たりするために、テクニカル的に仕掛けてやってるという感じです。

SXSWを振り返りながら、楽しそうに語る2人

--まるでCGの世界にいるような感覚になりました

真鍋:
色々なテクノロジーが複合的に使われているので、普通に見たら何が使われているのかわからないと思います。例えば映画とかだと、撮影してから編集したりCGを使ったり、後からいくらでもどうにかできるので言ってしまえば何でもアリなのですが、今回はリアルタイムの中で何が出来るかっていうのがポイントでした。本当に生で配信している映像なので、一切編集はしていないんです。リアルタイムでやっているっていうところが最も重要なので、あの中ではできることはやり尽くしましたね。
MIKIKO:
必ず同じ場所・同じ角度で踊れるということも、リアルタイムでライブ配信する上でとても重要で、それが出来ないと成立しないんですよ。仮想世界から現実世界に切り替わった時でも、同じ場所にいて同じ動きをしているからこそ不思議に見える。Perfumeの彼女たちはびっくりするくらい毎回同じ位置にいてくれるので、さすがだなと思いました。

--あのパフォーマンスのテーマを教えて下さい。

MIKIKO:
「STORY」というSXSW用の曲の歌詞で、1フレーズだけ日本語で歌っている箇所があったんです。その歌詞を事前に世界中のファンの人に翻訳してもらって、その翻訳した歌詞を彼女たちに投影させて、世界とPerfumeが繋がっているよっていうストーリーを作っていました。ただ単にすごいことをするというより、どこにいてもファンの人たちと繋がっているんだよというメッセージを伝えたかった。自分で訳した歌詞が彼女たちに投影されているという、Perfumeとファンとの繋がりを感じられる体験をしてもらいたかったんです。そういうことを彼女たちも求めているし、私達も大事にしています。
真鍋:
SXSWのライブ前に、Perfumeが出した今までの曲をみんなで訳そうという企画をやっていたんです。普通だったら楽曲が出てから歌詞を出すんですけど、STORYは歌詞だけ先に表れて。ファンの人たちがすぐ訳してくれて最終的には20~30カ国語に訳すことが出来ました。ライブとウェブをつなげることは、今までにもやっています。
MIKIKO:
ワールドツアーを始めてから、もし現地の人に歌詞が理解できたら、どうしてこの歌詞にこの振りがついているんだろうという意味が分かってもらえると思ったんです。でも直訳してしまうと本来と違うニュアンスで訳されてることも多い。なので、日本語が分かってかつPerfumeが好きな人に翻訳をしてもらい、その国の人に理解してもらえるように意味付けされた曲が大事になってくるんじゃないかという話になって、やっと結びついたのが今回のSXSWでした。

SXSW用の演出案を、互いに100個以上出し合って検討したという

--現地で観ていた人たちはみな、スマートフォンを掲げて写真を撮っていました。スマートフォンやタブレットのようなデバイス専用のアプリケーションなどを介せば、さらにおもしろいことが出来そうな気がするのですが。

真鍋:
デバイスに適応するものはこれから作っていくでしょうね。実際のスポーツとか、その選手にかざしたら情報が出てくるとかっていうのはこれから出てくるとは思うんですけど、それがエンターテイメントだとどのような形になるのだろう。その場所で撮ったものを自宅に持ち帰った後に加工できたりなど何かあるとは思うんですけど、音楽だと日本ではまだ難しいかもしれません。

「MOSAIC」はダンス×テクノロジーを試す実験の場

リハーサルを行なってる倉庫。セットの上部にはドローンを操作するセンサーも見える

--MIKIKOさんが主宰するELVENPLAYの公演「MOSAIC(モザイク)」についてお聞かせください。

MIKIKO:
4月25日から3日間、表参道で行われるELEVENPLAYの公演です。作品には「女性の心情を表す」というテーマがあってその上にテクノロジーを乗せているので、"男らしい中で浮き彫りになる女性らしさ"がより濃く出ていると思います。ダンスがメインとしてあり、どのくらいの分量でテクノロジーのスパイスを入れていくかのというさじ加減が難しかったですが、自分の中でベストの表現をしています。観て頂ければ、すごく心地よい体験をしてもらえるんじゃないかと思います。

具体的には、紅白でPerfumeが使ったようなドローンを使って、ただ「ドローンが飛んでいる、すごい」ではなく、ドローンがどう演出に落とし込めているのかというところを前回との違いとして見て頂けたらなと。
真鍋:
前はドローンに四角錐を乗っけて、ダンサーとドローンでインタラクションをするという演出でした。しかし、今回はドローンにスポットライトを搭載しているので、最初はダンサーとして参加しているけど途中からスポットライトとしての役割を担うという切り替えも楽しいと思います。
2014年に開催されたELEVENPLAY「MOSAIC」の初公演

テクノロジーは、人間の良さを引き出すツール

--おふたりが考える、テクノロジー×エンターテイメントについてお聞かせください。

真鍋:
何も知らない人から見ると、まさにブラックボックス。自分がテクノロジーを使い倒してて言うのもなんですけど、エンターテイメントにおいてテクノロジーはあまり全面に出るものではないと思っています。テクノロジーを見ている人にそれを感じさせず、便利なツールとして使うのが一番なのではないでしょうか。
MIKIKO:
SXSWの時と同じように、「何かわからないけどすごい」という感想でいいと思っています。Perfumeの場合だと、彼女たちの人間味や体温をより際立たせる、浮き彫りにさせるための演出をする時に必要なのがテクノロジーだと思っているので、すごいことをしているという使い方はしていません。また、とても難しことをしていても、それが分からない人にも理解できるように噛み砕いて表現していくということを演出家が理解して、それを表舞台に重ねるということをしていきたいです。もっと勉強して、人間とテクノロジーの関係性をよりあったかいものにしていけたらいいですね。

MIKIKO氏の最後のコメントに凝縮されているように、「テクノロジーは、人間の良さを引き出すもの」という考えが一致した2人だからこそ、世界から注目を集めるような作品を創りあげられるのだろう。SXSWをはじめとするこれまでの素晴らしい作品達の裏側には、人間に振りを付けるというアナログな作業をするMIKIKO氏と、その魅力を最大限引き出すためにテクノロジーを使うという真鍋氏の良いコンビネーションがあった。

2人は互いに高め合いながら、ELEVENPLAYやPerfumeなどでテクノロジーとエンターテイメントのさらなる可能性を提示し続ける。その可能性を楽しみにしつつ、今後も引き続き注目していきたい。

取材:石原龍太郎

石原龍太郎(いしはらりゅうたろう): フリーライターとして、雜誌やウェブで執筆。青山学院大学在学中。

0 0

おすすめ記事

最新記事