全国に散らばる秦氏
加藤謙吉氏によると、全国の秦氏に関係する地域の分布は実に三十四か国、九十郡にも及ぶのです。
その内訳は次の通りです。
畿内
○山背国 葛野郡、愛宕郡、紀伊郡、宇治郡、久世郡、相楽郡、乙訓郡
○大和国 忍海郡、城上郡
○河内国 茨田郡、高安郡、丹比郡、大県郡
○摂津国 西成郡、豊嶋郡、嶋上郡、川辺郡
○和泉国
東海道
○伊勢国 朝明郡
○参河国 渥美郡、寶飫郡
○遠江国 敷智郡、蓁原郡
○伊豆国 田方郡
○相模国 高座郡
○武蔵国 幡羅郡
東山道
○近江国 愛智郡、神前郡、犬上郡、蒲生郡、浅井郡、坂田郡、高嶋郡
○美濃国 当嗜郡、賀茂郡、本巣郡、方肩郡、各務郡、山県郡、厚見郡、池田郡、不破郡
○上野国 多胡郡
○下野国
北陸道
○若狭国 遠敷郡、三方郡
○越前国 足羽郡、坂井郡、大野郡、丹生郡、敦賀郡
○加賀国 加賀郡
○越中国 射水郡、砺波郡
山陰道
○丹波国 船井郡、何鹿郡、桑田郡、氷上郡
○但馬国 出石郡
山陽道
○播磨国 賀茂郡、餝磨郡、揖保郡、赤穂郡
○美作国 英多郡、久米郡
○備前国 和気郡、邑久郡、御野郡、上道郡
○備中国 都久郡
○周防国 玖珂郡
南海道
○紀伊国 名草郡、安諦郡
○阿波国 板野郡、那賀郡
○讃岐国 大内郡、三木郡、山田郡、香河郡、多度郡、鵜足郡
○伊予国 越智郡、温泉郡
○土佐国 吾川郡、長岡郡
西海道
○筑前国 志麻郡、穂波郡
○筑後国 御井郡
○豊前国 仲津郡、上毛郡
以上は史料的に居住が確認できる事例と秦氏関係者が存在した蓋然性が高い地域を列挙しました。また秦氏を起源とする地域は、神奈川県の秦野市、高知県の幡多郡などが知られています。また、幡多郷と書く地名は、三河国渥美郡(幡多郷)、近江国長下郡(幡多郷)、紀伊国安諦郡(幡陀郷)、肥後国天草郡(波多郷)などがあります。
武蔵國や関東近辺にも多く、埼玉には男衾郡(現寄居町・嵐山町・小川町を中心とした地域)に幡々郷(幡多郷)があり、幡羅郡(現熊谷市・深谷市・妻沼町)には幡羅郷(現原郷)があった。東京にも幡ケ谷(渋谷区)がある。また、かつて武蔵國に属し、今の神奈川県にあった都筑郡には幡屋郷(現横浜市)がありました。その中で山背国以外で特に秦氏とかかわりの深い地域を検証したいと思います。
土佐国(高知県幡多郡)
言わずと知れた戦国大名長宗我部氏のおひざ元です。実は長宗我部は秦氏の末裔だって知っていました?実はその由来は秦河勝までさかのぼります。秦河勝は聖徳太子の信頼に応えて多大な功績を挙げ、恩賞として信濃国更級郡桑原郷を賜り、子の広国を派遣して信濃の統治に当たらせました。以後、泰氏は信濃に住して豪族に成長していきました。『更級郡誌』には、「保元の乱」に際して能俊が村上為弘、平正弘らと崇徳上皇方に属して敗れ、土佐国に走ったといわれています。ちなみに、阿波の新開氏も信濃秦氏の分かれといい、秦氏が佐久・更級・東筑摩地方に広がっていたことをうかがわせています。
一方、『元親記』には「秦川勝の末葉、土佐国司となり、長曽我部・江村・廿枝郷など三千貫領知すべき綸旨を頂戴し、御盃を賜る。その盃に酢漿草の葉が浮かび、これをもって酢漿草を紋に定む」とあります。また、後三条天皇の延久年間(1069~74)に、能俊が信州から入部したとするものもあります。さらに、鎌倉時代初期に起った「承久の乱」に幕府方に属した能俊は京方の仁科氏と戦い、その功により土佐国の地頭となり、長曽我部郷に移ったとする説もあります。
実際、高知県に幡多郡(現在の四万十市・宿毛市・土佐清水市の全域)は、昔は波多国と呼ばれており、その起源は皇紀十代崇神天皇波多国造主天韓襲命の頃と言われています。また今の幡多の守護神として祀られている高知坐神社(高知県宿毛市)は神道考古学の研究では弥生初期の当地方の原始水田稲つくり集落の始まる頃より存在していたといわれておます。特にその境内より多くの石器須恵器土師器を枚集しているのももともと何かの祭祀跡だった可能性があります。今日姿を失った宿毛市の平田曽我山古墳の主は波多国造主とも考証されているそうです。
これはあくまでも仮説ですから、、、、
秦王国の滅亡(大分県中津市)
大分県中津市は隋書における秦国の存在の一番の有力地です。『隋書』倭人伝では、608年、小野妹子は隋使・裴世清を伴い、帰国しました。裴世清は、筑紫から瀬戸内海に入ったとき、中国人が住むという「秦王国」の存在を知らされます。「秦王国」とは、渡来帰化人の秦氏が多く住んだ豊前の地なのです。秦氏は、秦の始皇帝の血を汲む氏族で朝鮮経由で日本に渡来したと自称していました。さらに大宝2年(702年)の戸籍台帳によると豊前の人口9割以上が秦氏です。そんな秦王国がなぜ歴史の舞台から消えて行ってしまったのでしょう?
そのカギはまず磐井の乱にあると思っています。
というわけで文字がいっぱいになったので今回はここまで、
次回 「磐井の乱その後と八幡神の秘密」をお楽しみに
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