新井 光雄 ジャーナリスト | |
元読売新聞・編集委員。 エネルギー問題を専門的に担当。 現在、地球産業文化研究所・理事 日本エネルギー経済研究所・特別研究員、総合資源エネルギー調査会・臨時委員、原子力委員会・専門委員 大正大学非常勤講師(エネルギー論)。 著書に 「エネルギーが危ない」(中央公論新社)など。 東大文卒。栃木県日光市生まれ。 |
何か根本的におかしい菅首相の「脱原発」 (2011/07/25) | |
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むちろん、「脱原発」も選択肢であるのだろう。議論の必要性もある。しかし、それには相当の時間的な経過と国民的合意が必要であり、一国の行方を左右するようなことを首相といえども、簡単に口にする権利はない。市民運動家として、どういう思想を育んできたのだろうか。根本的な疑問を持たざるを得ない。原子力に関わっての新政権誕生の時の民主党マニフェストを再読してみよう。 サミットにおける菅発言を読みなおしてみよう。原子力を支持していたのだ。まず、これらをきちんと総括しなければならない。大震災、そして原発事故。確かに状況は変った。 だからということでの見直しは分かる。しかし、見直しは検討であって、内容が決まったということではまったくない。文字通りの国民的な議論が必要なのがエネルギー問題であるはず。いやあらねばならない。それがどうしたことか、党内いや、どうやら身辺に相談をした形跡すらないようだ。個人的な見解というが、これを前例とすれば大変なことになる。 首相の気持ち次第で日本の方向が固まってしまう。当然のように枝野官房長官の発言と齟齬をきたす。しかし、それでも「脱原発」のインパクトは残る。辞める首相の置き土産か。これでは一応は否定された脱原発解散も想定しておかなければならない。 テレビで菅シンパ議員も「解散ないとは言えない」という状況だから、あるとして見ていく必要があるのだろう。 解散総選挙となるとどうなるのか。国民投票的な総選挙だ。小泉時代の郵政選挙が想起されるが、同様に「脱原発」の圧勝となるのだろうか。そして来春には国内全原発の停止。電力不足の混乱のなかの政策模索。不況の深刻化。大倒産。企業の海外脱出。まさに悪夢到来ともなりそうだ。杞憂だろうか。いささかシリアス過ぎる予想だろうか。 そうであるならばジョークをひとつ。脱原発三国同盟という言葉ができたらしい。戦前のドイツ、イタリア、日本の三国同盟をもじり、戦後は「脱原発」でドイツ、イタリア、日本が手を組んで滅びに向かい出したというのだ。冗談を言っている暇はない。目下はドイツもイタリアも原子力国フランスから電気を輸入している。輸入できる。日本はエネルギー孤立国である。そうなると日本だけがアジアで迷走していくということになるのだろうか。ジョークにしては辛辣すぎるか。 |
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