『G-レコ』 コンテスト開催記念
富野由悠季監督ガンプラを語る! スペシャルインタビュー後編
ガンダムの生みの親であり、『ガンダム Gのレコンギスタ』の総監督である富野由悠季総監督へ、G-レコシリーズを中心とした今のガンプラを語っていただくスペシャルインタビュー! コンテスト応募作へ富野監督が期待するものとは!?
(2015年3月サンライズ第1スタジオにて) 聞き手:川口克己(バンダイホビー事業部)
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富野由悠季監督ガンプラを語る! スペシャルインタビュー後編
ガンダムの生みの親であり、『ガンダム Gのレコンギスタ』の総監督である富野由悠季総監督へ、G-レコシリーズを中心とした今のガンプラを語っていただくスペシャルインタビュー! コンテスト応募作へ富野監督が期待するものとは!?
(2015年3月サンライズ第1スタジオにて) 聞き手:川口克己(バンダイホビー事業部)
バリエーションを広げるには新しい才能を見つけていくしかない
- 僕から川口さんにお聞きしたいことがあります。今回、形部(一平)さんというデザイナーにメカデザインを頼んだことに何かお感じになっていただけたのか、そうでないのかを教えていただきたいんです。
キットとしての評価も高く、シリーズ内でも上位の人気を誇るHGグリモア。- ガンダムに限らずですけども、富野監督がアニメーションを作られるときに、デザインをどなたにお願いするかに毎回心を砕かれているなと感じてました。いろんな方に話をうかがったりしながら、要は今までのものではなく、新しいものを感じさせつつ、作品のテーマにいちばん合致するデザインラインである点に重きを置かれていたと思うんです。
- そういう意味では、グリモアはとても印象的でした。不勉強で申し訳ないんですけども、形部さんの以前のお仕事をあまり存じ上げていなかったんです。そういう僕も含めて「昔からガンダム好きですよ」って言っていた人間にとって、グリモアにはモビルスーツ然とした記号は入っていないんですが、すごく安心感を覚えたんですね。それは『G-レコ』のモビルスーツ全般にも言えて、気持ちよさをすごく感じています。
- 僕がもうひとつお聞きしたいのは、一般的にです。受け入れる側の反応はどうだったんだろうかっていうのは、本当に知らないので教えていただきたい。
100案を超えるという形部一平氏のMSデザイン。ガンプラでもグリモア、エルフ・ブルック、マックナイフなど続々商品化されている。- 模型誌さんで、グリモアを使ってコンペをされていて、非常に多くの作品が集まったんです。(※月刊モデルグラフィックス 6月号掲載(4月25日発売) 「第1回グリモアMeeting」)純然たるモビルスーツっぽい仕上げのものとか、ちょっとクリーチャー寄りに作られているものとか、グリモアを素材にけっこうお客様も楽しんでもらえているかなって感じました。僕がグリモアに感じたことをお客さんとも共有できていると思ってます。
- 形部さんはこれまでこの種の仕事をやってなかった方なんです。なのにメカデザインをお願いする気になったのも、きっとこういうものを作ってくれるだろうと思えたからです。それとガンプラというのは35年間もの長期にわたってアイテム数の拡大を続けていけばいくほど、つまりバリエーションを広げる方法を追求してきました。そうなれば、形部さんぐらい違う才能をもってこないといけないだろうと思ったからこそ依頼したわけです。それに初めてデザインを依頼して、グリモアからマックナイフぐらいまでの数点がパパパッと出来上がってきたときのスピード感で、デザイナーとして重要なセンスをもっていると確認できましたので、彼でいけると確信しました。だからこそG-セルフからマックナイフまでのバリエーションがあれば、ガンプラの品ぞろえとしていいだろう思いました。
- こういうふうに踏み込んだのは、マーケット全体を僕なりに目配りをしていたからなんです。
- そして、実際にこれだけ『G-レコ』のガンプラが並ぶさまを俯瞰すると逆にわかってきたことがあります。変形ギミックが新鮮でとても好きなんだけれど、エルフ・ブルックやマックナイフといった前半を支えたモビルスーツをまず始めに提示してみせることができたから、G-ルシファーといった後半のモビルスーツは慣れ仕事にすることができた。逆の例が、いちばんデザイン的に苦労しながら、結果に満足できなかったのがジャハナムあたりなんです。もう少し何とかしたかったのだけれど、それができなかったんです。今回、改めて確信させられたのは、ガンプラというひとつのコンセプトを確立しているところに、新しいものを作らせるのはどんなに難しいということを本当に学習させられたんです。だから今後の問題というのは、意思・コンセプトを見つけていくことを絶えずやっていかないとバリエーションというのは効かない、ということなんです。つまり、前半のデザイン群を提示しないで、後半のデザイン群だけでメカをまとめてしまうと「しょせん、G-レコのガンプラも他のガンプラと変わらないよね」とバカにされるわけです。それを僕は本当に避ける努力をしました。
- それでは、ファンの想像の範囲内に収まっていたかもしれませんね。
- はい、グリモアも含めて、エルフ・ブルックやマックナイフが出てきたところで、バリエーションは拡大できる見込みがつきました。お客さんの問題じゃないんです。デザイナーの問題。発信者側がそういう“目線”をもってほしいんだけれども、どうすれば“この目線”を手に入れられるかが本当にわからなくて、唯一の手段として新しいデザイナーを見つけることでしかできないんですよね。今回は形部さんを見ていて、物作りというのはかなり大変なことなんだってつくづく感じて……言いながら、安田(朗)君の話もしなきゃいけないんだけど(笑)。
※安田朗氏とG-セルフの話はガンダムエース6月号(4月26日発売)付録小冊子にて掲載中!
『G-レコ』シリーズでガンプラの新しい空気を見つけてほしい
- 今回、監督にガンプラコンテストの審査をしていただくわけですが、模型誌さんでもいろいろ模型コンテストを企画されていて、全体のクオリティーは年々上がってきているのを感じています。反面、コンセプトが似通った作品があるのも事実で、方向性が定まってしまった面もあります。それはガンプラを継続していったなかで、そういう方向にしちゃった部分があるかも知れませんね。
- それともうひとつ重要なことがあって、概ねの人がアーティスティックであるわけがない。芸術家、アーティストだといわれる人はやっぱりひと握りの人なんですよね。ですから、あまねくアーティスティックなものを要求するつもりはありません。我々がいちばん気をつけなくてはいけないのは、次の時代を先導するような才能を見つけることを任務にしていくのが、プロの立場がもつべき意識でしょう。だから、僕が思っているのは、コピー、模造品に賞を上げるということには気をつけたい。だけど、おうおうにして模造品のほうがきれいなんですよね。周りからの食いつきもいいし、受けもいい。だけど、それはあまり採用はしたくない。
- あと、才能が光る作品を見つけてきて、今度は受け手のお客さんたちに「才能を見いだすのは楽しいんですよ」と、きちんと発信できるかが我々選者のいちばん大切なところなんじゃないのかな……、僕は今、とても大事なことを言ったんだけれども、生まれて初めて(笑)。
- パッケージの横に載っている写真のようにきれいに作って楽しんでいただけたら、次はキットを使って、皆さんがどれだけ自由におもしろがってもらえたかを、今回のコンテストに参加していただいて教えてほしいですね。
- 『G-レコ』の今回のデザインは、ガンプラになっているものも含めて、形部テイストが入っているために、今までとちょっと違うんですよ。安田君のG-セルフも、安田君なりに“これまでのガンプラにはしたくないガンプラ”にしています。そういう部分をぜひ見抜いてほしいし、かなりスキがあることも看破してほしい。スキがあるほうが、実はおもしろいんです。そこを見逃してほしくないなと思いますし、これ以降『G-レコ』を発にして、ガンプラで新しい空気を皆さんが感じていただけたら、とてもうれしく思います。
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富野監督インタビューを終えて―
スペックを突き詰める、メカデザイナーの意図を読み取る、映像からそのキャタクター性を読み取る、モビルスーツとしての機能・運用からあるべき姿を想像する等々、監督のお話から『G-レコ』のキットを手にし、作る際の様々なヒントを戴いたように思えます。 今回コンテストに応募してみよう…という方は従来のガンプラ製作のアプローチを一度リセットして、個々のMSから皆さんご自身が感じられたMS像を是非具象化して戴きたいと思います。
川口克己(バンダイホビー事業部) -
ガンダム Gのレコンギスタ ガンプラコンテストは 6月30日(火)まで応募受付中!
元気たっぷりの作品をお待ちしております!
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【コンテスト連動企画】
バンダイホビー事業部宣伝担当が製作したガンプラを富野監督に見ていただきました!
富野監督の熱い評論はコチラをクリック!
また、4月25日発売号、5月25日発売号の模型誌において、コンテスト連動企画を実施!富野監督による各誌の作例の評論を掲載中!是非ご覧ください。
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<掲載誌>
- 月刊ホビージャパン6月号
- 月刊モデルグラフィックス6月号
4月25日発売
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5月25日発売
月刊電撃ホビーマガジン7月号
- 月刊ホビージャパン6月号