安倍晋三首相と中国の習近平国家主席がインドネシアのジャカルタで会談した。5ヵ月ぶりの日中首脳会談で安倍首相は「戦略的互恵関係を推進し、地域や世界の安定と繁栄に貢献するのは我々の責務」と訴えた。その方向性はもちろん望ましい。だが、私は首相が語らなかった「もう1つの言葉」に注目する。
「中国は脅威だ」と公言できない
「もう1つの言葉」とは何か。それを見つけるには、日本政府の中国に対する基本スタンスを検証する必要がある。
私自身は先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42934)で書いたように「中国は日本にとって脅威」と考える。実は政府も本音を言えば、そういう認識を前提に安全保障法制の整備を進めている。ところが、政府は「中国は脅威だ」などと口が裂けても言わない。そんなことを政府が言えば「中国は日本の敵」と公言したも同然になってしまうからだ。
そこに、問題のややこしさがある。中国を脅威と名指ししなければ、日中関係の無用な悪化は避けられるだろう。一方で脅威の存在をあいまいにするために、国民は「なぜ集団的自衛権の行使容認が必要なのか」が判然としなくなってしまう。それどころか、反対論が強い。
たとえば共同通信が3月28、29日に実施した世論調査によると、安保関連法案の今国会成立に反対が49.8%と賛成の38.4%を大きく上回った。中国けん制が目的の1つである安保法制整備に対する国民の理解が、まさに日中関係維持のために犠牲になってしまう「政策のジレンマ」に陥っているのだ。
政府は中国をどう認識しているのか。それをまず、いくつかの公式文書で確認する。そのうえで安保法制論議の本質と今回の首脳会談で語られなかった部分を考えてみる。
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