米国の消費者コンサルタント、J.D.パワーが「2015年米国テックチョイス調査」の結果を発表しました。同調査は5,300人の回答者に対して消費者が自動車に求める機能を調べたものです。調査項目は59に渡りましたが、その中で最も消費者が求めているもの(画面左側)と一番人気が無かったもの(画面右側)を下に抜粋しました。

1

これによると死角探知や衝突回避システムが高いスコアを記録しました。これらはモービルアイ(ティッカーシンボル:MBLY)の得意とする分野です。

同社の先端運転補助システムは、前を走っているクルマとの車間距離が詰まると警告したり、ドライバーが見落とした、横から飛び出してくる歩行者や自転車の存在を警告するなどの機能を持っています。

同社のシステムはアウディ、BMW、ボルボ、フォード、マツダなどのシステムのコアを構成しています。

上で紹介したJ.D.パワーのアンケートでは、このような先端運転補助システムを将来自分が買うクルマに装備することのコストとして、大体、2000ドル余分に支払っても良いという回答でした。

逆に言えば自動車メーカーはこの予算の範囲内でそれらのシステムを実現しないといけないのです。

運転補助システムにはレーザーを使用したシステムとカメラを使用したシステムがあります。モービルアイはカメラを使ったシステムだけを作っています。なぜならそちらの方が優れているからです。

実際、レーザーによる運転補助システムは、いまカメラによる先端運転補助システム(ADAS)にどんどん駆逐されています。

その理由はカメラの方が豊富な情報をインプットできる点に加え、カメラの方がロー・コストという事も重要です。カメラそのものの性能はどんどん向上しているし、カメラから取り込まれた情報はリアルタイムのプロセッサーにより、瞬時に処理されます。この部分では「ムーアの法則」が働き、どんどん演算コストは下がってゆくと思われます。

モービルアイのEyeQ3は8つの半導体コア、4つのCPU、4つのベクター・アクセラレーターから成る、ちょっとしたスーパーコンピューターほどの処理能力を持っています

自動車会社のコア・コンピタンスはクルマ作りであり、半導体デザインではありません。だから自動車会社がADASを100%内製しようとしても、ミサイルの標的パターン認識技術などをベースに開発されたイスラエル企業の半導体ノウハウには追いつけないと思います。

将来はADASが自動運転車につながってゆくと思われます。自動運転車ではグーグルが有名ですが、グーグルの開発哲学とモービルアイの開発哲学は、ほぼ対極に位置しています。

グーグルは「ストリート・ビュー」で事前に蒐集した膨大なMAP情報をデータセンターに保存し、それをドライブしながら呼び出すことで運転の補助とします。つまりカメラへの依存度は低いのです。

モービルアイは一切の保存データに頼らず、ドライブする過程でカメラがキャプチャしたあらゆる情報を、どんどんリアルタイムで判断してゆくことで自動運転を実現するわけです。

これは「黒か、白か?」という二者択一の問題ではなく、将来は両者のアプローチが融合して、はじめて信頼性の高い自動運転が可能になると考えるのが自然です。

その意味においてモービルアイはグーグルの買収ターゲットだと言い切れると思います。

mbly