首相官邸の屋上でドローンと呼ばれる小型無人機が見つかった。付属する容器からは微量の放射性物質も確認された。誰が何のために飛ばしたものなのか不可解さが募る。捜査を尽くしてほしい。
安倍晋三首相が外遊中の二十二日午前、ドローンは発見された。首相官邸は最高レベルの警備が取られているはずだ。それなのに屋上のヘリポートが最後に使用されたのは一カ月も前で、いつドローンが屋上に落下したのか分からないありさまである。危機管理があまりにおそまつだ。
米国では首都ワシントンで今年一月、ホワイトハウス敷地内に墜落したばかりでもある。十分な警備体制が取れていなかったことに警察当局はまず反省すべきだ。
驚くべきことは、この飛翔(ひしょう)物にはプラスチック容器が取り付けられており、放射能があることを示すマークが貼られていた。実際に放射線量は一時間当たり最大一マイクロシーベルトが検出された。
セシウム134と137で自然界に存在せず、東京電力福島第一原発事故で原子炉建屋から大量に放出されたものと同じ物質だという。何の目的でこんなものを首相官邸に持ち込んだのか、警察当局は操縦した人物を特定し調べてもらいたい。
菅義偉官房長官は二〇二〇年東京五輪・パラリンピックや来年の主要国首脳会議(サミット)に向けて、「こうした小型無人機などを利用してのテロの発生が懸念される」と語った。政府はドローンをめぐるテロ対策や運用の在り方を早急に見直すだろう。
現在は規制する法令はなく、ラジオコントロールのヘリコプターなどと同じ扱いだからだ。空港の管制区域などを除いて、地上から二百五十メートル未満なら届け出は必要がない。だが、むやみに規制論ばかりを強調するのではなく、ドローンが秘めた可能性に着目し、丁寧な議論をすべきである。
この小型無人機は昨年九月の御嶽山噴火のときにも小型カメラを付けて飛び、灰の堆積状況を撮影している。
警視庁でも災害時の情報収集用に導入している。既に現場で活躍しているわけだ。
警備保障や宅配など、さまざまな産業で活用が検討されていると聞く。一方で空撮などによるプライバシー侵害の問題も起きる。マラソン大会の最中に落下してけが人を出す事故もあった。どんなルールがあればいいのか、慎重な論議が求められる。
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