社説:無投票当選 なり手増やす改革急げ

毎日新聞 2015年04月24日 02時30分

 もはや放置できぬレベルだ。地方選挙で候補者が定数を上回らず、無投票当選となるケースが目立っている。今回の統一地方選では、こうした傾向が一段と加速した。

 住民の代表を投票で選ぶ機会が失われる事態が広がるようでは、自治の根幹に関わる。幅広い人材が参入できるよう、制度の見直しも含め手立てを講じるべきだ。

 投票すら実施されなくては「無風選挙」以前である。前半戦の41道府県議選で無投票当選が総定数の約2割を占めたのに続き、後半戦の政令市を除く市議選でも前回比2倍超の3.6%に達し、記録が残る1951年以降で過去最高を更新した。

 首長選挙も政令市を除く市長選で全体の約3割の27選挙が無投票だった。長崎、津市長選と県庁所在地の首長選が無投票に終わったのは、地方政治全般で新たな人材を引き入れる力が衰えているためだろう。

 人口減少が進む町村は「なり手」不足が一層、際立つ。町村議選は総定数の21.8%、町村長選は約4割の53選挙が無投票だった。群馬県上野村のように告示直前に村議の定数を減らして無投票を回避したケースもあるというのだから深刻だ。

 多くの人が出馬する機運を高めるためには、住民が行政に関心を持ち、首長や議会の活動が認知されることが大前提だ。同時に、幅広い人材の参画を可能にするための環境整備も大切である。

 たとえば候補者が供託金を納め、一定の得票がなければ没収される制度は町村議員を除く地方選挙にも適用される。政令市以外の市区長選挙で100万円、市区議選で30万円という水準は住民に身近な選挙への出馬を必要以上に妨げてはいないか。

 より幅広い人材に門戸を広げるような改革が必要だ。サラリーマンが出馬、当選した場合の休職や復帰の制度化などを経済界などの協力も得て推進すべきだ。

 地方議会の運営も決まった曜日の夕刻に本会議を開催するような工夫がいる。そうすれば議員活動が可能な人も増え、住民も議会を傍聴しやすくなる。とりわけ小規模町村では兼業での参画を前提とするような議会運営、形態の大胆な見直しも検討に値しよう。

 区割りにも課題がある。政令市以外の市区町村議選は選挙区がひとつの大選挙区制が原則で、人口が多い市の定数は数十人規模にふくらむ。有権者から候補者が見えにくいうえ、候補者は広域の選挙運動を強いられ、出馬しづらくなる。

 気になるのは、政党や国会議員がともすれば地方の選挙制度に無関心で、議論にも不熱心な傾向がみられることだ。選挙の空洞化を防ぐ努力を怠ってはならない。

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