首相官邸の屋上で、小型無人飛行機(ドローン)が見つかった。放射性物質だと表示した容器がついていて、中の液体から放射線が検出された。人体にただちに影響を与えるものではなかったとはいえ、不安を感じさせる事件である。

 官邸の職員が新入職員を屋上に案内したおととい、見つかった。機体に水がたまっていたことから、発見前日には屋上にあったとみられている。

 信じがたいのは、いつからあったか、一から解明する必要に迫られたことだ。過去1カ月、屋上に上がった人がいなかったことがその理由だ。

 首相官邸は、日本の危機管理の司令塔である。また、安倍政権は危機管理を重視していたはずだ。しかし、その頭上は、あまりに無防備だった。

 官邸に飛来したことで注目を集めるドローンだが、その普及は急速だ。

 コンピューターやカメラを搭載し、GPS(全地球測位システム)の情報を得て自律制御しながら飛ぶ商品が登場し、店舗やネットで手軽に手に入るようになっている。

 福島第一原発で調査に利用され、御嶽山噴火では降灰の確認に使われた実績があり、今後は災害救助や物流などさまざまな応用が期待されている。

 一方で、事故や犯罪利用、私有地への無断侵入によるプライバシー侵害など、課題も生じている。普及に、対策や規制が追いついていないのが実情だ。

 今回、官邸で見つかった機種「ファントム」を製造するDJI(本社・中国)は事件を受けて、GPSによる誘導装置に組み込まれている飛行禁止区域の情報に官邸と皇居周辺を加えた、と発表した。操縦者が意図しても、同域内での離陸や飛行はできなくなる。

 不審なドローンを見つけた場合、近づいて回転翼にひもを絡ませて落下させるなど、排除するドローンの開発なども進む。

 こうした技術や自主的な取り組みも悪用防止の柱となる。

 規制については、今月6日に、国土交通省内の有識者会議で論点の洗い出しが始まったばかりだ。政府は、関係省庁による連絡会議を設けて、運用ルールの策定などに乗り出す考えを示した。一定の能力以上のドローンを登録制にすることも一案だろう。

 海外では、航空関連法などを改正して高度の制限や飛行禁止区域を設けたり操縦条件をつけたりと、法規制を急いでいる。

 各国や国際機関とも連携し、悪用の防止を急いでほしい。