「砂のクロニクル」などの冒険小説や、「満州国演義」などの歴史小説で知られる直木賞作家の船戸与一(ふなど・よいち、本名・原田建司〈はらだ・けんじ〉)さんが22日、胸腺がんのため東京都内の病院で死去した。71歳だった。葬儀は近親者のみで営まれる。

 1944年、山口県下関市生まれ。早稲田大学在学中に探検部に所属し、アラスカなどに赴いた。出版社勤務を経てフリーに。漫画「ゴルゴ13」の脚本も手掛け、79年「非合法員」で冒険作家としてデビューした。85年「山猫の夏」で吉川英治文学新人賞と日本冒険小説協会大賞を受賞。92年「砂のクロニクル」で山本周五郎賞を受けた。

 冷戦後は分かりやすい構造で冒険小説が描きにくくなったとし、「新世紀の冒険小説」を模索。00年、日本人とフィリピン人の血を引く主人公・トシオの成長を描く冒険小説「虹の谷の五月」で直木賞を受賞した。

 09年にがんが見つかり、放射線治療などを受けながら執筆を続けていた。ノンフィクション的に旧満州の歴史を描く大長編「満州国演義」に取り組み、今年2月、完結編となる第9巻が出版されたばかりだった。