【球界ここだけの話(154)】ノムさん、Aロッドに657本塁打を抜かれた胸中を激白
Xデーはたった10試合でやってきた。ヤンキースのアレックス・ロドリゲス内野手(39)が17日(日本時間18日)、今季10試合目となるレイズ戦で、二回に通算657本塁打となる3号ソロ。六回には658本塁打となる4号2ランを放ち、野村克也さん(79)が持つ世界6位の通算本塁打657本を、あっという間に抜き去った。
そこで、世界7位に転落した翌19日、野村さん(以下監督)に心境を聞いてきた。もちろん監督はAロッドに本塁打数を抜かれたことを知らなかった。
「俺より打ったのか。まぁ、話としてはいいけど…。俺がメジャーに行ったところで、本塁打どころか、試合にも出してもらえないよ。世界なんて言うな。(Aロッドとは)比較にならん。これは王も同じ。“世界の王”なんて言われてるけど、あれは日本の王だよ」。
そして監督は続けた。
「俺が褒めてほしいのは“捕手で”ということ。夏場の暑いときは、本当に大変だった。楽な一塁で800本打ったのと、立ったり、座ったり、重労働の捕手で600本打ったのと、どっちが大変か…。『ノムさんは一塁や外野だったら、もっと打てたのに』とよく言われたもんだよ」。
打力を生かすために捕手から一塁や外野にコンバートされる選手は多い。“もしも捕手でなかったら”と誰もが考えるはずだ。「でもな、そういう考えもあるけれど、俺は捕手だったから配球を読んで打てるようになったんだ」。座右の銘のとおり。まさに“生涯一捕手”だ。
捕手として出場し本塁打を放ったメジャー記録はマイク・ピアザの396本(通算427本)。監督が捕手として600本以上打っているのは間違いなく、世界一本塁打を打った捕手ということになる。これはメジャーと比較してもおかしくはないと思う。
最後にお詫びと訂正をさせてください。「Aロッド、世界6位のノムさん超えまであと4本」のコラムで、バリー・ボンズに本塁打数を抜かれた際に監督が「条件が違うわ」と話したのを「メジャーと日本の試合数が同じならもっと打っていた」と書いたのは、自分の大勘違い。今回書いたのが野村さんの本音です。(塚沢健太郎)